著者
杉山 雄大 今井 健二郎 東 尚弘 冨尾 淳 田宮 菜奈子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.567-572, 2020-09-15 (Released:2020-10-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1

目的 米国CDCについて概説し,今般のCOVID-19拡大とその対応を受けて今後日本版CDCを構想する際に検討するべき論点について提案する。方法 筆者らがCDCを訪問した際のインタビュー,ウェブサイト等からの情報をもとに,CDCについて概説した。その上で,日本版CDCに関する既存の見解や本邦の現状,COVID-19対応の教訓を踏まえて日本版CDCを構想する上で検討するべき論点を整理した。結果・結論 CDCは「健康,安全,セキュリティの脅威から米国を守る」ことをミッションとする,公衆衛生の主導的立場にある米国連邦政府機関である。実地疫学,緊急準備と対応,サーベイランス・統計調査,検査方法・調査方法の開発,情報発信,人材育成,検疫,予算配分などを行っており,COVID-19にも様々な対応をしている。日本版CDCを構想する際には,対象とする疾患や課題のスコープ,組織体制,ミッション,科学的中立性の担保,人材育成のあり方などについて議論する必要がある。
著者
東 尚弘 岩本 桃子 中村 文明
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.672-675, 2015 (Released:2015-10-25)
参考文献数
2

がん医療の均てん化はがん対策の大きな課題である. そのためには医療の質の測定・把握が必要であるが, データ源として最も信頼の置ける診療録からの採録は作業負担への懸念から, 限界は許容しつつ院内がん登録とDPC (diagnosis-procedure combination) データをリンクしたデータによる指標の測定が始まった. 両データをリンクするためには病院内で共通の匿名番号をつける必要があるが, データの標準化も十分ではなく, さまざまな困難があった. 専用のソフトで作業を自動化し, ソフトも各種課題に対処して改良を重ねることで, 2012年症例では232施設からデータの収集が可能であった. 今後は, 参加病院のがん診療の質の向上と, がん対策の効果的推進の両方にこのデータを活用していく体制構築を行っていく.
著者
竹中 理恵 伊東 尚美 安 邦子 加藤 久美子 峯田 祐次 阿部 菜穂子 岩谷 さゆり 秋野 良子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.71, 2006

<b><緒言></b>当病棟では、せん妄症状の患者に対し、チューブ類の自己抜去や転倒を防ぐために、やむを得ず睡眠剤の投与や抑制を行い危険行動を抑えているのが現状であった。そこで、アロマテラピーの導入で、せん妄症状の患者に対しても少ない症例ではあるが改善が見られたためここに報告する。<BR><b><方法></b><BR>1.対象 夜間せん妄症状が見られた当病棟入院患者で、今回の研究を行うことに家族の了承を得た患者3名<BR>2.方法<BR>1)開始時期<BR> 三瓶氏らのアセスメント表を参考に、せん妄スケール表(以下スケール表とする)を作成し2段階に該当した時点でアロマテラピーを開始する。<BR>2)アロマテラピーの施行方法<BR> 精油をコットンに垂らし枕元に置く。<BR> (1)開始時:リラックス効果のあるラベンダーを使用<BR> (2)開始4時間後から起床時:鎮静効果と催眠作用のあるカモミールを使用<BR> (3)開始が0時以降の場合は2種類を混合し使用<BR>3.データ収集方法<BR> スケールの点数からアロマテラピー使用後のせん妄症状の変化を比較する。<BR>4.倫理的配慮<BR> 同意書に、知る権利・医療における自己決定権・害を与えないこと・プライバシーの保護について記載し、家族に対して説明する。<BR><b><結果></b>スケール点数を比較したところ、全ての症例において開始4時間後に点数の下降が見られた。(資料1参照)また、開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒した。<BR><b><考察></b>環境の変化に不安、チューブ類や安静などによる拘束感、苦痛からくる不眠や疲労に関連し、せん妄症状が出現した患者3名に施行した。アロマテラピー使用後、3名とも「いい臭いがする」「落ち着く」と言い入眠につながった。吉田は「香りの刺激は嗅覚によって感覚されるが、その神経ルートは他の感覚以上に情動脳系に直結している。」<sup>1)</SUP>と述べている。このことから、ラベンダー・カモミールの香りはリラックス効果が高く、ストレスに由来する各種障害に有効と言われているように、鎮痛・安眠効果が得られ入眠を促すことができたと考えられる。<BR> また、使用開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒し「すっきり眠れた」と話された。深夜問わず睡眠剤を使用した場合その効果が日中まで遷延するが、アロマテラピーのもたらす効果で自然な入眠が得られ、崩れた入眠パターンを取り戻す機会になったと考える。<BR><結論>せん妄患者にもアロマテラピーは、自然な入眠を促すことができ、睡眠パターンを取り戻す介入方法として効果が期待できる。<BR><b><引用文献></b><BR>1)吉田倫幸:香りとリラクセーション,現代のエスプリ,P58,1993<BR><b><参考文献></b><BR>1)三瓶智美:クリティカルケアで不穏せん妄をどうアセスメントするか,看護技術,vol 51 No1,2005<BR>
著者
朝倉 弘美 吉元 洋一 後東 尚樹 北村 敏乃
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100048-48100048, 2013

【はじめに、目的】 介護予防とは「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと,そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと,さらには軽減を目指すこと」と定義されている.また,平成18年度の介護保険法改正により,介護予防は,要介護状態の軽減や悪化の防止だけでなく,高齢者が地域で再び自立して生活することができるようにすることを目的に,要支援者に対し介護予防サービスを効果的に提供する予防給付と併せて,要支援・要介護状態等となる恐れのある高齢者を早期に把握し,水際で食い止める介護予防事業が重視されることとなった.一方,フラダンス(以下,フラ)は,ハワイアン音楽に合わせたゆったりした動きであるが,常に股関節・膝関節屈曲位での動きであり,体幹は正中位に保持したままで骨盤の回旋・傾斜運動が反復的に行われる.また,エアロビクスや太極拳と同様に有酸素運動であり,1曲(3~4分程度)の運動量は4~6METsであると報告されている.しかし,介護予防にフラを使った報告は少なく,今回,フラによる運動効果について検証したので報告する.【方法】 研究目的に賛同を得られた,60歳代・70歳代のフラ未経験女性8名(平均年齢66.1歳)を対象に,3か月間(週1回,計12回)のフラレッスンを実施し,実施前後の運動機能・動作能力等をE-SAS,開眼片足立ち時間,Functional Reach Test(以下,FR),握力,筋力等で比較した.なお,E-SASは質問紙であるため,回答の信頼性を確認するために改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下,HDS-R)を実施した.フラレッスンは1時間とし,ストレッチ・リズム体操・フラの基本の動きを使った筋力トレーニング・ダンスレッスンを実施した.なお,毎回,実施前に血圧を測定した.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には書面及び口頭にて,研究目的,研究方法,研究期間,途中でのクレーム等の権利の確保,プライバシーの保護等について説明した後,書面による参加の同意を得た.なお,本研究は,専門学校星城大学リハビリテーション学院研究倫理委員会の承認を受けて実施した(承認番号120001).【結果】 1名が高血圧症で通院及び内服中であり,実施前の血圧測定で高血圧の症状が見られたため,その1名は除外し,対象は7名とした.E-SASでは,生活のひろがり,歩くチカラ,人とのつながりで5名の改善が認められた.HDS-Rでは全て25点以上であり,E-SASの結果の信頼性に問題はないと判断した.また,BMIは4名に減少が認められた.開眼片足立ち時間,FR,握力,Timed Up & Go Test(以下,TUG)では,6名の改善が認められた.下肢筋力では4~5名の改善が認められた.最終評価時の自由記載欄では,5名が楽しかったと回答しており,また,自分が想像していた以上に動けなかったと2名が回答した.【考察】 12回のフラレッスンにより,半数以上に筋力,バランス能力,柔軟性,歩行能力の改善が認められたことは特筆すべきことである.またE-SASにおいても5項目中3項目に改善が認められたことにより,フラは介護予防に有用な手段となり得ると考える.フラはパウスカートやフラワーレイなどのコスチュームでハワイアン音楽に合わせてゆったりと踊るため楽しく実施でき,その「楽しさ」が「運動の継続」に繋がると考える.さらに,発表会などに参加するなどの目標を持つことや,人前でダンスを披露することの「満足感・達成感」が,さらなる「運動の継続」に繋がると考える.介護予防には,定期的な,そして継続的な運動が重要であり,フラはその有効な手段であると考える.しかし,本研究では対象者数が少ないため,さらに対象者数を増やして検証する必要がある.【理学療法学研究としての意義】 フラの運動効果を明らかにすることで,「フラによる介護予防プログラム」作成の一助となると考える.
著者
伊東 尚史 毛良 明夫 村田 寿 吉田 照豊 境 正 山内 清 山崎 義弘 山口 登喜夫 宇川 正治
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.50-54, 2000-01-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
16
被引用文献数
5 7

ブリの細菌性溶血性黄疸と酸化ストレスとの係わりを明らかにするため, ブリに原因菌を接種後, 肝臓および血漿の脂質過酸化の程度を調べた。その結果, 著しい溶血と黄疸を引き起こした病魚は, 対照区と比較して脂質過酸化が顕著に進行していた。すなわち, 黄疸ブリは過酷な酸化ストレスを受けていた。したがって, ブリの細菌性溶血性黄疸は, 溶血による酸化ストレスの増加により発症すると考えられる。
著者
伊東 尚史 村田 寿 大山 剛 吉田 照豊 境 正 山内 清 山口 登喜夫 宇川 正治
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.298-299, 2000-03-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

ブリの細菌性溶血性黄疸の症状を, アスコルビン酸(AsA)給与により軽減できることを明らかにするため, AsAカルシウム塩を94mg/100g配合されたシングルモイスト飼料(1区)を対照とし, これに外割で2%L(+)-アスコルビン酸を加えた高AsA飼料(2区)を5日間ブリに給与後, 黄疸原因菌を接種した。原因菌の接種によりすべてのブリで黄疸が発症したが, 高AsA飼料給与区の肝臓および血漿のAsA含量は, 対照区の値と比べ著しく減少した。黄疸発症魚の血液ヘモグロビン含量の減少, 比肝重値および比脾臓重値の増加および血漿ビリルビン含量の増加は, それぞれ1区に比べ2区の方が抑制された。すなわち, 高AsA飼料の短期間給与により, ブリの細菌性溶血性黄疸の症状を軽減できた。
著者
竹中 理恵 伊東 尚美 安 邦子 加藤 久美子 峯田 祐次 阿部 菜穂子 岩谷 さゆり 秋野 良子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.71, 2006 (Released:2006-11-06)

<緒言>当病棟では、せん妄症状の患者に対し、チューブ類の自己抜去や転倒を防ぐために、やむを得ず睡眠剤の投与や抑制を行い危険行動を抑えているのが現状であった。そこで、アロマテラピーの導入で、せん妄症状の患者に対しても少ない症例ではあるが改善が見られたためここに報告する。<方法>1.対象 夜間せん妄症状が見られた当病棟入院患者で、今回の研究を行うことに家族の了承を得た患者3名2.方法1)開始時期 三瓶氏らのアセスメント表を参考に、せん妄スケール表(以下スケール表とする)を作成し2段階に該当した時点でアロマテラピーを開始する。2)アロマテラピーの施行方法 精油をコットンに垂らし枕元に置く。 (1)開始時:リラックス効果のあるラベンダーを使用 (2)開始4時間後から起床時:鎮静効果と催眠作用のあるカモミールを使用 (3)開始が0時以降の場合は2種類を混合し使用3.データ収集方法 スケールの点数からアロマテラピー使用後のせん妄症状の変化を比較する。4.倫理的配慮 同意書に、知る権利・医療における自己決定権・害を与えないこと・プライバシーの保護について記載し、家族に対して説明する。<結果>スケール点数を比較したところ、全ての症例において開始4時間後に点数の下降が見られた。(資料1参照)また、開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒した。<考察>環境の変化に不安、チューブ類や安静などによる拘束感、苦痛からくる不眠や疲労に関連し、せん妄症状が出現した患者3名に施行した。アロマテラピー使用後、3名とも「いい臭いがする」「落ち着く」と言い入眠につながった。吉田は「香りの刺激は嗅覚によって感覚されるが、その神経ルートは他の感覚以上に情動脳系に直結している。」1)と述べている。このことから、ラベンダー・カモミールの香りはリラックス効果が高く、ストレスに由来する各種障害に有効と言われているように、鎮痛・安眠効果が得られ入眠を促すことができたと考えられる。 また、使用開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒し「すっきり眠れた」と話された。深夜問わず睡眠剤を使用した場合その効果が日中まで遷延するが、アロマテラピーのもたらす効果で自然な入眠が得られ、崩れた入眠パターンを取り戻す機会になったと考える。<結論>せん妄患者にもアロマテラピーは、自然な入眠を促すことができ、睡眠パターンを取り戻す介入方法として効果が期待できる。<引用文献>1)吉田倫幸:香りとリラクセーション,現代のエスプリ,P58,1993<参考文献>1)三瓶智美:クリティカルケアで不穏せん妄をどうアセスメントするか,看護技術,vol 51 No1,2005
著者
坂東 尚周 奥田 喜一 北沢 宏一 鯉沼 秀臣 井口 家成 庄野 安彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究は、工業的に応用可能な優れた超伝導材料あるいは超伝導デバイスを創製するため、(1)異方性の化学的制御と新物質探索、(2)異方性とボルテックス状態の解明、(3)原子層制御と電子機能設計を目的として組織されたものである。成果は以下の通りである。(1)異方性の化学的制御と新物質探索高圧合成によりRe添加水銀超伝導体HR_<1-x>Re_xCa_<n-1>Cu_nO_yの単相化に成功し、ポストアニールによりピニング特性が改善された。中性子回折によりReとHgが規則配列し、異方性が低減することによると考えられる。高濃度Pb置換Bi2212単結晶で不可逆磁場の大幅な上昇が見出され、有効なピニングセンターの存在を示した。高分解能電子顕微鏡により、高濃度鉛相と低濃度鉛相が交互に帯状に析出し、この界面が磁束に対する有効なピンとして働いているとしている。この他低次元スピンギャップ系の梯子格子をもつ化合物やY247の構造に関し、新しい知見が得られた。(2)異方性とボルテックス状態の解明La系、Y系、Bi系の単結晶を用いて唯一の一次相転移とみられる磁束格子融解転移がSQUID、局所磁化測定、超音波測定、複素帯磁率、磁気トルク測定によって研究された。また、磁束融解転移が理論的に検討された。一方、27テスラまでの高磁場中での無双晶YBCOの磁束融解転移が明らかにされ、その他STMによる磁束に直線観察の試みがなされた。(3)原子層制御と電子機能設計STM、同軸イオン散乱分光法、RHEEDなど表面解析技術を駆使して表面原子層の制御や成長メカニズムの解明が行われ、薄膜作製における原子層制御技術は着実に進歩した。積層型SIS接合として、a軸配向した高T_cのY123酸化物薄膜の間にSrTiO_3を挟んだデバイスの作製に成功した。この他局在準位制御による接合の特性、Y123薄膜の準粒子注入効果、La系単結晶の固有ジョセフソン効果を用いたスイッチ素子の検討、Y123/強誘電体による電界効果などの研究が行われた。