著者
天川 晃 我部 政男 木村 昌人 古関 彰一 福永 文夫 増田 弘 雨宮 昭一
出版者
横浜国立大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

今年度は沖縄でのヒアリングを含め2度の合宿と4回の研究会を行ったほか、総括班主催のシンポジウムにも参加した。研究分担者ごとの研究進捗状況に若干の差異はあるが、総括班シンポジウムで増田・木村の2名が各自の研究報告を行なった。具体的活動成果として、第一に9月に沖縄で行なった沖縄占領関係者に対するヒヤリング調査をあげることができる。政治、経済、教育関係者とのヒアリングを行い、占領下の沖縄の実情を聴取し、沖縄と本土各府県の占領との比較研究に関する多くの示唆を与えられた。また我部のアレンジによって沖縄の研究者・研究機関との情報交換を行なうとともに現地での関係文献の収集も行なった。第二に、司法制度と法曹関係者の人的研究は政府間関係の観点からも追放の影響の観点からも重要な検討課題であり、古関を中心に司法制度と弁護士会関係の資料収集を行った。古関は9月にできなかった沖縄の司法関係者とのヒアリングも別個に行なった。第三に、地方レベルの占領関係資料の収集を継続し外務省・終連関係資料、内務省関係資料、府県知事の伝記資料などを収集・分析した。第四に、木村を中心に全国の商工会議所を中心とする調査を継続し地方経済エリートの交替を政治過程の関係をマクロ的に観察した。研究班としての研究成果のとりまとめは総括班の成果報告と調整を計りつつ行なう予定であるが、福永の民政局の政党政策に関する分析、増田の平野力三の公職追放過程の研究など、研究分担者が部分的に成果の公表を行うことができた。また、天川が『学術月報』に「府県から見た占領改革」を執筆し研究班の研究の一端を紹介した。
著者
増田 弘毅
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

様々な実データ時系列の背後にある確率過程の構造に関する漸近推測,その中でも特に,確率過程の二次変動の局所的性質を加味した推測方式を研究した.また,漸近推測に際して必要となる,確率過程の漸近挙動も興味の対象である.今年度は特に下記の結果を得た.1. Realized multipower variation(MPV)の長期高頻度観測版を定義し,その漸近挙動を導出した.統計への応用として,確率過程の飛躍部分が適当な条件をみたす下では,飛躍の具体的な構造に関係なく(それを局外母数として)拡散部分およびドリフト部分を同時に漸近正規性をもって推測可能であることが分かった。推定量は計算容易であり,より精度の高い推定量の構成に役立つことが期待される.種のウィーナーポアソン確率積分に関する条件付期待値の公式を導出した.これはウィーナー積分に関する既存の結果を拡張するものであり,飛躍付確率過程モデルへ "small-sigma"理論を適用する際に,その実装における基本的な道具となる.3.合ボアソン型飛躍付拡散過程の$\beta$-ミキシング性を,(ランダムな)初期条件に関係なく成立する条件を導出した.条件は全て当該確率微分方程式の係数およびレヴィ測度で表現されており,検証容易である.4. 期間で高頻度データが得られない場合での日次ボラティリティの推定方法を,ウェイト付実現ボラティリティを介して定式化し,実証分析を行った.このような推定手法は,昼休みと夜間において取引が停止する日本市場などにおいて,特に夜間の収益率変動が累積ボラティリティに及ぼす影響が大きいことが経験的に知られているため,重要である.本結果は,経済で重要なボラティリティ予測を安定して行うための道具となる.
著者
五百旗頭 真 久米 郁男 細谷 正宏 増田 弘 五十嵐 武士 天川 晃
出版者
神戸大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究の目的は、占領期日本に関する資料状況・研究状況を全般的に検討し、それにもとづいて、政治・外交をはじめ、経済・社会・文化の諸領域にまたがる占領期日本の変動を総合的に研究するための組織を企画し準備することにあった。その目的は十分に達成されたと考える。たび重なる研究・打合せ会議を、神戸・東京などで行い、活発な意見交換を通して、平成3年度の重点領域研究を申請することを決定し、11の班と70名余の研究者によって構成される研究グル-プを作りあげることができた。諸分野の専門家から成る学際的研究である点は当初の予定通りであるが、研究テ-マと問題関心については、討議を通して大きな拡がりを持つに至った。すなわち、研究対象をたんに「占領期日本」に局限するのではなく、占領期を中心に高度成長が構造化するまでの「戦後日本の形成」を総合的に検討し、戦後日本の全体像を提示することを目的とすることになった。現在の日本が「戦後日本」をあとに、歴史の新しい局面に進もうとしていることは、「戦後日本とは何か」に答えることを急務としているのみならず、資料状況・研究状況も本格的な研究を可能にしていると判断されるからである。国際的に理解可能な総合的研究とするため、多様な分析視角を導入することとした。戦後日本の国際的要因と国内的要因、戦後社会の国際比較、戦前・戦後の連続と非連続、戦後の外交・政治・社会文化の継承と変容などを主要な共通的問題関心とし、占領改革、1950年代の戦後体制の形成を通しての高度成長への帰結を、各レベル・各分野で分析しつつ、全体像の解明を試みる。以上のような重点領域研究「戦後日本の形成の総合的研究」(代表者・渡辺昭夫東京大学教授)を申請するという目的を達成したことを御報告申しあげたい。終りに、この企画につき相談に乗っていただいた故砂子田忠孝氏の御冥福を祈りたい。
著者
南條 博 小林実 貴夫 高橋 正人 増田 弘毅 川村 公一 高橋 正人
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

骨髄より動員された内皮幹細胞と樹状突起細胞が、全身諸臓器の血管の活性化に直接関与することを成体で明らかにする目的で、本研究を遂行した。骨髄キメラマウス4ヶ月のトレッドミル負荷1週-4週後の全身諸臓器を詳細に観察した。得られた主な知見は以下の通りである。1)骨髄由来樹状突起細胞が多く出現している部位とまったく見られない部位に分かれているのが特徴で、一様の分布ではない。2)骨髄由来樹状細胞は肋間動脈開口部で多く見られる。3)骨髄由来樹状細胞の出現頻度はトレーニングマウスとトレーニングしないマウスで有意な差はみられない。4)骨髄由来樹状細胞の出現頻度はトレーニング1~4週で差はみられない。5)骨髄由来内皮細胞は上行大動脈起始部にみられる。6)心臓毛細血管では多数の骨髄由来内皮細胞がみられる。7)全身諸臓器の動脈、静脈、リンパ管に骨髄由来内皮細胞がみられる。さらに、週齢による骨髄由来内皮幹細胞と樹状突起細胞の動態を検討し、以下のことが判明した。8)骨髄由来樹状細胞は週齢とともに増加し、大動脈弓から下行胸部大動脈、72週では腹部大動脈に至る大動脈ほぼ全体に分布する。最終的に動脈硬化のない老齢マウスにおいて、骨髄由来樹状細胞が大動脈内膜全体に分布するという世界で初の知見を病理形態学的に証明した。
著者
垰田 高広 原 康 増田 弘行 根津 欣典 山王 なほ子 寺本 明 竹腰 進 長村 義之 多川 政弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-7, 2006-01-25

正常ビーグル犬における下垂体切除後の飲水量と尿量の顕著な増大を主徴とする尿崩症様症状は, 術後2週間以内に自然消退することが報告されているが, その機序についての詳細は明らかにされていない.そこで, 健常犬に対して下垂体切除を行い, 下垂体切除が高張食塩水負荷による血清ナトリウム濃度, 血清浸透圧の上昇に対するアルギニンバソプレッシン(AVP)分泌動態に及ぼす影響について調査した.さらに下垂体切除後の間脳視床下部組織における室傍核および視索上核のAVP産生および分泌細胞である大細胞性ニューロンの細胞数を計測することにより, 下垂体切除がAVP産生能に及ぼす影響についても検討した.高張食塩水負荷試験の結果では, 下垂体切除後においても血漿AVP濃度は食塩水負荷に反応してわずかな上昇を示したが, その割合は対照群と比較して大きく低下しており, 1ヶ月および3ヶ月間の観察期間内では臨床的に尿崩症様症状を抑制するものの, 急激な食塩水負荷に反応できるほど回復していないものと考えられた.間脳視床下部の室傍核と視索上核の免疫組織化学的調査では, 下垂体切除によってAVP陽性細胞数が減少する傾向が示された.これらの結果から, 下垂体切除により大細胞性ニューロンの機能的, 数的減少が認められたこととなり, 術後におけるAVP分泌能の回復は臨床的な術後尿崩症様症状の改善と関連していないことが示唆された.