著者
安藤 礼二 杉本 良男 吉永 進一 赤井 敏夫 稲賀 繁美 橋本 順光 岡本 佳子 Capkova Helena 荘 千慧 堀 まどか
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

これまで学術的な研究の対象とは見なされてこなかったが、神智学が宗教、政治、芸術などの近代化で重要な役割を果たしたことは近年認められている。本研究では、それらをグローバルな視点から再検討し、新たな研究の可能性を探ることに成功した。プロジェクトメンバーたちによる国内外の調査によって貴重な一次資料を収集しただけでなく、海外の研究者たちとの連携を深めた。日本ではじめて神智学を主題として開催された国際研究集会など、いくつかの研究会を開催し、神智学研究を代表する世界の研究者たち、日本の研究者たちが一堂に会した。これらによって、さまざまな分野の研究者のネットワークを構築し、今後の研究の礎を築くことができた。
著者
稲賀 繁美
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.105-128, 2017-01

学術としての「美術史学」は全球化(globalize)できるか。この話題に関して、2005年にアイルランドのコークで国際会議が開かれ、報告書が2007年に刊行された。筆者は日本から唯一この企画への参加を求められ、コメントを提出した。本稿はこれを日本語に翻訳し、必要な増補を加えたものである。すでに原典刊行から8年を経過し、「全球化」は日本にも浸透をみせている話題である。だがなぜか日本での議論は希薄であり、また従来と同じく、一時の流行として処理され、日本美術史などの専門領域からは、問題意識が共有されるには至っていない。そうした状況に鑑み、本稿を研究ノートとして日本語でも読めるかたちで提供する。 本稿は、全球化について、①アカデミックな学問分野としての制度上の問題、②日本美術史、あるいは東洋美術史という対象の枠組の問題、③学術上の手続きの問題、④基本的な鍵術語(key term)の概念規定と、その翻訳可能性、という4点に重点を絞り、日本や東洋の学術に必ずしも通じていない西洋の美術史研究者を対象として、基本的な情報提供をおこなう。
著者
稲賀 繁美
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ
巻号頁・発行日
vol.54, pp.105-128, 2017-01-31

学術としての「美術史学」は全球化(globalize)できるか。この話題に関して、2005年にアイルランドのコークで国際会議が開かれ、報告書が2007年に刊行された。筆者は日本から唯一この企画への参加を求められ、コメントを提出した。本稿はこれを日本語に翻訳し、必要な増補を加えたものである。すでに原典刊行から8年を経過し、「全球化」は日本にも浸透をみせている話題である。だがなぜか日本での議論は希薄であり、また従来と同じく、一時の流行として処理され、日本美術史などの専門領域からは、問題意識が共有されるには至っていない。そうした状況に鑑み、本稿を研究ノートとして日本語でも読めるかたちで提供する。
著者
山野 英嗣 尾崎 正明 稲賀 繁美 川島 智生 加藤 哲弘 河上 繁樹 中川 理 並木 誠士 廣田 孝 前田 富士男 増田 聡 藪 亨 新見 隆 出川 哲朗 中川 克志 松原 龍一 池田 祐子 小倉 実子 牧口 千夏 中尾 優衣 河本 信治
出版者
独立行政法人国立美術館京都国立近代美術館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本近代における建築、デザイン、工芸を対象としながらも、ジャンルを超え、そして国境を超えた動向について総合的に検証したものである。研究成果は、最終的に一冊の図書としてまとめた他、研究代表者が所属する美術館においても展覧会やシンポジウムを開催し、研究成果を広く発信した。東西の文化交流、そしてジャンル間を交差する表現への注目など、時宜を得たテーマとして、建築、デザインそして工芸の各領域において、新たな視点が提言されたと思われる。
著者
劉 建輝 鈴木 貞美 稲賀 繁美 竹村 民郎 上垣外 憲一 劉 岸偉 孫 江
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

中国の東北部、つまり旧「満州」は日本の近代史においてきわめて重要な場所である。なぜならば、日清戦争はさることながら、その後の日露戦争、日中戦争、さらに日米戦争に至るまで、いわば日本の運命を決めた戦争という戦争は、究極のところ、全部この地域の権益をめぐって起こされたものであり、ある意味において、日本の近代はまさに「満州」を中心に展開されたとさえ認識できるからである。しかし、近代日本の進路を大きく左右したこの旧「満州」について、これまではけっして十分に研究したとは言い難い。むろん、旧「満州」、とりわけ「満鉄」に関する歴史学的なアプローチに長い蓄積があり、多くの課題においてかなりの成果を挙げている。だが、よく調べてみれば、そのほとんどがいずれも政治、経済、あるいは軍事史に偏っており、いわゆる当時の人々の精神活動、あるいは行動原理に深く影響を与えた社会や文化などについての考察が意外にも少数しか存在していない。本研究は、いわば従来あまり重視されなかった旧「満州」の社会や文化などの諸問題を取り上げ、関連史実等の追跡を行う一方、とりわけその成立と展開に大きく関わっていた「在満日本人」の活動を中心に、できるかぎりその全体像を整理、解明しようとした。そして三年間の研究を通して、主に以下のような成果を得ることができた。1.これまで重視されなかった旧「満州」の社会や文化などの問題について比較的総合かつ多角的に追及し、多く史実(都市空間、公娼制度、秘密結社、文芸活動など)を解明した。2.海外共同研究者の協力を得て、多くの史料、とりわけいわゆる在満日本人の発行した各分野の現地雑誌を発掘し、その一部(「満州浪曼」、「芸文」)を復刻、またはその関連作業に取り組み始めた。3.従来、難しかった現地研究者との交流を実現させ、三回の国際研究集会を通じて、多くの中国や韓国研究者とさまざまな問題について意見を交換した。以上のように、この三年間は、現地調査などを通して、多くの貴重な史料を入手したばかりでなく、現地研究者との間に比較的親密な協力関係も築いたため、今後もこれらの成果を生かすことにより、一層の研究上の進展が得られるだろうと思われる。