著者
大島 稔 赤本 伸太郎 柿木 啓太郎 萩池 昌信 岡野 圭一 鈴木 康之
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.589-592, 2011-03-31 (Released:2011-05-10)
参考文献数
16

症例は30代,男性。刺身を食べた2日後より突然の腹痛を自覚し近医を受診し,加療目的で翌日当院に紹介,入院となった。来院時,激しい腹痛と反跳痛を認めたが筋性防御は認めず,単純撮影でイレウス像を呈していた。CTで腹水の貯留および小腸に限局した壁肥厚と炎症所見を認め,その部位より口側の小腸の拡張を認めた。内ヘルニアなどによる小腸の絞扼性イレウスの他に,画像所見より小腸アニサキス症を疑い,緊急手術を施行した。開腹所見で中等量の腹水を認め,回盲部から100cm口側の小腸壁に点状の発赤と浮腫,肥厚を認めた。同部をイレウスの原因と判断し,小腸部分切除術を施行した。切除腸管の粘膜内に刺入した線虫を認め,小腸アニサキス症と診断した。小腸アニサキス症はまれな疾患であり,一般的に術前診断は困難である。しかし,腸閉塞の鑑別疾患として絞扼性イレウスなどが考えられる場合は時期を逸することなく手術を検討することが重要である。
著者
髙橋 聡 和田 耕一郎 公文 裕巳 増田 均 鈴木 康之 横山 修 本間 之夫 武田 正之
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.62-65, 2014-04-20 (Released:2015-06-13)
参考文献数
10

NIH慢性前立腺炎問診票は,慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群の症状の程度や治療の評価に用いられる症状スコアである.我が国では,日本泌尿器科学会が公認したNIH慢性前立腺炎問診票日本語版が確立されていないことから,日本泌尿器科学会では(排尿機能・神経泌尿器科)専門部会長の武田正之を委員長としてNIH慢性前立腺炎問診票日本語版作成委員会を立ち上げ検討を行った.検討の結果,過去に発表されたNIH慢性前立腺炎問診票日本語版の案と日本語版International Prostatic Symptom Score(IPSS)から,NIH慢性前立腺炎問診票日本語版を作成した.今後の臨床研究において,このNIH慢性前立腺炎問診票日本語版が活用されることを強く希望する.
著者
鈴木 康之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.626, 2020-05-15

私が初めて本格的な英語論文を書いたのは1986年でした。当時,論文執筆に関するテキストはほとんど無く,他の論文の表現や構成を参考にしながら,四苦八苦して継ぎはぎの英作文をしていた記憶しかありません。本書で植村研一先生が強調しておられる“comfortable English”にはほど遠いものでした。当時,本書があったら私の苦労の何割かは軽減し,ワンランク上の雑誌に掲載できていたことでしょう。近年,論文執筆に関するテキストは随分多くなりましたが,本書は次の3点でとても魅力的です。 (1)医学研究者・医学英語教育者・雑誌編集者・同時通訳者としての長年の経験に基づいて,“どのような論文が一流誌に採択されるか?”を熟知した植村先生が,まるで直接語りかけてくださるように,歯切れ良くポイントを示しています。植村先生のお話を一度でも聞いたことのある方は,特に実感されるでしょう。植村先生の頭に蓄積されてきた智慧とノウハウを学びとってほしいと思います。 (2)全編を通じて“comfortable English”と“短縮率”がキーワードとなっています。日本人特有の婉曲・冗長な表現を戒め,言葉をいかにそぎ落とすかを多くの実例で示し,演習によって実践力が高まる工夫がされています。英語論文の読者・査読者の多くはnative speakerであり,comfortableな英語を心がけることが重要です。“うまい英語”とは決して美文ではなく,読者の頭に素直に入っていく“simple and clear statement”なのだと理解しました。“うまい英語”のコツがわずか50ページの中に凝縮されているとは驚きです。 (3)コンパクトな構成で,忙しい医師・研究者でも手軽に読むことができます。読みやすく(comfortable Japanese!),明快(simple and clear!)に書かれていますので,一度全編を通読することがお薦めです。これから英語論文にチャレンジしようとしている若手はもちろんのこと,論文の質をワンランク高めたい中堅,論文執筆を指導する立場のベテランにとっても格好の参考書です。一度でも英語論文を書いた方なら,読んでいてうなずかされることばかりです。査読者の視点を知ることで,どんな論文を書けば良いかを知ることができます。
著者
田中 大喜 村木 二郎 松田 睦彦 湯浅 治久 鈴木 康之 井上 聡 高橋 典幸 黒嶋 敏 貴田 潔 神野 祐太 渡邊 浩貴
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、13世紀後半~14世紀にかけて顕著になった、西遷・北遷と呼ばれる東国武士の西国や東北地域の所領への移住の実態について究明する。その際、西遷・北遷東国武士と在来諸勢力とを相互規定的な関係にあるものと捉える観点から、両者の多様な諸資料を広く収集・分析し、文献史学・考古学・美術史学・民俗学・歴史地理学による地域総合調査として進めていく。本研究の成果は、報告書や展示等を通して社会に発信していくと同時に、様々な研究分野に利活用できる調査情報公開のシステム作りも進め、調査データの社会資源化を図る。
著者
川上 ちひろ 西城 卓也 藤崎 和彦 鈴木 康之
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.365-371, 2015-09-25 (Released:2017-03-03)
参考文献数
38
被引用文献数
1

背景 : 問題をもつ学習者の問題は体系的に示されてない. 教育者が, その問題を適切に理解するため, 問題をもつ学習者を表現する英語用語と定義を集約し, その問題を因子ごとに分類する.方法 : 系統的文献検索結果 : 用語にはdisability, learning disorders, at-risk, difficult, problem, struggle, underperform, unprofessional unsafe, gifted, outstandingが同定された. 問題因子は, 学習者の特性, 認知, 態度, 技術に大別された.考察 : この分類は教育者が問題を的確に理解する一助となる.
著者
古田 昭 成岡 健人 長谷川 倫男 鈴木 康之 池本 庸 大石 幸彦
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.570-573, 2003-07-20

前立腺粘液癌は非常に稀な腺癌であり,その病態はあまり知られていない.われわれは免疫染色にてprostate specific antigen(以下PSA)陽性,carcinoembryonic antigen(以下CEA)陰性で,印環細胞を認めず,通常の腺癌を合併した症例を経験した.免疫染色にてPSAとCEAの両方が検索されていた自験例を含む32例の報告について検討した結果,PSA染色陽性23例中17例,CEA染色陽性10例中3例に通常の腺癌の合併が認められた.また,印環細胞は6例に認められ,そのすべてがCEA染色陽性であった.このことは,前立腺粘液癌のなかにはPSA染色陽性で通常の腺癌の一亜型と考えられるものと,PSA染色陰性かつCEA染色陽性で前立腺部尿道の腸上皮化生に由来するものの2つのタイプが存在する可能性が示唆された.