- 著者
-
吉田 英嗣
須貝 俊彦
坂口 一
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.10, pp.649-660, 2005-09-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
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岩屑なだれをはじめとする大規模土砂供給イベントが,流域の長期的な地形発達に与える影響を評価する事例研究として,約2.4万年前に浅間火山で発生した大規模山体崩壊に由来する前橋泥流が達した利根川・吾妻川合流点付近を対象とし,河川地形発達史を考察した.本地域では最終氷期初頭以降,泥流流下時までの間,気候変動に対応した段丘発達過程がみられた.本地域に達した泥流は,5~6万年前までに段丘化した段丘面に衝突し,段丘面を覆うローム層を削剥しながら,これをのりこえていった.他方,利根川を遡上し,堆積した泥流堆積物は,速やかに河川に侵食されていった.最終氷期最盛期前後には,泥流堆積物が再堆積するなどして,下流側において小規模な谷埋めが生じ,晩氷期には側刻が卓越し,完新世に入ってから下刻が始まった.最終氷期最盛期以降の利根川本流の河床変動は,泥流イベントの影響を残しつつも,再び広域的な気候変動に対応してきたと考えられる.