- 著者
-
風間 孝
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.3, pp.348-364, 2002-12-31 (Released:2009-10-19)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
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本稿の目的は, 同性愛者であることを公言するカミングアウトの実践が持つ政治性を明らかにすることにある.まず, 性について語ることによって解放された自然状態への移行を目指す解放主義者の言説が, 同性愛嫌悪に回収されることを指摘する.つぎに, 自己のセクシュアリティを公言するカミングアウトを告白と同一視する一部の社会構築主義者の主張は, セクシュアリティの装置の中における自らの位置を問いたださない点で, 当の装置と同延上にある点を指摘する.東京都が同性愛者団体の青年の家利用を拒絶したことに端を発する訴訟の分析を踏まえて, カミングアウトを, 権力関係のない状態を目指す解放にかわって, 権力の外部に立つのではなく権力の中にとどまりつつ, 同性愛嫌悪の社会における権力行使のあり方を変える抵抗の行為として位置付ける.そのうえで, カミングアウトが, 公/私を貫く規範として異性愛規範があることを顕在化させるとともに, セクシュアリティの装置が性的欲望を秘密として設定することを通じて自己の真理を生産していく知の枠組みを疑問に付す行為であることを明らかにする.