著者
土田 健次郎 丸谷 晃一 沢井 啓一 黒住 真 野村 真紀 遠山 敦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

伊藤仁斎の全集はその盛名にもかかわらず一度も刊行されたことはなかった。本研究はその全集作成の基礎作業を企図したものである。本研究ではまず資料の調査と収集から着手し、天理図書館の古義堂文庫所蔵の仁斎自身の諸稿本、定評のある林景范筆写本(林本)の焼き付けをはじめとする多数の基礎資料を入手した。また仁斎の刊本には東涯の手が入っていると言われ、仁斎研究は同時に東涯の資料の調査を必須とするが、東涯の基本資料の収集も精力的に行った。本研究では、収集した資料をもとに、まず仁斎全集の基礎作業として、『論語古義』の一部の訳注と、『中庸発揮』の諸稿本の対校表を作成した。また従来の研究においては仁斎の五経観はその四書観に比して明らかに手薄であったが、この方面の成果として、仁斎の『易経』観と『春秋』観についての論文二篇を作成した。さらに仁斎の思想分析に関する論文二篇、日本近世思想史上の重要なテーマである仁斎から荻生徂徠への展開に関する論考二篇も発表した。これらは全て報告書に登載してある。本研究では収集した資料をもとに仁斎の代表作の最良のテキストのデータベース化にも取り組んだ。そのうち『論語古義』、『孟子古義』、『大学定本』、『中庸発揮』、『童子問』、『語孟字義』、『古学先生文集』、『古学先生詩集』はほぼ完成し、『仁斎日札』、『古学先生和歌集』についても2001年中にできあがる予定である。報告書にはそのサンプルを載せた。また仁斎・東涯、古義堂に関する研究文献目録のデータベースも作成し、試行版をインターネットに流した。これは統一方針のもとに新たにキーワードを採集しなおしたものであって、質量ともに従来のものをこえ、さらに作業を継続中である。報告書にはそのデータのプリントアウトしたものを載せた。
著者
刈間 文俊 若林 正丈 村田 雄二郎 クリスティーン ラマール 生越 直樹 伊藤 徳也 代田 智明 瀬地山 角 高橋 満 古田 元夫 若林 正丈 黒住 真 代田 智明 深川 由紀子 生越 直樹 クリスティーン ラマール 高見澤 磨 楊 凱栄 谷垣 真理子 伊藤 徳也 瀬地山 角 田原 史起 有田 伸 岩月 純一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

中国では、漢字が、簡略化や教育によって、血肉化され、作家達も、前近代的なものを凝視し続けた.戦前の日中関係では、日本の漢学者と漢字紙が大きな役割を果たした.戦後韓国は、漢字を駆逐する一方、伝統的な同姓不婚制度を再構築させ、台湾は、漢字を簡略化せず、80 年代以降には、多文化主義的な社会統合理念を形成した.それに対して、中国大陸では今や、漢字文化からも消費文化からも疎遠な農村が、自律と国家による制御の間で揺れ動いている.本研究は以上を実証的に解明した.
著者
大貫 隆 北川 東子 黒住 真 杉田 英明 増田 一夫 村田 雄二郎 網野 徹哉 安西 信一 安岡 治子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ユダヤ、キリスト、イスラームの三大一神教を「アブラハム的伝統」と捉え、そこに内在する差異、および他の宗教との差異を、地域文化研究に特有な多元的視点でもって分析、理論化した。その作業によって、「文明の衝突」論に見られるような、文明(西洋)/野蛮(非西洋)という図式の看過や行きすぎを指摘、訂正するとともに、世俗性もしくは世俗化についても、社会のあり方に応じて多様な形態がありうることを示した。
著者
鎌田 東二 梅原 賢一郎 河合 俊雄 島薗 進 黒住 真 船曳 建夫 原田 憲一 藤井 秀雪 中村 利則 小林 昌廣 尾関 幸
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本語の「モノ」には物質的次元、人間的次元、精神的・霊的次元が含意されているという問題認識に基づき、日本文明の創造力の基底をなすその三層一体的な非二元論的思考の持つ創造性と可能性、またその諸技術と表現と世界観をさまざまな角度から学際的に探究し、その研究成果を4冊の研究誌「モノ学・感覚価値研究第1号~第4号」(毎年3月に研究成果報告書として刊行)と論文集『モノ学の冒険』(鎌田東二編、創元社、2009年11月)にまとめて社会発信した。また最終年度には、「物からモノへ~科学・宗教・芸術が切り結ぶモノの気配の生態学展」(京都大学総合博物館)と、モノ学と感覚価値に関する3つの国際ンポジウムを開催した。
著者
今井 知正 村田 純一 黒住 真 門脇 俊介 信原 幸弘 野矢 茂樹 宮本 久雄 山本 巍
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

自然主義をめぐる哲学的思考の歴史的遺産を再検討したうえで、現代の哲学的自然主義をめぐる論争状況を直接に主題化し、根本的な論点について、各研究者がそれぞれの立場から検証作業を行なった。その結果、現代的な自然主義と反自然主義の対立を一挙に解消することはできないとしても、いくつかの重要な成果が得られた。(1)認識論的自然主義はアプリオリな知識を説明し得ないとされてきたが、暗黙的概念了解と想像による概念連結を根拠として、自然主義的立場においてもそうした知識が説明可能であるという見解が得られた。(2)色彩概念は長らく物理的説明に委ねられ哲学的アプローチに乏しかったが、現象学やウィトゲンシュタインの知見を参照することで、色彩概念が自然主義的還元を許さない多次元性をもつことが示された。(3)自然主義批判の立場はまた、哲学の基礎付け主義や強い意味での正当化要求と、極端な自然主義や懐疑論が裏腹の関係にあり、それらのいずれもが、人間の実践的世界における自由や合理性、真理や正・不正の経験の「内在性」に基づくことを示すことによっても展開できる。(4)ウィトゲンシュタインの後期哲学にも、通常の自然主義とは異なる、人間の「自然誌的」過程における実践に意味や規範の前提を求める「超越論的自然主義」が見られる。(5)日本思想史における「倫理」の位置づけ、現代世界における「公共哲学」の可能性などを問う中で、自然主義の限界を明らかにする作業も行なった。