- 著者
-
中西 啓喜
耳塚 寛明
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.104, pp.215-236, 2019-06-30 (Released:2021-04-01)
- 参考文献数
- 33
本稿の目的は,平成25年度から29年度に実施された全国学力・学習状況調査における学校パネルデータを用い,学級規模の縮小が学力を向上させるのかについて検証することである。 学級規模の縮小が児童生徒の学力を改善するのかどうかについては,教育政策研究の中でも注目される分野のひとつである。ところが,学級規模の効果に関する知見はしばしば整合的ではない。このような知見の不一致は,観察されない異質性の影響が一因だと考えられている。近年の日本の学級規模研究では,データの階層性や内生性バイアスを除去した分析が蓄積され,小規模学級ほど学力向上に好影響があることが示されてきた。しかし,こうした一連の研究の多くは一度きりのクロスセクションデータによる知見に留まっている。そこで本稿では,5年間の学校パネルデータを用い,学級規模の効果検証を行った。 分析結果は次の通りである。第一に,計量経済学における固定効果モデルによる分析の結果,小規模学級ほど学力スコアが高くなるという知見が得られた。この結果は,観測不能な異質性を除去しており,同一の学校における学級規模縮小による学力スコアの上昇を意味している。第二に,小規模学級の全体的な効果は,小学6年生と中学3年生の両方に対し,全ての教科において統計的に有意な結果が得られた。第三に,小規模学級のポジティブな効果は,就学援助を受けている児童生徒が毎年多く通う小学校6年生に対してのみ統計的に有意であった。