著者
鈴木 勝昭 武井 教使 土屋 賢治 宮地 泰士 中村 和彦 岩田 泰秀 竹林 淳和 吉原 雄二郎 須田 史朗 尾内 康臣 辻井 正次
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、自閉症の病態において脳内コリン系の果たす役割を明らかにすることにある。自閉症者脳内のアセチルコリンエステラーゼ活性を陽電子断層法(PET)により計測したところ、顔認知に重要な紡錘状回において有意に低下していた。さらに、この低下は社会性の障害の重症度と逆相関していた。すなわち、紡錘状回におけるコリン系の障害が強いほど、社会性の障害が強いという相関関係が示唆された。この結果は、自閉症のコリン系の障害は発達の早期に既に起こっており、顔認知の障害がもたらされ、もって社会性の障害の基盤となっていることを示唆している。そこで、認知の障害を注視点分布によって検出し、早期診断に役立てるために、乳幼児でもストレスなく注視点を測定可能な機器の開発を産学連携で行い、現在も継続中である。
著者
辻井 正和
出版者
天理大学おやさと研究所
雑誌
天理大学おやさと研究所年報 (ISSN:1341738X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.31-63, 2009

おさしづは、言葉の補い方によっては、さまざまな解釈が生まれる余地がある。おさしづの意味するところをおさしづ自体から解釈することは可能であろうか。本稿では、おさしづ全体に統計的手法を適用することで、おさしづに見られるさまざまな「理」の基本的な枠組みを見出す試みを行う。 採用した手法は、数量化Ⅲ類である。適用にあたっては、おさしづ正巻に含まれる3857 本のおさしづをサンプルと見て、各おさしづが「ある用語(カテゴリ)を含んでいるかどうか」を調べた。カテゴリとしては、正巻における用例数が多い「○○の理」と「動詞+理」に対応する「○○」と「動詞」を基本とした。パタン分類を試みると、カテゴリは7つのサブグループと、それをまとめた4つの主要なグループ(身上MG、事情MG、神一条MG、順序MG)に分類された。 この結果からすると、初期、中期には「神一条」が、後期には「順序」が主要なテーマとして説かれたようにみえる。そして、「神一条」については、「神の方へ」ではなく「神から」の方向性を持っていることが確認される。「順序」については、時間的順序、一列きょうだいの中の順序という形で説かれたことが確認された。なお、「○○の理」の解釈にあたっては、「理」を伴なわない「○○」全体から解釈する方が望ましいことも示唆される。There is room for the instructions in the Osashizu to be interpreted in various ways depending on the words to be added as aid. The question is whether the meaning of the instructions in the Osashizu can be interpreted on the basis of the Osashizu itself. This paper is an attempt to discover—by applying a statistical method to the Osashizu as a whole—a basic framework of the term "ri" [truth] that is used in many ways throughout the Osashizu. The method used is quantification method III. As the sample, 3,857 directions in the official volumes of the Osashizu were each analyzed for inclusion of particular terms (categories). Based on frequently used expressions, "<…> no ri" [truth of <…>] and "<verb> + ri", the corresponding "<…>" and "<verb>" were picked out as categories. The pattern classification revealed seven sub-groups, which can then be grouped into four major groups (mijo [physical disorder] MG, jijo [trouble] MG, kamiichijo [straightness from God] MG, and junjo [order] MG). The analysis shows that "kamiichijo" was used as the main theme during the early and middle periods of the Osashizu and "junjo" during the last period. Further, "kamiichijo" can be found to imply movement, not "toward", but "from" God. "junjo" is shown to be used in the sense of chronological sequence of events and mutuality among all people as brothers and sisters. It is also made clear that the phrase "<…> no ri" should be interpreted from the entire instances of "<…>" not accompanied by the term "ri".
著者
浜田 恵 伊藤 大幸 片桐 正敏 上宮 愛 中島 俊思 髙柳 伸哉 村山 恭朗 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.137-147, 2016

<p>本研究では,小学生および中学生における性別違和感を測定するための尺度を開発し,性別違和感が示す,内在化問題および外在化問題との関連について検討することを目的として調査を行った。小学校4年生から中学校3年生までの5,204名(男子2,669名,女子2,535名)を対象として質問紙を実施し,独自に作成した性別違和感に関する13項目と,抑うつおよび攻撃性を測定した。因子分析を行った結果,12項目を含む1因子が見出され,十分な内的整合性が得られた。妥当性に関して,保護者評定および教員評定による異性的行動様式と性別違和感との関連では,比較的弱い正の相関が得られたが,男子の本人評定による性別違和感と教員評定の関連には有意差が見られなかった。重回帰分析の結果では,性別違和感と抑うつおよび攻撃性には中程度の正の相関が示された。特に,中学生男子において性別違和感が高い場合には,中学生女子・小学生男子・小学生女子と比較して抑うつが高いことが明らかになった。</p>
著者
野田 航 辻井 正次 伊藤 大幸 浜田 恵 上宮 愛 片桐 正敏 髙柳 伸哉 中島 俊思 村山 恭朗 明翫 光宜
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.158-166, 2016

<p>本研究では,単一市内の全公立小・中学校の児童・生徒(小学3年生から中学3年生)を対象とした縦断データの分析を行うことで,攻撃性の安定性に関して検討した。3つの学年コホート(合計約2,500名)の小・中学生の5年間の縦断データを対象に,潜在特性–状態モデル(Cole & Maxwell, 2009)を用いた多母集団同時分析を行った。攻撃性の測定には,小学生用攻撃性質問紙(坂井ほか,2000)を用いた。分析の結果,攻撃性は特性–状態モデルの適合が最も良好であり,特性変数と自己回帰的な状況変数の双方が攻撃性の程度を規定していることが明らかとなった。また,性差が見られるものの,攻撃性は中程度の安定性をもつことも明らかとなった。さらに,特性変数による説明率は,学年段階が上がるにつれて上昇することが明らかとなり,小学校中学年頃までは攻撃性の個人差はまだそれほど安定的ではないが,思春期に移行する小学校高学年頃から中学校にかけて個人差が固定化していくことが示された。</p>
著者
伊藤 大幸 村山 恭朗 片桐 正敏 中島 俊思 浜田 恵 田中 善大 野田 航 高柳 伸哉 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.170-183, 2016
被引用文献数
8

一般小中学生における食行動異常の実態について, 性別・学年による差異, 併存症状としてのメンタルヘルス指標との関連, リスク要因としての社会的不適応との関連という3つの観点から検討した。一般小中学生を対象に質問紙調査を実施し, 4,952名(男子2,511名, 女子2,441名)から有効回答を得た。独自に作成した小中学生用食行動異常尺度について確認的因子分析を行った結果, "やせ願望・体型不満"と"過食"の2因子構造が支持されるとともに, 性別, 学年段階, 体型による因子構造の不変性が確認された。"やせ願望・体型不満"は, 全体に女子が男子より高い得点を示したが, 特に中2, 中3で女子の得点が顕著に高くなっていた。"過食"では顕著な男女差や学年差が見られなかったが, 女子では, 学年とともにやや得点の上昇が見られた。メンタルヘルスとの関連では, "やせ願望・体型不満"が抑うつと比較的強い相関を示したのに対し, "過食"は攻撃性と比較的強い相関を示した。社会的不適応との関連では, "学業", "家族関係"に加え, 男子では"友人関係", 女子では"教師関係"が食行動異常と有意な関連を示した。
著者
村山 恭朗 伊藤 大幸 高柳 伸哉 松本 かおり 田中 善大 野田 航 望月 直人 中島 俊思 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.477-488, 2014

反応スタイルは抑うつの維持もしくは悪化を引き起こす要因である。本研究は小学4年生から中学3年生の5,217名を対象とし小学高学年・中学生用反応スタイル尺度を開発することを目的とした。既存の反応スタイル尺度を参考に,「反すう」,「問題解決」,「思考逃避」,「気晴らし」の4因子を想定した原案16項目を作成した。探索的因子分析の結果,想定された通り小学高学年・中学生用反応スタイル尺度は4因子(「反すう」,「問題解決」,「思考逃避」,「気晴らし」)で構成されることが示された。さらに各因子間に認められた相関は先行研究の知見に沿うものであった。また信頼性に関して,各下位尺度のα係数は概ね基準以上の値であることが確認された。外在基準とした抑うつおよび攻撃性との相関を検討したところ,「反すう」は正の相関,「問題解決」および「気晴らし」は負の相関を示した。これらの結果は先行研究に沿うものであり,小学高学年・中学生用反応スタイル尺度の構成概念妥当性が確認された。
著者
伊藤 大幸 松本 かおり 髙柳 伸哉 原田 新 大嶽 さと子 望月 直人 中島 俊思 野田 航 田中 善大 辻井 正次
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.304-312, 2014
被引用文献数
13

We examined the psychometric properties of the Japanese version of the Autism Spectrum Screening Questionnaire (ASSQ) and developed a short-form. This study included 157 children with autism spectrum disorders (ASD, ages 7–18, 128 boys) and 4,101 healthy controls (ages 7–15, 3,344 boys) from a general population with a controlled male-female ratio. Four factors (Unusual Interests, Sociality, Peer Relations, and Repetitive Behaviors) were extracted by exploratory factor analysis of control group data. Confirmatory factor analysis revealed that the 4-factor model fit well with data for another sample of the control and ASD groups. Logistic analysis showed that the former 3 factors could significantly predict ASD diagnosis. Thus, a short form of the ASSQ was developed, consisting of 11 items for these 3 factors. This short form showed sufficient internal consistency and high discrimination power for ASD diagnosis that was comparable to that of the 22-item version. Receiver operating characteristic analysis indicated an optimal cut-off of 7 for the 22-item version (sensitivity .949, specificity .801) and 5 for the short-form (sensitivity .936, specificity .818).
著者
田中 善大 伊藤 大幸 高柳 伸哉 原田 新 染木 史緒 野田 航 大嶽 さと子 中島 俊思 望月 直人 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.58-66, 2014

本研究では,保育所の年長児に対する縦断調査によって,保育士が日常業務で作成する「保育記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(Nursery Teachers Rating Development Scale for Children: NDSC)」と学校適応との関連及びNDSCを用いた小学校での適応の予測について検討した。単一市内全保育所調査によって386名の園児に対して保育所年長時にNDSCを実施した後,小学校1年時に教師評定による小学生用学校適応尺度(Teachers Rating Scale for School Adaptation of Elementary School Students [All student version]: TSSA-EA)を実施した。相関係数の分析の結果,NDSCと学校適応との関連が示された。重回帰分析の結果,学校適応の下位尺度である学業面,心身面,対人面,情緒面のそれぞれの不適応を予測するNDSCの下位尺度が明らかになった。重回帰分析の結果に基づくリスクの分析の結果,重回帰分析によって明らかになった下位尺度が,学校適応のそれぞれの側面を一定の精度で予測することが示された。
著者
伊藤 大幸 辻井 正次 望月 直人 中島 俊思 瀬野 由衣 藤田 知加子 高柳 伸哉 大西 将史 大嶽 さと子 岡田 涼
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.211-220, 2013

本研究では.保育士が日常の保育業務の中で作成する「保育の記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(NDSC)」(中島ほか,2010)の構成概念妥当性について検証を行った。4年間にわたる単一市内全園調査によって,年少から年長まで,延べ9,074名の園児についてのデータを得た。主成分分析を行ったところ,9つの下位尺度が見出され,いずれも十分な内的整合性を持つことが示された。9尺度のうち,「落ち着き」,「注意力」,「社会性」,「順応性」の4尺度は月齢との関連が弱く,子どもの行動的・情緒的問題のスクリーニングツールであるStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)との関連が強いことから,生来の発達障害様特性や不適切な養育環境による不適応問題を反映する尺度であることが示唆された。逆に,「好奇心」,「身辺自立」,「微細運動」,「粗大運動」の4尺度は,月齢との関連が強く,SDQとの関連が弱いことから,子どもの適応行動の発達状況を反映する尺度であることが示唆された。このようなバランスのとれた下位尺度構成によって,NDSCは,配慮が必要な子どもの検出と早期対処を実現するとともに,現在の子どもの発達状況に適合した保育計画の策定に貢献するツールとして有効性を発揮することが期待される。
著者
中島 俊思 岡田 涼 松岡 弥玲 谷 伊織 大西 将史 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.264-275, 2012

本研究では,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴を明らかにすることを目的とし,定型発達児の保護者との比較および子どもの問題行動,保護者の精神的健康との関連について検討した。対象者は発達障害児の保護者139名であり,質問紙調査によって,養育スタイル,子どもの問題行動(SDQ),子どものADHD傾向(ADHD-RS),保護者の抑うつ(BDI-II),睡眠障害(PSQI-J)を測定した。その結果,養育スタイルについては,発達障害児の保護者と定型発達児の保護者とで差がみられ,発達障害児の保護者においては,肯定的関わりや相談・つきそいの得点が低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。また,子どもの問題行動やADHD傾向が高いほど,肯定的関わりや相談・つきそいが低く,叱責,育てにくさ,対応の難しさが高い傾向がみられた。精神的健康については,肯定的関わりや相談・つきそいは抑うつ,睡眠障害と負の関連を示し,叱責,育てにくさ,対応の難しさは正の関連を示した。以上の結果から,発達障害児の保護者における養育スタイルの特徴が明らかにされた。最後に,養育スタイルに対する発達臨床的な介入の必要性について論じた。
著者
岡田 涼 谷 伊織 大西 将史 中島 俊思 辻井 正次
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.44-50, 2012
被引用文献数
5

This study developed a Japanese version of the Child Social Preference Scale, which measures children's social withdrawal. In addition, we examined developmental changes of children's withdrawal and the relationships between withdrawal and problematic behaviors. The participants were 7 012 mothers of preschool, elementary school, and middle school children. A factor analysis revealed a two-factor solution of shyness and social disinterest, which is consistent with previous studies. Shyness decreased as children's grade level increased. Social disinterest changed in a quadratic manner. The shyness score was lowest in the lower grades of elementary school. Shyness was related to more emotional symptoms, more peer relationship problems, and less prosocial behavior. Social disinterest was related to peer relationship problems. The importance of the distinction between shyness and social disinterest is discussed.
著者
辻井 正人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では典型的なカオス的挙動を示す連続力学系(アノソフ流、特に負曲率空間における自由粒子の運動を記述する測地流)に対して、付随する転送作用素のスペクトルを分析することで軌道の統計的性質を精密に分析する方法を研究した.最大の研究成果は負曲率多様体上の測地流(またはより一般の接触アノソフ流)に対し、転送作用素の生成作用素が離散的なスペクトルを持ち、それらが複素平面上の幾つかの虚軸に平行な帯状領域に含まれるという事実を示したことである.加えて、力学系のゼータ関数についても対応する結果を得た.これは従来の関係分野の研究を大きく前進させるものである.