著者
脇 由香里 吉見 陽 千﨑 康司 宮田 はるみ 伊東 亜紀雄 相馬 孝博 上田 裕一 毛利 彰宏 山田 清文 尾崎 紀夫 野田 幸裕
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.475-480, 2011 (Released:2012-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Falls and fall-related injuries among inpatients are one of the most important concerns in medical safety management and sometimes cause a significant decrease in activities of daily living (ADL). It has been suggested that the adverse reactions of psychotropic drugs related to their sedative-hypnotic, cognitive deficit producing and muscle reaction-related effects are closely associated with falls.In this study, we examined a relationship between the risk of falls and psychotropic drugs based on prescriptions in fall incident reports at Nagoya University Hospital in a 12-month period beginning in April 1, 2005. In July 2006, we conducted an educational intervention involving instructing health care staff on the optimal use of psychotropics. After doing this, we examined prescriptions in fall incident reports over a 12-month period beginning in April 1, 2006. The results showed a decrease in fall incidence due to long-acting drugs in 2006 as compared with 2005 and this indicated that, among psychotropics, sedativehypnotic-anxiolytics were one of the highest risk factors for falls. These results suggest that an educational intervention can be an effective means of reducing the number of falls and fall-related injuries among inpatients.
著者
加藤 秀一 尾崎 紀夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001240, (Released:2018-12-29)
参考文献数
50

自閉スペクトラム症は,社会性やコミュニケーションの障害,および行動・興味・活動の限局を特徴とし,米国精神医学会の精神障害診断・統計マニュアル第5版では,非常に多様な表現型を包含することとなった.何らかの身体症状や精神障害を併存することが多く,包括的評価が求められる.ゲノム解析が広く行われ,頻度は低いものの発症に強い影響を与えるゲノムバリアントの同定により,一部の患者に共通する発症メカニズムが明らかとなりつつある.その結果,クロマチン制御の異常によるエピジェネティックな変化が,発症に強く影響を及ぼしている可能性が示唆されている.病態の解明,治療法開発に向けてさらなる研究が求められている.
著者
木村 大樹 尾崎 紀夫
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.14-17, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
18

統合失調症の発症に強い影響力を持つまれなゲノム変異として,コピー数多型(CNV)が挙げられるが,CNVを起点として如何なるメカニズムによって統合失調症の発症に至るのかは不明である。筆者は日本人統合失調症の全ゲノムCNV解析から発症に強い影響力を持つと判明したCNV領域内の神経発達関連遺伝子を対象としたシークエンス解析を実施し,統合失調症の発症に強い影響力を持つ一塩基変異(SNV)の探索と,同定したSNVに基づく分子病態解明研究を行った。その結果,22q11.2領域内に存在するアミノ酸置換RTN4R‐R292Hや,16p13.11領域内に存在するNDE1‐S214Fが統合失調症と有意な関連を示すことが示唆された。さらに,これらのSNVによって,神経細胞の発達異常が引き起こされることも証明された。今後は,多発家系例などを対象とした全ゲノムシークエンス解析による新たな発症ゲノム変異の同定や,変異を模したモデル動物や変異を有する患者由来のiPS細胞を対象とした解析により,統合失調症の病態解明や,病態に基づく診断法・治療薬開発につなげていきたい。
著者
加藤 秀一 尾崎 紀夫
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.89-93, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
18

精神疾患の当事者・家族の,精神医学研究に対する「根本的治療薬を」との期待は強い。しかし,精神疾患の病態に基づいた診断・治療法は未だ見いだされていない。ゲノム解析研究を起点に,疾患の分子・細胞・神経回路・脳・個体の各レベルで生じる表現型・機能異常を同定し,包括的に病態を明らかにして,病態に基づく診断法・根本的治療薬を開発することが強く求められており,知見が積み重ねられている。さらに開発を推進していくには,多施設共同かつ診療科横断的・疾患横断的にゲノム情報を集約するため,臨床情報を具備した患者由来バイオリソースの基盤構築が不可欠である。①スケールメリットを活かすための情報集約,②データサイエンスの実装,③データシェアリングの推進,④サステナビリティの実現をめざし,各種倫理指針を遵守しながら精神神経疾患の医療の充実,研究を推進するための組織として,精神・神経ゲノム情報管理センターの設立が求められている。
著者
加藤 秀一 尾崎 紀夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.13-20, 2019 (Released:2019-01-30)
参考文献数
50

自閉スペクトラム症は,社会性やコミュニケーションの障害,および行動・興味・活動の限局を特徴とし,米国精神医学会の精神障害診断・統計マニュアル第5版では,非常に多様な表現型を包含することとなった.何らかの身体症状や精神障害を併存することが多く,包括的評価が求められる.ゲノム解析が広く行われ,頻度は低いものの発症に強い影響を与えるゲノムバリアントの同定により,一部の患者に共通する発症メカニズムが明らかとなりつつある.その結果,クロマチン制御の異常によるエピジェネティックな変化が,発症に強く影響を及ぼしている可能性が示唆されている.病態の解明,治療法開発に向けてさらなる研究が求められている.
著者
野田 幸裕 毛利 彰宏 鍋島 俊隆 尾崎 紀夫
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

統合失調症の発症要因(周産期ウイルス感染、出産時低酸素脳症や育児放棄)の共通因子として、プロスタグランジンE2(PGE2)が関与するどうか検討した。発症要因を模したモデルマウスの脳内PGE2量は増加していた。周産期ウイルス感染モデルマウスに認められる統合失調症様の認知・情動行動障害にEP1受容体が関与していた。新生仔期PGE2暴露は、神経発達障害に伴う成体期ドパミン神経機能低下や認知行動障害を惹起させ、乱用薬物に対して脆弱性を示した。一方、統合失調症の発症・病態にPGE2関連遺伝子の関連性は認められなかった。PGE2は統合失調症の環境要因の共通因子および、発症脆弱性に関わることが示唆された。
著者
伊藤 幹子 木村 宏之 尾崎 紀夫 荒尾 宗孝 木村 有希 伊藤 隆子 栗田 賢一
出版者
Japanese Society of Psychosomatic Dentistry
雑誌
日本歯科心身医学会雑誌 (ISSN:09136681)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-22, 2006-06-25 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14

In 1999, the authors organized a medical liaison group composed of dentists and a psychiatrist at the outpatient clinic of the Department of First Oral Surgery, Hospital of the School of Dentistry, Aichi Gakuin University, for the diagnosis and treatment of oral psychosomatic disorders. The practice has been for the dentists of the medical liaison group to examine each patient and diagnose his/her oral somatic disorder in the first stage of the examination, and the psychiatrist to examine each patient and make diagnosis according to DSM-IV or DSM-IV TR in the second stage.The subjects of this study were 13 patients with personality disorders (PD) among 268 patients examined during a 5-year and 4-month period from 2000 to 2004. The diagnoses by the dentists consisted of five cases of atypical facial pain, three of burning mouth syndrome, two of oral malaise, one of dental phobia, one of temporomandibular joint disorder, and one of halitophobia. Those by the psychiatrist consisted of six cases of pain disorder, two of conversion disorder, two of somatization disorder, one of hypochondriasis, one of specific phobia, and one of adjustment disorder. On DSM-IV Axis II, the diagnosis/suspicion results consisted of three cases of paranoid PD, two of avoidant PD, two of obsessive-compulsive PD, two of borderline PD, two of narcissistic PD, one of histrionic PD, and one of dependent PD. It was very difficult for us to manage the patients with borderline PD and narcissistic PD in cases of invasive treatment such as a tooth extraction. It has been found that the comorbidity of not only mental disorders but also personality disorders does need to be diagnosed and dentists ought to plan their therapeutic strategy for patients with personality disorders under the supervision of psychiatrists
著者
鍋島 俊隆 野田 幸裕 平松 正行 毛利 彰宏 吉見 陽 肥田 裕丈 長谷川 章 間宮 隆吉 尾崎 紀夫 山田 清文 北垣 伸治
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、幼児・学童期において問題視されている心理社会的ストレスを想定し、幼若期マウスに社会的敗北ストレスを負荷し、社会性行動について評価した。幼若期マウスは心理社会的ストレスに対して、成体期マウスに比べて脆弱であり、成体期まで持続する社会的行動障害を示した。社会的行動障害モデル動物としての評価系を確立できた。この動物の社会性行動障害には、グルココルチコイド受容体の活性化、モノアミン作動性神経系およびグルタミン酸作動性神経系の遺伝子発現変化に伴って、これら神経系の機能異常が関与していることが示唆された。