著者
北村 明彦 清野 諭 谷口 優 横山 友里 天野 秀紀 西 真理子 野藤 悠 成田 美紀 池内 朋子 阿部 巧 藤原 佳典 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.134-145, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

目的 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施が進められる中,生活習慣病やフレイル関連の各因子が地域在住高齢者の自立喪失に及ぼす影響の強さ(ハザード比)と大きさ(寄与危険度割合)を明らかにする。方法 群馬県草津町において,2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女計1,214人(男性520人,女性694人)を対象とし,平均8.1年(最大13.4年)追跡した。自立喪失は,介護保険情報による要介護発生または要介護発生前の死亡と定義した。生活習慣病因子として,高血圧,糖尿病,肥満,腎機能低下,喫煙,脳卒中・心臓病・がんの既往等を,機能的健康の関連因子として,フレイル区分,低体重,貧血,低アルブミン血症,認知機能低下を採り上げた。フレイル区分は,phenotypeモデルの5つの構成要素(体重減少,疲弊,活動量低下,歩行速度低値,握力低値)のうち3項目以上該当をフレイル,1~2項目該当をプレフレイルと定義した。Cox比例ハザードモデルを用いた回帰分析により,各要因保有群における自立喪失発生の多変量調整ハザード比(HR),集団寄与危険度割合(PAF)を算出した。結果 自立喪失発生者数は475人(要介護発生372人,要介護発生前死亡103人)であった。対象者全体でみると,自立喪失の多変量調整HRはフレイル,プレフレイル,認知機能低下,脳卒中既往,喫煙において1.3~2.2倍と有意に高値を示した。自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%,フレイルが12%と他の要因に比し高率であった。男性では自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%と最も大きく,次いで喫煙が11%であり,女性では,フレイル,プレフレイルがともに18%,腎機能低下が11%であった。前期高齢者では,フレイル,プレフレイルの他に脳卒中既往,貧血,低アルブミン,認知機能低下,喫煙,糖尿病における自立喪失の多変量調整HRが有意に高く,自立喪失のPAFは,プレフレイルが18%,フレイルが13%,喫煙が11%であった。結論 高齢者健診の受診者を対象とした検討の結果,自立喪失に寄与する割合が最も大きい要因はフレイル,プレフレイルであった。前期高齢期からフレイル予防,ならびに生活習慣病の予防・改善を図ることが集団全体の自立喪失の低減に寄与すると考えられた。
著者
田中 泉澄 北村 明彦 清野 諭 西 真理子 遠峰 結衣 谷口 優 横山 友里 成田 美紀 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.744-754, 2018-12-15 (Released:2018-12-27)
参考文献数
20

目的 大都市部在住の高齢者における孤食の実態についてその頻度を含めて明らかにするとともに,孤食と食品摂取の多様性との関連を示す。方法 2016年6月に,東京都大田区に在住する65歳以上の男女を対象とし,15,500人に自記式調査票を郵送した。回答を得た11,925人(回収率76.9%)のうち,データ欠損を含まない8,812人(有効回答率56.9%)を分析対象とした。毎食一人で食事をとる1週間当たりの日数を孤食頻度として0,1~3,4~6,7日群に分類した。食品摂取多様性得点(DVS)は,10の食品群それぞれの1週間あたりの摂取頻度から算出し,3点以下の場合をDVS低値と定義した。統計解析は,DVSまたは各食品群について「ほぼ毎日食べる」の有無を従属変数,孤食頻度を独立変数,年齢,居住地域,BMI,教育歴,等価所得,就業,独居,既往歴,飲酒,喫煙を調整変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。結果 男性の47.1%,女性の48.5%が週1日以上の孤食であり,さらに男性の14.9%,女性の16.9%が週7日(毎日)孤食であると回答した。孤食頻度0日群と比較して,男性ではすべての頻度の孤食群でDVS低値に対するオッズ比が1.51~2.00と有意に高値を示した。女性では,孤食頻度7日群でのDVS低値のオッズ比は1.15(95%信頼区間0.92-1.43)と有意差はみられなかった。男女とも孤食習慣のある群では,非孤食群と比較して緑黄色野菜類,果物類,油を使った料理を「ほぼ毎日食べる」オッズ比が有意に低値を示した。結論 大都市部の高齢者では,男女ともに半数近くに孤食習慣があることが明らかとなった。孤食群は非孤食群と比較して年齢や等価所得,同居家族の有無とは独立して食品摂取の多様性が低い傾向を示した。本成績は,孤食習慣のある大都市部高齢者の低栄養対策に資する有用な知見となると考えられる。
著者
桃田 茉子 浅野 良輔 永谷 文代 宮川 広実 中西 真理子 安田 由華 柴田 真理子 橋本 亮太 毛利 育子 谷池 雅子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16215, (Released:2017-09-30)
参考文献数
39
被引用文献数
3

This study sought to examine the reliability and validity of the Japanese version of the Behavior Rating Inventory of Executive Function (J-BRIEF). In this study, BRIEF was administered to evaluate executive function in everyday life in 91 subjects with autism spectrum disorder (ASD; ages 12–15; 72 boys) and 2,230 community samples (CS; ages 12–15; 1,083 boys). For this purpose, we applied categorical confirmatory factor analysis, which revealed that the scale was composed of two factors and eight subscales of the high test-retest stability. Reliability was confirmed using an external criterion (ADHD-Rating scale: ADHD-RS). Receiver operating characteristic analysis revealed an optimal cut-off of 118.5 (sensitivity = 0.811, specificity = 0.828). This study confirmed the reliability and the validity of J-BRIEF.
著者
斉藤 雅茂 藤原 佳典 小林 江里香 深谷 太郎 西 真理子 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.785-795, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
30
被引用文献数
2

目的 本研究では,首都圏ベッドタウンで行った調査に基づいて,独居高齢者と同居者のいる高齢者のなかで,孤立した高齢者の発現率とその特徴,および,孤立に関する設問に無回答であった孤立状況不明者の特徴を明らかにすることを目的にした。方法 使用したデータは,埼玉県和光市において,独居の在宅高齢者978人,同居者のいる在宅高齢者1,529人から得られた。社会的孤立の操作的定義には,同居家族以外との接触頻度を用い,別居家族・親戚,および,友人・近所の人との対面接触と非対面接触のいずれもが月に 2, 3 回以下を「孤立」,それ以上を「非孤立」,それらの設問に無回答を「孤立状況不明」に分類した。世帯構成別に孤立・非孤立を従属変数,性別,年齢,婚姻経験,近居子の有無,移動能力,経済状態を独立変数に投入したロジスティック回帰分析,および,それらの諸変数について孤立状況不明と孤立・非孤立間での比率の差の多重比較を行った。結果 分析の結果,1)上記の定義で捉えた場合,孤立者は,独居者では24.1%(独居型孤立),同居者のいる高齢者では28.7%(同居型孤立)であること,2)独居・同居に関わらず,男性,子どもがいない人および近居子がいない人,より所得が低い人の方が孤立に該当しやすいこと,他方で,3)離別者と未婚者の方が独居型孤立に該当しやすく,より高齢の人,日常の移動能力に障害がある人の方が同居型孤立に該当しやすいという相違があること,4)独居・同居にかかわらず,孤立状況不明者はこれらの諸変数において孤立高齢者と類似していることが確認された。結論 高齢者の社会的孤立は独居者だけの問題ではなく,独居型孤立と同居型孤立の特徴の相違点に対応したアプローチを検討する必要があること,また,孤立高齢者をスクリーニングする際には,孤立関連の設問への無回答者を孤立に近い状態と捉えるべきことが示唆された。
著者
小林 江里香 藤原 佳典 深谷 太郎 西 真理子 斉藤 雅茂 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.446-456, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
30
被引用文献数
2

目的 本研究は,高齢者の社会的孤立を同居家族以外との接触頻度の低さから定義し,孤立者が抱える生活•心理面での課題と,そのような課題が同居者の有無や性別によってどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。方法 65歳以上の在宅高齢者を対象とした調査より,独居群948人,同居群1,426人のデータを分析した。社会的孤立状況は,別居親族または友人•近所の人との接触が週 1 回以上あるかで,「対面接触あり」,「非対面接触のみ」,「接触なし(孤立)」に分けた。私的サポートの利用可能性(6 項目),公的サポートの利用可能性(2 項目),抑うつと将来への不安を従属変数とするロジスティック回帰分析を行い,年齢,IADL,社会経済的地位を調整後の社会的孤立状況,独居,性別の主効果と交互作用効果を調べた。結果 独居男性では42%が孤立に該当し,独居女性(17%)と大きな差があった。私的サポート入手不能,サービス相談先なし,地域包括支援センターの非認知,抑うつ傾向あり,将来への不安の高さのいずれについても,「対面接触あり」に対する孤立者のオッズ比は有意に高かった。また,私的サポートについては,孤立状況と同居者の有無の交互作用があり,孤立と独居が重なることでサポートを得られないリスクが一層高まっていたが,独居が独立した効果を示したのは,一部のサポート項目や抑うつ傾向に限られた。結論 孤立高齢者は,同居者の有無にかかわらず,私的•公的なサポートを得にくく,抑うつ傾向や将来への不安も高いなど,多くの課題を抱えていることが明らかになった。
著者
小西 真理子
巻号頁・発行日
(Released:2014-12-16)

博士(学術) 立命館大学
著者
大西 真理子 小川 宣子 山中 なつみ 庄司 一郎
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.303-313, 1997-04-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2

(1) 米を搗精する際の米の種類が理化学的特性に及ぼす影響について, 山田錦, コシヒカリ, タカネミノリの3品種の化学的成分, 吸水率, 酸度, 粘度特性から調べた結果, 以下のような傾向を示した.1) いずれの品種も化学的成分の水分, 粗タンパク質, 粗脂肪, 還元糖比は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれ減少した.2) 搗精度が高くなるにつれ, 吸水率は高くなり, 山田錦の搗精度60%, 50%の吸水率はより高くなった.3) 脂肪酸度と水溶性酸度は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれ減少した.4) アミログラムによる糊化温度は搗精度が90%, 80%, 70%と高くなるにつれて低くなり, 特に山田錦は80%搗精での温度低下が大きくなった.最高粘度と崩壊度は搗精による影響はコシヒカリではみられなかったが, タカネミノリや山田錦ではそれぞれ高い値を示し, 品種間に差異がみられた.老化度では, 搗精度を高くすることにより, コシヒカリは老化しやすい性質を示したがタカネミノリや山田錦ではこの傾向はタンパク質染色搗精度 50 % 脂質染色みられなかった.(2) 酒造米 (山田錦) における搗精度が理化学的特性および米組織での成分分布と表面構造に及ぼす影響を調べた.1) 蒸し加熱した米飯組織におけるタンパク質, 脂質の分布状態を光学顕微鏡で観察した結果, 果皮, 種皮, 胚芽, 糊粉層および胚乳におけるでんぷん細胞の細胞膜に沿った部分にタンパク質の存在が認められ, 脂質は種皮, 胚芽, 糊粉層のみに分布していた.搗精度の異なる米飯においては, タンパク質, 脂質が多く存在する胚乳部が段階的に削られていく様子が観察され, 粗タンパク質と粗脂肪の含量の分析値の変化と一致するものであった.2) 米の表面構造は搗精度が高くなるにつれ胚乳部のでんぷん細胞膜が破壊され, でんぷん粒の露出が観察された.
著者
西 真理子 新開 省二 吉田 裕人 藤原 佳典 深谷 太郎 天野 秀紀 小川 貴志子 金 美芝 渡辺 直紀
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.344-354, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
27
被引用文献数
7 8

目的:地域在宅高齢者における「虚弱(Frailty)」の疫学的特徴を明らかにすることを目的とした.方法:2001年に群馬県草津町在住の70歳以上全高齢者を対象に訪問面接調査を行い,虚弱の出現率を求めた.次いで,2005年に同町と新潟県与板町で行われた高齢者健診(対象70歳以上)のデータを使用し,虚弱高齢者の身体医学的,心理社会的特徴を調べた.虚弱の判定には,虚弱性指標として用いることの妥当性が確認されている「介護予防チェックリスト」を用いた.分析は男女別に行い,各変数について虚弱群と非虚弱群で比較検定し,虚弱の有無と各変数との関連は,年齢,地域,共通罹患の有無,ADL障害の有無を共変量においた多重ロジスティック回帰モデルを用いて分析した.結果:訪問面接調査には916名が応答し(応答率88.2%),うち912名を分析対象とした.虚弱の出現率は,男性で24.3%,女性で32.4%であった.虚弱の出現率は,男性は80歳以降,女性は75歳以降で急増する傾向がみられた.高齢者健診は1,005名が受け,うち974名を分析対象とした.多重ロジスティック回帰分析の結果を総合すると,身体的機能や心理社会的機能,生活機能などの低水準が虚弱高齢者の特徴として示された.また,非虚弱群に比べ虚弱群の方が,認知機能検査の成績が低く,抑うつ傾向の割合が高く,男性で聴力障害,女性で尿失禁や歩行障害の保有率が高いなど,いわゆる老年症候群との関連が示された.一方,心拍数と血圧,男性で一般的な血液検査項目と虚弱との関連は示されなかった.結論:70歳以上の在宅高齢者の約3割が虚弱であった.虚弱があらゆる老年症候群と密接に関係するmultifactorial syndromeであるという病態像が浮かび上がった.虚弱の病態は,心身機能や生活機能などの機能的諸側面の低さに現れやすく,一般的な臨床医学検査には表出されにくい特徴を有することが明らかになった.
著者
針替 明世 藤原 健一 葛西 真理 岩佐 博人 吉村 哲明
出版者
弘前医療福祉大学紀要編集委員会
雑誌
弘前医療福祉大学紀要 (ISSN:21850550)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.27-32, 2015-03-31

死生観とは生と死についての個人の考え方であり、独自の死生観の形成は、患者の捉え方や接し方等の医療の質の向上につながる。一方、死生観は生きがい感や自殺関連行動と関連すると言われており、作業療法教育において学生の死生観を育む意義は大きいものであると推察される。そこで本研究では、作業療法学生を対象に死生観と関連要因について、生きがい感、不安感、感情調整能力として感情労働を調査した。その結果、死生観は、生きがい感、不安感、感情調整能力と相関関係が認められた。しかし、死生観は、死別経験や介護経験、長期臨床実習の経験の有無では有意差が認められないことから、死生観は死別や臨床実習といった経験からの影響を受けにくいことが考えられ、死生観教育の必要性が示唆された。
著者
小川 貴志子 藤原 佳典 吉田 裕人 西 真理子 深谷 太郎 金 美芝 天野 秀紀 李 相侖 渡辺 直紀 新開 省二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.545-552, 2011 (Released:2012-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
19 36

目的:介護保険制度で用いられている基本チェックリストによる虚弱判定のcut-off pointをFriedらの定義に照らして検討した.さらに,同チェックリストで虚弱と判定された高齢者の血液生化学及び炎症マーカーの特徴を明らかにすることを目的とした.方法:1)群馬県草津町に在住する65歳以上の住民を対象に実施されている高齢者健診を2007年と2008年の2年とも受診した420人を対象に,Friedらの基準による虚弱判定と基本チェックリスト(1~20項目)得点との関係を分析し,その併存的妥当性を検討した.2)その結果得られた基本チェックリストのcut-off pointを利用し,2008年同町の高齢者健診受診者(665人)の虚弱判定を行った.さらに,虚弱群と非虚弱群の血液生化学及び炎症マーカーを比較した.結果:1)Friedらの判定に対する基本チェックリスト(1~20項目)のYouden Indexはcut-off point 4/5点であったが,虚弱判定は特異度を重視し,cut-off point 5/6点に設定した.この時,感度,特異度はそれぞれ60.0%,86.4%であった.2)男性34名(12.3%)女性74名(19.0%)が虚弱と判定された.性,年齢を調整した虚弱に対するIL-6のリスク比(第1三分位に対する第3三分位)は2.05[95%信頼区間(CI):1.15-3.64],握力の同リスク比は0.19[95%CI:0.07-0.46],歩行速度の同リスク比は0.23[95%CI:0.12-0.45]であった.炎症マーカーのうちIL-6第3三分位かつβ2-ミクログロブリン(MG)第3三分位群の虚弱に対するリスク比は5.61[95%CI:2.40-13.11]であった.結論:基本チェックリストを用い「虚弱」を判定することは可能であり,IL-6とβ2-MGの両方を組み合わせた指標は,虚弱マーカーとして有用であることが示唆された.