著者
斉藤 了文
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-20, 2006
被引用文献数
1

テクノロジーを理解する枠組みを提案する。その基本は、「人工物に媒介された倫理」である。人工物をつくるエンジニアにとって、その責任とか、人工物を使うユーザの位置づけを考える上で、人工物に媒介されているという観点は興味深い論点を含んでいる。 さらに、テクノロジーが使われている社会とその制度の記述を基に考察を進める。その基本が、不法行為法の変遷である。このポイントは、過失に焦点を当てると、それを通じて自律的な人間というユーザの位置づけができなくなる、ことである。この場合に、社会的行為者として責任を取ることのできるものは、メーカーつまり法人という「奇妙な人工物」になってしまう。また、エンジニアも専門家団体の一員として(医師や弁護士のように)損害賠償責任を負うことになれば、テクノロジーと共に暮らす社会の責任ある行為者となりうる。
著者
斉藤 了文 サイトウ ノリフミ Saito Norifumi
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.129-135, 2012

大石敏広『技術者倫理の現在』と比屋根均『技術の知と倫理』の二つの著書の批評を通じて,技術者倫理について考えていく. 3 つの方向で論じて行く. まず第一に,この 2 著の感想,もしくは概観を通じて,技術者倫理の研究の方向性について,そして各著作の論点の幾つかについて取り上げる. 第二に,新たな現代的事例に対して,新しい技術者倫理の著者たちは,どう応えるのだろうか.ここでは,東電の福島原発の吉田所長の事例を提示してみる. 第三に,補足的ではあるが,私自身このごろまた考えている技術論,技術の知識に関して,比屋根さんの論点から触発された論点や議論を提示してみたい.
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
科学基礎論学会
巻号頁・発行日
2007

rights : Copy right 科学基礎論学会「本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものである」Relation : is Version Of.http://ci.nii.ac.jp/naid/130001435409
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
社団法人 日本技術士会中部支部 ETの会
巻号頁・発行日
2007

エンジニアを専門職として位置づけるのがここでの問題である。そのために、3つの点に注目して考察する。先ず第一は、人工物問題だ。これは、エンジニア人工物をつくる専門家だということに関わる(第一節)。次に、組織問題がある。これは、エンジニアが独立して仕事をするというよりも、企業や組織に属するということに関わる(第2節)。第三に、専門家の集団が、専門家をどのようにサポートするかという問題がある(第3節)。
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.1-28, 2013-03

We construct a new technology study on artifacts. In this paper, artifacts as physical existence, designed objects, and products ordered by clients will be discussed in terms of living with objects produced by human craft. 技術論を、人工物を中心にまとめることがこの論文の目的である。理学と工学の相違から始めて、人工物を個物として取り上げる。そして、人工物は、科学技術を体現したものであるというだけでなく、発注者の意図を体現したものでもある。この観点から、責任を考えていく。そして、設計というポイントを取り出す。これらの自明の論点を展開することによって、新しい技術論を、人工物と共に暮らすという観点の下に立ち上げる。
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.29-52, 2013-03

本研究は独立行政法人学術振興協会の科研基盤研究(C)課題番号22500972の助成を得た。This article describes ethical issues in technology caused by the Fukushima nuclear accident based on reports of the Accident Investigation Committee and remarks by the party concerned. Multifaceted technological and social problems which are critical for professional engineers will be explored. The focus will be on a number of points: technological design, engineers' decision, social and legal regulation, scientific communication, and so on. 三つの事故調査委員会の報告書及び当事者の発言を基にして、福島原発事故においてどのような工学倫理の問題が存在しているかを記述してみる。もちろん、大きな事故があれば、当然多様で多面的な問題領域が出現する。その中で、技術者という専門家にとって重要となる、技術と社会の問題の発見を試みる。第1節では、設計に関して割り切りや技術の継承を扱う。第2節では、吉田所長という技術者の行動を中心に、海水注入と東電撤退の問題を扱う。第3節では、社会の要請としての規制が現場の技術から乖離する問題を取り上げた。第4節では、技術者が社会に発信する場合の問題を取り上げた。第5節では、セキュリティや専門家としての活動に関わる安全問題を取り上げた。
著者
斉藤 了文
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.129-135, 2012

大石敏広『技術者倫理の現在』と比屋根均『技術の知と倫理』の二つの著書の批評を通じて,技術者倫理について考えていく. 3 つの方向で論じて行く. まず第一に,この 2 著の感想,もしくは概観を通じて,技術者倫理の研究の方向性について,そして各著作の論点の幾つかについて取り上げる. 第二に,新たな現代的事例に対して,新しい技術者倫理の著者たちは,どう応えるのだろうか.ここでは,東電の福島原発の吉田所長の事例を提示してみる. 第三に,補足的ではあるが,私自身このごろまた考えている技術論,技術の知識に関して,比屋根さんの論点から触発された論点や議論を提示してみたい.
著者
斉藤 了文
出版者
関西大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

今年度は、公開講演会を4回行った。羽原敬二(関西大学教授)、中里公哉(九州大学非常勤講師)、藤本温(名古屋工大助教授)、井上能行(東京新聞)、佐藤健宗(弁護士)、山田健二(北見工大)、張明国(北京化工大学文化法律学院STS研究所)、岡田佳男(雪印)の諸氏の講演である。これによって、研究課題に関する議論を深めることができた。そして、成果としては長い論文が一つ、事例報告が4つある。なお、著書として単著が一つ、編著が一つ、また著書の中での論文として一つが公刊された。また、中国の東北大学で、工学倫理を含めた国際会議に出席して講演を行った。これらによって、制度を手がかりとした、人工物に関わる失敗知識の位置づけに関しては、成果の公表の点でもある程度の成果をあげることができた。去年と今年の研究会を通じて、「制度を手がかりとした、人工物に関わる失敗知識の位置づけ」には、工学内の分野の違いによって、様々な問題領域があることが見取られた。例えば、航空機の分野、船舶の分野、食品の分野、原子力の分野、化学工学の分野、情報システムの分野、等々において、問題とされるポイントも異なり、それに対処する方法も異なっている。従って、単純に「テクノロジー一般」について語る方法は見つからない。ただ、各分野の基本概念を抽出することによって、ある程度の鳥瞰的な見通しを得ることは必要とされる。それを通じて、科学技術の失敗そのものだけでなく、それと深い関連を持つ科学ジャーナリズム、法律、国際関係などの社会技術の寄与も重要になる。これらをどのように整理するかが今後の課題となる。
著者
神崎 宣次 石川 伸一 森山 花鈴 服部 宏充 太田 和彦 斉藤 了文 篭橋 一輝 杉本 俊介 鈴木 晃志郎
出版者
南山大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究の目的は次の二つです。第一に、人と各種サービス、技術、自然などの多様な要素の複合体としての都市を、個別の要素に着目するのではなく、それらの複合性に焦点を置いて分析し、都市の現在の問題と今後のあるべき姿を明らかにします。具体的には食、レジリエンス、情報、経済、そして倫理の観点を相互に連関したものとして分析します。第二に、このような学際的研究を遂行するために必要な研究手法を開発するため、プロジェクト組織を工夫することを含めた方法論のパッケージとして本研究をデザインしています。そして、都市を対象とした研究をそのモデルケースとして実施することで、方法論としての有効性を示します。
著者
斉藤 了文
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.57-64, 2008-03-30 (Released:2010-02-03)
参考文献数
12

We focus on artifact which is phenotype of a sort of genes “technological knowledge”. And we make clear the difference between science communication and technological communication mediated by artifact. Two points are essential, i. e. artifact and engineer. And then four key words are needed, requirement specification, inspection, technical standards, and manufacturing industry. We conclude that technological communication mediated by artifact is different from science communication. The point is the strangeness of “mediated by artifact”.
著者
斉藤 了文
出版者
京都哲学会
雑誌
哲学研究 (ISSN:03869563)
巻号頁・発行日
vol.566, pp.48-88, 1998-10
著者
斉藤 了文
出版者
大阪体育大学
雑誌
大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
巻号頁・発行日
no.24, pp.p105-112, 1993-08
著者
斉藤 了文
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Sociology, Kansai University (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.61-118, 2016-03

'Safety' is a charming concept. First, we conduct some useful thought experiments concerning safety. Second, scientific method is considered as a measure for securing safety. And we test the limit of scientific method. Finally, we grasp the meaning of the experiments and the limitation. The points are artifacts and agent.安全というのは、割と奇妙な概念である。この感覚を明らかにするために、まず安全を個人の命や生活を守ることだと、大くくりしたうえで違和感を取り出していきたい。第1節で安全に関わる思考実験をしてみる。そこでは、座敷牢、万里の長城、斜め横断、抜け道、アポロ13、高速道路、太陽という例を取り上げる。これらの例を使って、違和感を具体的に取り出し、さらに考察するべきポイントを探っていく。第2節では、安全確保のための方策の基本として、科学の方法と工学の方法というやり方を取り上げる。リスク削減のための、監視とコントロールというのが基本的な方法である。ただ、面白いことにこのような方法を使っても、リスクが完全になくなると考える人はまずいない。第3節では、第1節で例示した安全のパラドックスが生じてきたその根拠を掘り下げて、哲学的な論点を取り出すことにする。まず、私が背景として持っているリスクの歴史についての理解を提示(3.1)し、行為者と被害者の非対称性について(3.2)考察し、法人は自然人のようには統合された人格ではありえないということに関わる問題を考えていく(3.3)。その上で、人工物というものが、安全についての理解に、さらには現代の社会に与えている意義を提示しようとした(3.4)。
著者
斉藤 了文
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Sociology, Kansai University (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.61-118, 2016-03

安全というのは、割と奇妙な概念である。この感覚を明らかにするために、まず安全を個人の命や生活を守ることだと、大くくりしたうえで違和感を取り出していきたい。第1節で安全に関わる思考実験をしてみる。そこでは、座敷牢、万里の長城、斜め横断、抜け道、アポロ13、高速道路、太陽という例を取り上げる。これらの例を使って、違和感を具体的に取り出し、さらに考察するべきポイントを探っていく。第2節では、安全確保のための方策の基本として、科学の方法と工学の方法というやり方を取り上げる。リスク削減のための、監視とコントロールというのが基本的な方法である。ただ、面白いことにこのような方法を使っても、リスクが完全になくなると考える人はまずいない。第3節では、第1節で例示した安全のパラドックスが生じてきたその根拠を掘り下げて、哲学的な論点を取り出すことにする。まず、私が背景として持っているリスクの歴史についての理解を提示(3.1)し、行為者と被害者の非対称性について(3.2)考察し、法人は自然人のようには統合された人格ではありえないということに関わる問題を考えていく(3.3)。その上で、人工物というものが、安全についての理解に、さらには現代の社会に与えている意義を提示しようとした(3.4)。