著者
山本 晴彦 山崎 俊成 坂本 京子 山下 奈央
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.381-397, 2018

2017年台風18号が 9月17日11時半頃に鹿児島県薩摩半島を通過し,12時頃に鹿児島県垂水市付近に上陸した。その後は宮崎県を通過して日向灘に抜け,17日16時半頃に高知県西部に再上陸した。その後,台風は兵庫県,北海道に再上陸して,18日21時にサハリンで温帯低気圧となった。台風や活発な前線の影響で豪雨となり,大分県と宮崎県の県境の祖母山系を中心に17日の日降水量が500 mmを超える豪雨域が北西-南東方向に約20 km,北東-南西方向に約10 km の楕円形状の豪雨域が形成されていた。津久見市では17日の 9 時前後に第 1のピーク,11時過ぎに20 mm/10分間を超える豪雨に見舞われ,台風接近時の13~16時には東寄りの風が卓越して約 10 mm/10分間の強雨が継続し,日積算降水量427 mm を記録した。本豪雨により津久見川や支流の彦の内川が氾濫し,標高が低い場所や両河川の合流点付近では最大150 cm前後の浸水痕跡が確認され,住家の半壊,浸水被害が相次いで発生した。本災害による大分県内での住家被害は3,359棟に達し,洪水災害としては近年では甚大な被害であった。
著者
山本 晴彦
出版者
京都大学防災研究所自然災害研究協議会
雑誌
自然災害科学総合シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
no.55, pp.31-41, 2018-09-18

2017年9月17日は台風18号や活発な前線の影響で豪雨となり, 大分県と宮崎県の県境の祖母山系を中心に17日の日降水量が500mmを超える豪雨域が北西-南東方向に約20km, 北東-南西方向に約10kmの楕円形状の豪雨域が形成されていた。大分県中南部の津久見市では17日の9時前後に第1のピーク, 11時過ぎに20mm/10分間を超える豪雨に見舞われ, 台風接近時の13-16時には東寄りの風が卓越して約10mm/10分間の強雨が継続し, 日積算降水量427mmを記録した。本豪雨により津久見川や支流の彦の内川が氾濫し, 標高が低い場所や両河川の合流点付近では最大150cm前後の浸水痕跡が確認され, 住家の半壊, 浸水被害が相次いで発生した。本災害による大分県内での住家被害は3, 359棟に達し, 洪水災害としては近年では甚大な被害であった。また, 隣接する宮崎県北部の北川水系でも洪水災害に見舞われ, 前年の2016年台風16号の浸水深を超える地域も見受けられた。
著者
原田 陽子 山本 晴彦 岩谷 潔 金子 奈々恵
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.436-441, 2013-08-01
参考文献数
12

In agriculture, particularly wet rice cultivation, light pollution caused by exterior illumination at night interferes with dark periods and results in delayed flowering (heading). However, we found that by selecting the wavelength of light sources to which rice is exposed and controlling the luminescence, it is possible to bring the time of heading closer to that of a control plot (total darkness). In this study, visibility of artificial illumination using mixed LED (blue, green, yellow-green) was evaluated by comparing it with green LED and white LED illumination. We evaluated five items in this experiment: pedestrian behavior, facial recognition, color recognition, peripheral visual field, and impression. We found that the evaluation for ‘color recognition’ and ‘impression’ were lower for mixed LED than for white LED illumination. Therefore, it is suggested that mixed LED illumination needs to improve in these items.
著者
平山 耕三 糸原 義人 山本 晴彦
出版者
農業生産技術管理学会
雑誌
農業生産技術管理学会誌 (ISSN:13410156)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.49-62, 2014-09-15 (Released:2019-04-11)

農家は,日々同じ作業を行っているにもかかわらず,高級な牛肉を生産する農業者と,そうでない農業者がいる.本稿では農家の行動や考え方に注目し,農作業の内容や農業以外での活動について調査を実施した.その結果,次のことが明らかになった.技術は日常作業と不定期の作業の組み合わせで成り立っており,日常作業管理においては,「清掃作業」であり,不定期管理においては「敷き料交換作業」が大きく影響していることに統計的有意性が見られた.これらの作業を重点的に行うかどうかより,上物生産の差となって現れている.また,管理要因では,牛体の管理,飼養環境が上物生産に影響していることに統計的な有意差が見られた.農家の主体性については,営農意欲と獣医師に任せず自ら投薬する自主性,専門誌購読など知識欲などに統計的な有意差がみられた.このことより肥育経営は,営農意欲を持って,専門知識の獲得活動等に積極的に取り組むとともに,牛舎環境,飼養環境等の向上により牛に快適な環境を与えることで上物率が高くなる傾向が高い.
著者
山本 晴彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

軍用気象学への認識の高まりを受け、軍用気象会が昭和5年に設立されたが、陸軍の砲工・航空の両学校では必要に応じて(陸士卒)を中央気象台に短期派遣し、気象に関する講習を受講させていた。昭和6年からは、陸軍航空本部に教室を整備し、近接する中央気象台に依嘱して気象勤務要員の養成が行われた。第1・2回(昭和7・8年)各8名(大尉・中尉)が修学し、戦中期の陸軍気象部の中核を担う人材が養成された。<br> 昭和10年8月、陸軍砲工学校内に附設の気象部が設立され、軍用気象学をはじめ、軍用気象勤務、気象観測、気象部隊の編成・装備・運用等の研究、軍用気象器材の研究・検定、兵要気象の調査、気象統計、兵要誌の編纂、気象要員の養成が主な業務であった。武官の職員には、武や古林などの気象勤務要員の教育を受けた将校も携わった。外部から気象学、物理学、数学関係の権威者を専任教官として講師に任命した。第1期生(昭和11年)は、荻洲博之、田村高、夕部恒雄、泉清水、中川勇の5名が入学し、修了後は気象隊、関東軍司令部、陸軍気象部、南方軍気象部等に派遣された。第2期生(昭和12年)も久徳通夫高他5名、第3期(昭和13年)は蕃建弘他4名の大尉や中尉が連隊等から派遣されている。<br> 昭和13年4月、陸軍気象部令が公布され、陸軍砲工学校気象部が廃止されて陸軍気象部が創設された。「兵要気象に関する研究、調査、統計其の他の気象勤務を掌り且気象器材の研究及試験並に航空兵器に関する気象器材の審査を行ふ」と定められ、「各兵科(憲兵科を除く)将校以下の学生に気象勤務に必要なる学術を教育を行ふ」とされ、「必要に応じ陸軍気象部の出張所を配置する」とされた。組織は、部長以下、総務課(研究班、統計班、検定班を含む)、第一課(観測班、予報班、通信班)、第二課(学生班、技術員班、教材班)で構成され、気象観測所、飛行班も設けられた。ここでも、陸軍砲工学校気象部の出身者が班長を務め、嘱託として中央気象台長の岡田武松をはじめ、気象技師、著名な気象学者などの名前も見られ、中央気象台の技師が技術将校として勤務した。戦時下で企画院は気象協議会を設立し、陸軍・海軍と中央気象台・外地気象台の緊密な連繋、さらには合同勤務が図られた。昭和16年7月には、陸軍中央気象部が臨時編成され、陸軍気象部長が陸軍中央気象部を兼務することになり、昭和19年5月には第三課(気象器材の検定等)が設けられた。さらに、気象教育を行う部署を分離して陸軍気象部の下に陸軍気象教育部を独立させ、福生飛行場に配置した。終戦時には、総務課200名、第一課150名、第二課1,800名、第三課200名が勤務していた。<br> 陸軍気象部では、例えば昭和15年には甲種学生20名、乙種学生80名、甲種幹部候補生92名、乙種幹部候補生67名に対して11カ月から5か月の期間で延べ259名の気象将校の養成が計画・実施されていた。また、中等学校4年終了以上の学力を有する者を採用し、昭和14年からの2年間だけでも675名もの気象技術要員を4か月で養成する計画を立て、外地の気象隊や関東軍気象部に派遣していた。戦地拡大に伴う気象部隊の兵員補充、陸軍中央気象部での気象教育、本土気象業務の維持のため、鈴鹿に第一気象連隊が創設された。昭和19年に入るとさらに気象部隊の増強が急務となり、第二課を改編して前述した陸軍気象教育部を新設し、新たに航空学生、船舶学生、少年飛行兵の教育を開始し、気象技術要員の教育も継続された。養成された気象将校や気象技術要員は、支那に展開した気象部(後に野戦気象隊、さらに気象隊に改称)をはじめ、外地に展開した気象部隊に派遣された。<br> 第一課では、兵要気象、気象器材の研究・考案・設計、試作・試験が行われ、気象観測所の開設や気象部隊の移動にも十分に耐え得る改良が求められた。第二課では、高層気流・ラジオゾンデ観測と改良、ガス気象観測、台湾での熱地気象観測などが実施され、中央気象台や海軍の水路部などの測器との温度器差も測定された。さらに、気象勤務教程や気象部隊戦闘規範を作成して気象勤務が詳細に定められ、現地で実施されていた。陸軍気象部では作戦用の膨大な現地気象資料、陸軍気象部月報、現地の気象部隊でも各種の気象資料や気象月報が作成されていた。<br> 終戦により膨大な陸軍気象部や気象部隊の書類・資料は機密保持の目的で大部分が焼却された。連合軍司令部は陸軍気象部残務整理委員会を立ち上げ、陸軍気象機関の指揮系統・編成、気象部隊の分担業務、気象器材の製作会社、陸軍気象部の研究調査内容、陸軍と海軍における気象勤務の協力状況、中央気象台との関係、さらには予報の種類、観測・予報技術など120頁にわたる報告書を作成させた。なお、終戦時に内地・外地に展開していた気象要員の総数は2万7千名にも達していた。
著者
山本 晴彦 早川 誠而 岩谷 潔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.31-44, 1998-05-30
被引用文献数
9

Meteorological disaster was caused by heavy rainfall during typhoon 9709 in northern part of Yamaguchi Prefecture and western part of Shimane Prefecture. At Fukuga area in Abu town, the amount of preciptation from July 26 to 28 was 922 mm, and amount of preciptation on July 27 was 606 mm. The farmland was flooded because of the flood of the Ohi and the Zoumeki rivers by increased water. A farm pond collapsed four places at Mutsumi village. At Aso and Era Farm ponds, rice plants were buried by earth and sand because of bank collapse. The loss of money in the agriculture of Yamaguchi Prefecture due to heavy rainfall with typhoon 9709 exceeded 6.6 billion yen.
著者
山本 晴彦 川元 絵里佳 渡邉 祐香 那須 万理 坂本 京子 岩谷 潔
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.185-205, 2019 (Released:2019-12-23)
参考文献数
23

2018年7月5日から8日にかけて,広島県中部では梅雨前線に伴い豪雨が発生した。安芸と天応の観測所では,48時間降水量が412mm,388mmを観測した。広島市の安芸区,坂町,呉市,熊野町,東広島市などでは豪雨により土砂災害が発生した。広島県では土砂洪水災害による死者は108人,全壊住家は1,029棟に達した。安芸区矢野地区の矢野川,呉市天応地区の大屋大川と支流の背戸の川では上流で土石流が発生し,住宅の全壊,住宅への土砂の流入や浸水被害が相次いだ。
著者
山本 晴彦 鈴木 義則 早川 誠而
出版者
The Remote Sensing Society of Japan
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.463-470, 1995-12-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
23

The changes in spectral reflectance of plant leaves due to overlapping, leaf thickness, content of chlorophyll and content of water in leaf were investigated using spectrophotometer with integrating sphere. As experimental plants, we selected soybean (c.v. Fukuyutaka), sweet potato (c.v. Benikomachi) and mulberry (c.v. Tokiyutaka), which were main upland cultivar in Japan.1) Spectral reflectance of leaf surface in near infrared range increased in ASLW (accumulated of specific leaf weight, g/cm2). In visible range, even if ASLW increased, spectral reflectance of leaf surface not increased.2) In near infrared range, spectral reflectance of leaf surface linearly increased with increasing SLW (specific leaf weight, g/cm2) in the range of 0-0.05 g/cm2, which showed leaf thickness. For soybean leaves, the equation was "Reflectance in near infrared range (800-1100 nm, %)=2010× SLW+47.2", where correlation coefficient (r) was 0.905. The correlation coefficient value was 0.514 for sweet potato and 0.806 for mulberry respectively.3) Spectral reflectance of leaf surface from visible range to near infrared range increased with decreasing the leaf water content.
著者
立石 欣也 山本 晴彦 岩谷 潔 土谷 安司 倉橋 孝夫 門脇 稔 金子 奈々恵
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.251-255, 2012 (Released:2012-07-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ブドウ‘デラウェア’において,魚眼レンズを装着したデジタルカメラを用いたLAI推定技術を確立するため,その撮影方法と撮影条件の検討を行った.デジタル画像の2値化により,葉とそれ以外の部分に分け,そのピクセル値から光学的仮説に基づき,LAI推定値を算出した.晴天日の日中は開空度が大きく変化するため,LAI取得のための全天画像の撮影は曇天日,および,晴天日では太陽高度の低い時間帯である日の出や日没付近が望ましいことが示唆された.高さ150 cm程度の棚面に植栽された‘デラウェア’の性質上,棚面からの距離が100~150 cmの間で撮影すれば,より実測値に近いLAI推定値となることが確認されたが,LAI推定値は過大評価傾向を示した.過大評価となる原因を検討したところ,果実の有無の影響は撮影の時間帯による影響よりも小さかった.棚面,ハウスの構造材などの影響は無視できなかったため,開空度にその影響を加算し,LAI推定値を再計算する補正を行った.この補正により,従来の新梢長と葉面積の関係式から推定する手法より,迅速かつ簡易なLAI推定が可能であることが示された.
著者
山本 晴彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2010年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.186, 2010 (Released:2010-11-22)

1.わが国における区内観測所の雨量観測記録のデータベース化とアメダス観測データとの統合・雨量変動解析 全国各地の主要な都市には、約130ヶ所の気象官署が設置され、観測当初からの気象観測原簿のデータベース化が実施されている。しかし、気象官署以外のアメダス観測所では、アメダス観測が開始される1976年以前の区内観測所の気象観測記録については、気象官署や気象庁図書館に紙媒体の気象観測原簿や気象月報の状態で保存されている。(財)気象業務支援センターでは、気象観測原簿や気象月報をスキャナーで読み取り、紙媒体資料のデジタル化を行い、資料の劣化防止に努めている。しかし、その資料は、デジタル数値データではなくデジタル画像(TIFF形式)として保存されていることから、数値データとして利用することは出来ない。筆者らは、西中国(広島県・山口県)および九州7県の計9県について、1976年以前の区内観測記録を対象にデータベースの構築を行った。 構築したデータベースを基に、大分県について1976年以前の区内気象観測所と1976年以降のアメダス観測所における移設距離が2km以内の降水データ(9地点)を接続し、長期にわたるデータベースを構築し、年間降水量・年間降水日数(50mm以上、80mm以上、100mm以上、200mm以上の降水日数)の長期トレンドの検証を行った。また、降水の多い6-7月、8-9月における降水日数(50mm以上、80mm以上、100mm以上、200mm以上の降水)の長期トレンドについても検証を行った。線形トレンドについてはt-検定を行い、非線形トレンドについては、Mann-Kendall検定を用いた。 200mm以上の降水日数は、犬飼で増加傾向、他の地域では減少傾向が認められた。増加傾向が確認された犬飼は、過去80年にわたる日降水量の上位(1位に1993年台風13号、2位に2005年台風14号、次は11位に2003年7月12日梅雨前線豪雨)は最近の観測年である。しかし、3-10位と順位の多くをアメダス以前に観測された降水量が占めた。減少傾向が見られた中津で、アメダス観測期間(1976~2006年)では100mm以上の降水日数トレンドは増加傾向を示している。以上のことから、1976年以降のアメダス観測記録30年間における100mm以上の降水日数トレンドは増加傾向があることから、近年災害につながる豪雨が頻発していることが示唆される。しかし、1976年以前の区内観測記録を接続した長期トレンド(1926~2006年)では、増加・減少傾向は観測所により異なった。 2.中国における満州気象データのデータベース化と戦後の気象データとの統合・気温変動解析 戦前期の満州における気象観測業務は、日露戦争に際して軍事上の目的から中央気象台(現在の気象庁)が1904年8月に大連(第6)・營口(第7)、1905年4月に奉天(第8)、5月に旅順(第6・出張所)に臨時観測所を設けたのが始まりで、その後は関東都督府に引き継がれ、1925年以降は、南満州鉄道株式会社に一部を委託された。南満州の観測所では、1904・05年から1945年の終戦までの約40年間にわたる観測業務が実施されている。一方、満州国が建国(1932年3月)され、その翌年11月に中央観象台官制が制定されたため、それ以降に開設された北満の観測所では観測期間はかなり短く、扎蘭屯では観測期間が1939年からの7ヶ年に過ぎない。1942年の満州国地方観象台制では、中央観象台(新京)、地方観象台4ヶ所、観象所46ヶ所、支台46ヶ所と簡易観測所が設置されている。 筆者らは、東亜気象資料 第五巻 満州編(中央気象台、1942)をデータベースの基礎資料とし、満州気象資料、満州気象月報、満州気象報告、気象要覧(昭和18年10月号において、新京他17ヵ所の記載がある)などに掲載されている気象観測データを収集・整理し、観測開始の1905年から1943年(1941年以降は一部)までの30万データを越える月値について、データベース化を行った。さらに、中華人民共和国の建国(1949年)以降の中国気象局により観測されたデータを統合して1世紀気温データベースを構築し、中国東北部の3大都市(瀋陽、長春、ハルピン)における気温変動の解析を行った。約100年間の1月の月最低気温の推移を見ると、ハルビンでは+6.5℃、長春は+5℃と顕著な高温化が認められている。しかし、瀋陽ではこの40年間で徐々に低温化する傾向が認められており、3大都市における冬季の気温変動に違いがあることが明らかになった。
著者
山本 晴彦
出版者
日本農業気象学会
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.77-83, 1992
被引用文献数
1
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 鈴木 賢士 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.424-430, 2000-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
23
被引用文献数
4 3

1999年9月24日早朝, 九州西岸に上陸した台風18号は, 九州を縦断し周防灘から山口県に再上陸し西中国地方を通過した後, 日本海に抜けた.台風の経路上および経路の東側に位置した気象官署では最大瞬間風速40m/s以上の強風が吹き, 最大風速も九州中南部を中心に20m/s以上を観測した.九州や西中国地方では台風の通過と満潮が重なり, 有明海沿岸や周防灘では高潮により堤防が決壊し, 農作物に塩害が発生した.台風に伴う九州7県の農作物および農業用施設の被害総額は914億円, 被害面積20万haにも及んだ.また, 山口県の小野田市や宇部市の消防本部では最大瞬間風速が52.0m/s, 58.9m/sの強風を観測した.宇部港では最高潮位が560cmを観測し, 推算満潮位351cmを209cmも上回る著しい高潮であった.このため, 周防灘に面した山口県内の市町では高潮災害が相次いで発生し, 農林水産被害は高潮に伴う農耕地の冠水と塩害, 強風に伴う農作物の倒伏, ビニールハウスや畜舎の損壊, 林地の倒木など約100億円に及んだ.山口市秋穂二島でも堤防の決壊により収穫直前の水稲や移植直後の野菜苗に約100haにわたり塩害が発生し, 収量が皆無となった.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.73-81, 2006-01-31
参考文献数
27
被引用文献数
4

2004年台風15号は, 9月19日には九州の西海上を通過し, 夜半から翌朝にかけて強い勢力を維持しながら日本海を北東に進み, 青森県の津軽半島に上陸した後, 根室の南東海上で温帯低気圧に変わった.台風の通過時に伴い相川(佐渡市), 酒田, 秋田でそれぞれ38.3m/s, 39.6m/s, 41.1m/sの最大瞬間風速を観測し, 台風通過時には著しい少雨傾向にあった.このため, 海塩粒子が海からの強風により飛散して稲体に付着し, 通過時の少雨により塩分が洗い流されずに強風により出来た傷から侵入して細胞を脱水させる潮風害が東北・北陸地方の日本海沿岸で発生した.海岸からの距離と1穂当たりの塩分付着量(mg/穂)の関係には高い負の相関関係が認められ, 海岸付近では2.7〜3.2mgの塩分が1穂に付着し, 海岸から離れるにつれて付着量は減少し, 約1kmでは2〜2.5mg, 10kmでは0.5mg前後まで激減した.台風15号による農業被害は, 秋田県, 山形県, 新潟県(台風16号・18号を含む)でそれぞれ180億円, 102億円, 72億円で, その中でも水稲の被害額が3/4を占めた.水稲収量の平年比は, 秋田県象潟町での9.0%をはじめ, 県南部沿岸の本荘由利地域, 新潟県の佐渡市で大きく低下した.また, 潮風害の影響が顕著であった新潟県の佐渡地域では規格外が19.8%, 秋田県本荘地域でも11.1%に達し, 品質の低下が顕著に現れた.
著者
財城 真寿美 小林 茂 山本 晴彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

1.はじめに発表者らは,19世紀の日本列島各地から東アジアの隣接地域における気象観測記録を収集し,それらをデジタル化・補正均質化して科学的に解析可能な状態に整備するデータレスキューに取り組んできた.その過程で,日本を含めた各国の公使館や領事館において,外交業務や領事業務のかたわらで気象観測業務が行われていたことが明らかになってきた.東アジアでは,おもに台風の襲来予測のため,1876年以降電報による気象観測データの交換が行われるようになり(China Coast Meteorological Register、香港・上海・厦門・長崎のデータを交換),以後それが活発化する.公使館や領事館における気象観測は,このようなデータ交換のネットワークに組み込まれたものではなかったと考えられるが,在外公館という組織に支えられて,観測が持続された場合もあった.本発表では,この例として在京城日本公使館(領事館)における約15年間(1886-1900年)にわたる気象観測記録を紹介し,今後の類似記録の探索と研究の開始点としたい.2.在京城日本公使館(領事館)の気象観測記録在京城日本公使館(領事館)で行われた気象観測の記録は,「氣候経驗録」というタイトルを持つ独特の様式の用紙に記入されたもので,毎日3回(6時,12時,18時)計測された華氏気温にくわえ,やはり3度の天候記録をともなう(図1).現在,その記録は外務省外交史料館に収蔵されており,アジア歴史資料センターがウェブ上で公開している資料によって閲覧することができる. アジア歴史資料センターの資料にある外務省と海軍との交渉記録によれば,「氣候経驗録」は京城(漢城)に日本公使館が設置されて間もない1881年には作成されていたようである.これには,当時榎本武揚らと東京地学協会に設立にあたっていた初代公使花房義質(1842-1917)の近代地理情報に対する考え方が関与していると考えられる.しかし,壬午事変(1882),甲申政変(1884)と相次ぐ動乱で公使館が焼かれ,以後の公使館・領事館の立地が確定するのは1885年になってからである.そのため,今日までまとまって残されている「気候経験録」の観測値は1886年から始まっており,同年の送り状には「當地気候経驗録之儀久シク中絶シ廻送不仕候處當月ヨリ再興之積ニ有之・・・」と長期間の中断について触れている. こうした「氣候経驗録」の報告は1900年4月まで続き,以後は中央気象台の要請により,最高最低気温や雨量の観測値もくわえ「京城気象観測月報」が報告されるようになった.ただし,このデータは直接中央気象台に送られるようになったためか,外交史料館には現存しないようである.3.課題と展望前近代の朝鮮半島では,朝鮮王朝による雨量観測のほか,カトリック宣教師による気温観測が行われた(『朝鮮事情』)。また1888年頃には,朝鮮政府が釜山・仁川・元山に測候所を設置し、気象観測を開始した(アジ歴資料,B12082124200).さらにほぼ同じ頃,日本は釜山電信局に依頼して観測を行わせ,電報によるデータ収集を行うようになり,また京城のロシア公使館でも気象観測が行われたという(Miyagawa 2008).ただし,韓国気象局が提供するデジタルデータには,これらの観測結果は収録されていない.「氣候経驗録」にある観測値を,現代の気象データと連結・比較するには,様々な解決すべき問題点がある.しかしながら,首都京城における19世紀末期の約15年間にわたる気象データとして活用をはかることは,当時の気候を詳細に復元するだけでなく,日韓のこの種のデータの交流という点でも意義あるものとなろう.今後は,観測値のデジタル化にくわえ、観測地点の同定を行って補正・均質化を行うことにより、現代の気象データと連結したり,比較したりすることにより,長期的な気温の変動の特徴を明らかにしていく.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 張 継権
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.210, 2005 (Released:2005-07-27)

中国東北地区(戦前の旧満州、以下「満州」と称す)に広がる畑作地帯はダイズ・トウモロコシなどの穀物の大生産地であり、わが国へも輸出されている。地球温暖化に伴う高緯度地帯の気候変動に基づく収量予測を行うには、長期間の気象観測資料の収集・分析が必要である。ここでは、戦前の満州における気象観測業務の変遷と気象資料の保存状況の調査、満州気象デジタルアーカイブの構築について紹介する。満州における気象業務は、わが国が日露戦争に際して軍事上の目的から、中央気象台(現在の気象庁)が1904年8月に大連(第6)・營口(第7)、1905年4月に奉天(第8)、5月に旅順(第6・出張所)に臨時観測所を設けたのが始まりである。その後、これらは関東都督府に引き継がれ、名所変更をはじめ、長春、四平街、周平子等に測候所や支所が開設された。1925年以降は、南満州鉄道株式会社(満鉄)に一部を委託し、満鉄委託観測所が開設されて気象業務の充実が図られた。満州国設立当時には、関東観測所(大連)、関東観測所支所(旅順・營口・奉天・四平街・新京)、満鉄委託観測所(鞍山・開原・撫順・鄭家屯・林西・洮南・齊々哈爾・哈爾濱・海倫・鳳凰城・海龍・敦化)が設けられていた。建国以降は、新京に中央観象台を設置し、黒河・海拉爾等に観測業務が開設されたが、1937年12月、治外法権の撤廃及び満鉄附属地行政権の委譲に伴って、旅順・奉天・四平街・新京の4支所は満州国に委譲された。1940年の満州気象月報によれば、観象台(所)は新京の中央観象台を含めて42ヶ所、簡易観測所が126ヶ所となっている。大連の関東観測所は、関東気象台官制(昭和13年勅令第705号)により、関東気象台として引き続き気象業務を施行している。わが国が満州における気象業務を開始する以前、ロシアは満州を横断する東清鉄道を敷設し、1898年に哈爾濱_-_大連間の南満鉄道の敷設権と関東州の租借権を獲得していた。ロシアは、この年に東支鉄道建設局において哈爾濱に気象観測所を設置し、さらに10数ヶ所の気象観測所を設けていた。東支鉄道は、満州国建国とともに北満鉄道と改称し、1935年3月調印の満ソ条約に基づき満州国に委譲された。筆者らは、三菱財団平成15年度人文科学研究助成を受けて、山口大学経済学部の東亜経済研究所、気象庁図書館、国立国会図書館、広島大学附属図書館気象文庫、北海道大学附属図書館旧外地関係資料(北方資料データベース)の膨大な満州関連の資料から、気象観測記録に関わる資料を収集(図2)・整理(表1)し、データベース化を行っている。中国では「旧満州 東北地方文献職合目録」が大連市・黒龍江省図書館が編者となり出版されているが、中国の図書館における旧満州の気象観測記録に関わる資料の蔵書数はきわめて少ない状況にある。また、中国国家気候資料センターの所蔵資料も1940年以降の気象資料は見当たらないのが現状である。1940年までの月データについては満州気象資料と東亜気象資料に掲載されている。デジタルカメラで資料を撮影し、OCRソフトを用いて画像のデジタルデータベース化を進めている。未掲載データを満州気象月報(図2)で補完し、2005年3月には完成する。1941年3月以前の気象観測の日データについては、主要都市においてデジタルアーカイブの構築を予定している。
著者
猪股 優 長内 隆 後藤 智範 山本 晴彦
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会研究報告会講演論文集 情報知識学会 第10回(2002年度)研究報告会講演論文集 (ISSN:24329908)
巻号頁・発行日
pp.47-51, 2002 (Released:2017-09-21)
参考文献数
6

There are typical three kinds of of Amino acid Sequence Databases, PDB, pdb-aa, nr-aa. Originally these databases have their own format. However, each format seems as records of data, is not effective for advanced research such as homological search for amino acid sequences of proteins, ORF prediction. Experimental construction of XML database have been under construction to these databases for the purpose of efficient usage in related area. This paper reports the characteristics and problems on these databases.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 鈴木 賢士 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.424-430, 2000-09-05
参考文献数
23
被引用文献数
5

1999年9月24日早朝, 九州西岸に上陸した台風18号は, 九州を縦断し周防灘から山口県に再上陸し西中国地方を通過した後, 日本海に抜けた.台風の経路上および経路の東側に位置した気象官署では最大瞬間風速40m/s以上の強風が吹き, 最大風速も九州中南部を中心に20m/s以上を観測した.九州や西中国地方では台風の通過と満潮が重なり, 有明海沿岸や周防灘では高潮により堤防が決壊し, 農作物に塩害が発生した.台風に伴う九州7県の農作物および農業用施設の被害総額は914億円, 被害面積20万haにも及んだ.また, 山口県の小野田市や宇部市の消防本部では最大瞬間風速が52.0m/s, 58.9m/sの強風を観測した.宇部港では最高潮位が560cmを観測し, 推算満潮位351cmを209cmも上回る著しい高潮であった.このため, 周防灘に面した山口県内の市町では高潮災害が相次いで発生し, 農林水産被害は高潮に伴う農耕地の冠水と塩害, 強風に伴う農作物の倒伏, ビニールハウスや畜舎の損壊, 林地の倒木など約100億円に及んだ.山口市秋穂二島でも堤防の決壊により収穫直前の水稲や移植直後の野菜苗に約100haにわたり塩害が発生し, 収量が皆無となった.