著者
津崎 実 入野 俊夫 堀川 順生 宮崎 謙一 牧 勝弘 竹島 千尋 大串 健吾 加藤 宏明 倉片 憲治 松井 淑恵
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究は加齢による「聴力」の変化について知覚・生理現象観察と計算モデルを構築を目的とした。従来ほとんど関心を集めていなかった加齢性ピッチ・シフト現象について,十分な数の幅広い年齢層の聴取者を用いて,その現象が確実に生じることを突きとめ,さらに同じ聴取者に対する聴力検査,耳音響放射検査,脳波の周波数追随反応との相関分析を実施した。並行実施した非線形圧縮特性,聴神経の位相固定性などへの加齢による変容の基礎検討を通して,ピッチ・シフトはこれらの要因の変容によっては説明困難であること示し,新規の聴覚モデルの提案に至った。
著者
宮崎 謙一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本,中国,ポーランド,ドイツ,アメリカの音楽専攻大学生を対象にして,絶対音感と相対音感のテストを行った。参加者は,絶対音感テストでは5オクターブにわたって提示された60音の個々の音の音高名を答えた。相対音感テストでは,調性を確定する2つの和音に続いて提示された2つのピアノ音の音程名,または最後の音の階名を答えた。日本の参加者は,絶対音感テストのスコアは優れていたが,相対音感テストのスコアは低かった。対照的にヨーロッパとアメリカの参加者では,絶対音感を持つものはほとんどいなかったが,相対音感テストでは高いスコアを上げるものが多かった。この結果は,日本における音楽教育の問題を示唆する。
著者
宮崎 謙一 佐々木 隆之
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.106-112, 1981-07-20 (Released:2010-07-16)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

To investigate the temporal course of the frequency characteristics of the response elicited in the auditory system, pure-tone masking patterns were obtained at several time positions relative to the onset or the offset of the masker. The simultaneous masking patterns obtained suggest that the shape of the response distribution remained almost unchanged during the masker, although they are less informative compared to the other conditions because of interaction effects between the masker and the probe. The forward masking data illustrate the decay course of the distribution and are believed to give more reliable informations as to the frequency selectivity of the auditory system. The backward masking data, however, fail to give any tenable suggestions. The phenomenon of the shift in the maximum-masking-frequency was observed in all conditions and its underlying mechanisms were discussed.
著者
宮崎 謙一 石井 玲子 大串 健吾
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.780-788, 1994-10-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

単独に提示された音の音楽的音高名を音高コンテクストとは無関係に絶対的に同定することができる絶対音感の能力は、従来から音楽に深い関わりを持つ能力とされてきた。しかし音楽が本質的に相対的音高関係の上に成り立つものであることを考えると、この絶対音感の能力が音楽にとってどのような意義を持つものであるかが問題となる。そこで、絶対音感を持つ音楽専攻の大学生が、相対的音高関係をどのように認知するかを調べる目的で実験を行った。絶対音感テストの結果から、被験者を3グループに分けた。実験課題は、音譜で視覚的に提示されたハ長調の7音メロディと、ハ長調、1/4音低いホ長調及び嬰ヘ長調の3通りのいずれかの調で聴覚的に提示された7音メロディとが旋律的に同じか違うかを判断することである。実験の結果、どのグループもハ長調でメロディが提示された場合に比べて他の調で提示された場合に正答率が低下し、反応時間も長くなるという結果が得られた。また、正確な絶対音感を持つグループでは、絶対音感と巧妙なストラテジを組み合わせて判断したものが多くみられた。これらの結果から、音楽的音高処理において絶対音感が持つ問題点について考察した。
著者
宮崎 謙一 石井 玲子 大串 健吾
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.780-788, 1994-10-01
被引用文献数
2 1

単独に提示された音の音楽的音高名を音高コンテクストとは無関係に絶対的に同定することができる絶対音感の能力は、従来から音楽に深い関わりを持つ能力とされてきた。しかし音楽が本質的に相対的音高関係の上に成り立つものであることを考えると、この絶対音感の能力が音楽にとってどのような意義を持つものであるかが問題となる。そこで、絶対音感を持つ音楽専攻の大学生が、相対的音高関係をどのように認知するかを調べる目的で実験を行った。絶対音感テストの結果から、被験者を3グループに分けた。実験課題は、音譜で視覚的に提示されたハ長調の7音メロディと、ハ長調、1/4音低いホ長調及び嬰ヘ長調の3通りのいずれかの調で聴覚的に提示された7音メロディとが旋律的に同じか違うかを判断することである。実験の結果、どのグループもハ長調でメロディが提示された場合に比べて他の調で提示された場合に正答率が低下し、反応時間も長くなるという結果が得られた。また、正確な絶対音感を持つグループでは、絶対音感と巧妙なストラテジを組み合わせて判断したものが多くみられた。これらの結果から、音楽的音高処理において絶対音感が持つ問題点について考察した。
著者
宮崎 謙一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

絶対音感は、単独に提示された音の音楽的音名を他の音を基準として比較することなしに答えることができる能力であるが、このような能力をこどもの頃に獲得すると、音高関係を処理する能力が十分に発達しないままにすぎてしまうという可能性がある。そこで、絶対音感保有者と非保有者のメロディの比較再認課題の遂行成績を比較する実験を、日本とポーランドの音楽専攻学生を被験者にして行った。被験者に、標準メロディをハ長調で記譜された楽譜の形で提示し、比較メロディを3通りの異なる調で聴覚的に提示して、これらが同じか違うかという再認判断を求めた。その結果、絶対音感を持たない被験者は、相対音高情報を用いることによって、比較メロディがどの調性で出された場合でも同じような正確さで判断することができた。これに対して絶対音感を持つ被験者は、楽譜のメロディと聴覚的メロディの調が一致する条件では高い正答率を示したが、不一致の条件では判断が不正確になった。日本とポーランドの音楽学生は基本的には同様の傾向を示した。ただ不一致条件で絶対音感保有者が成績の低下を示す傾向は、ポーランドの被験者よりも日本の被験者で顕著に見られた。また絶対音感を持たない被験者ではポーランドの学生の方が日本の学生よりも全体に高い成績を示した。以上の結果から、絶対音感保有者が音楽的高さを相対的にとらえる聞き方が弱いという傾向は、日本の音楽学生により顕著に見られるものであると言える。この実験の結果から、絶対音感保有者が、音楽的音高を調性の枠組みの中で聞こうとせずに絶対的に聞こうとする傾向があることが示されたが、今後このような認知処理のしかたの詳細を、処理の自動化の観点から検討していく予定である。
著者
宮崎 謙一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

提示された音について音高名以外を答えることが求められる課題や, ピアノ音が聞こえてくる中で記憶する課題では, 絶対音感の保有者は, 求められている課題とは関連がない音高からの妨害を受けて, 非保有者にくらべて遂行成績の低下を示した. この結果から, 絶対音感保有者では音高と音高名が自動化のレベルに達していて, 音高の命名化が不可避的に起こることが示唆された. また指定された音高を歌う形の能動的絶対音感と, 事象関連電位を用いて音高と指の対応づけに関する脳過程を調べる実験を行った.