- 著者
-
鎌田 東二
- 出版者
- 宇宙航空研究開発機構
- 雑誌
- 宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.1-12, 2012-03
水の惑星に発生した生物種であるヒトのいとなみの中から「宗教」というヒト独自の信仰・思想と行動・儀礼が生まれてきた.すべての宗教に共通する神話と儀礼は,ヒトがこの世界や宇宙をどのように捉え,位置付け(価値付け)てきたか,その諸パターンを示しているといえる.そうした地球上で発生した宗教は,ヒトが宇宙に出る際にどのような役割や機能を果たすのか,宇宙体験と宇宙生活はヒトの心身や感覚や思想にどのような影響を与えるのか,宗教がさまざまな社会リスクにどのように対処し,その対処法は宇宙生活においてどのようにはたらきうるか,またそこにおいて,宗教はどのように変質するか,宗教が持つ力と可能性は何であるのかなどの問題を考察するのが「宇宙宗教学」(宇宙における宗教の研究)の課題である. 地球上では宗教が原因となった対立や戦争もあるが,同時に,宗教は負の感情や苦難の乗り越えや救済や深い洞察をもたらしてきた.そのような諸宗教の中で,日本の宗教および神道が持つ特色や宇宙生活における可能性について考察する.