- 著者
-
後藤 範章
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.1, pp.40-56, 2009-06-30 (Released:2010-08-01)
- 参考文献数
- 46
- 被引用文献数
-
2
本稿は,C. Knowlesらが提示した(Knowles and Sweetman eds. 2004)「ビジュアル・メソッドは社会学的想像力を活性化させる」との命題の妥当性を,筆者が16年前からゼミの学生と協働して取り組んでいる“写真で語る:「東京」の社会学”と題する研究プロジェクトと,その中から編み出された“集合的写真観察法”を通して検証するとともに,ビジュアル・メソッドのもつ豊かな可能性を描き出し,もって調査方法の視覚的再編成を促すことを目的とする.“集合的写真観察法”は,学生たちが撮影した「東京」や「東京人」に関する写真を素材として,次のように継起的に進行する3局面からなる.(1)写真“を”見ることによって感応力(センス・オブ・ワンダー)が高められ,「小さな物語素」が引き出される.(2)写真“で”見ることによって社会学的想像力が働き,「写真の背後に隠れているより大きな社会的世界」が想像イメージされ読み込まれる.(3)写真“で”語る(フィールドワークに裏打ちされたテクストを写真に寄生させる)ことによって意味が投錨され,それまで見えていなかった「社会のプロセスや構造」が視覚化(可視化)され知覚化(可知化)される.写真(画像イメージ)は,社会学の営みと人々の日常生活とを相互につなぎ合わせる「中継点アクセス・ポイント」であり,調査方法に加え教育や研究のあり方をも変革するポテンシャルを秘めている.