著者
近藤 康人
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.103-107, 2019 (Released:2020-06-10)
参考文献数
26

花粉に感作をされることによって食物アレルギーを合併することがある.口腔アレルギー症候群Oral allergy syndrome(OAS)もしくは花粉-食物アレルギー症候群(Pollen-associated Food Allergy Syndrome:PFAS)と呼ばれ,症状は口腔内に限局した即時型アレルギーである.新鮮な果物や生野菜を摂取している最中にみられる口腔から喉にかけての違和感,耳の奥のかゆみなどである.こういった症状は花粉と食物とのアレルゲンの共通抗原性に起因する. 我々はスギ花粉症患者でトマトOASを合併した症例を経験し,両者の共通抗原性について報告した.その後,スギ花粉症患者でトマトIgE陽性例に対しスギSCITを4ヵ月間行って,スギおよびトマトに対する好塩基球の活性化が低下した研究報告を行った.またPFAS予防の試みに関して海外の論文を紹介する.
著者
尾辻 健太 大原 佳央里 中村 真紀 雨積 涼子 比嘉 千明 嘉数 健二 近藤 康人
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.63-67, 2015 (Released:2015-07-28)
参考文献数
7

食物アレルギー歴のない17歳女性が,すき焼きを摂取後にアナフィラキシーを起こした症例を経験した.皮膚試験で陽性であったエノキタケを入院の上オープン法で経口負荷試験しエノキタケが原因食品であることが確かめられた.これまでエノキタケによるアナフィラキシーの報告はなく,アレルゲンについても報告されていない.今回患者血清を利用しアレルゲンの同定を試みた.市販のエノキタケから抗原を抽出し,患者血清を用いてWestern-blottingを行ったところ,複数のタンパク質バンド(18kDa,39kDa,50kDa)に特異的な反応がみられ,これらがアレルゲンであると考えた.
著者
近藤 康人 池上 和男 井関 正博
出版者
防菌防黴研究会
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-4, 2004 (Released:2011-03-05)

5分間の電解により次亜塩素酸を生成した電解水と次亜塩素酸ナトリウム溶液を希釈した溶液で酵母の殺菌効果の比較を行った。電解水は生成直後から3分以内で高い殺菌効果が認められた。一方、次亜塩素酸ナトリウム希釈溶液ではほとんど殺菌効果は認められなかった。さらに、電解を30分以上行った溶液では次亜塩素酸に対して耐性のある枯草菌芽胞にも殺菌効果が認められた。また、電解水も6分間放置した場合には、殺菌効果は次亜塩素酸ナトリウム希釈溶液と同様になった。このことから電解水では生成直後にはオゾンなどの活性物質が存在し高い殺菌効果を示すと考える。
著者
近藤 康人
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.271-275, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
24

特定の花粉アレルゲンに感作されると,新鮮な果物や生野菜を摂取した際にIgE抗体の交差反応によって口腔内に限局した即時型アレルギー症状を来すことがある。この病態を花粉-食物アレルギー症候群(以下PFASと略す)という。症状は通常,口腔アレルギー症候群(以下OASと略す)の臨床病型を示す。我が国においてもカバノキ科花粉の飛散地域においてバラ科食物のPFASがみられる。一方,ヒノキ科花粉におけるPFASの原因アレルゲンはpolygalacturonaseファミリーによる報告のみであった。しかし近年,南欧でヒノキ花粉症患者にモモやオレンジのPFASが報告され,交差抗原性の原因としてgibberellin-regulated protein(以下GRPと略す)の関与が示された。そして2020年,本邦スギ花粉においてGRPが同定され,新規アレルゲンCry j 7として登録され,注目されている。
著者
黒﨑 紘史 白畑 紘夢 川原 潤也 近藤 康人 近藤 健 李 範爽 小田垣 雅人
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.143, no.5, pp.532-538, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

In this study, we developed a capacitive seating analysis sensor using a conductive textile for evaluating a Seating Motion. Physical burden on caregivers is a common problem at nursing care sites. Developing long-term caregiving skills can help reduce the physical burden on amateur caregivers. Several quantitative evaluation studies have focused on the skills of caregivers. However, such evaluation is highly expensive and require huge area because it involves the use of motion capture systems with several 3D cameras for dynamic motion analysis. In our previous study, we developed a conductive textile sensor for measuring the seating position of a care recipient in a wheelchair. The sensor could measure either seating body pressure or distance between the buttocks and the seat. The system can measure the care recipient's motion without requiring any motion capture system. We recommend using the sensor to evaluate the skills of caregivers; the sensor output can be used to determine the seating speed of the care recipient on the chair. Herein, we report the validity of the measurement system comprising a conductive textile-based capacitive seating analysis sensor for evaluating seating in nursing care.
著者
京川 裕之 清田 隆 近藤 康人 小長井 一男
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.265-273, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
21
被引用文献数
8 3

東北地方太平洋沖地震によって埋立地の大部分が液状化した千葉県浦安市において,著者らは地震発生直後から航空レーザ測量,粒度分析,SWS試験などを行い,液状化による地盤の変動を継続的にかつ定量的に把握してきた。これらの調査より,(1) 浦安市の埋立地では地盤沈下が広範囲に生じており,その沈下量の分布は家屋・ライフラインの被害と対応している。(2) 同時期の埋立地(未改良地区)で,被害程度が大きく異なる場所がある。(3) 広範囲に採取した噴砂の粒度およびSPT試料の粒度は,大量の噴砂と再液状化が確認されているニュージーランド・クライストチャーチのケースと非常に似通っている。(4) 液状化により地盤の貫入抵抗は大きく低下し,その後2ヶ月程度で強度は回復・安定するが依然として低い値を示している。本稿では以上の知見より,同地区の再液状化の可能性についても検討する。
著者
近藤 康人 小泉 ゆりか 井関 正博 山田 淳 高岡 大造 滝沢 貴久男 安田 昌司 今井 八郎
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.106, 2005 (Released:2005-10-19)
参考文献数
29
被引用文献数
3 2

A Ti electrode with a noble metal coating was used for sterilization of water. The main product from electrolysis for sterilization is hypochlorite acid. It was found that the hypochlorite acid production rate was consistently higher on Pt-Ir and Pt-Ir-Ta coated Ti electrodes, compared to Pt coated Ti electrodes. The production rate of hypochlorite was independent of temperature. Therefore, it was thought that this hypochlorite would be effective in sterilization of hot bath water and pool water. At the same time, ozone was generated in the electrolyte water. Generation of ozone was conspicuously observed under electrolysis of Pt electrodes. The production rate of ozone depended on the temperature and the concentration of chloride ions in the electrolyte. A high concentration of ozone was observed when the temperature of the solution was below about 15ºC, concentration of chloride ions was 1mM, and a membrane was used to separate the cell. The ozone generated by electrolysis of Pt coated Ti electrodes had a significant effect on sterilization for Bacillus subtilis spores.
著者
新垣 智也 末廣 豊 平口 雪子 玄 茉梨 吉野 翔子 熊谷 雄介 海老島 優子 大和 謙二 尾辻 健太 近藤 康人
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.1240-1243, 2017

<p>症例は10歳女児で既往に鶏卵アレルギーがあった.4歳時,鍋料理のエノキタケを摂取後に口腔内の痒みを訴え,以降はエノキタケを摂取していなかった.10歳時に学校給食でエノキタケの入ったすまし汁の汁のみを飲んだところ,口腔内の違和感と痒みが出現し20分間程度持続した.精査のために当科で実施したprick to prick testではエノキタケの生,加熱,茹で汁がいずれも陽性であった.</p><p>患者血清を用いてアレルゲンの同定を試みた.western blottingを行ったところ,75kDaで特異的な反応がみられ,本症例のアレルゲンと考えられた.</p><p>過去に報告のあったエノキタケアレルギーとは症状の程度,他のキノコ類への感作,抗原のタンパク質分子量などで違いがあり,新規のアレルゲンが関与しているものと推定された.</p>
著者
小野 倫太郎 本村 知華子 高松 伸枝 近藤 康人 赤峰 裕子 松崎 寛司 村上 洋子 網本 裕子 田場 直彦 本荘 哲 柴田 瑠美子 小田 嶋博
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.149-155, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は10歳女児.柑橘類を摂取後の運動負荷でアナフィラキシーを起したエピソードを3回認めた.柑橘類による食物依存性運動誘発アナフィラキシー(Food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)を疑い,負荷試験を行った.オレンジ摂取と運動負荷の組み合わせは陰性であったが,アスピリン内服とオレンジ摂取の組み合わせで眼瞼腫脹,喘鳴を認め,オレンジによるFDEIAと診断した.フルーツアレルギーではOral allergy syndrome(OAS)の症例が多く,FDEIAは稀である.本症例ではイムノブロット法にて9kDa,39kDa,53kDaの抗原を認め,オレンジによるインヒビションにて39kDa,53kDaの抗原が特異抗原アレルゲンと考えた.本症例はスギ特異的IgE抗体強陽性であったが,スギ抗原とは共通抗原性は認めなかった.オレンジ抗原として知られるCit s群とは異なる39kDa,53kDa蛋白が原因となるFDEIAは報告がない.