著者
津崎 実 入野 俊夫 堀川 順生 宮崎 謙一 牧 勝弘 竹島 千尋 大串 健吾 加藤 宏明 倉片 憲治 松井 淑恵
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究は加齢による「聴力」の変化について知覚・生理現象観察と計算モデルを構築を目的とした。従来ほとんど関心を集めていなかった加齢性ピッチ・シフト現象について,十分な数の幅広い年齢層の聴取者を用いて,その現象が確実に生じることを突きとめ,さらに同じ聴取者に対する聴力検査,耳音響放射検査,脳波の周波数追随反応との相関分析を実施した。並行実施した非線形圧縮特性,聴神経の位相固定性などへの加齢による変容の基礎検討を通して,ピッチ・シフトはこれらの要因の変容によっては説明困難であること示し,新規の聴覚モデルの提案に至った。
著者
牧 勝弘
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2016-MUS-111, no.13, pp.1-6, 2016-05-14

コンサートホールの例からも分かるように,空間内で音がどう響くかということは,音色を決定づける重要な一要因である.しかし,身近な発音体である楽器からそもそもどのように音が空間的に放射されるかということは,未だに解明が進んでいない.本研究では,球状マイクロホンアレイシステムを用いて 「演奏者」 の周囲の音を収録し,その特徴解析を行った.その結果,弦楽器の種類,演奏者の技術レベル,モダンバイオリンと 「ストラディバリウス」 の違いなど,空間音響放射特性にその特徴が現れることが明らかとなった.また,「まるでそこで演奏しているかのような」 音を再現可能な球形マルチチャネルスピーカの製作を通して,「生」 を感じさせるためには放射方向の時間変化が重要であることが分かってきた.これらの結果を通して音の空間放射特性と音色の関係について考察する.
著者
牧 勝弘 赤木 正人 廣田 薫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.304-313, 2004-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

中脳に位置する下丘中心核(Icc)において観察される複雑かつ多様な時間応答パターンの模擬が可能な計算モデルを提案する。Iccに関する生理学的,解剖学的実験報告に基づき,下位の神経核細胞(蝸牛神経核腹側核,又は外側毛帯核腹側核)からIcc細胞への興奮性入力とそれよりも時間的に遅れた抑制性入力という単純な神経回路により,計算モデルを構成する。モデルを用いたシミュレーションの結果,本計算モデルは,生理学的応答特性に基づいて詳細に分類されたIcc細胞の時間応答パターン,すなわち,chopper,pauser, sustained,onset,on-sustained型,及びそのサブタイプ全10種類を再現できることが分かった。この結果は,Iccにおいて観察される時間応答パターンは複雑かつ多様であっても,それを生じさせる神経回路は単純であるという可能性を示している。
著者
牧 勝弘 石川 智治
出版者
愛知淑徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

42ch球状マイクロホンアレイを使用した音響計測により、ストラディバリウスに固有の音響的特徴は、放射方向の揺らぎや聴衆方向への放射の強さなどのバイオリン音の空間放射特性に現れることを明らかにした。また、多面体スピーカを利用した心理学的実験により、音の放射方向の時間的な揺らぎが演奏音の音色評価の向上に寄与することを示し、放射方向の時間的な揺らぎがストラディバリウスの特徴的な音色の一要因になり得る可能性を示した。さらに、奏者の熟練度がバイオリン音の空間放射特性へ与える影響を明らかにし、表板全域に渡るタップ音の周波数分析によりオールドバイオリン表板の特徴を示した。
著者
榊原 健一 林 良子 後藤 多嘉緒 河原 英紀 牧 勝弘 齋藤 毅 山川 仁子 天野 成昭 山内 彰人
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

喉頭音源に関連する声質の客観的表記に関し、生理学的、物理学的視点から、音源となる振動体の分類により(i) 声帯発声 ; (ii) 声帯-仮声帯発声; (iii) 声帯-披裂部発声; の3種類の有声音と,無声音である声門乱流雑音発声と分類が可能であり、有声音源に関しては、物理的・音響的特徴から周期的、準周期的、非周期的の3つの振動への分類を提案した。また、声質表現として緊張-弛緩と声門開放時間率との関係を明らかにし、声質の客観的な表現語として適切であることを明らかにした。声門開放時間率の分析方法として、余弦級数包絡の複素wavelet分析に基づく簡易なGCI, GOIの検出方法を考案した。
著者
牧 勝弘 木村 敏幸 勝本 道哲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.89, pp.71-76, 2011-06-16
参考文献数
7

バイオリンは,様々な方向に音を放射している。我々は,これらの音を全て直接的ではないにしろ聞いている(部分的には,壁等からの反射音として到来)。本研究では,演奏者の周囲に球状マイクロホンアレイを設置することでバイオリン演奏者を記録し,バイオリン音の聴感に重要であると考えられるそれらの空間放射特性を解析した。その結果,バイオリン演奏者の放射方向は,水平面では概ね前方斜め左,矢状面では周波数に依存して真下から真上まで広い範囲に分布していることが分かった。また楽曲演奏中は,同じ分析周波数であっても時間により放射方向が大きく変化し,プロ演奏者間での差異は主に放射指向性の強さに現れることが明らかとなった。
著者
牧 勝弘 赤木 正人
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.55-64, 2011-02-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

聴神経の発火頻度は,音の立ち上がりに対して高く,その後急速に低下する(順応)。この順応は音圧レベルの影響を強く受け,その特性は個々の聴神経で大きく異なっている。従来のモデルは,順応の音圧レベル依存の性質を模擬できず,複数の聴神経の順応特性を模擬することができなかった。本研究では,内有毛細胞の受容器電位の生成機構について新しい機能モデルを提案し,従来の内有毛細胞モデルとパルス列を出力する聴神経モデルを組み合わせることで聴覚モデルを構築した。モデルの出力を生理データと比較することでモデルの評価を行い,本モデルが,複数の聴神経の順応特性を,音圧レベル依存の性質まで含めて定量的に模擬できることを示す。