- 著者
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別府 道子
片平 理子
- 出版者
- 公益社団法人 日本食品科学工学会
- 雑誌
- 日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.10, pp.731-737, 1997-10-15 (Released:2009-05-26)
- 参考文献数
- 6
エタノールによるポテトチップスの低カロリー化を試み,本実験では「低カロリー・低脂肪」と「おいしさ」を両立させる条件を検討した.エタノールの脱水作用を応用し,スライス状の生ジャガイモをエタノールに浸漬後,油で揚げる方法(以後前処理と略す)と,エタノールの脱脂作用を応用し,油で揚げた後の製品をエタノール処理し油を抜く方法(以後後処理と略す)の2通りの処理時期で検討した.また,エタノールの濃度は,無水エタノールの99.5%と60%(v/v),処理温度は20℃,30℃,40℃,処理時間は前処理では3分,10分,後処理では5分でおこなった.ポテトチップスの製造過程において適宜,重量,水分含量,脂肪含量を測定し,製品は色調測定と順位法による官能評価を行った.その結果,後処理に比べ,前処理の場合の方がエタノールの著しい脱水効果により,フライ後の製品の脂肪含量は減少した.エタノール濃度が高く,処理温度が高いほどエタノールの脱水または脱脂の効果が強い傾向が認められた.色調もエタノール処理の場合の方がやや明るい製品もあった.さらに,無処理の対照と前処理2例,後処理1例で試作し,主要一般成分分析,一対比較法による官能評価,購買意欲調査をおこなった,著しく低脂肪,低カロリーになった前処理の場合よりは,低脂肪,低カロリーの点ではやや劣るが,官能評価や購買意欲調査の結果から,後処理の方が優れていた.嗜好性を高める加工操作の油脂の使用をそのままにしたエタノール処理によるポテトチップス製造の可能性を示した.