著者
津崎 実 入野 俊夫 堀川 順生 宮崎 謙一 牧 勝弘 竹島 千尋 大串 健吾 加藤 宏明 倉片 憲治 松井 淑恵
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究は加齢による「聴力」の変化について知覚・生理現象観察と計算モデルを構築を目的とした。従来ほとんど関心を集めていなかった加齢性ピッチ・シフト現象について,十分な数の幅広い年齢層の聴取者を用いて,その現象が確実に生じることを突きとめ,さらに同じ聴取者に対する聴力検査,耳音響放射検査,脳波の周波数追随反応との相関分析を実施した。並行実施した非線形圧縮特性,聴神経の位相固定性などへの加齢による変容の基礎検討を通して,ピッチ・シフトはこれらの要因の変容によっては説明困難であること示し,新規の聴覚モデルの提案に至った。

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著者
大串 健吾
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-7, 2006 (Released:2007-10-26)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

音楽は古くから感情と深く関連していることが知られている.音楽と感情について議論する場合,これまでしばしば混同されていた,音楽に内在する感情を認知する場合と音楽の演奏によって惹き起こされる感情に着目する場合とは区別されなければならない.音楽と感情の研究に関する科学的研究の歴史は古いが,1980年代以降,この分野で非常に多くの研究が発表されるようになってきた.この解説では,音楽の中に内在する感情を調べた心理学的研究,音楽によって生じる情動を言語反応と生理学的反応を使って調べた研究,演奏者の感情意図が聴取者にどのように伝わるかについての研究の中からいくつかの研究を選び,これらを紹介することによってこの分野の研究動向を解説することにする.
著者
高橋 範行 大串 健吾
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-11, 2004 (Released:2017-08-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1

ピアノ演奏における熟達者と非熟達者の相違を調べるため, 平易なピアノ曲を演奏楽曲として用い, その演奏から得られたMIDIデータをもとに両者の演奏傾向の定量的な比較を行った。その結果, フレーズ表現におけるダイナミクス, 旋律と伴奏の音量バランス, 楽曲終結部分におけるリタルダンドの有無, レガートにおける連続した音同士の重なり方などの点において両者の間に相違が観察された。さらにこれらが聴取者の演奏評価にどのように影響するのかと調べるために, 両者のデータを反映した演奏を作成して聴取実験を行ったところ, このような非熟達者の演奏の特徴が聴き手の演奏評価に否定的に作用している可能性が示された。
著者
大串 健吾
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.1079-1087, 1980-12-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

ここでは音色とは比較的単純な複合音や楽器音などを聞いたときの印象をいい, 音質とは音響伝送系を通した種々の音楽や音声を聞いて判断した伝送特性の心理的対応を指す.複合音の音色や伝送系の音質の心理構造がどのようになっているのか, また, これらを規定する物理的あるいは心理的要因は何であるのか等についての最近の研究を紹介する
著者
大串 健吾
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-7, 2006-02-01
被引用文献数
1 2

音楽は古くから感情と深く関連していることが知られている.音楽と感情について議論する場合,これまでしばしば混同されていた,音楽に内在する感情を認知する場合と音楽の演奏によって惹き起こされる感情に着目する場合とは区別されなければならない.音楽と感情の研究に関する科学的研究の歴史は古いが,1980年代以降,この分野で非常に多くの研究が発表されるようになってきた.この解説では,音楽の中に内在する感情を調べた心理学的研究,音楽によって生じる情動を言語反応と生理学的反応を使って調べた研究,演奏者の感情意図が聴取者にどのように伝わるかについての研究の中からいくつかの研究を選び,これらを紹介することによってこの分野の研究動向を解説することにする.
著者
大串 健吾
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2015-MUS-107, no.2, pp.1-4, 2015-05-16

音のピッチ知覚については長い間実験と議論が行われてきた.時代の変遷と共に,聴覚理論は変化してきた.この報告では,聴覚理論の変遷を簡単に紹介する.また複合音のピッチがその基本周波数に対応する純音のピッチとはわずかに異なることを示す実験データを取り上げ,この現象をどのように説明すべきかについて新しい観点から述べる.
著者
大串 健吾
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

ストループ効果とは、色と文字の意味が一致していないカラーワードに対して、被験者に色の反応を求めたとき、色と文字の認知の間に干渉が生じ、反応時間が増大するという視覚心理学の分野における効果である。この研究の目的は、「色」と「文字の意味」に対して、絶対音感保有者の認知する歌声の「音高(音名)」と「意味(単語)」を対応させ、聴覚の分野においても視覚におけるストループ効果と同様の効果が生じるかどうかを調べることである。音声刺激としては歌手に1オクターブ内のハ長調のド音からシ音までの音高をもつ7音をそれぞれ、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、という単語(発音)で発声してもらったものを用いた。被験者は絶対音感を保有している音楽専攻学生である。実験方法としては、被験者は音声刺激を聴取し、できるだけ速く音刺激の音高を口頭で答えた(音高反応)。音声刺激の始めから口頭反応の始めまでの反応時間(RT)を測定した。次に、音名にかかわらず、発声した単語をそのまま答えさせる実験(単語反応)も行った。実験結果のうち、音高反応に関しては、すべての被験者について、音声刺激の音名と発声した単語の一致した条件における反応時間RTsは異なった条件における反応時間RTdよりも有意に短かかった。単語反応についてもほとんどの被験者について、RTs<RTdとなったが、全体的には有意差はなかった。なおこの研究は、平成11年9月に日本音響学会、11月に日本音楽知覚認知学会のそれぞれの研究発表会で発表した。さらに平成12年8月に英国で開催される第6回音楽知覚認知国際会議において発表する。
著者
大串 健吾
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.253-259, 1980-05-01
被引用文献数
9

In order to investigate physical and psychological factors governing timbre of complex tones, three-frequency complex tones are synthesized on a digital computer. Subjects make similarity judgments of pairs of the complex tones and the experimental data are analyzed by Kruskal's multidimensional scaling program. The analysis of the experimental data shows the followings : (1) the absolute values of the lowest and the highest frequencies are the most important factors governing timbre, (2) from a different point of view, the mean of the logarithmic values of the lowest and the highest frequencies are also important, and these values correspond to tone height (kan-dakasa) of complex tones, and the mean of adjacent frequency ratios (or absolute dissonance) is another important physical factor governing timbre and this physical factor is closely related to consonance of complex tones.
著者
末岡 智子 大串 健吾 田口 友康
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.333-340, 1996-05-01 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
4

8人のピアニストがショパンの「別れのワルツ」を3種類の演奏意図で演奏した。27人の聴取者が各演奏を聴きSD法によって評価した。実験結果は多大元尺度法と重回帰分析を用いて分析した。これらの結果によれば, 演奏者の演奏意図はここでは十分に評定者に伝達されており, また中庸のテンポでアゴーギク (テンポのゆらぎ) の比較的大きい演奏が好まれていることが示された。演奏の聴取印象評価とその物理的対応を調べたところ, 聴取印象に最も影響を与える物理量はテンポ及びアゴーギクであった。ダイナミクスとペダリングはそれらに比べれば, 聴取印象への全体的な影響力は弱いことが示された。
著者
大串 健吾
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.117-121, 1999-03-31 (Released:2016-11-16)

Generally, music performances of a piece by different pianists show different expressions. Musical expressions are mainly controlled by varying the IOI (InterOnset Interval) pattern of adjacent notes and the dynamics pattern of notes. First, the IOI pattern and the dynamics pattern of Mozart's piano sonata K. 331 by a professional pianist were shown and the characteristics of the patterns were described. Second, an experimental result by Repp (1997) was introduced. It shows that average music performances were rated higher in aesthetic quality compared to most individual performances. Therefore, an average music performance of Mozart's piano sonata K. 331 by six pianists were physically analyzed. The analysis showed that the IOI increased at the end of a phrase and that the dynamics pattern showed a inverted U form in a phrase. This may be assumed to be a general rule for a music performance. To examine this assumption, artificial performances were produced by manipulating the IOI pattern and the dynamics pattern and the aesthetic quality of those performances were rated. The result suggested that the assumption was right.
著者
宮崎 謙一 石井 玲子 大串 健吾
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.780-788, 1994-10-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

単独に提示された音の音楽的音高名を音高コンテクストとは無関係に絶対的に同定することができる絶対音感の能力は、従来から音楽に深い関わりを持つ能力とされてきた。しかし音楽が本質的に相対的音高関係の上に成り立つものであることを考えると、この絶対音感の能力が音楽にとってどのような意義を持つものであるかが問題となる。そこで、絶対音感を持つ音楽専攻の大学生が、相対的音高関係をどのように認知するかを調べる目的で実験を行った。絶対音感テストの結果から、被験者を3グループに分けた。実験課題は、音譜で視覚的に提示されたハ長調の7音メロディと、ハ長調、1/4音低いホ長調及び嬰ヘ長調の3通りのいずれかの調で聴覚的に提示された7音メロディとが旋律的に同じか違うかを判断することである。実験の結果、どのグループもハ長調でメロディが提示された場合に比べて他の調で提示された場合に正答率が低下し、反応時間も長くなるという結果が得られた。また、正確な絶対音感を持つグループでは、絶対音感と巧妙なストラテジを組み合わせて判断したものが多くみられた。これらの結果から、音楽的音高処理において絶対音感が持つ問題点について考察した。