著者
坂井 友実 津谷 喜一郎 津嘉山 洋 中村 辰三 池内 隆治 川本 正純 粕谷 大智
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.175-184, 2001-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

【背景】本邦での鍼に関するランダム化比較試験の試みは数少なく、対照群に鍼治療以外の治療法をおいた研究はほとんどない。本邦において、医療制度の中に鍼灸が位置付いてゆくためには、質の高い臨床研究の結果が求められている。今回の臨床試験はこのような状況を踏まえ鍼を受療することの多い「腰痛症」を対象として行われた。【目的】「腰痛症」に対する低周波鍼通電療法の有効性および安全性を経皮的電気刺激法を対照としたランダム化比較試験により検討する。本試験は1995年9月から1996年6月にかけて瀬踏み的になされた第1期の研究を引き継ぐ第2期に相当する探索的なもので, 第3期の確認的な試験へ向けてのデータ収集の意味を持つ。【対象および方法】下肢症状がなく、発症から2週間以上経過した腰痛患者を対象に低周波鍼通電療法 (A群) と経皮的電気刺激法 (T群) の多施設ランダム化比較試験とした。観察期間は2週間、治療回数は5回とした。通電は各群とも1 Hzで15分間行った。【結果】目標症例数の80例に対して71例の応募者があり、68例が封筒法によりA群とT群に割付けられ、最終的にはA群の31例とT群の33例が解析の対象となった。背景因子として、年齢、罹病期間などには両群間に有意差はみられなかったが、性別、鍼治療経験の有無、経皮的電気刺激法の経験の有無には有意差がみられた。疼痛スケール (以下「VAS」とする) は最終時でA群は5.3±3.0に、T群は5.9±3.4に軽減した。また、主要評価項目であるVASをもとにした痛み改善度の効果判定では、A群は13/31例 (41.9%) に改善がみられ、T群では10/33例 (30.3%) に改善がみられた。さらに、副次的評価項目である日本整形外科学会腰痛治療成績判定基準 (以下「JOAスコア」とする) は初診時14.5±3.0点、T群は15.0±2.8点であったが、最終時では15.9±2.0点と15.8±2.6点であった。しかし、A群とT群の両群問では、VAS及びVASをもとにした痛み改善度JOAスコアにおいて統計学的な有意差はみられなかった。【考察】プロトコールに沿ってデータの収集が行われたことは中央委員会の設立によるところが大きいと考える。目標症例数に達しなかったことは、臨床試験に対する患者の理解が低いことや参加施設のおかれている立地条件が考えられるが、患者募集の仕方にも工夫をしてみる必要があると思われる。また、鍼の効果を立証していくためには介入の方法や評価項目などについて検討していく必要があると思われた。【結論】腰痛症に対するA群とT群との間には有効性の差はみられなかった。第3期へ向けての基礎的データが収集された。
著者
新井 一郎 津谷 喜一郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.161-171, 2011 (Released:2011-07-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

漢方の英語論文において文献データベースで付与されているキーワードと論文中の漢方の英語表現との関係を調査し,漢方が英語論文中でどのように表現されるべきかを考察した。まず,The Cochrane Library中のCENTRALからPubMed由来の漢方論文を選出した。“Medicine, Kampo”というMedical Subject Headings(MeSH)が付与されている論文は,本MeSHが設定された2000年以後では53報中13報と少なかった。次に,論文中の“Kampo”という言葉の有無や漢方が“Japanese medicine”と表現されているかどうか,また,それと“Medicine,Kampo”付与との関係を調査した。その結果,論文中に“Kampo”と“Japanese”を含む表現が併記されていると,“Medicine,Kampo”が付与される割合が高いことが判明した。英語論文を書く場合には,漢方の英語表現として“Kampo”および“Japanese”が含まれる“Kampo medicine (traditional Japanese medicine)” のような表現を用いるべきである。
著者
若山 育郎 高澤 直美 東郷 俊宏 津谷 喜一郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.47-51, 2009-02-01
被引用文献数
1

2008年11月7日から3日間にわたって中国北京郊外の九華山荘においてWHO Congress on Traditional Medicine (WHO伝統医学会議) が開催された。 Opening ceremonyではWHO事務局長のDr. Margaret Chanが講演し、 Primary Health Careと予防医学における伝統医学・補完代替医療の重要性を訴えた。 また、 会議期間中に採択された北京宣言では、 各国政府主導による伝統医学のHealth Care Systemへの組み込みが必要であることが強調された。 <BR> 会議に並行して、 世界鍼灸学会連合会 (WFAS) をはじめ伝統医学関連の4つのサテライトシンポジウムが開催された。 WFASシンポジウムでは、 会議の主旨に従い、 各国における伝統医学・補完代替医療の現状や教育・研究・法整備などの実態に関するセッションが用意されていた。 WFAS執行理事会ではWFAS憲章の改訂などについて審議されたが、 その概要については別稿に譲る (本誌 p.52)。 昨年の北京シンポジウムにて予備的に開催されたUniversity Cooperation Working Committeeは、 今回も開催され、 当面の目標として国際的な教科書の制作を行っていきたいとの提案がなされた。
著者
津谷 喜一郎
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.31-43, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
津谷 喜一郎
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.569-598, 1998-03-20 (Released:2010-03-12)

WHO西太平洋地域事務局の伝統医学担当医官としての, 種々の状況における演者の経験は多様なものであった。その中でしばしば演者は, 伝統医学の“普及”が先か“評価”が先かという論争に巻き込まれた。しかし, 中医学の“普及”に対し強い政策を採る中国も1990年代となり, 中医学に臨床疫学の手法を取り入れるようになった。本講演で, 演者は臨床薬理学者としての立場から, 東アジアに焦点を当て伝統医学の現状を述べ将来へのプランを提示した。まず, 臨床薬理学と臨床疫学の関係についてふれ, 無作為化比較試験 (randomized controlled trial: RCT), プラセボ, 種々のバイアスとそれを減ずるための手法など, この領域の基本的コンセプトについて述べた。研究デザインによるエビデンスの違い, 前後の比較の問題点などについて紹介した。「エビデンスに基づいた東洋医学」(Evidence-based Oriental Medicine: EBOM) を提示し, その基本となる臨床試験の文化的受容性と実行可能性について論じた。また古典が形成された時代における有効性や安全性についての情報の蓄積のパターンと, 産業化された現代のそれのと比較を行った。Number needed to treat (NNT) のコンセプトの紹介を通じて, 集団に効くことと個人に効くことの違い, また東洋医学の評価においてソフトデータをエンドポイントとしての重要性を論じた。エビデンスを臨床の現場にどう適用するかについて述べ, エビデンスがない場合にはそれを作る方向, すなわちエビデンスに対しバイアスをもった医学 (Evidence-biased medicine) が望まれるとした。厚生省は1989年に漢方エキス製剤の再評価プログラムをスタートさせた。これは, WHOによる herbal medicine の評価に関する活動などの世界的な流れを汲むものである。漢方エキス製剤の臨床試験に関する情報や, 有害事象・副作用情報の公開の必要性を, 医薬品行政の情報公開とともに論じ, また単一事例法を紹介した。日本東洋医学会が, 今後の漢方薬の評価の戦略づくりにおいて演ずる役割に期待を表明した。
著者
津谷 喜一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.7-16, 2009 (Released:2009-03-20)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

The burden of adverse drug reaction (ADR) is not limited to morbidity and mortality. It also causes healthcare burden as measured by direct cost of hospitalization, etc. as well as economic burden including indirect cost of labor loss and the withdrawal of drugs from the market. It inflicts additional burden on healthcare resources because of litigations that often ensue in cases of serious ADR. Drug withdrawal can be very costly for the companies involved. Since the 2000s, pharmacogenetics has attracted attention as a means of preventing ADRs. The Council for International Organizations of Medical Sciences (CIOMS) published a report on pharmacogenetics in 2005. The Committee to review cases of “Yakugai” hepatitis in Japan and the regulation aimed at preventing its recurrence was established in association with Ministry of Health, Labor and Welfare (MHLW) in May 2008. This paper reviewed the various research on drug withdrawal conducted in the UK and the rest of the world, the US, and Japan. Several litigation cases were introduced. Four preventive measures were discussed, i.e. 1)use of pharmacogenetics in preventing ADRs, 2)use of economic Darwinism by providing longer exclusivity periods to those drugs proven to be safe through long-term clinical trials, etc., 3)use of private or foreign drug review agency as well as margin and insurance systems, and 4)voluntary marketing suspension of drugs with questionable safety profile initiated by pharmaceutical companies.

1 0 0 0 OA ATC/DDDとは何か

著者
津谷 喜一郎 五十嵐 中 森川 馨
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.53-58, 2005-03-31 (Released:2011-02-28)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

The Anatomical Therapeutic Chemical (ATC) classification system and the Defined Daily Dose (DDD) as a measuring unit was developed along with an increased concern about drug utilization studies in Europe in the 1960s. Its use was recommended by the WHO Regional Office of Europe on 1981, then by the WHO Headquarters in Geneva in 1996. It is maintained by the WHO Collaborating Centre on Drug Statistics Methodology in Olso (http://www.whocc.no/) and widely used in Europe. However, it is rarely used in other parts of the world. This paper aims to inform the Japanese public about the ATC/ DDD system towards a more rational use of drugs in Japan. It attempts to answer the five Ws on ATC/ DDD, i.e., “What is ATC/DDD?”; “Why is ATC/DDD used?”; “When was ATC/DDD established?”; “Who decide ATC/DDD and how?”; and “Where is ATC/DDD used?”
著者
松葉 尚子 津谷 喜一郎
出版者
ライフサイエンス出版社
雑誌
薬理と治療 (ISSN:03863603)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.560-566, 2005-06
被引用文献数
2

2005年4月25~27日にWHO本部(スイス・ジュネーブ)で開催された技術諮問会議の著者による報告書
著者
Panos Kanavos 津谷 喜一郎
出版者
ライフサイエンス出版社
雑誌
薬理と治療 (ISSN:03863603)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.819-836, 2003-10

本稿は,欧州共同体(European Union: EU)メンバー国の厚生省の薬事専門官からの情報にもとづき,EU加盟国の医薬品価格設定と保険償還に関するプロジェクトの一環として2001 年2 月時点の状況についてまとめられたものである。原文は,http://pharmacos.eudra.org/F3/g10/docs/synthesis.pdf から見ることができる。
著者
菊田 健太郎 津谷 喜一郎
出版者
ライフサイエンス出版社
雑誌
薬理と治療 (ISSN:03863603)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.544-548, 2005-06

2004年10月4日カナダ・オタワで開かれたオタワ会議の声明の本文訳