著者
宇都宮 聡
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.73, pp.23-35, 2019-03-31

日本国内で長頚竜類化石の発見事例は多いが,その多くが北海道・東北地域から産出した標本で占められている.今回報告する標本は,長頚竜としては九州地域から初めて産出した化石であり,鹿児島県獅子島の御所浦層群弊串層(上部白亜系セノマニアン階下部)から産出した.前頭骨と底後頭骨,保存状態の良い下顎の大部分,舌骨,環椎・軸椎複合体を含む頚椎などが保存されている.歯表面の隆線状の装飾や,頚椎が細長く頚肋骨頭が一つであることなどの特徴は,本標本がエラスモサウルス科であることを示している.大部分の椎骨で椎弓が椎体から分離していることから,本個体は Brown( 1981) の定義による“ juvenile”(幼体)と判断される.現時点で.獅子島標本は日本(東アジア)最古のエラスモサウルス科の標本であり,白亜紀後期初頭(セノマニアン期最前期)の太平洋北西部にエラスモサウルス科長頚竜が存在していたことを示す重要な標本である.
著者
宇都宮 聡 岩田 孟 川元 侑治 金子 誠 仲松 有紀 大貫 敏彦 難波 謙二
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2012年度日本地球化学会第59回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.37, 2012 (Released:2012-09-01)

本研究では、環境中に放出された長崎型原子爆弾由来Puの化学状態、サイズ依存性を調べ、Puの環境中における化学種変化を分析した結果、約60 %のPuが有機物と結合した状態で、約30 %がPu酸化物様の難溶解性核種として存在することが示された。長崎西山地区表層環境下においてPu移行は起こりにくいことが分かり、環境中に存在する有機物がPu化学種に重大な影響を及ぼすことが示唆された。さらに、福島における土壌中Puの定量、分布を調査した福島第一原発から3 kmの地点におけるPuの放射能濃度と同位体放射能比は、238Pu=0.034~0.209 Bq/kg、239+240Pu=0,08~0.11 Bq /kg、238Pu / 239+240Pu=0.319~2.60であった。
著者
宇都宮 聡 大貫 敏彦
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では福島第一原発から放出された高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)の簡易定量法を福島県内の土壌に適用して、CsMPの個数と放射能寄与率(RF)を示しました。原発付近では個数が多く低RF値で、水溶性セシウムの寄与が大きくなりました。北西方向の汚染地帯にはCsMPと水溶性セシウムの寄与が高く、これは9つの主要なプルームのうちプルーム3と8の軌跡に相当します。一方で南西方向では放射能は低いですが、RF値は80%程度と高くなりました。これはプルーム2の軌跡に相当します。これからCsMPは14日~15日の短い期間に形成され放出されたこと、初期は3号機からCsMPが放出されたと推定されました。
著者
田中 万也 高橋 嘉夫 福士 圭介 宇都宮 聡
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.169-171, 2015-09-25 (Released:2015-12-25)

Many studies have been carried out since the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant (FDNPP) accident. Here, we would like to introduce the special issue on the FDNPP accident which includes contributions from various fields covering aerosols, soil, forest, river, ocean and application of new analytical technique to samples collected in Fukushima.
著者
伊藤 謙 宇都宮 聡 小原 正顕 塚腰 実 渡辺 克典 福田 舞子 廣川 和花 髙橋 京子 上田 貴洋 橋爪 節也 江口 太郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = Nihon Kenkyū (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.157-167, 2015-03-31

日本では江戸時代、「奇石」趣味が、本草学者だけでなく民間にも広く浸透した。これは、特徴的な形態や性質を有する石についての興味の総称といえ、地質・鉱物・古生物学的な側面だけでなく、医薬・芸術の側面をも含む、多岐にわたる分野が融合したものであった。また木内石亭、木村蒹葭堂および平賀源内に代表される民間の蒐集家を中心に、奇石について活発に研究が行われた。しかし、明治期の西洋地質学導入以降、和田維四郎に代表される職業研究者たちによって奇石趣味は前近代的なものとして否定され、石の有する地質・古生物・鉱物学的な側面のみが、研究対象にされるようになった。職業研究者としての古生物学者たちにより、国内で産出する化石の研究が開始されて以降、現在にいたるまで、日本の地質学・古生物学史については、比較的多くの資料が編纂されているが、一般市民への地質学や古生物学的知識の普及度合いや民間研究者の活動についての史学的考察はほぼ皆無であり、検討の余地は大きい。さらに、地質学・古生物学的資料は、耐久性が他の歴史資料と比べてきわめて高く、蒐集当時の標本を現在においても直接再検討することができる貴重な手がかりとなり得る。本研究では、適塾の卒業生をも輩出した医家の家系であり、医業の傍ら、在野の知識人としても活躍した梅谷亨が青年期に蒐集した地質標本に着目した。これらの標本は、化石および岩石で構成されているが、今回は化石について検討を行った。古生物学の専門家による詳細な鑑定の結果、各化石標本が同定され、産地が推定された。その中には古生物学史上重要な産地として知られる地域由来のものが見出された。特に、pravitoceras sigmoidale Yabe, 1902(プラビトセラス)は、矢部長克によって記載された、本邦のみから産出する異常巻きアンモナイトであり、本種である可能性が高い化石標本が梅谷亨標本群に含まれていること、また記録されていた採集年が、本種の記載年の僅か3年後であることは注目に値する。これは、当時の日本の民間人に近代古生物学の知識が普及していた可能性を強く示唆するものといえよう。
著者
坂巻 景子 岩田 孟 宇都宮 聡
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 (ISSN:13486543)
巻号頁・発行日
vol.2010, 2010-09-23

放射性廃棄物処分において、ベントナイトは処分場特有の化学的条件下で変質し、バリア機能を失うことが懸念されている。本研究では高アルカリ条件下、硝酸ナトリウム存在下でベントナイトの変質挙動を明らかにすることを目的とした。実験は鉄片を埋めた圧縮ベントナイトをCa(OH)2飽和の模擬地下水と5.0 mol/L硝酸ナトリウム溶液に浸し、60度で7-21日間変質させた。分析はICP-AES、SEM、TEM、XAFSを用いた。分析から、鉄含有鉱物の生成や鉄ナノ粒子がベントナイト中に散在していることが明らかになった。また硝酸ナトリウムによってベントナイトは多孔質な物質に変化した。本実験に近い条件下で鉄ナノ粒子の生成が起きると、放射性廃棄物処分場において核種の拡散が促進される可能性があると考えられる。
著者
伊藤 謙 宇都宮 聡 小原 正顕 塚腰 実 渡辺 克典 福田 舞子 廣川 和花 髙橋 京子 上田 貴洋 橋爪 節也 江口 太郎
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.157-167, 2015-03

日本では江戸時代、「奇石」趣味が、本草学者だけでなく民間にも広く浸透した。これは、特徴的な形態や性質を有する石についての興味の総称といえ、地質・鉱物・古生物学的な側面だけでなく、医薬・芸術の側面をも含む、多岐にわたる分野が融合したものであった。また木内石亭、木村蒹葭堂および平賀源内に代表される民間の蒐集家を中心に、奇石について活発に研究が行われた。しかし、明治期の西洋地質学導入以降、和田維四郎に代表される職業研究者たちによって奇石趣味は前近代的なものとして否定され、石の有する地質・古生物・鉱物学的な側面のみが、研究対象にされるようになった。職業研究者としての古生物学者たちにより、国内で産出する化石の研究が開始されて以降、現在にいたるまで、日本の地質学・古生物学史については、比較的多くの資料が編纂されているが、一般市民への地質学や古生物学的知識の普及度合いや民間研究者の活動についての史学的考察はほぼ皆無であり、検討の余地は大きい。さらに、地質学・古生物学的資料は、耐久性が他の歴史資料と比べてきわめて高く、蒐集当時の標本を現在においても直接再検討することができる貴重な手がかりとなり得る。本研究では、適塾の卒業生をも輩出した医家の家系であり、医業の傍ら、在野の知識人としても活躍した梅谷亨が青年期に蒐集した地質標本に着目した。これらの標本は、化石および岩石で構成されているが、今回は化石について検討を行った。古生物学の専門家による詳細な鑑定の結果、各化石標本が同定され、産地が推定された。その中には古生物学史上重要な産地として知られる地域由来のものが見出された。特に、pravitoceras sigmoidale Yabe, 1902(プラビトセラス)は、矢部長克によって記載された、本邦のみから産出する異常巻きアンモナイトであり、本種である可能性が高い化石標本が梅谷亨標本群に含まれていること、また記録されていた採集年が、本種の記載年の僅か3年後であることは注目に値する。これは、当時の日本の民間人に近代古生物学の知識が普及していた可能性を強く示唆するものといえよう。
著者
古木 元気 井元 純平 落合 朝須美 山崎 信哉 難波 謙二 大貫 敏彦 Bernd Grambow Rodney C. Ewing 宇都宮 聡
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2016年度日本地球化学会第63回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.42, 2016 (Released:2016-11-09)

現行の環境中放射性Cs移行モデルに対する新たな因子として高濃度放射性Cs含有微粒子(CsMPs)の動態を調べた。福島県熊川河口堆積物、河川流域表層土壌から福島原発由来CsMPsを単離後、原子スケールで分析した結果、内部構造は他のCsMPsと同様にFe-Zn酸化物ナノ粒子の凝集体がSiO2のマトリックスに覆われていた。また、粒子内部からCsClおよびCsOHの内包物が同定された。河川流域と河口堆積物で同様の粒子が検出されたことから、CsMPsが表層水中を移行したことが示され、その後の海洋への流出が示唆された。