著者
前野 深 中田 節也 吉本 充宏 嶋野 岳人 Zaennudin Akhmad Prambada Oktory
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

スメル火山はインドネシアの中でも最も活動的な火山の一つであるが,噴火履歴については不明な点が多く,活動が活発化した際の推移予測のための基礎データは十分に揃っていない。近年では5-7年毎に比較的規模の大きな火砕流を伴う噴火が発生しているが,過去には噴煙柱を形成する大規模な噴火も発生している。また1884年以降,大規模なラハールが少なくとも5回発生しており,このうち1909年噴火では東方35 kmに位置するルマジャン市が甚大な災害を被った経緯もあり,周辺地域では火山災害も懸念される。本研究では地質学的・岩石学的解析,年代測定,文献調査をもとにスメル火山の噴火履歴および噴火様式・推移の特徴を明らかにし,噴火推移予測のための事象系統樹を作成することを目的としている。スメル火山の主に南東から南西麓,北麓で行った地質調査の結果,山頂または山腹からの比較的規模の大きな爆発的噴火に由来する降下火砕堆積物と火砕流堆積物が複数存在することやそれらの発生年代が明らかになった。11世紀以降現在までは山頂からの安山岩質マグマによる噴火が主体で,このうち15-16世紀頃の活動では南西側に厚い降下スコリアを堆積させ,一連の活動により発生した火砕流がこの地域の遺跡を埋没させた。この時期の堆積物の層序構築には,13世紀のリンジャニ火山噴火に伴う広域テフラも年代指標として重要な役割を果たしている。一方,山腹噴火を示す地形や堆積物が多数存在するが,これらは3-11世紀頃の玄武岩質マグマによる活動によるもので,溶岩流出に続いて爆発的噴火へ移行し山腹でも火砕丘を形成する活動があったことがわかった。またこの時期には山体北側の火砕丘や溶岩流の活動もあったと考えられる。3世紀以前には安山岩質マグマによる爆発的噴火が山頂から発生した。山頂噴火は少なくとも過去およそ2000年間は安山岩質マグマに限られる。このようにスメル火山の活動は,19世紀以前には現在の活動を大きく上回る規模の噴火が繰り返し発生したこと,山腹噴火が噴火様式の重要な一形態であること,安山岩質マグマ(SiO2 56-61 wt.%)と玄武岩質マグマ(SiO2 46-53 wt.%)のバイモーダルな活動により特徴付けられることなどが明らかになった。一方,山体形状や火口地形,溶岩流/ドームの規模の把握は,火砕流の規模やその流下方向を推定する上で重要であるため,衛星画像やドローンによる画像・映像をもとに現在の山体地形の特徴や火口状況を把握し,また過去の火口位置とその移動方向や開口方向の変化についても整理を進めている。噴火事象系統樹は,近年の山頂での繰り返し噴火に加えて,地質学的解析から明らかにした過去の大規模噴火や火口形状や位置についても考慮したものにする必要がある。
著者
下司 信夫 嶋野 岳人 長井 雅史 中田 節也
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.419-434, 2002
参考文献数
36
被引用文献数
6

Erupted magma of the 2000 eruption of the Miyakejima volcano changed from basaltic andesite to basalt during the caldera formation, from aphyric basaltic andesite with SiO<sub>2</sub>=54 wt.% to plagioclase-phyric basalt with SiO<sub>2</sub>=51.5 wt.%. Whole-rock compositions of the basaltic andesite of the June and July eruptions are plotted on the extension of the temporal variation of the previous eruptive materials, suggesting that the andesitic magma erupted in June and July eruptions were driven from the magma system worked for the last 500 years. Petrological character of the basalt in the eruptive materials of August, by contrast, is different from the previous lavas of the Miyakejima volcano. This shows that a new basaltic magma ascended to the shallow magma system after the caldera collapse. Identical ratio of the incompatible elements among the eruptive materials of the 2000 eruption and the recent eruptions suggests that they were driven from a common parental magma.
著者
谷口 宏充 栗谷 豪 宮本 毅 長瀬 敏郎 菅野 均志 後藤 章夫 中川 光弘 伴 雅雄 成澤 勝 中川 光弘 奥野 充 伴 雅雄 前野 深 嶋野 岳人 板谷 徹丸 安田 喜憲 植木 貞人 古畑 徹 小嶋 芳孝
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

頭山およびそれを包括する蓋馬溶岩台地に関して、現地調査、衛星データー解析、採集した資料の化学分析・年代分析、国内の関連地層の調査・年代分析などの手法を用いて、白頭山10世紀巨大噴火の概要、白頭山及び蓋馬溶岩台地の火山学的な実態を明らかにしようとした。開始してから1年後に北朝鮮のミサイル問題・核開発問題などの諸問題が発生し、現地での調査や研究者との交流などの実施が徐々に困難になっていった。そのため、すでに収集していた試料の分析、衛星データーの解析及び国内での調査に研究の主力を移し、可能な限りの成果を得ようとした。その結果、近年発生している白頭山における地震多発とマグマ活動との関係、存在は知られているが分布や内容が全く未知である蓋馬溶岩台地の概要が明らかになり、更に、地下におけるマグマの成因についても一定の結論を得た。混乱状態にある白頭山10世紀噴火の年代問題をふくめ、また、北朝鮮からの論文を含め、研究成果は12編の論文として論文集にまとめられつつある。
著者
中田 節也 長井 雅史 安田 敦 嶋野 岳人 下司 信夫 大野 希一 秋政 貴子 金子 隆之 藤井 敏嗣
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.168-180, 2001-04-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
18
被引用文献数
41 43

The 2000 eruption of Miyakejima volcano started with a submarine eruption of basaltic andesite on the morning of June 27, which occurred following earthquake swarms during the previous night. The main phase of the summit eruption began, being associated by a sudden subsidence of the summit area on July 8. Continuous collapsing of the summit area that had continued until midAugust, resulted in the formation of a caldera with the volume of about 0.6 km3. Phreatic (or phreatomagmatic) eruptions took places during the growth of the caldera, although the total volume of eruptives was about 11 million m3. which is smaller by one magnitude than the caldera volume. Eruptives are enriched with hydrothermally altered materials such as smectite and kaolinite.The manner of the first collapse suggests the existence of a large open space under the summit just before the subsidence. Judging from geophysical observation results, the open space may have ascended in the manner of stoping. Successive formation of open spaces at deeper levels is likely to have caused the continuous collapse of the summit area. These open spaces may have been generated by magma's migration from under Miyakejima to the west. The migration is considered to have continued by August 18.It is likely that an inflow of underground water to the open spaces generated a hydrothermal system, where the open spaces acted as a sort of pressure cooker that built up overpressure of eruptions. The hydrothermal system was broken by the largest eruption on August 18, and the eruption column rose about 15 km above the summit. A boiling-over type of eruption occurred on August 29, whereby sufficient overpressure of steam was not built up, resulting in the generation of low-temperature ash cloud surges moving very slowly.