著者
村中 泰子 斎藤 清二
出版者
清泉女学院大学人間学部
雑誌
清泉女学院大学人間学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies Seisen Jogakuin College (ISSN:13491202)
巻号頁・発行日
no.11, pp.13-25, 2014-03

Bipolar disorder is one of the mood disorders and is a mental illness that alternates between depression and manic state. It is important that the patients become aware of early symptoms for effective prevention of disease recurrence. In this study, we qualitatively analyzed narratives of patients to investigate how they understand the disease of their own and what they typically experience early in the disease recurrence.Nine patients with bipolar disorders were allowed to talk freely about their disorders. In order to study the disease from the patient's point of view, we used a narrative interview method, and the data were analyzed using SCQRM. Based on our analysis, we developed 33 concepts and ten categories, which were further grouped into three core categories.Through this study, we learned that it is difficult for patients to become aware of their hypomanic state preceding the depression, and to recognize the cause that lead to a change in the disease phase. Further, our study suggests that narrative interviews help patients realize and talk about these aspects that are usually overlooked.
著者
斎藤 清二 田中 三千雄 樋口 清博 窪田 芳樹 青山 圭一 島田 一彦 紺田 健彦 藤倉 信一郎 佐々木 博
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.1238-1247_1, 1982-08-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
15

236例のERCP施行症例につき主に選択的胆管造影率の向上を目的として,超広視野角十二指腸ファイバースコープとストレシチ法の併用の有用性を検討した.Fujinon社製DUO-X(視野角105°)を使用した149例では,膵管造影率はOlympus社製JF-B3(視野角64°)を使用した87例の成績と差はなかったが,胆管造影率は明らかに高値であった(各々93.5%,77.8%).DUO-Xを使用してプッシュ法でERCPを行った群47例の選択的胆管造影率はJF-B3の45例のそれと統計的有意差を認めなかったが(各々89.4%,77.8%),DUO-Xとストレッチ法を併用した群61例では有意に高い胆管造影成績(96.7%)が得られた.DUO-Xとストレッチ法を用いて施行条件を一定としてERCPを行った32例中胆管造影成功30例の所要時間は平均11分24秒であった.ストレッチ法でのERCPは試みた大部分の症例において容易に施行され,症例の胃形態とスコープ走行形態の間には一定の関連は見い出し得なかった.以上よりERCPにおけるストレッチ法は選択的胆管造影に有利な方法であり,超広視野角十二指腸ファイバースコープの併用により比較的容易かつ確実に施行できる勝れた方法であると思われた.
著者
斎藤 清二
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.445-449, 2005-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
12
著者
斎藤 清 森 努 岩味 健一郎
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

神経線維腫症2型(NF2)は常染色体優性の遺伝性疾患で、神経系に多数の神経鞘腫や髄膜腫が発生するために長期予後も不良である。これまでの調査でも若年発症者では20年で約2/3が死亡しており、国内807名の臨床調査個人票解析で6割は経過が悪化していた。神経鞘腫と髄膜腫は代表的良性腫瘍であるにも関わらず、なぜNF2は予後不良なのか。TCGAデータベースを用いた解析では、核内レセプター、ミトコンドリアと酸化的リン酸化、翻訳制御など、機能予測からDNA修復に関わる癌抑制遺伝子の重要性が指摘されたが、NF2に伴う神経鞘腫と孤発例の神経鞘腫の比較では、遺伝子発現には有意な差はみられなかった。NF2に多発する髄膜腫については、再発例で高頻度にIGF2BP1遺伝子のメチル化が見られたことから、ヒト悪性髄膜腫由来のHKBMM細胞におけるIGF2BP1遺伝子の役割についてCRISPR-Cas9法を用いた遺伝子破壊による低下、PiggyBacトランスポゾン系にtetracycline依存的誘導エレメントを組み込んだ誘導性発現により解析した。IGF2BP1遺伝子破壊により発現が低下した細胞では強い接着を持つ形質が顕著に失われ、細胞の遊走性が増大した。HKBMM細胞はCadherin11(CDH11)を大量に発現し、IGF2BP1遺伝子破壊を行ったHKBMM細胞では細胞間でのCDH11の発現が低下していた。これらの結果より、IGF2BP1遺伝子がRNAのレベルで細胞接着を制御して、生体内での播種を抑制していることが示唆され、易再発性にはカドヘリン依存的な細胞接着を介したIGF2BP1のRNA安定化機構が関わる可能性が示唆された。引き続き、MTAを締結して入手した神経鞘腫細胞株SC4とHE1193と用いて、髄膜腫と同様の手法によりターゲット遺伝子発現を調整して神経鞘腫の分子機序解明を進める。
著者
斎藤 清二 北 啓一朗 高木 由夏 田口 恭仁子 黒田 昌弘 初瀬 リマ 大澤 幸治 渡辺 明治 Paulo R Souza Antonio F.N Magalhaes
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.463-471, 1994-08-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

Some patients complain of continuous or reccurent abdominal pain associated with high serum levels of pancreatic enzymes but without definite signs of chronic pancreatitis on various examinations including ERCP. CT and US. This condition has been called clinically suggested chronic pancreatitis (CSCP) . In this report, we propose a new pathophysiologic hypothesis and a strategy for the treatment of CSCP based on the viewpoint of system theory and phenomenology. A psychosomatic vicious cycle consisting of the following three processes is often observed in CSCP : 1) A depressive mood and anxiety induce hypersecretion of the pancreatic juice. 2) An elevation of the intraductal pressure resulting from the pancreatic hypersecretion causes abdominal pain and increases in the serum levels of pancreatic enzymes. 3) Exacerbation of the symptoms and the information of the abnormal examination results aggravate the depressive mood and anxiety of the patient. This vicious cycle is considered to exacerbate and prolong the disease in the presence of the constitutional factor of hyperreactivity of the pancreatic exocrine function. On the basis of this pathophysiologic hypothesis, we formulated the following therapeutic strategy from a viewpoint of system theory, focusing particularly on the physician-patient relationship. ( I ) Sufficient medical interview and physical examination ; ( 2 ) examinations needed to exclude malignancies ; ( 3 ) proper explanation of the disease ; ( 4 ) setting control of symptom as the goal of the treatment ; and ( 5 ) administration of anti-depressants, if necessary. In this report, the clinical courses of two cases of CSCP, a 39-year-old female and a 32-yearold male, treated according to this strategy are described phenomenologically, and the validity of the hypothesis and the therapeutic strategy is evaluated.
著者
八島 不二彦 今井 優子 斎藤 清二 宮脇 利男 西川 友之 立浪 勝 松井 祥子 瀬尾 友徳 竹澤 みどり 酒井 渉 彦坂 伸一 野原 美幸 二上 千恵子 原澤 さゆみ
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.13-18, 2013-03

富山大学では平成20年度に4人,平成21年度に3人の自殺が発生し,その対策として平成21年12月に富山大学自殺防止対策室が設置された。\富山大学自殺防止対策室は自殺者ゼロを目標に掲げ,約3年間さまざまな活動を行って来た。その結果,自殺防止対策室が本格的に活動を始めた平成22年度から平成24年12月現在までの自殺者は2人に止まっている。自殺者の減少という結果は出ているが,富山大学の自殺防止対策システムは本当に機能しているのか疑問が残る。\そこで本研究ではこれまでの富山大学自殺防止対策室の活動実績を分析し富山大学における自殺防止対策システムが有効に機能しているかについて検討する。
著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.2053-2058, 2003-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12

近代医学は生物科学的側面を過剰に重視するあまり,患者の心理社会的側面を含む全人的な配慮をおろそかにしてきた.このような近代医学の偏りを補償するムーブメントの一つとして, Narrative Based Medicine (NBM:物語りに基づく医療)が提唱され,注日を集めている. NBMは,ポストモダンなパラダイムである社会構成主義をその理論的背景とし,人類学,社会学,心理学などの関連領域との学際的な連携をその特徴とする.一般医療におけるNBMの特徴は, 1)個々の患者の病いの体験と人生についての物語りの尊重, 2)語り手としての患者の主体性の尊重, 3)医療における多元性の尊重, 4)非因果論的観点の重視, 5)治療としての対話の重視,などにまとめられる.また, NBMとEvidence Based Medicine (EBM)とは,互いに補償しあう,患者中心の医療実践のための車の両輪的方法論であると言える.
著者
斎藤 清二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.2053-2058, 2003-10-10
参考文献数
12
被引用文献数
2

近代医学は生物科学的側面を過剰に重視するあまり,患者の心理社会的側面を含む全人的な配慮をおろそかにしてきた.このような近代医学の偏りを補償するムーブメントの一つとして, Narrative Based Medicine (NBM:物語りに基づく医療)が提唱され,注日を集めている. NBMは,ポストモダンなパラダイムである社会構成主義をその理論的背景とし,人類学,社会学,心理学などの関連領域との学際的な連携をその特徴とする.一般医療におけるNBMの特徴は, 1)個々の患者の病いの体験と人生についての物語りの尊重, 2)語り手としての患者の主体性の尊重, 3)医療における多元性の尊重, 4)非因果論的観点の重視, 5)治療としての対話の重視,などにまとめられる.また, NBMとEvidence Based Medicine (EBM)とは,互いに補償しあう,患者中心の医療実践のための車の両輪的方法論であると言える.
著者
斎藤 清二
出版者
日本箱庭療法学会
雑誌
箱庭療法学研究
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.75-82, 2014

1991年から2000年の10年間に,84名の摂食障害患者(神経性食思不振症[AN]53名,神経性過食症[BN]31名)が,心理療法セッションにおいて,自身の病いの経験と夢について語ることを勧められた。12名の女性の患者(AN8名,BN4名,14歳から28歳)が研究協力者となった。これらの患者は8ヶ月から6年間経過観察され,全例が寛解に達するか,明らかな病状の改善を認めた。322編の夢の語りが収集され,物語分析法により質的に分析され,カテゴリー化された。研究協力者から報告された夢語りのテーマと構成概念は,以下のようなキーワードによって描写することができた。「孤立/混乱/自我同一性の喪失」「旅」「試練」「異界」「自己解体」「死と再生」。比喩的に言えば,研究協力者のメタ・ナラティブは,通過儀礼,変容,死と再生といったテーマに関連しており,それを通じて真の自己が実現される一種の「探求の物語」として描写可能であった。結論として,個人レベルの人生の物語だけではなく,超個人的あるいは元型レベルの物語を共有することが,摂食障害の患者を理解し,治療的に寄り添うことを続けるために重要である。
著者
斎藤 清
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.385-389, 1969-10-31

Recently, Ixia is grown on a small scale for cut-flowers in oup country. Twenty-two commercial varieties were used to examine the somatic chromosome numbers, fertility, and other habitual characteristics. Six varieties were diploid (2n=20), 8 triploid (2n=30) and the rest were tetraploid (2n=40). Tetraploids, as well as most of the triploids, had larger flowers and prettier colors, and showed considerably higher fertility than diploids. Some varietal and inter-specific crosses succeeded in the mixed state with diploids, triploids, and tetraploids levels. So, it was assumed that these tetraploids and triploids would be of allopolyploid constitutions.

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著者
斎藤清太郎 著
出版者
明治書院
巻号頁・発行日
1917
著者
斎藤 清
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.331-337, 1977
被引用文献数
3

(1) 花きにおける新変異形質作出のための育種的手法として放射線照射が効果的に採用されており, 従来よく知られた種類としては栄養繁殖を常とする宿根草や球根のいくつかを挙げることができる. 一方, 種子繁殖を常とする1年草では, 照射処理によって偶発した変異の遺伝性や後代における発現状況を確認する必要があるので, 前者ほどに適切な例は稀となっている. 本実験はこの後者の場合として, ガンマー圃場内に栽植された緩照射株に生産された種子の実生を通してえられたウォールフラワーの半八重咲およびモス=バーベナにあらわれた白色花系統における変異性を明らかにしその利用度を考慮したものである.<br>(2) ウォールフラワーにあらわれた微八重ないし半八重咲花は本来の4枚花弁に1~数枚のさじ型奇形の過〓が不規則に加わるもので, その程度の強まるにつれて雄•雌ずいの退化もおこり, しだいに不ねんになってくる. 自然結実種子によるγ<sub>3</sub>世代では大多数の株が微八重ないし半八重咲花をつけ, この形質が単純な劣性であることを思わせた. しかし, 従前から存在している自然発生の半八重咲市販品種に比べると, この新系統は花序が小さく小花が密集し葉幅もやや狭いので実用的価値は低いようである.<br>(3) モス=バーベナにあらわれた白色花系統はγ<sub>2</sub>,γ<sub>3</sub>世代の実生ですべて白色花となり, この形質は有色に対して単純な劣性であると思われる. 原品種に比べて小花がわずかに小さく葉縁にいくらか円味をもつ程度の差はあるが, 草勢はほとんど変わることなく, 花壇用の白色材料として利用されえよう. 文献によれば変種 albaの存在が知られており, その成立もおそらく以前にあらわれた花色喪失の偶発的な自然突然変異によったものであろう.
著者
斎藤 清二
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.5-12, 2015-03

本邦における大学生自殺予防の取り組みは、各大学によって個別に行われてきたが、2014年に日本学生相談学会がガイドラインを公表するなど、個々の大学の壁を越える努力もなされるようになってきた。しかし本邦での、大学生の自殺への予防的介入に関する実証的な研究報告はほとんどないのが現状である。そのような状況の中で、富山大学は2010年から2012年までの3年間、大学内に自殺防止対策室を設置し、系統的な自殺防止対策に取り組んだ。本稿では、富山大学における3年間の取り組みの概略を報告するとともに、その経験に基いて、大学生の自殺予防についての考察と提言を試みる。
著者
八島 不二彦 今井 優子 斎藤 清二 宮脇 利男 西川 友之 立浪 勝 松井 祥子 瀬尾 友徳 竹澤 みどり 酒井 渉 彦坂 伸一 野原 美幸 二上 千恵子 原澤 さゆみ
出版者
富山大学保健管理センター
雑誌
学園の臨床研究 (ISSN:13464213)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.13-18, 2013-03

富山大学では平成20年度に4人,平成21年度に3人の自殺が発生し,その対策として平成21年12月に富山大学自殺防止対策室が設置された。\富山大学自殺防止対策室は自殺者ゼロを目標に掲げ,約3年間さまざまな活動を行って来た。その結果,自殺防止対策室が本格的に活動を始めた平成22年度から平成24年12月現在までの自殺者は2人に止まっている。自殺者の減少という結果は出ているが,富山大学の自殺防止対策システムは本当に機能しているのか疑問が残る。\そこで本研究ではこれまでの富山大学自殺防止対策室の活動実績を分析し富山大学における自殺防止対策システムが有効に機能しているかについて検討する。
著者
斎藤 清明
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.135-140, 2008-03-31

総合地球環境学研究所(地球研)の研究プロジェクト「人の生老病死と高所環境~三大『高地文明』における医学生理・生態・文化的適応」(通称, 「高地文明」プロ)が, 予備研究から本研究に向けてすすんでいくなかで, 研究目標がはっきりしてきた. 本研究は2008年から2012年まで5年間の計画. 高地における人間の生き方と自然および社会経済環境との関連を, 世界の3大高地といわれるアンデス, ヒマラヤ・チベット, エチオピアで調査研究を行い, 比較していく. ようするに, 「高地文明」というものの解明であると, 私はかんがえる. この研究プロジェクトの予備研究に, 私は「自然学班」として加わり, 「高所環境と自然学~自然学の可能性」というテーマをかかげた. それは, 今西錦司が提唱した「自然学」を, 高地の人々の自然観を調べることによって展開させようというねらいであった. そのために, まず「自然学」というものを検討した. そのうえで, 「自然学」を展開させて「高地文明」プロに加わっていくためにどうすべきかを考え直してみた. そうして, 私にとっては馴染みのあるチベットを, 高地文明としてとらえてみようとおもった.
著者
斎藤 清 金子 幸雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.101-108, 1975-04-30
被引用文献数
1

(1) ボケ類にひろくみられる不結実性を明らかにして今後の育種上の知見をうるために市販品種15点および野生種クサポケを用い,数年にわたってフレーム内で素焼鉢作りとして,花粉および胚のう形成について若干の細胞学的観察をおこなった。 (2)開花時期および茎状のちがいによって供試材料を寒咲型(6点)・春咲型(6点)およびクサボケとその類似型(4)点とに区別し,それぞれの根端における染色体数を調査したが,すべて2n=34の二倍体であることが確認された。 (3)花粉母細胞にあらわれた減数分裂像をみると,IMにおいて17_<II>が規則正しく形成される緋の御旗や東洋錦などがみられた反面,黒光・緋赤寒ぼけ・長寿楽などではかなり混乱した染色体対合が観察され,1価や4価染色体も多く現われていた。つづくIIMにおいても後者のものでは異常な分裂が顕著におこっており,四分子期にも奇形の二〜三分子,さらに五〜九分子にいたるものが散見された。 (4) したがって,開花時の充実花粉粒率も前記の異常分裂の傾向と大むね軌を一にしてあらわれており,黒光や長寿楽ではほとんど健全粒の形成がみられなかった。一方舞妓・浪花錦・長寿梅(白花)のようにきわめて良好な健全粒率を示すものもあったが,それらでも完全な果実の着生がみられなかった。 (5)数点の品種について解剖的に観察された胚のう形成については,一般に開花2日前の完全花で比較的多くの健全な卵装置をもつ胚のうが完成しており,その後受粉受精をうけたか否かは不明であるが,約2週間はそのままの状態で存在し,その後しだいに退化崩壊がはじまり,ついに原胚の発生を示す標本をうることはできなかった。一方,クサポケにおけるわずかの標本では受精によって生じた原胚がしだいに細胞分裂をはじめ,開花後2〜3週間目でようやく小さな棍棒状を呈するものが観察された。 (6) ボケ類に普通にあらわれる不結実の原因として,品種成立の過程にからんでいる雑種性による遺伝的な配偶体および接合体の致死,自家および他家不和合現象の存在,さらに限界的な低温などによる環境的要素などが組みあわされているものと考察された。

1 0 0 0 OA 西洋歴史物語

著者
斎藤清太郎 著
出版者
アルス
巻号頁・発行日
vol.下, 1930