著者
木戸 博 Chen Ye 山田 博司 奥村 裕司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.45-53, 2003 (Released:2003-06-24)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

インフルエンザウイルスの生体内増殖に個体由来のトリプシン型プロテアーゼが必須で,ウイルスの感染性発現の決定因子になっている.最近このプロテアーゼ群の解明が進み,気道の分泌型プロテアーゼのトリプターゼクララ,ミニプラスミン,異所性肺トリプシン,膜結合型トリプシン型プロテアーゼ群が相次いで同定された.これらのプロテアーゼはそれぞれ局在を異にするだけでなく,ウイルス亜系によってプロテアーゼとの親和性を異にして,ウイルスの増殖部位と臨床症状を決めている.一方これらのプロテアーゼ群に対する生体由来の阻害物質の粘液プロテアーゼインヒビターや肺サーファクタントが明らかとなり,合わせて個体のウイルス感染感受性を決める重要な因子となっている.小児のインフルエンザ感染では,aspirin,diclophenac sodium服用時のライ症候群や,解熱剤を服用していない患者でも見られる急速な脳浮腫を主症状とする致死性の高いインフルエンザ脳症が社会問題になっている.インフルエンザ脳症発症モデル動物を用いた我々の研究から,このインフルエンザ脳症の原因として,インフルエンザ感染と共に脳血管内皮細胞で急速に増加するミニプラスミンが,血液脳関門の障害と血管内皮細胞でのウイルス増殖に,直接関与していることが明らかとなってきた.さらにミニプラスミンの血管内皮での蓄積を裏付けるミニプラスミンやプラスミンのレセプターが,発症感受性の高い動物の血管内皮で見いだされた.これらのことからインフルエンザ脳症は,発症感受性遺伝子,発症感受性因子の検索に研究の焦点が絞られてきた.本総説では,我々の研究を中心に最近の知見を紹介する.
著者
石川 哲郎 三浦 瑠菜 田邉 徹 増田 義男 矢倉 浅黄 阿部 修久 髙津戸 啓介 奥村 裕
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
pp.22-00044, (Released:2023-07-07)
参考文献数
36

長期モニタリングデータを用いて,震災前後で仙台湾の水質環境(水温,塩分,DO,栄養塩類)に変化が生じているか検討した。震災後,震災前と比べ,栄養塩類とDOは低下し,水温と塩分は上昇する傾向が認められた。震災後の栄養塩類(DINとDIP)の減少は底層で大きく,春季に栄養塩に富む親潮系水の波及が減少した一方で栄養塩が少ない黒潮系水が波及するようになった影響や,震災で生じた底質の変化による夏季から秋季の底質からの栄養塩類の溶出の減少が要因として考えられた。
著者
三木 芳晃 塚本 啓介 奥村 裕英 半崎 隼人 安井 良則 松元 加奈 森田 邦彦 萱野 勇一郎
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.349-354, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
4

There are few reports regarding the optimal decomposition condition of the antimicrobial agent. We therefore conducted a questionnaire about the decomposition operation of the antimicrobial agent vial preparation for nurses in Osaka Saiseikai Nakatsu Hospital. Furthermore, the optimal dissolution conditions for “Zosyn ® IV for intravenous injection 4.5 (tazobactam/piperacillin; TAZ/PIPC)” were examined. As a result of the questionnaire survey, most nurses selected a syringe of 10 mL for formulations that are easy to dissolve while, for difficult to dissolve formulations, answers were split between 10 mL and 20 mL. The shaking time of vials ranged from under 5 seconds to under 30 seconds for the soluble formulations and from under 5 seconds to more than 1 minute for the difficult to dissolve formulations. We set each decomposition condition from the questionnaire results and examined the optimal condition, which accorded with the clinical settings in the decomposition operation of TAZ/PIPC. As a result of having examined the decomposition condition from the absorbance of each complete decomposition preparation of TAZ/PIPC, it was found that more than 93% of dissolution was carried out with the injection of saline at 15 mL and the shaking time of 10 or 20 seconds, or the injection of saline at 20 mL and the shaking time of 10 seconds. If the injection volume and the shaking time are less than these conditions, residual drugs are found in the vials.
著者
奥村 裕一
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.292-298, 1997-12-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13

伝統医学としての日本鍼灸を位置づけ、さらには現代日本における多様な病に対処していく上で古流派の研究は欠かせないものである。室町期以後、徐々に日本的な展開がなされ、日本の風土や民族性にあわせたものが開花していくこととなった。その中でも日本が世界にアピールできるものとして夢分流の腹診や腹部打鍼術などがある。そこで今回、腹診および腹部刺鍼を中心に各種古流派の見解を調査するとともに、多くのものに共通して重視される観点をさぐった。その結果、腹診の診断的意義として人体における上下左右の気血の偏在を察知するに適したものであり、腹部刺鍼においても膀を中心として上下左右の調和をはかるよう工夫が必要であることが明らかとなった。
著者
奥村 裕一 米山 知宏
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.104-115, 2014

Open Government is now a popular political movement in the world since Obama administration announced "Open Government Initiative". We examine how the open government and it's affiliation, open data policy are spreading world-wide. Then we compare the open government and open data policy. We propose the concept of Open Governance which expands open government in two ways. First, open governance changes positions of citizens to be a real master in the public sphere, traditionally government has been and still now government behaves as a lord. Second, it includes legislative branch in the government as well as administrative branch. And we show a maturity model for open governance. In both open government and open governance system, digital technology including Internet and Social media plays a vital infrastructural role.
著者
奥村 裕一 米山 知宏
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.104-115, 2014-08-04 (Released:2017-08-07)

Open Government is now a popular political movement in the world since Obama administration announced "Open Government Initiative". We examine how the open government and it's affiliation, open data policy are spreading world-wide. Then we compare the open government and open data policy. We propose the concept of Open Governance which expands open government in two ways. First, open governance changes positions of citizens to be a real master in the public sphere, traditionally government has been and still now government behaves as a lord. Second, it includes legislative branch in the government as well as administrative branch. And we show a maturity model for open governance. In both open government and open governance system, digital technology including Internet and Social media plays a vital infrastructural role.
著者
森田 勝弘 木内 里美 奥村 裕一 有馬 昌宏 島田 達巳 重木 昭信 土肥 亮一
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2010年春季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.8, 2010 (Released:2010-06-14)

経営情報学会では、2008年4月より「官のシステム」特設研究部会を立ち上げ、2年間にわたり我が国の政府機関及び地方自治体における情報システムのガバナンス問題に焦点を当て、現状の問題点と今後の在り方についての研究を進めてきた。本セッションでは、その研究部会メンバー有志によるプレゼンテーションとパネル討論を通じて、電子政府・自治体の課題を整理し、提言をまとめる。
著者
宮園 章 奥村 裕弥
出版者
北海道立水産試験場
雑誌
北海道立水産試験場研究報告 (ISSN:09146830)
巻号頁・発行日
no.73, pp.31-34, 2008-03

2006年9月に噴火湾の表面泥中の硫化物(AVS-S)の水平分布を調査した。硫化物濃度(>0.2mg-S/g-乾泥)の高い泥は湾奥部の水深70-90mの等深線の間に分布した。高い硫化物濃度は有機物量の多いエリア(強熱減量>10%)にみられた。1979年の調査結果と比べると、硫化物量が0.2mg-S/g-乾泥を越えたエリアと強熱減量が2.0%以上のエリアはともに半分程度の面積に縮小していた。これらの結果は前田らによって提唱されている仮説「過剰に養殖されているホタテガイの糞粒は噴火湾の底質悪化を招いている」を支持しない。
著者
木戸 博 Chen Ye 山田 博司 奥村 裕司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.122, no.1, pp.45-53, 2003-07-01
被引用文献数
2

インフルエンザウイルスの生体内増殖に個体由来のトリプシン型プロテアーゼが必須で,ウイルスの感染性発現の決定因子になっている.最近このプロテアーゼ群の解明が進み,気道の分泌型プロテアーゼのトリプターゼクララ,ミニプラスミン,異所性肺トリプシン,膜結合型トリプシン型プロテアーゼ群が相次いで同定された.これらのプロテアーゼはそれぞれ局在を異にするだけでなく,ウイルス亜系によってプロテアーゼとの親和性を異にして,ウイルスの増殖部位と臨床症状を決めている.一方これらのプロテアーゼ群に対する生体由来の阻害物質の粘液プロテアーゼインヒビターや肺サーファクタントが明らかとなり,合わせて個体のウイルス感染感受性を決める重要な因子となっている.小児のインフルエンザ感染では,aspirin,diclophenac sodium服用時のライ症候群や,解熱剤を服用していない患者でも見られる急速な脳浮腫を主症状とする致死性の高いインフルエンザ脳症が社会問題になっている.インフルエンザ脳症発症モデル動物を用いた我々の研究から,このインフルエンザ脳症の原因として,インフルエンザ感染と共に脳血管内皮細胞で急速に増加するミニプラスミンが,血液脳関門の障害と血管内皮細胞でのウイルス増殖に,直接関与していることが明らかとなってきた.さらにミニプラスミンの血管内皮での蓄積を裏付けるミニプラスミンやプラスミンのレセプターが,発症感受性の高い動物の血管内皮で見いだされた.これらのことからインフルエンザ脳症は,発症感受性遺伝子,発症感受性因子の検索に研究の焦点が絞られてきた.本総説では,我々の研究を中心に最近の知見を紹介する.<br>
著者
奥村 裕 金指 美帆 金澤 佑治 藤田 直人 近藤 浩代 藤野 英己
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2069, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】廃用性筋萎縮が起こると筋線維毎の毛細血管数や毛細血管径が減少する。このような毛細血管の退行には活性酸素種が関与していると考えられている。活性酸素により毛細血管の退行が生じれば、骨格筋細胞の代謝活性に影響を与える。一方、筋萎縮に伴う骨格筋毛細血管の退行に対する酸化ストレスを軽減させる方法や毛細血管退行と骨格筋細胞の代謝活性を考慮した研究はみられない。そこで、本研究では骨格筋線維と毛細血管のクロストークに焦点をあて、抗酸化力の高い抗酸化物質摂取による毛細血管への影響と骨格筋細胞の代謝という観点から、廃用性筋萎縮筋の筋線維タイプ別の毛細血管及び酸化的リン酸化系の代謝変化について検討した。【方法】12週齢のWistar系雄ラットを対照群(Cont群)、栄養サポートのみを行った群(CA群)、一週間の後肢懸垂を行った群(HU群)、及び後肢懸垂期間中に栄養サポートを行った群(HA群)の4群に区分した。栄養サポートにはアスタキサンチン(富士化学工業株式会社より提供)を毎日50mg/kgを1日2回経口摂取させた。実験期間終了後、足底筋を摘出し、急速凍結して保存した。摘出した筋試料は10μm厚に薄切し、ミオシンATPase染色(pH4.3)、アルカリフォスファターゼ(AP)染色、コハク酸脱水素酵素(SDH)染色後に光学顕微鏡で観察を行った。ATPase染色像を用いて足底筋を遅筋線維の多い深層部と速筋線維の多い浅層部に分別し、筋線維毎の毛細血管数の割合、単一筋線維の周囲の毛細血管数、筋線維のSDH活性を計測した。統計処理は一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を行い、有意水準は5%未満とした。【説明と同意】全ての実験は所属施設における動物実験に関する指針に従い、動物実験委員会の許可を得たうえで実施した。【結果】一週間の後肢懸垂によりラット足底筋の筋湿重量は12%減少した。また、後肢懸垂期間中にアスタキサンチンを摂取したHA群においても同様に減少した。一方、深層部における筋線維毎の毛細血管数は、HU群ではCont群に比べ有意に減少を認めた。しかし、アスタキサンチンを経口摂取したCA群及びHA群は、それぞれCont群、HU群と比較して有意な増加を認めた。また、浅層部では4群間における有意な差は認められず、後肢懸垂の影響、アスタキサンチンの摂取有無に関係はみられなかった。また、単一筋線維周囲の毛細血管数は、遅筋線維ではCont群に比べHU群では有意な減少を認めたが、アスタキサンチンを摂取したCA群及びHA群では、単一筋線維周囲の毛細血管数の有意な増加を認めた。一方、速筋線維は4群間における有意な差は認められなかった。SDH活性をみると深層部の遅筋線維はCont群に比べHU群では有意に減少を認め、アスタキサンチンを摂取したCA群及びHA群では有意に増加を認めた。これらの結果からアスタキサンチンは遅筋線維のSDH活性を増加させ、廃用に伴う遅筋周囲の毛細血管退行を減衰させるものと考えられる。【考察】一週間の後肢懸垂により足底筋の深層部では、筋線維毎の毛細血管数や遅筋線維周囲の毛細血管数の減少、SDH活性の低下を認めた。これらの結果は、後肢懸垂で筋活動が低下し、筋細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝が低下したために生じる現象であると考えられる。廃用性筋萎縮により骨格筋内の活性酸素種産生が増加するが、アスタキサンチン摂取により活性酸素種の産生を抑制し、酸化ストレスを減少できるとの報告がみられる。(Wolf, 2010)。本研究では、足底筋の深層部でアスタキサンチンを摂取したCA群及びHA群では、筋線維毎の毛細血管数や単一筋線維周囲の毛細血管数の有意な増加を認めた。また、遅筋線維でSDH活性の増加を認めた。これはアスタキサンチン摂取により活性酸素種が減少し、骨格筋線維周囲の毛細血管退行を防止できたために骨格筋細胞の代謝が阻害されなかったものと考えられる。また、その裏付けとして毛細血管の退行を抑制できた遅筋線維ではSDH活性が増加した。本研究では、速筋線維周囲の毛細血管には変化がなく、遅筋線維周囲で廃用の影響や毛細血管の変化が観察された。この結果は、遅筋線維の方が酸化的リン酸化による代謝に依存して、毛細血管からの酸素の供給に影響されることに起因するものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】骨格筋における毛細血管ネットワークは骨格筋細胞への酸素供給や糖・代謝産物輸送に重要である。骨格筋細胞の環境を最適化するために毛細血管の役割は必要不可欠である。また、本研究から、抗酸化物質を用いた栄養サポートは骨格筋の毛細血管退行に予防的な効果を示した。長期臥床などに伴う筋力増強運動などを実施する際に栄養面でのサポートを組み合わせて行っていく必要性があると考える。