著者
谷口 宏充 栗谷 豪 宮本 毅 長瀬 敏郎 菅野 均志 後藤 章夫 中川 光弘 伴 雅雄 成澤 勝 中川 光弘 奥野 充 伴 雅雄 前野 深 嶋野 岳人 板谷 徹丸 安田 喜憲 植木 貞人 古畑 徹 小嶋 芳孝
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

頭山およびそれを包括する蓋馬溶岩台地に関して、現地調査、衛星データー解析、採集した資料の化学分析・年代分析、国内の関連地層の調査・年代分析などの手法を用いて、白頭山10世紀巨大噴火の概要、白頭山及び蓋馬溶岩台地の火山学的な実態を明らかにしようとした。開始してから1年後に北朝鮮のミサイル問題・核開発問題などの諸問題が発生し、現地での調査や研究者との交流などの実施が徐々に困難になっていった。そのため、すでに収集していた試料の分析、衛星データーの解析及び国内での調査に研究の主力を移し、可能な限りの成果を得ようとした。その結果、近年発生している白頭山における地震多発とマグマ活動との関係、存在は知られているが分布や内容が全く未知である蓋馬溶岩台地の概要が明らかになり、更に、地下におけるマグマの成因についても一定の結論を得た。混乱状態にある白頭山10世紀噴火の年代問題をふくめ、また、北朝鮮からの論文を含め、研究成果は12編の論文として論文集にまとめられつつある。
著者
奥野 充 小林 哲夫
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.113-117, 1994
被引用文献数
1 4 8

種子島には阿多 (Ata), 鬼界葛原 (K-Tz), 姶良Tn(AT)などの後期更新世テフラが分布する. 長岡 (1988) は, K-TzとATの間に種I火山灰, 種II軽石, 種III火山灰を記載している. 筆者らは, 種IIの上位に2枚の火山灰層を認めたので, これらを下位から種III火山灰, 種IV火山灰と呼ぶ. 種Iは橙色の細粒降下火山灰, 種IIは淡黄褐色の降下軽石であり, 両者とも種子島北部に分布する. 種III火山灰と種IV火山灰は, 黄褐色~橙色の細粒降下火山灰で, どちらも種子島全域に分布する. 噴出年代は, K-TzとATとの層位関係から, 種Iと種IIが65ka, 種IIIが45ka, 種IVが35kaと推定される. 斑晶鉱物の組合せ, 斜方輝石(γ)の屈折率および層位から, 種IIは阿多カルデラ周辺に分布する唐山スコリア (Nagaoka, 1988) に対比される.
著者
奥野 充
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.225-236, 2002-08-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
91
被引用文献数
24 71

南九州には,最近約3万年間に噴出したテフラが数多く分布している.これらのテフラの噴出年代の決定方法を,(a)古記録との対比,(b)暦年較正曲線での位置,(c)14C年代値の暦年較正曲線への投影,(d)層位による比例配分の4つに区分して,網羅的に整理した.広域テフラである鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)および姶良Tnテフラ(AT)の噴出年代は,暦年較正曲線での位置から,それぞれ7.3cal ka BP,29cal ka BPと判断される.これらの噴火の前後の休止期間は1,000~3,000年程度と見積もられ,とくに長い時間間隔ではない.桜島薩摩テフラ(Sz-S/Pl4),池田湖テフラ(Ik)および霧島御池テフラ(Kr-M)は南九州に広く分布するテフラであり,層位学・編年学的に重要である.これらの噴出年代は,それぞれ約13cal ka BP,約6.4cal ka BP,約4.6cal ka BPである.K-AhとIkの時間間隙はおよそ1,000年と考えられるが,より正確に見積もるためにはIkの暦年較正曲線での位置を確定する必要がある.
著者
奥野 充
出版者
福岡大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

過去の火山噴火は,噴火堆積物と火山地形に記録されている。この研究において,(1)地形図や空中写真による地形観察,(2)地形・地質学的調査および試料採取,(3)放射性炭素年代測定などから,高分解能な噴火史を編年することを試みた。調査対象としては,大雪山旭岳,北八甲田,焼岳,由布岳,霧島,姶良カルデラなど,北海道から九州までの諸火山である。まず,テフラ直下の腐植土の放射性炭素年代がテフラの噴出年代を示すことを利用してこれらの火山の高分解能な噴火史を構築した。最近約1万年間の完新世では,放射性炭素年代から較正された暦年代を用いて議論する必要があり,ウイグルマッチング法による年代推定が有効であると考えられる。そこで,テフラを挟在する泥炭層を測定試料として,この方法が適用可能であるかも検討した。霧島火山についての予察的結果では,腐植土から推定された年代とも良く一致しており,その適用の可能性が示唆された。また,大雪山旭岳では,泥炭層中に4枚のガラス質火山灰層を識別し,EPMAによる火山ガラスの化学組成からB-Tmなどの広域テフラに対比した。テフラと同時に泥炭層も採取しており,この火山でも泥炭層の放射性炭素年代を用いたウイグルマッチング法を検討する予定である。この研究で確立された噴火史の高分解能な編年は,火山噴火の中・長期予測の基礎資料としてだけでなく,考古遺跡の編年や古環境復元など,隣接した分野の研究にも活用されることが期待される。
著者
森脇 広 奥野 充 大平 明夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

南九州の鹿児島湾を構成する姶良カルデラ周辺の臨海平野には完新世海成段丘が分布する.これらの段丘面の編年と高度分布,さらに,露頭調査とボーリング掘削によって得られた構成堆積物の古環境的解析を行い,旧海水準の高度分布を明らかにし,姶良カルデラを中心とした鹿児島湾周辺の第四紀地殻変動を検討した.編年の方法は,テフラと^<14> C年代による.その結果,これまで示唆されてきた姶良カルデラを中心とした完新世の曲隆がさらに確かなものとなった.これは,姶良カルデラの火山活動と関連していると考えられ,桜島火山などの将来の噴火を評価する基礎資料として活用できると考える.