- 著者
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山形 伸二
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2004
エフォートフル・コントロール(EC)は,実行注意の効率を表す気質で,非顕在的な反応を行うために顕現している反応を抑制する能力をさす.申請者は,前年度までにEC尺度の信頼性・妥当性,遺伝的斉一性を明らかにするとともに,ECの低さが外在化問題行動(衝動性が極端に高い場合に生じる不適応;ADHD,行為障害,物質乱用などの総称),抑うつ・不安などの内在化問題行動の両方の遺伝的素因である可能性を明らかにしてきた。本年度は,まず(1)「因果の方向性モデル」という手法を用いて昨年度までに得られたデータの再解析を行い,ECと問題行動との関連が年齢とともに変化することを明らかにした(博士論文の一部,学会発表)。また,(2)ECの成人期における発達的結果と考えられている勤勉性・協調性について,アメリカの双生児サンプルの二次データ(National Survey of Midlife Development in the United States ; MIDUS)を用いて,宗教性の個人差が勤勉性,協調性への遺伝的・環境的影響の強さを調節することを明らかにした(投稿中)。この他,(3)衝動性についての気質モデルの行動遺伝学的な妥当性および発達的変化について検討し(パーソナリティ研究,Personality and Individual Differences,ともに印刷中),また(4)アメリカ・ドイツの研究者との共同研究を行い,他者評定によって得られた双生児のパーソナリティのデータを用いて,パーソナリティの5次元構造の高次因子が認知的バイアスによるartifactである可能性を示唆した(投稿中)。最後に,(5)パーソナリティ研究における行動遺伝学的知見と今後の展望をまとめ,Handbook of Behavior Geneticsの一章にまとめた(印刷中)。