著者
野嶋 栄一郎 浅田 匡 齋藤 美穂 向後 千春 魚崎 祐子 岸 俊行 西村 昭治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

授業中に発現する能動的学習行動が学習促進に及ぼす効果に関する実証的研究をテーマとして、本研究は進められた。この研究は、1)教室授業場面における児童の挙手行動と2)ノートテイキィング、3)テキストへのアンダーライニングおよび4)eラーニングを併用した講義型授業におけるeラーニングの利用の様態についての研究がまとめられている。それらの結果は、以下のようにまとめることができる。1)実際の教室授業場面の観察を通し、児童の挙手行動のメカニズムの検討を行った。その結果、挙手は児童個人の信念だけではなく、児童の授業認知などの学級環境要因によって規定されていることが示された。2)講義におけるノートテイキング行動と事後テスト得点との関連について検討した。講義の情報をキーセンテンスごとに分類し、ノートテイキングされた項目とその量について調べ、授業ごと2週間後に課したテストの得点との関係について分析した。その結果、直後テスト、2週間後のテスト、どちらにおいてもノートテイキング量とテスト得点の間に強い相関が認められた。3)テキストを読みながら学習者が自発的に下線をひく行為が、文章理解に及ぼす影響について章の難易度と読解時間という2要因に着目し、テキストにあらかじめつけておいた下線強調の比較という観点から、実践的に検討した。その結果、テキストの下線強調は、文章の難易度や読解時間の長さにかかわらず、強調部分の再生を高める効果をもつことが示された。4)講義型授業をアーカイブ化したeラーニング教材を、講義型授業に付加する形で用意した。講義型授業を受講した後、アーカイブ化したeラーニング教材がどのように利用されるか検討した。その結果、学習者は学習中の自己評価から授業を再受講する必要性を感じた場合に、授業をeラーニングで再受講することが確認された。
著者
佐古 順彦 耳塚 寛明 池田 輝政 牟田 博光 藤岡 完治 野嶋 栄一郎 浅田 匡
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

日本で唯一の大規模総合選択制高校である伊奈学園を多面的に評価した。学校の設置計画と運営の実際を概観した後で、多様な教科の選択制、3300の生徒を収容する大規模、大規模を小規模に分割するハウス制(学校内学校プランあるいはキャンパスプラン)というこの学校の独自の特質の効果を検討した。主要な結果は以下のとおりであった。1.教科教室制と大規模な学校建築が教師の空間利用を制限している。2.大規模校の場面の匿名性と小規模校の部分(特にホームルーム)の親密性の均衡が重要である。3.教科選択と満足の関係に男女差や学系(コース)の差がみられる。4.卒業生の自己像に自己実現と同時にシニシズム(冷笑主義)の傾向がみられる。5.進路指導の事例調査によると、進学や職業希望の形成に加えて高校生活の指導が重要である。6.進路選択に関する他校との比較調査によると、大学進学希望の要求水準は他校のように学力によって高低に二極分化せず、比較的に高い水準を維持する。7.学校経営の財政基盤の分析によると、建築や設備などの資本的支出はやや大きいが、本務教員あたり生徒数や生徒一人あたりの支出や標準運営費は平均的である。8.教育情報処理システムは、この学校の大規模とカリキュラムの個別化に必須のものであるが、情報処理にともなう作業の多様さと作業量の多さが特徴である。教務関連、情報教育関連、教科教育関連のシステムの増強と人材の育成が必要である。
著者
前田 菜摘 浅田 匡
出版者
日本教師学学会
雑誌
教師学研究 (ISSN:13497391)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.13-23, 2019 (Released:2019-07-08)
参考文献数
24

校内研修は,学校研究として共同的な探求機会を提供するが,その参加や学校研究が追求するテーマに対する理解の深まりが個々の教師の変容にもたらす影響についてデータを用いて明らかにした研究はほとんど見られない。そこで本研究では,若手教師2名を対象に1年間の追跡的なインタビューを行い,共同的な探求活動の参加者の1人として校内授業研究に参加することが自身の学びにもたらす影響について明らかにすることを試みた。インタビュー内容をテーマによって分類整理し,その後,それぞれの言及の間の関係性について考察した。結果,両者の学びは異なる特徴を有していたものの,ともに学校の研究テーマへの理解と自身の実践とが関係しあう様相に対する言及が見られた。この結果は,学校研究という探究的な活動に参加することと個々の教師の成長のプロセスが表裏一体であることを実証的に示すものである。
著者
浅田 匡 野嶋 栄一郎 魚崎 祐子 佐古 秀一 淵上 克義 佐古 秀一 淵上 克義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、次の4つのアプローチを行なった。教師の認知に関する研究に関しては、教師の認知と子どもの認知とのズレは学習方略、思考内容・思考過程などにおいて大きいことが明らかになった。単元開発に関する研究に関しては、単元開発の進め方(相互作用)によって教師の学びに差があることが示された。校内・園内研修に関する研究に関しては、校内研究は必ずしも教師の成長・発達におよびカリキュラム開発に関する知識創造が生起していないことが示された。また、校内研究が十全に機能するためには、継続的な記録、互いが心理的に支え合う文化(風土)、プライマリーグループの存在、組織へのコミットメントが関連することが示唆された。メンタリングに関しては、徒弟的関係に基づくメンタリングが行われ、心理社会的機能が重視されていることが明らかになった。