著者
小暮 敏博 向井 広樹 甕 聡子
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.195-201, 2015-09-25 (Released:2015-12-25)
参考文献数
13

Mineral species that really retain radioactive cesium in Fukushima soil have been investigated by analyzing actual contaminated soil samples in Fukushima using IP autoradiography, electron microscopy and X-ray diffraction. Weathered biotite originated from granitic body in Fukushima was frequently found as radioactive fine particles. The weathered biotite is mineralogically a biotite-vermiculite mixed-layer mineral. Besides, smectite-like clay mineral was identified in biotite-free particles using X-ray diffraction. A new cesium-sorption experiment was conducted, in which various clay minerals were immersed together in dilute 137Cs radioisotope solutions and the amount of 137Cs adsorbed in each mineral was measured by IP autoradiography to reproduce the sorption at actual concentration level in the radioactive particles. It was found that 137Cs was sorbed predominantly by the weathered biotite collected in Fuku shima, confirming the results from the investigation of the actual contaminated soil mentioned above.
著者
佐藤 努 廣吉 直樹 小暮 敏博
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

産地の異なる汚染土壌の約4万粒子を詳細に調べたところ、放射性セシウムを濃集している粒子の割合はわずか0.3%であった。また、これら濃集粒子は、風化雲母の凝集体、有機物と風化雲母の複合体、風化雲母片であり、様々な構成鉱物の中で風化風雲母片が最もセシウムを濃集できることは、吸着実験結果とも整合的であった。観察した土壌からはガラス球状物質は見出されなかったので、セシウムの主たるホストは風化雲母と結論された。この風化黒雲母は磁気分離可能なことから、ポールミルや超音波等により風化黒雲母片を解砕し、磁選によって効率的に回収することで、合理的な減容化が可能となることが判明した。
著者
下山 巌 奥村 雅彦 小暮 敏博 町田 昌彦 馬場 祐治 本田 充紀 岡本 芳浩
出版者
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

H28年度において実施した研究の実績概要は以下の通りである。1.高温低圧環境高速X線回折(XRD)装置及び蛍光X線分析装置(XRF)の導入:複数の候補からリガク製XRD装置SmartLab3を選定し、低圧加熱実験可能な電気炉と2θに対して10°以上の範囲の同時測定可能な高速2次元検出器を併用することで、加熱時及び冷却時の構造変化をその場観察できる装置を導入した。また、XRF装置も導入した。2.アルカリ塩化物試薬におけるカチオン依存性の解明:非放射性Csを収着させた風化黒雲母(WB)をモデル土壌とし、CaCl2とKCl単塩をそれぞれ添加した際のXRD、XRF測定を行った。CaCl2添加により700℃低圧加熱で100%のCs除去率を確認した。一方、KCl添加では約50%のCs除去率となった。また、CaCl2添加時はXRDパターンが大きく変化したのに対し、KCl添加ではWBの構造がほぼ保たれた。これらの結果から同じ塩化物でも1価と2価のカチオンではWBからのCs脱離過程が異なることを明らかにした。また、昇温脱離法(TDS)を用いた分析でもCaCl2添加時にCs脱離が促進されることを確認した。X線吸収分光法(XAFS)を用いた加熱中のその場観察の研究ではNaCl-CaCl2混合塩へのCs溶出が観察された。それと共に、600℃付近より高温側と低温側でCs脱離過程が異なる可能性を見いだした。以上の知見に関しては欧文誌に論文発表すると共に、国内外の学会において報告を行った。3.福島汚染土壌による実証試験:福島の帰還困難区域から粘土質汚染土壌を採取し、加熱処理による放射能変化をNaI検出器により調べた。その結果、KCl、MgCl2試薬では低圧加熱の方が大気加熱よりも高い放射能減衰率が得られたがCaCl2試薬では両者で大きな差が見られず750℃大気加熱で約97%の放射能減衰が得られた。
著者
小暮 敏博
出版者
一般社団法人 日本粘土学会
雑誌
粘土科学 (ISSN:04706455)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.22-27, 2015-08-21 (Released:2017-06-22)
被引用文献数
3

Although more than four years have passed after the accident at the Fukushima-Daiichi nuclear power plant, the state of radioactive cesium, which is the main source of the high radioactivity in the environment of Fukushima, is not well understood yet. To advance this situation, we tried to specify radioactive soil particles using IP autoradiography and electron microscopy. As a result, the radioactive soil particles were classified into three types from their morphologies and chemical compositions: (1) conglomerates of fine clay minerals, (2) organic matter containing clay mineral particulates, and (3) weathered biotite with a platy shape originated from granite. The weathered biotite is actually a biotite-vermiculite mixed-layer mineral, forming a porous structure with well-developed cleavage, and kaolinite filling the cleavage spaces. It was indicated that radioactive cesium is located uniformly in the weathered biotite, rather than concentrated around the edges of the platy shape.
著者
小暮 敏博 坂野 靖行 宮脇 律郎
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.43-43, 2004

組成的に金雲母のKをNaで置換したアスピドライト(aspidolite)の層間構造は従来考えられているものとは異なることをHRTEM,電子回折より明らかにした。この雲母では層間領域を挟む2つの四面体シートが約a/6ずれている。この構造モデルから計算したX線回折パターンは実験のパターンをよく説明した。またずれの方向により,アスピドライトには三斜晶系と単斜晶系をもつことをX線回折により確認した。
著者
本間 雄亮 濱本 昌一郎 小暮 敏博 西村 拓
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

The accident at the Fukushima Daiichi nuclear power plant occurred in 2011, resulting in contamination of agricultural fields by radioactive substances such as 137Cs (RCs). Potassium (K) fertilization is typically considered as an effective countermeasure for reducing RCs uptake by plants. However, in case of a pasture, K fertilizer application results in increase in pasture K concentration, causing a metabolic disease for cattle known as grass tetany. Therefore, in the grassland polluted by RCs, alternative countermeasures for reducing RCs uptake are required. In this study, we investigated the effect of adsorbent applications on the RCs behavior in grassland soil.Soil samples were taken from a grassland polluted by RCs at the surface layer (from 0 to 5cm) in Fukushima prefecture. Zeolite and weathered biotite were selected as adsorbents. The soil was adjusted to different water contents (0.86, 1.2) and the adsorbents were added at 0.5, 2.5, 5g per 50g dried soil. Incubation was conducted in constant temperature (20℃) room. Incubation duration was 7, 28 and 112 days. After that, 1M ammonium acetate with soil: solution ratio of 1:4 (dried soil: solution) was added and shaken for 6 hours. Suspension was filtered by 0.45 μm membrane filter. Cs concentration (exchangeable Cs, Ex-Cs) in the filtrates were measured by a Ge semiconductor detector.With increasing adsorbents added to the samples, the concentration of Ex-Cs decreased where more decrease in Ex-Cs was observed for the sample at higher water content. Zeolite decreased concentration of Ex-Cs more than weathered biotite in same soil: solution ratio.This research was supported by grants from the Project of the NARO Bio-oriented Technology Research Advancement Institution (the special scheme project on regional developing strategy).
著者
佐藤 努 小暮 敏博 名和 豊春
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、福島第一原子力発電所事故で環境中に放出されたセシウムを固定している粒子を明らかにし、それを基に、土壌の減容化を可能とする分級方法や合理的で安全なセメント固化法について提案することを目的とした。その結果、放射性セシウムを多く吸着している粒子は、複数の鉱物の凝集態、有機物と鉱物の複合体、風化雲母片に大別され、これらは多孔質天然材料である珪藻土、あるいは通常の湿式分級法により分級可能であることが明らかとなった。さらに、固定化されていないセシウムはゼオライトで吸着除去した後に処分することが予想されるが、通常のスラグセメントで浸出性の低い安全な固化体となることが明らかとなった。
著者
松田 厚範 武藤 浩行 大幸 裕介 逆井 基次 小暮 敏博
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、種々の硫酸水素塩とリンタングステン酸(WAP)やケイタングステン酸(WSiA)を遊星型ボールミルを用いて複合化し、複合体の導電率の温度・組成依存性を系統的に調べた。CsHSO_4-WPA系と同様、KHSO_4-WAP系とNH_4HSO_4-WPA系では、硫酸水素塩含量が90mol%付近で導電率の極大が認められた。ミリング処理によって、WPAのプロトンの一部が一価カチオンによって置換され、ヘテロポリ酸の面間隔が小さくなっていることや、硫酸水素アニオンとヘテロポリ酸の間に新たな水素結合が形成されていることがわかった。導電率の対数値とH^^1 MAS NMRスペクトルのケミカルシフトから求めた水素結合距離の間に良好な相関を確認した。また50H_4SiW_12O_40・50CsHSO_4複合体をポリベンズイミダゾール(PBI)に混合することでPBI-50Si50Cs系コンポジット膜を作製した。シングルセル発電試験(無加湿160℃)の結果、コンポジット膜は非常に優れた発電特性を示した。これは無機固体酸複合体が分散することで、プロトンのホッピングが容易になったためと考えられる。
著者
村上 隆 小暮 敏博
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

先カンブリア時代の大気中の酸素の濃度変化は、地球化学的課題のみならず、生命の進化と密接に関連し、近年盛んに研究が行われている。古土壌(paleosol)と呼ばれる、当時の風化を受けた岩石は大気中の酸素の情報を含む。しかし古土壌は風化後、例外なく続成・変成作用を受けた弱変成岩であり、当時の風化過程は未だに理解されておらず、従って、古土壌から推定される大気酸素の濃度は常に曖昧さを伴う。我々は当時の風化条件を室内で模擬し、実際の古土壌のデータと比較することで、当時の鉱物-水-大気の相互作用を明らかにすることを研究目的とした。35-25億年前の大気中の二酸化炭素と酸素を想定し、二酸化炭素の分圧は1atm、酸素分圧は3x10(-5)atm以下の条件で、グローブボックス内でFe-rich biotiteを試料としてバッチ式の溶解実験を行った(非酸化的実験)。比較のため、同様な実験を現在の大気の雰囲気下で行った(酸化的実験)。酸化的実験では溶出したFe(II)が即座にFe(III)となり、Fe(III)が生成する、またこのため、溶液中ではFeは殆ど検出されない。非酸化的実験では溶液中のFe濃度が比較的多く、Fe(II)を含むvermiculiteが二次鉱物として、生成した。この結果を25億年前の古土壌と比較したところ、古土壌中でのFe(II)とFe(III)の分布変化、またchloriteのFe/Mg比変化が一致し、先カンブリア時代における風化時の鉄の挙動は、われわれの実験結果から予想されることがわかった。またflow throughタイプの溶解実験から、溶解速度は、非酸化的条件では酸化的条件より、3から4倍、早い、また、この溶解速度にFe(II)は影響しないことがわかった。