著者
松澤 哲宏 堀江 義一 矢口 貴志 坂本 裕美子 吹春 俊光
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.jjom.H22-05, 2011-05-01 (Released:2018-03-30)
参考文献数
10

千葉県船橋市の農場の温室で栽培中のシクラメンの鉢の土壌表面に多数の白色の菌核が発生した.同時に菌核の発生した鉢からまれに小型の黄色のキノコが発生した.この菌核から純粋分離した菌株,培地上で形成された菌核,鉢から発生した黄色のキノコ,保存されていたコガネキヌカラカサタケの標本から DNA を抽出し,ITS,D1/D2 領域の塩基配列を用いて分析した結果,鉢から発生した菌核およびキノコはコガネキヌカラカサタケであることが知られた.すなわち鉢の土壌上に多数発生した菌核は同時に発生したキノコと同一の菌種である事が明らかとなった.これまでコガネキヌカラカサタケの菌核による栽培植物の被害は報告されておらず新しい知見として報告する. 併せてコガネキヌカラカサタケの培地上での性質を記載した.
著者
田中 千尋 大澤 直哉 吹春 俊光 都野 展子 都野 展子 吹春 俊光 BUCHANAN Peter JOHNSTON Peter TOFT Richard DICKIE Ian 門脇 浩明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,ニュージーランドにおいて同地固有種であるナンキョクブナ林において, 外来菌根菌ベニテングタケの侵入・発生状況を調査するとともに, 侵入の原因ならびに他森林生物に与える影響を明らかにしようとした.調査の結果, 同地には複数の系統のベニテングタケが移入し,雑種化が進んでいること, 人為的かく乱が著しいあるいは人工植栽地などを中心に分布拡大が進んでいること, 古くから発生が認められるサイトでは,同地固有のキノコバエ種がベニテングタケを利用するようになっていることが明らかになった.
著者
谷亀 高広 吹春 俊光 鈴木 彰 大和 政秀 岩瀬 剛二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.259, 2005 (Released:2005-03-17)

ラン科植物はリゾクトニア属に属する不完全菌類が菌根菌となることが広く知られているが、近年それ以外の担子菌が菌根共生する場合のあることが明らかにされている。〈BR〉 そこで本研究ではラン科植物の菌根共生に関する知見の集積を目的としてサイハイラン属のサイハイランとモイワランについて菌根菌の同定を行った。サイハイランは日本各地の丘陵地帯の湿った林内に自生する緑色葉を持つ地生ランである。一方、同属のモイワランは深山の沢筋に自生する無葉緑ランである。サイハイランは神奈川県藤野町のコナラ林において、モイワランは青森県佐井村のオヒョウ、カツラ林において、それぞれ1個体を採取した。菌根菌分離は、リゾーム内に形成された菌根菌の菌毬を分離培地(Czapec・Dox+酵母エキス寒天培地)上へ取り出し、そこから伸張した菌糸を単離培養するという方法(Warcup&Talbot 1967)を適用した。その結果、サイハイランより5菌株、モイワランより2菌株の菌根菌が分離された。それぞれ1菌株についてオガクズ培地で前培養し、これを赤玉土に埋没させることで子実体形成を誘導し、その形態的特徴から菌根菌の同定を試みた。両種から分離された菌株は、子実体の観察の結果、いずれもヒトヨタケ科ヒトヨタケ属キララタケ節に属することが明らかとなった。また、野外から採取したそれぞれのランのリゾームを子実体形成を誘導した菌の培養菌株と共に赤玉土に植え込み、菌根菌を感染させたところ、それぞれのランでリゾームの成長および塊茎の形成を確認した。〈BR〉ヒトヨタケ科の菌がランの菌根菌として同定された例は無葉緑種のタシロランがあるが(大和2005)、他は報告例がない。本研究によって、新たにサイハイラン属について、緑色葉を持つ種と無葉緑の種がともにヒトヨタケ属の菌を菌根菌とすることが明らかとなった。
著者
吹春 俊光
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.45, 2008

"維管束植物は外側と内側が反転した地衣類である"といわれるように,陸上植物は菌類との共生の上で生存し,陸上生態系で菌の存在は無視できない.北半球では外生菌根性植物であるブナ科,マツ科,カバノキ科が主要な植物景観の構成要素であるが,従来,植生の変遷や景観の変遷が,菌根の側から説明されたことはなかった.提案する「菌根型からみた植生景観変遷モデル」は,菌根の立場で,植物景観や植生の変遷を説明するものである. 図の説明:a.有史以前:人為的な行為の無い森林.山の尾根から斜面にかけて外生菌根型の樹種(ブナ科,マツ科,カバノキ科)が優占する.VA型の樹種はその斜面にスポット的に混在する.b.里山(~1959):人は山のふもとに集落をつくり,集落の背後の谷筋にはVA型のスギなどを植えた.またその他の場所では,コナラ林やマツ林などの人為二次林である里山が成立した.景観としてはまだ外生菌根性樹種が多い.c.現在:尾根の上などの乾いた立地にまでVA型の樹種の植林がある.尾根や稜線にかろうじて外生菌根型の樹種が残された.かつては,北半球のほとんどを覆い尽くした外生菌根型の森は,この景観の中では消滅寸前である.
著者
〓[「登」偏におおざと(「都」のつくり)] 志強 鈴木 彰 吹春 俊光 田中 千尋
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.42, 2007

<I>Hebeloma</I>属, <I>Porphyrospora</I>亜属のアンモニア菌の種同定を行なうため, 交配試験を行なった. 尿素区に発生した子実体の形質に基づき, <I>H. vinosophyllum</I> (日本産), <I>H. aminophilum</I> (オーストラリア産) ならびに<I>Hebeloma</I> sp. (ニュージーランド産) と同定された3菌種を供試した. まず, <I>H. vinosophyllum</I>の培養子実体から単胞子分離によって単核菌糸を得た. 同単核菌糸間の交配試験を行い, <I>H. vinosophyllum</I>は4極性の交配型をもつことを確認した. <I>H. aminophilum</I>と<I>Hebeloma</I> sp.については, 分離菌株が子実体形成能を消失しているため, スライド培養した複核菌糸先端部の検鏡下で切離あるいは振とう培養によって遊離した菌糸断片の選別によって, それぞれ単核菌糸を得た. <I>H. vinosophyllum</I>の単核菌糸をテスター株として, <I>H. aminophilum</I>と<I>Hebeloma</I> sp.の複核菌糸をダイ・モン交配したところ, いずれの組み合わせでも交雑は認められなかった. 次に, <I>H. vinosophyllum</I>, <I>H. aminophilum</I>, <I>Hebeloma</I> sp.の単核菌株を用いてモン・モン交配したところ, <I>H. aminophilum</I>と<I>Hebeloma</I> sp.の組み合わせでは交雑が認められたが, <I>H. vinosophyllum</I>と<I>H. aminophilum</I>, <I>H. vinosophyllum</I>と<I>Hebeloma</I>. sp.の組み合わせでは交雑が認められなかった. 以上の結果は, <I>Porphyrospora</I>のアンモニア菌に関する分子系統解析の結果(Deng <I>et al</I>. 2006) を支持するものであり, ニュージーランド産<I>Hebeloma</I> sp.は<I>H. aminophilum</I>と生殖レベルで同一種と取り扱うべきこと, 日本産<I>H. vinosophyllum</I>と<I>H. aminophilum</I>はそれぞれ独立種として取り扱うべきことが明らかになった. * 日本菌学会50周年大会講演要旨集, p. 50.
著者
丸山 卓郎 川原 信夫 吹春 俊光 横山 和正 牧野 由紀子 合田 幸広
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.49-54, 2005
被引用文献数
1 4

2002年6月よりサイロシン類含有キノコが麻薬原料植物に指定されたことから,これに代わり,ベニテングタケ (<i>Amanita muscaria</i>) が,さまざまな形態で販売されている.本研究では,DNA分析および成分分析により,これらベニテングタケ関連商品の実態調査を行った.DNA分析の結果,上記商品の基原種は,<i>A. muscaria</i> あるいはその変種であると推定された.また,これらは,3つの遺伝子型に分類され,その多くが海外産であると思われた.一方,LC/MS分析により添加物質としてハルミン類およびトリプタミン類がそれぞれ2種,検出された.このうち,ハルミン類含有商品からは,ハルマラ (<i>Peganum harmala</i>)のmatK遺伝子が検出され,これらの商品中のハルミン類が,ハルマラ組織に由来することが明らかとなった.