著者
亀谷 きよし 亀谷 是 武部 隆 小池 恒男 辻井 博 稲本 志良 堀田 忠夫 KAKO Toshiyuki
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1986

日本の稲作経済・米政策における根本課題は、国民の主食である米を安価に安定的に供給し、日本の食糧安全保障と米の国内生産による国土と水の利用・保全、農業・農村の維持等環境的・社会的役割(外部経済)をいかにして効率的に確保するかである。世界の大米輸出国であるタイや米国等から日本の米市場の開放が強く要求され、国際的米政策・貿易摩擦が激しくなっているが、本研究はタイと米国の稲作農家、米生産・流通・輸出関連機関、大学・試験研究機関、米政策関連政府機関の現地調査に基づき、経営・流通・政策・土地利用と制度・労働・水利用と制度・技術と試験研究・金融の視点から日本との比較を十分に考慮しながら、総合的に国際比較し、上述の根本課題にアプロ-チした。下記の具体的研究成果が示すように、本研究によりまず、日本との比較の視点から、タイと米国の米経済・政策の総合的・国際比較的理解が深められた。そしてそれに基づいて上述根本課題がいかにして達成されるかがかなり明らかになった。また、本研究の研究成果は、この数年続いている上述の激しい国際米政策・貿易摩擦の、各国間の米経済・政策の相互理解の向上を通じた国際的協調による解決にも貢献すると考える。第1の研究成果は、英文と和文の最終報告書である。日本人およびタイと米国の研究分担者が、各人の研究テ-マに関して上述課題に接近し、論文を書いている。第2に、本研究成果を学界だけでなく、社会に還元する目的で下記の一般向けの書物を出版し、広く読まれている。亀谷きよし編著「アメリカ米産業の素顔」富民協会、昭和63年刊。なお同じ目的で、タイに関して「米輸出超大国タイの米産業の光と影」という書物を近く富民協会から出版する予定である。第3の成果しとては、各研究分担者がそれぞれに、本研究に参加して得られた知見を基に、英文や和文の論文を雑誌や書物等に発表し、また、日本、米国およびタイでにおける研究会でも報告している。第4の成果としては、タイと米国の現地調査で得られた、諸々の関連出版物・統計デ-タ等を京都大学農学部農業簿記研究施設で整理・保管し、各協同研究者および一般の研究者の利用に供している。
著者
辻井 博彦
出版者
The Japanese Society of Oral Pathology & The Asian Society of Oral and Maxillofacial Pathology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.63-76, 1994-06-25 (Released:2011-07-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1

陽子線の最大の魅力は, ブラッグピーク効果により優れた線量分布を形成することであるが, 同時にその照射装置は既存の加速器に手を加えれば容易に利用出来るという利点も有している. 生物学的には光子線と同じ低LET放射線に分類されるが, これは, 従来から蓄積されている光子線の生物学的知識をそのまま利用できることを意味する.陽子線治療はこれまで世界の16施設で行われ, 約1万3千人が治療された.適応疾患はまだ限られており, 70%以上が眼や頭蓋内小病巣で占められている.このうち30~40%は網膜メラノーマ, 約40%は頭蓋内の小病巣で, 他は頭頚部や前立腺などで, 胸腹部の深部癌はまだ少数である. 網膜メラノーマは, 陽子線により大線量照射 (70Gy/5回または60Gy/4回) が可能になってから, 眼球内制御率96%, 生存率80~88%という素晴らしい成績が得られるようになった. 頭蓋底・頚椎原発肉腫に対しては, 陽子線で65-75Gy (1.8Gy/fx) 照射することにより65~91%の5年制御率が報告されている.一方, 筑波大学では主に深部臓器癌を対象として, 肺, 食道, 肝, 膀胱などで良い成績を得ている.なかでも原発性肝癌に対しては, 陽子線治療が将来有効な治療法になるものと期待される.以上の優れた臨床成績に刺激され, 新たに陽子線治療を行いたいという施設が急速に増えている.これは陽子線治療がコスト・ベネフィットの面からも十分に評価できる治療法であることを証明するものである.
著者
辻井 博
出版者
京都大学東南アジア研究センター
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.503-524, 1973-03

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
大賀 圭治 辻井 博 米倉 等 福井 清一 岩本 純明 松本 武祝
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

中部ジャワの「定点観測村」で、持続的農業発展の条件を明らかにするための詳細な調査を実施した。農家経済に関する基本的データ収集と同時に、農外労働市場、多様な金融制度、近年注目されている社会林業の制度と運用実態等についてデータ収集を行った。主な知見は以下の通りである。(1)農産物価格や資材価格など、農業を取り巻く環境変化に対する農家の反応は機敏である。また農家は、さまざまなリスク回避措置を経営内に組み込んでいる。(2)水田利用は集約的である。しかし地力循環という点で大きな問題をかかえている。(3)農家構成員の就業先選択は通説のように「無差別」ではない。また、農業部門における家族労働と雇用労働の質については完全に代替的ではないと見なされている。(4)農家の作付け農作物の選択基準においては、自給目的が強くでており、商品経済的観点は弱い。(5)親戚・隣人間での金銭的相互扶助に関しては、共同体規範の強い影響がうかがえる。(6)回転講への参加目的は、低所得層は貯蓄・融資、高所得層は隣人とのコミュニケーションにある。共通して返済率は高く、貧困層の生活水準の向上に貢献している。(7)沿岸丘陵部の天水依存地域では、持続的農業開発の条件はより厳しい。しかし、作物と林木とを巧みに組み合わせた持続的な生産方式が定着している。(8)多様な相互扶助組織がなお機能しており、ソーシャル・セーフティーネットとしての役割を果たしている。(9)国有林経営では、最終生産物を国と農家・農家グループが分収する新たな制度が導入され、農家に持続的な森林管理を動機づけるものと注目されている
著者
大谷 幹伸 宮永 直人 野口 良輔 小磯 謙吉 辻 比呂志 有本 卓郎 稲田 哲雄 北川 俊夫 辻井 博彦 田中 良典 鳶巣 賢一 垣添 忠生
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.821-825, 1991-05-20

C3H/He雌マウスに対し,0.05%のN-Butyl-N-(4-Hydroxybutyl)nitrosamine(BBN)を飲料水として18週間与えた.19週目に11頭のマウス(第3群)を屠殺して,全てに膀胱癌が発生していることを確認した.残りのマウスは二つの群に分け,第1群は骨盤全体に20Gyの陽子線を照射した.一方第2群は,照射を行なわない対照群とした.照射の3週間後全てのマウスを屠殺し,膀胱を切除した.膀胱はホルマリン固定後に重量(≒癌の重量)の測定と,組織学的検索を行なった.膀胱の平均重量(≒癌の重量)は,第1群で67.7mg,第2群で120.6mg,第3群で106.5mgであって,第1郡との間にそれぞれ有意な差が認められた(p<0.05).また表在癌(pT1)と深部浸潤癌(pT2〜3)の頻度は,第1群で10/18(56%)と8/18(39%)であった.また第2群のそれは,3/17(18%)と14/17(82%),第3群のそれは2/11(18%),9/11(82%)であった.第1群と2群問に有意な差(p<0.05)が認められた.しかし第1群と第3郡との差は有意ではなかった(p=0.068).これらの結果はマウスの膀胱癌に対して,陽性線照射が有効な治療法であることを示唆している.