著者
田近 淳 大津 直 乾 哲也
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.23-35, 2016-01-15 (Released:2016-04-15)
参考文献数
40
被引用文献数
12

北海道,厚幌1遺跡で発見されたマウンドについて,トレンチ壁面の観察・記載から地すべり移動体であることを示し,その運動過程を検討した.マウンドは,主に樽前d降下火砕堆積物(Ta-d:8-9ka)起源の軽石層・岩片層・腐植層から構成され,Ta-d上位の腐植層を覆い,樽前c降下火砕堆積物(2.5-3ka)に覆われる.縦断方向の壁面では,マウンド堆積物の下底に腐植およびそれとロームの混合層からなる非対称変形構造やデュープレックスが認められた.また,堆積物にはリストリック正断層に類似した非対称伸長構造が見られた.これらのセンスはマウンドが背後の山腹から移動して定置したことを示す.このような未固結で成層した火砕物の地すべりは地震動によって引き起こされたと考えられる.14C年代と層序関係から,このマウンドを形成した地すべりの発生は補正年代で約4,600yBP以降から約2,500yBP以前までの間である.この年代は石狩低地東縁断層帯馬追断層の最新活動期と重なる.
著者
八幡 正弘 黒沢 邦彦 大津 直 高橋 徹哉 戸間替 修一 川森 博史 毛利 元躬
出版者
資源地質学会
雑誌
資源地質 (ISSN:09182454)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-16, 1994-02-28
参考文献数
21
被引用文献数
3

Terrestrial volcanic products and lacustrine deposits of Middle Miocene to Pliocene age are widely distributed in the Monbetsu-Kamishihoro Graben which belongs to the Kuril Inner Arc. The Seta deposit located in the southern extremity of the Graben is classified into a hot spring gold deposit, based upon the modes of occurence.<BR>In the Seta mine area, Middle Pliocene lacustrine deposits of the Ashoro Formation which were accumulated in the Tokachi Basin unconformably covers Late Miocene to Early Pliocene terrestrial volcanic products of the Horokapiribetsugawa Formation. The lacustrine deposits are composed of sandstone, mudstone and siliceous deposits associated with a hot spring gold mineralization. A wide variety of sedimentary structure of the lacustrine deposits is observable in this area ; for detailed investigation, a logging of 80 meters of new diamond drill core (GSH-91-1) was necessary, which revealed the sedimentary structure of the basal part of the deposits and the relationship of the Horokapiribetsugawa and the Ashoro Formations. Siliceous deposits have been divided into 5 types, S-I to S-V. Silica is deposited as silica sinter (S-I) on land and/or temporally on shore near the water line, and also conducted into the cold lake water by the thermal water as a thin bedded siliceous deposit (S-II), because the silica gelation quickly proceeds under the influence of current or wave. The hydrothermal eruption broke up the underlying rocks for breccias like a clastic dike and, as a result, scattered breccias, so-called hydrothermat explosion breccias (S-IV) and/or the accidental silica blocks (S-III) in tuff and sandstone. When the hydrothermal eruption took place intermittently in shallow water, silica was deposited as silica complex deposit with sandstone and conglomerate (S-V)<BR>The hydrothermal activity has been divided into seven stages (I to VII). In the Stage I, just prior to form the lake, the acid hydrothermal activity, began, resulting in the silicified and argillized zones in the Horokapiribetsugawa Formation. Stage II, is characterized by the prevalence of hydrothermal explosion breccias on the land of the northern edge of the lake. As mixing of the ascending acid thermal water with the cold groundwater or interstitial water in the basal part of the lacustrine deposits and the argillized rocks of the Horokapiribetsugawa Formation just under the surface of unconformity, adularia formed in sandstone and argillized tuff breccia with kaolin minerals as an alteration product. In the Stages III and V, the hydrothermal activity increased and silica was deposited on the land and/or on the bottom of the lake resulted in silica sinter, thin, bedded siliceous deposit and siliceous complex deposit. Stages IV and VI-1 are similar to Stage II. It may be inferred that the hydrothermal activity was carried on the shore of the lake or the land. In the Stage IV-2, the silica sinter which deposited to a thickness of about 2 meters on land. The hydrothermal activity has silicified to the surrounding rocks and has formed vertical and horizontal quartz veins in these rocks. In the Stage Vll, the hydrothermal activity was attenuated.<BR>These spots of the hydrothermal activity moved from north to south associated with the gold mineralization.
著者
田近 淳 大津 直 乾 哲也
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.23-35, 2016
被引用文献数
12

北海道,厚幌1遺跡で発見されたマウンドについて,トレンチ壁面の観察・記載から地すべり移動体であることを示し,その運動過程を検討した.マウンドは,主に樽前d降下火砕堆積物(Ta-d:8-9ka)起源の軽石層・岩片層・腐植層から構成され,Ta-d上位の腐植層を覆い,樽前c降下火砕堆積物(2.5-3ka)に覆われる.縦断方向の壁面では,マウンド堆積物の下底に腐植およびそれとロームの混合層からなる非対称変形構造やデュープレックスが認められた.また,堆積物にはリストリック正断層に類似した非対称伸長構造が見られた.これらのセンスはマウンドが背後の山腹から移動して定置したことを示す.このような未固結で成層した火砕物の地すべりは地震動によって引き起こされたと考えられる.<sup>14</sup>C年代と層序関係から,このマウンドを形成した地すべりの発生は補正年代で約4,600yBP以降から約2,500yBP以前までの間である.この年代は石狩低地東縁断層帯馬追断層の最新活動期と重なる.
著者
横山 正 鈴木 創三 渡邉 泉 木村 園子ドロテア 大津 直子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島県二本松市の放射性Csによる農耕地汚染実態の解明と植物-微生物相互作用によるその除去の加速化を検証した。二本松の優占粘土の雲母は、有機酸で固定したそれを放出した。阿武隈川流域の河川堆積物のその濃度は、秋季に減少し春季に増加した。水田ではオタマジャクシでその濃度が高く、イノシシ筋肉中のそれは自然減衰以上の減少を示した。また、鳥類の精巣や卵巣にその蓄積が見られた。畑の可給態のそれは2013年には1~5%に減少したが、森林土壌では3~13%を示した。植物はPGPR接種で、その吸収量を増大させたが、雲母が固定した分を吸収できず有機酸を生成するカリウム溶解菌の併用で、植物の吸収量を増加させられた。
著者
大津 直子
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.32-45, 2015-11-15 (Released:2016-11-15)

本稿は、『猫と庄造と二人のをんな』の執筆と、当時取り組んでいた『源氏物語』の翻訳とが、相互に影響を及ぼしあう関係であることを明らかにした。この(猫と)作品は、「若菜上・下」巻、言い換えれば『源氏物語』第二部世界に影響を受けてきたと言われてきた。だが小説の執筆と源氏訳との進捗状況を確認すると、直接の影響は「帚木」巻から受けたと推察される。なぜなら雨夜の品定めにおける左馬頭と二人の女とのエピソードが小説の筋書きに反映されていると考えられたからである。さらに単行本収録段階で本文を削除した点についても言及した。一方、國學院大學蔵『谷崎源氏新訳草稿』から、小説の執筆が第二部世界の訳出に影響を及ぼした可能性についても言及した。
著者
加瀬 善洋 仁科 健二 川上 源太郎 林 圭一 髙清水 康博 廣瀬 亘 嵯峨山 積 高橋 良 渡邊 達也 輿水 健一 田近 淳 大津 直 卜部 厚志 岡崎 紀俊 深見 浩司 石丸 聡
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.11, pp.587-602, 2016-11-15 (Released:2017-02-20)
参考文献数
52
被引用文献数
3 4

北海道南西部奥尻島南端の低地における掘削調査から,泥炭層中に5枚のイベント堆積物を見出した.イベント堆積物の特徴は次の通りである; (1)陸方向および川から離れる方向へ薄層化・細粒化する,(2)級化層理を示す,(3)粒度組成の特徴は河床砂とは異なり,海浜砂に類似する,(4)粒子ファブリックおよび堆積構造から推定される古流向は概ね陸方向を示す,(5)渦鞭毛藻シストおよび底生有孔虫の有機質内膜が産出する,(6)海側前面に標高の高い沿岸砂丘が発達する閉塞した地形において,現海岸線から内陸へ最大450mほど離れた場所まで分布する.以上の地質・地形学的特徴に加え,過去に高潮が調査地域に浸水した記録は認められないことから,イベント堆積物は津波起源である可能性が極めて高い.14C年代測定結果と合わせて考えると,過去3000-4000年の間に1741年および1993年を含めて少なくとも6回の津波が発生しているものと考えられる.
著者
田近 淳 小板橋 重一 大津 直 廣瀬 亘 川井 武志
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌
巻号頁・発行日
vol.113, pp.S51-S63, 2007
被引用文献数
1

石狩平野・夕張山地・富良野盆地を横断し,山麓に分布する変動地形を観察するとともに,夕張山地の大規模地すべり地形とその移動体を貫通したトンネルの見学を行なう.石狩低地東縁断層帯では,ブラインドスラストが形成した段丘面の緩やかな傾動や撓曲変形を観察する.断層帯周辺は縄文時代以降の遺跡の密集地帯であり,発掘により多くの地震性地すべりの痕跡が発見されている.それらも観察できるかもしれない.富良野断層帯では盆地の両側に分布する断層崖や地形面の傾動を観察するとともに,傾斜した十勝火砕流堆積物とこれを覆う砂礫層や断層の剥ぎ取り標本を観察する.一方,両断層帯に挟まれた夕張山地の蛇紋岩や白亜系蝦夷累層群・新第三系の分布域には大規模な地すべり地形が分布する.道道夕張新得線赤岩トンネルは蛇紋岩と付加体構成岩類からなる大規模地すべり移動体を貫くトンネルである.本コースは,活断層・地すべり・トンネルなど,変化に富む巡検となっている.現地での様々な議論を期待する.
著者
田近 淳 小板橋 重一 大津 直 廣瀬 亘 川井 武志
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.Supplement, pp.S51-S63, 2007 (Released:2009-01-27)
参考文献数
43
被引用文献数
1

石狩平野・夕張山地・富良野盆地を横断し,山麓に分布する変動地形を観察するとともに,夕張山地の大規模地すべり地形とその移動体を貫通したトンネルの見学を行なう.石狩低地東縁断層帯では,ブラインドスラストが形成した段丘面の緩やかな傾動や撓曲変形を観察する.断層帯周辺は縄文時代以降の遺跡の密集地帯であり,発掘により多くの地震性地すべりの痕跡が発見されている.それらも観察できるかもしれない.富良野断層帯では盆地の両側に分布する断層崖や地形面の傾動を観察するとともに,傾斜した十勝火砕流堆積物とこれを覆う砂礫層や断層の剥ぎ取り標本を観察する.一方,両断層帯に挟まれた夕張山地の蛇紋岩や白亜系蝦夷累層群・新第三系の分布域には大規模な地すべり地形が分布する.道道夕張新得線赤岩トンネルは蛇紋岩と付加体構成岩類からなる大規模地すべり移動体を貫くトンネルである.本コースは,活断層・地すべり・トンネルなど,変化に富む巡検となっている.現地での様々な議論を期待する.
著者
大津 直子
出版者
白百合女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

最終年度にあたる今年、漸く谷崎の創作と『源氏物語』の翻訳とがどのように関わるのかという問題を、第一の訳〈旧訳〉を手掛けていた三年半の間で執筆した唯一の小説、『猫と庄造と二人のをんな』の中から検証した。現在は投稿・査読中であるため、詳細は省くが、三年かけてようやく谷崎が三度にわたり『源氏物語』を訳し続けたことの意義について論じるという入り口に立ったことになる。研究員着任直後に。中古文学の手法からのアプローチが作家の翻訳の検証に必ずしも有効に機能しないことが判明したため、より合理的に目的を遂行できるよう、谷崎の創作との連関を検証する方向に研究計画を変更し、創作と翻訳との連関を、國學院大學蔵『谷崎潤一郎新訳 源氏物語』草稿から発見するいう成果を得た。