著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 加賀谷 みえ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.585-593, 1994

干し椎茸の合理的な戻し方を見出す目的で, 超音波照射を取り入れた方法を用い, 椎茸の物性及び嗜好性などに及ぼす影響を検討し, 次の結果を得た.<BR>1) 水戻しに超音波処理を用いると, 超音波処理しない椎茸に比し吸水量が増加し, 戻し汁は黄味度が増し褐変が進行した.<BR>2) 蒸し調理した椎茸のテクスチャー特性では超音波照射したものの方が硬さ・ガム性の値が小さく軟化した.<BR>3) 水温5℃と25℃の水戻しの条件では超音波照射時間は20分が望ましく, 全浸漬時間は上冬薙が2時間, 上香信が1時間で最大吸水量の90%に達し, 官能評価では椎茸は柔らかく歯ざわりが適当で, 戻し汁の色の濃度が濃く感じ, 味は旨味があり良好と評価された.<BR>4) 蒸し調理した椎茸中のRNA含量や5'-GMP, 5'-AMP, 5'-UMP, 5'-CMP, 遊離アミノ酸含量に及ぼす超音波照射の影響はわずかにすぎなかった.<BR>以上の結果から, 干し椎茸の水戻しに超音波照射を取り入れることは有効であると考えられる.
著者
青木 隆子 菅原 龍幸
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.81-100, 1999-12-31 (Released:2011-01-31)
参考文献数
21

7魚種について, 種々の加熱方法 (焼く, 煮る, 電子レンジ, 揚げる) で調理した場合の栄養成分 (一般成分, 無機質含量, 遊離アミノ酸含量, コレステロール含量, 脂肪酸組成, EPAおよびDHA含量) について分析を行い, その結果について検討した.1. 切り身で調理した場合水分の減少が著しく, 見かけ上, ミネラル, タウリン, EPAおよびDHA含量が増加した.2. 丸十尾) で調理した場合1) 脂質含量の少ない魚 (5%以下) 脂質の滲出や溶出よりも水分減少の方が大きく, 見かけ上, 脂質含量の増加により, EPAやDHAの増加が認められたが, タウリン含量は減少した. 揚げ物の場合は, 揚げ油と魚油の置換によりEPAやDHA含量は約50%以下に減少した. また, タウリン含量も減少した.2) 脂質含量の多い魚 (17%以上)脂質の滲出や溶出が著しく, 見かけ上水分含量は増加し, タウリン含量は焼く調理で増加の傾向であった. しかし, EPAやDHA含量は約50%の減少であった.3) 脂質含量が1) と2) の中間の魚脂質の滲出と共に水分含量も減少し, EPAやDHAおよびタウリンは減少の傾向を示した. この傾向は, 焼く調理で大きかった.高度不飽和脂肪酸は, 熱, 光などに特に不安定とされているが, 一般的な加熱調理直後では, 脂肪酸組成に顕著な差は認められなかった. すなわち, 分解, 消失することはほとんどない. しかし, EPAやDHA含量は調理方法や漁獲時の脂質含量によって顕著な差が認められた.
著者
倉沢 新一 菅原 龍幸 林 淳三
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.400-406, 1982-07-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
14
被引用文献数
10 15

栽培種および野生種のキノコ類の31種43試料について,その一般成分と26種27試料につきのDF量の分析を行った。その結果,タンパク質や脂質は一般に低い値であったが,炭水化物や灰分はかなり高い値を示した。DFを定量する際,試料を加熱乾燥すると加熱によりNDF量の増加が認められた。DFについては,NDF, ADF,リグニン,ペクチン様物質および粗繊維を定量した。キノコ類中のDFの平均の値は,乾燥重量あたりNDF 35.7%, ADF 14.3%,リグニン2.9%,ペツチン様物質3.7%であった。したがってセルロース量11.4% (ADFとリグニンとの平均値の差でも11.4%),ヘミセルロース量21.4%(NDFとADFとの平均値の差でも21.4%),総DF量39.4%ほどであった。NDFとペクチン様物質を合計し総DFとし,これと粗繊維との比を求めると5.8となり高い比率が得られた。
著者
倉沢 新一 菅原 龍幸 林 淳三
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.400-406, 1982
被引用文献数
2 15

栽培種および野生種のキノコ類の31種43試料について,その一般成分と26種27試料につきのDF量の分析を行った。その結果,タンパク質や脂質は一般に低い値であったが,炭水化物や灰分はかなり高い値を示した。<BR>DFを定量する際,試料を加熱乾燥すると加熱によりNDF量の増加が認められた。<BR>DFについては,NDF, ADF,リグニン,ペクチン様物質および粗繊維を定量した。キノコ類中のDFの平均の値は,乾燥重量あたりNDF 35.7%, ADF 14.3%,リグニン2.9%,ペツチン様物質3.7%であった。したがってセルロース量11.4% (ADFとリグニンとの平均値の差でも11.4%),ヘミセルロース量21.4%(NDFとADFとの平均値の差でも21.4%),総DF量39.4%ほどであった。<BR>NDFとペクチン様物質を合計し総DFとし,これと粗繊維との比を求めると5.8となり高い比率が得られた。
著者
木元 幸一 林 あつみ 草間 正夫 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-48, 1994
被引用文献数
1 4

茶碗蒸しを作るときにキノコなどを入れる場合が多いが, そのときにマイタケを入れた場合, 茶碗蒸しが固まらなくなってしまうことにより, マイタケ中に存在するプロテアーゼに着目した。マイタケ中より数種のプロテアーゼを同定し, 卵白の加熱凝固阻止や, 卵白アルブミンの加熱分解への作用を調べ, 酵素的性質も明らかにした。<BR>オボアルブミンは, 卵白中に50%以上を占める加熱凝固に関わるタンパク質である。SDS-電気泳動により, オボアルブミンの分解パターンを調べたところ, 中性域と酸性域でよく分解されることが観察され, 中性プロテアーゼと酸性プロテアーゼの存在が示唆された。マイタケ抽出液のDEAE-セルロースとSephadex-G75によるゲル濾過によりプロテアーゼA, B, Cと酸性プロテアーゼが同定された。プロテアーゼAは分子量約20,000と推定され, すでに橋本らに報告されているメタルプロテアーゼと良く似た性質を示した。プロテアーゼBについては, 分子量がプロテアーゼAのおよそ2倍の約45,000と推定された。この点は, 橋本らが報告したものとは異なっており, 至適pHも7と中性的であったが, やはりメタルプロテアーゼと思われる。プロテアーゼCについては, Bと同じ分子量であったが, 至適pHは6付近であった。酸性プロテアーゼはペプスタチンで阻害される典型的なカルボキシルプロテアーゼで, 分子量は約45,000と推定された。<BR>プロテアーゼA, B, Cは, いずれもオボアルブミンを分解したが, 卵白に対しては単独では凝固阻止は見られなかった。しかし, 三種のプロテアーゼを混合すると, 凝固が妨げられた。以上, マイタケ中に未知の新たなプロテアーゼが存在することを見出し, また, 卵白の加熱凝固阻止作用についてはマイタケ中のプロテアーゼが共同で関わっていることが明らかにされた。
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 佐々木 弘子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.153-160, 1997-02-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14
被引用文献数
2

鶏骨スープの調製法の迅速化・合理化・実用化を目的に, 食品の新しい処理方法として加熱過程に超音波照射を併用した熱水抽出法を試み, 鶏骨スープ (鶏骨20%濃度) の溶出成分と嗜好性の関係を調べ, 好適な調製条件を検討した.(1) 鶏骨スープの色調は経時的に明度の値が低下しこの傾向は照射ありのスープが顕著に低くなり, 色相のa値, b値では抽出温度および照射の有無で, 相違が認められた.(2) 鶏骨スープ中の抽出成分では照射ありの試料が照射なしの試料に比べ全エキス, 総窒素, ヒドロキシプロリンの含量がやや多く, また80℃・98℃設定は60℃設定に比べ溶出量が多かった.(3) 遊離アミノ酸量では照射ありの場合は30分間でグルタミン酸, アラニン, グリシン, セリンなどが大幅に増加し, 5'-IMPの溶出でも照射30分間で最大となり, 以後下降する傾向を示した.(4) 官能検査で高い評価を得た鶏骨スープは, 98℃設定の照射ありの30分間処理であり, 旨味成分などの理化学的測定値とよく対応した.(5) 超音波照射を併用した調製法は, 対照の照射なしの調製法に比し抽出時間が1/3に短縮され, しかも良質なスープが得られ有利であることが示唆された.
著者
木村 友子 佐々木 弘子 菅原 龍幸
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.933-943, 2004

新食感の商蒻(a)と従来の商蒻(b)を用い, 加熱法に超音波照射有無の煮物を調製し, その煮物の物性や食味特性に及ぼす調味液や加熱処理の影響を検討した.<BR>(1) 商蒻の中心温度が75℃で1分間以上に達し安全と性状の両面からみて, 煮物の加熱時間は20分間必要であった.<BR>(2) 新蒟蒻の煮物は従来の商蒻煮物に比べ, 物理的特性は軟らかいが, 蒟蒻特有の弾力としなやかさをもち, 調味液の浸透も優れ, 官能評価でも好評を得たので新蒟蒻製品としての利用が期待できた.<BR>(3) 調味液が蒟蒻煮物に与える影響は2%食塩水と鰹調味液は物理的測定値が硬化し, 10%蔗糖液は変化なく, 酢酸緩衝液は著しく軟化した.<BR>(4) 超音波照射加熱は非照射加熱に比べ, 煮物の物理的性状の改良や調味液の浸透促進に有効であった.
著者
佐々木 弘子 中村 尚子 青柳 康夫 菅原 龍幸
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.90-97, 1988-02-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
29
被引用文献数
5 5

干し椎茸の水もどし加熱調理において,浸漬水温と浸漬時間におよぼす影響について検討し,次のような結果を得た. (1) 干し椎茸を25℃で水もどしを行うと,浸漬時間が長くなるに従い,タンパク態窒素量は減少し,一方,アミノ態窒素量は増加していた. (2) 遊離型のタンパク性アミノ酸は水もどしにより増加し,増加量は浸漬水温が高いほど,また浸漬時間が長いほど多かった. (3) 遊離非タンパク性アミノ酸は水もどしによる増減はみられないようである. (4) 水もどし後の加熱調理では遊離アミノ酸量の変化は殆ど見られなかった. (5) レンチニン酸は水もどしおよび加熱調理によっても減少した.
著者
諸星 俊雄 菅原 龍幸
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.46-48, 1973-02-20

マーマレード作成中における苦味処理過程中のリモノイド量の変化を調べた。その結果, リモノイドはナリンギンに比べ, 水に不溶または難溶であるが, 外果皮を2%食塩水で3時間で水晒しすることにより25%前後除去され以後ほぼ一定の値を示した。水で行うと3時間ではリモノイドはほとんど除去されないが12時間では食塩水の場合と同程度除去されるようであった。また外果皮を30~40分湯煮すると30%前後のリモノイドが除去された。内白部, ひょうのうは3時間の水晒しで12%, 2%食塩水で25%程度のリモノイドが除去された。
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 佐々木 弘子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.153-160, 1997-02-15
被引用文献数
6

An ultrasonic treatment during extraction with hot water was investigated as a new procedure for preparing chicken-bone soup stock. The relationship between the preference and the soluble components of the chicken soup stock was studied to determine the most appropriate conditions for the preparation method. Compared to the conventional method without an ultrasonic treatment, the time for extraction was reduced to one third by the ultrasonic treatment, and a high-quality soup was obtained from chicken-bones. The combined method was thus found to be more suitable for preparing the soup stock. The best conditions for preparing the chicken soup stock with 20% bone involved hot-water extraction at 98℃ accompanying the ultrasonic treatment for 30 min. The resulting color tone of the soup was light with and slight clouding, and the dissolved components, including 5'-IMP, crude proteins, and free amino acids such as Glu, Ala, Ser and Gly were rich in the soup. A high evaluation of the resulting soup was given. (Received April 9, 1996)