- 著者
-
栗原 堅三
庄司 隆行
柏柳 誠
松岡 一郎
桂木 能久
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1997
大豆由来のホスファチジン酸と牛乳由来のβラクトグロブリンからなるリポ蛋白質は、味細胞の微絨毛膜に結合し、苦味物質が受容サイトに結合することを妨害することにより、苦味を選択的に抑制することがわっかた。この苦味抑制剤を実用化するためには、安定性やコストの面で、蛋白質を使うことに問題があった。そこで、蛋白質を含まない苦味抑制剤の開発を試みた。ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホファチジルイノシトールなどに苦味抑制作用があったが、ホセファチジン酸の作用は、他のリン脂質よりはるかに強力であった。ホォスファチジン酸を苦味抑制剤として使用する場合、これを純品にする必要があるかどうかを検討した。ホスファチジン酸に他のリン脂質が共存した場合でも、その苦味抑制作用は妨害を受けなっかた。そこで、大豆レスチンから、ホスファチジン酸を高含量含む分画を作成し、苦味抑制効果を調べた。この結果、このレシチン分画は、各種の物質の苦味を十分抑制することがわかった。このレシチン分画を各種の薬物と混合し、苦味抑制効果を調べたところ、苦味を十分抑制することがわかった。また、このレシチン分画で、錠剤や顆粒剤をコートすると、苦味が効率的に抑制された。また、食品の苦味成分に対する苦味抑制効果を調べた。蛋白質加水分解物のあるものは、機能性食品として注目されているが、一般に強い苦味がある。レスチン分画は、蛋白質加水分解物の苦味を抑制した。ポリフェノールは、活性酸素の作用を抑制する物質として注目を集めているが、非常に強い渋味と苦味を有する。レシチン分画は、ポリフェノールの渋味と苦味を抑制することがわかった。チョコレートには、ポリフェノールが多量に含まれているが、その渋味と苦味のため、従来はこの含量を減少させていた。レシチン分画をチョコレートに入れると、ポリフェノールを高含量含んでいても、良好な味になる。