著者
吉川 一樹 鮎澤 聡 福島 正也 櫻庭 陽 石山 すみれ
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.204-209, 2019 (Released:2020-07-13)
参考文献数
13

【目的】片頭痛に対し、 後頭部C2末梢神経野鍼通電療法を行い、 頭痛頻度と服薬回数の減少および生活支障度の改善がみられた症例を報告する。 【症例】60代女性。 主訴は頭痛。 [現病歴] X-41年、 幼少期から続く頭痛が悪化し始めた。 X-15年頃から市販薬が無効となり、 近医脳神経外科で片頭痛および薬物乱用頭痛と診断された。 服薬により薬物乱用頭痛は寛解し、 従来からの頭痛も改善した。 X-1年8月に新たに仕事を始めてから、 頭痛頻度と服薬回数が増加傾向にあるため、 X年5月に鍼治療を開始した。 直近の頭痛頻度は8回/月程度で、 その都度服薬していた。 [自覚症状] 拍動性の痛みが主に前頭部、 後頭部に出現し、 悪心・嘔吐、 光・音過敏を伴うこともある。 主な誘因は、 天候の変化である。 [家族歴] 実父、 母方の祖母、 実兄弟に頭痛歴あり。 [診断] 片頭痛。 [評価] 頭痛ダイアリー (頭痛頻度、 服薬回数)、 日本語版 Headache Impact Test (HIT-6)。 【治療】後頭部C2末梢神経野鍼通電療法を週1回から月1回の頻度で実施した。 【結果】頭痛頻度は、 治療開始前が8回/月、 治療12週後が6回/月、 24週後が8回/月、 36週後が3回/月、 48週後が1回/月、 54週後が4回/月であった。 服薬回数は、 治療開始前が8回/月、 治療12週後が2回/月、 24週後が6回/月、 36週後が3回/月、 48週後が1回/月、 54週後が4回/月であった。 HIT-6は初診時が68点、 54週後が57点であった。 台風などの天候の変化による一過性の増悪が認められたものの、 頭痛頻度および服薬回数が満足いく状態まで改善したため、 18診 (54週後) で治療を終了した。 【考察】本症例では主誘因である天候の変化による頭痛発作の誘発が軽減されたことが特徴であり、 後頭部C2末梢神経野鍼通電療法による三叉神経脊髄路核の感作の抑制が関連している可能性がある。
著者
鮎澤 聡 松村 明
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.864-872, 2017 (Released:2017-12-25)
参考文献数
81
被引用文献数
1

ニューロモデュレーション (neuromodulation) とは, ディバイスを用いて電気・磁気刺激や薬物の投与を行い神経活動を調節する治療を指す. 刺激や薬物投与量が調節可能であること, また治療をすみやかに中止することができる, すなわち可逆的であることが, 切除や破壊を中心としてきた従来の機能神経外科との違いとして強調される. 現在, その適用範囲は神経疾患のみならず, 内臓疾患や全身の炎症性疾患にまで広がっている. この分野の発展の背景には医工学分野の進歩があり, 光や超音波など新たな刺激や有効な刺激のためのディバイスが開発されている. 今後, それらの刺激に対する生体反応の統合的な理解が必要とされる. また倫理面の整備が必要である.
著者
鮎澤 聡 松下 明
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

光学的特徴による脳神経機能や術中の組織の弁別を目的として、偏光を用いた脳神経外科手術中の術中顕微鏡イメージングを検討した。ラットを用いた実験では、反射照明を用いた偏光顕微鏡では、複屈折の差や変化で脳神経組織や機能を捉えることは困難であった。一方、余分な散乱光を軽減することにより、表面より深部の情報が可視的に得られた。これらの結果から、実際の術野で用いることができる顕微鏡を試作した。
著者
渡邊 健 鮎澤 聡
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.21-31, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
5

【目的】坐骨神経鍼通電療法とは、殿部あるいは下肢において鍼を経皮的に刺入して坐骨神経に電気刺激を行う方法である。一定の治療効果が報告されているが、体表の指標を目安にブラインド下に鍼を刺入するため、血管等組織損傷の可能性が常に存在する。これまでに、安全性を目的とし、かつ生体を用いた殿部における鍼刺入路の画像解剖学的検討はなされていない。本研究では、殿部の生体画像を用いて、殿部刺鍼点およびその鍼刺入路周囲部における解剖学的構造物(骨盤腔内臓器・血管・骨格筋)の解析を行い、より安全性の高い刺鍼部位について検討を行った。 【対象と方法】殿部における代表的な刺鍼点3点(a:傍仙骨部・b:梨状筋下孔部・c:坐骨結節-大転子間部)を取り上げ、各鍼刺入路周囲部をそれぞれA、B、Cゾーンとし、各ゾーンに存在する構造物について既存のCT画像(男5症例・女7症例)を用いて解析を行い、安全性について検討した。 【結果】内腸骨動脈から分枝する上殿動脈・下殿動脈の分枝パターンと走行は多様ではあるが、Aの頭側には太い上殿動脈、AおよびBには太い下殿動脈が存在することが確認された。坐骨神経内側に伴行する下殿動脈はCにも存在するが、血管径は末梢に向かうほど細くなるため、太い動脈はほとんど確認できなかった。また、AおよびBの腹側では全例で骨盤腔、約半例で腸管等臓器への接触が確認された。Cでは深部であっても臓器そのものが存在していないため、臓器損傷リスクは皆無であり、刺入路の先は筋または骨のみであった。 【結論】A・Bでは鍼先が深部・内側に向くと骨盤腔内臓器損傷の可能性がある。Aでは上殿動脈、A・B・Cでは下殿動脈への血管損傷の可能性はあるが、Cでは血管径が細いため刺鍼に伴う出血のリスクは低いと考えられる。坐骨結節-大腿骨間(C)における刺鍼が最も安全性が高いことが示唆された。
著者
松田 えりか 近藤 宏 木下 裕光 砂山 顕大 石崎 直人 鮎澤 聡
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.122-130, 2020-10-31 (Released:2021-02-10)
参考文献数
30

【目的】慢性腰痛患者に対する鍼治療の直後効果に影響する因子について,心理社会的要因を探索的に検討した.  【対象と方法】対象は2019年8月~12月までに本学東西医学統合医療センター鍼灸外来を訪れた初診慢性腰痛患者のうち,初診時にVisual Analogue Scale(以下VAS)にて評価した腰部疼痛強度が30mm以上の者56人とした.初診時に自記式質問票を使用し,心理尺度(Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),Hospital Anxiety and Depression Scale,Pain Self-Efficacy Questionnaire),社会的要因(同居家族状況,最終学歴,社会参加状況),腰部機能障害,鍼治療に対するイメージなどを調査した.初回治療直後のVAS値が30mm未満となり,かつ対象者自身が疼痛の改善を認めた者を「高反応群」,それ以外を「低反応群」とした.この2群間で対象者の属性と身体的および心理社会的調査項目を探索的に比較し,さらに2群の区分を二値の従属変数とするロジスティック回帰分析を行った.  【結果と考察】高反応群は22人,低反応群は34人であった.2群間の探索的な比較において統計学的な有意差が認められた項目は,鍼治療に対するプラスイメージ(P=0.001)とマイナスイメージ(P=0.004)のみであった.ロジスティック回帰分析では,PCS(OR:0.886(95%CI:0.808~0.971);P=0.010),鍼治療に対するプラスイメージ(OR:5.085(95%CI:1.724~15.002);P=0.003),同居人数(OR:0.355(95%CI:0.149~0.844);P=0.019)が直後効果に影響を与える因子として抽出された.この結果,慢性腰痛患者の鍼治療効果に心理社会的要因が影響を及ぼすことが示唆された.
著者
鶴卷 俊江 丸山 剛 前島 のり子 岸本 圭司 清水 朋枝 石川 公久 江口 清 落合 直之 井原 哲 鮎澤 聡
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P3208-E4P3208, 2010

【目的】近年重度痙縮に対し、中枢性筋弛緩薬であるバクロフェンを脊髄腔内に持続投与する髄腔内バクロフェン投与(ITB)療法が行われている。当院においても脊髄障害や脳卒中患者、脳性麻痺に対し行われている。今回、重度身体障害者に対し介護負担軽減を目的にセラピストが医師と連携し、ITB療法導入を検討する機会を得た。ここに、ITB療法が介護負担に及ぼす影響について若干の考察を得たので報告する。<BR>【方法】ITB療法開始前後で、以下の3項目について評価、検討した。1.四肢筋緊張の程度をAshworth Scaleを用いた。 2.カナダ作業遂行測定(COPM)の10段階評価を利用し、日常生活動作の中で介護者にとって重要度が高い10項目について遂行度と満足度を聴取した。3.介護負担度の尺度としてZarit介護負担度尺度日本語版(J-ZBI)を用いた。対象は、当部で理学療法を受けている2名の患者である。症例1は四つ子の第四子として在胎26週720gで出生した22歳男性。身長152.0cm、体重50.0kg。成長と共に側彎の進行および四肢筋緊張亢進したが、18歳時に顕著な増悪を認めた。ADLはほぼ全介助の状態だが、コミュニケーション能力は良好。主介護者は両親、副介護者は兄である。平成21年7月8日バクロフェン髄腔内持続注入用ポンプ植込み術実施。症例2は生後7ヶ月につかまり立ち時に転倒。急性硬膜下血腫、脳挫傷受傷。術後に低酸素脳症および難治性てんかん合併。その後転居に伴い当院でフォローされている13歳男児。身長131.0cm、体重25.7kg。平成18年頃より側彎の進行および四肢筋緊張亢進の急激な変化あり、平成21年2月経口摂取も困難となり胃廔造設。主介護者は母親、副介護者は父親である。平成21年9月25日バクロフェン髄腔内持続注入用ポンプ植込み術実施。<BR>【説明と同意】趣旨、権利保障、匿名性、プライバシー保護について口頭で説明し同意の得られた症例である。<BR>【結果】症例1は、Ashworth Scaleは平均点で術前下肢3.38、上肢4.25。術後下肢1、上肢2.5の減点。ADLは平均点で術前が遂行度6.9、満足度6.8。術後が遂行度8.1、満足度8.1と変化あり。J-ZBIは母親は術前5点、術後4点。父親は術前12点、術後8点と変化が見られた。症例2は、Ashworth Scaleは平均点で術前下肢3.25、上肢2.25。術後は下肢1.75、上肢1.25の減点。ADLは平均点で術前が遂行度7.4、満足度7.4。術後が遂行度7.7、満足度7.4。J-ZBIは術前23点、術後13点と減点あり。「全体を通してみると、介護をするということはどれくらい自分に負担になっていると思いますか」との問いでは、術前「世間並」が、術後「多少」と介護負担が軽減した結果が得られた。また問診から、「自力で食事をするペースが早くなった」「シャワーが楽になった」とあり、問題意識を持たなかった点でも変化が見られた。<BR>【考察】介護負担度の評価尺度として用いたJ-ZBIは、「介護負担感とは親族を介護した結果、介護者が情緒的、身体的健康、社会的生活および経済状態に関して被った被害の程度」と定義されている。2例ともに術前後で得点の減少はみられたが、もともとか「低負担感」の点数でありこの分類に術前後で相違はなかった。このことは、介護者が親である場合は、生下時より障害と共に成長してきた子の介護を負担と感じるには至らない点や症例1のようにマンパワーが満たされているケース、症例2のようにまだ母親一人で介助が出来る子の体格であるケース等、J-ZBIの介護負担感の概念に必ずしも合致しないためと推察する。しかし、このような場合も介護が長期化することで、介護負担感が高くなることは容易に想像できる。ITB療法の有用性は筋緊張を低下させることで、1.活動性(運動性)の改善が図れる、2.変形の予防・改善をねらえると考えられる。我々は新たに「介護者の負担を減らせる」効果があると提案したい。そこで、セラピストの役割として、医学的側面からケア・サポートが必要である症例を見落とさず、治療方法の選択を介護者および医師と共に検討していくことが重要であると思われる。今回各種評価方法を用い介護負担について検討した結果、介護者の主観的満足度は大きく介護負担軽減を目的としたITB療法は有用であると考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】重度身体障害者に対してはITB療法の有用性を評価するためには介護者側の評価が必要であることからも、評価方法については今後さらに検討していく必要があると考える。
著者
石松 菜摘 鮎澤 聡 櫻庭 陽 成島 朋美
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.45-52, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
16

【はじめに】骨盤骨折後に便漏れ(切迫性便失禁)と仙骨部から肛門周囲の感覚障害が残存した患者に対し、仙骨部に低周波鍼通電を行い症状の改善が得られた一症例を経験したので報告する。 【症例】60歳代、男性。主訴は便漏れと左側仙骨部から左側肛門周囲の痺れおよび感覚鈍麻。X-1年5月、交通事故により骨盤骨折を受傷し外科治療を受けるも上記症状が残存し、その後も改善を認めず。X年4月当センターに来所し、鍼治療が開始された。 【治療及び評価】左右の第2~4後仙骨孔部(次・中・下穴)および会陽穴に斜刺にて40mm程度刺入し会陰部に得気を得た後、1~3診は1Hz15分、4~7診は20分、8診以降は50Hz 間欠波で20分施行した。評価には、便失禁の程度にNumerical Rating Scale(NRS)を、便失禁に関連したQOLに日本語翻訳版Fecal Incontinence Quality of Life Scale(FIQL)を用いた。また痺れについてVisual Analogue Scale(VAS)で評価を行った。 【経過】便失禁の程度は初診時NRS8が7診時に2まで減少し、FIQLでも改善がみられた。肛門周囲の痺れは初診時VAS69mmであったが9診目で消失した。感覚鈍麻は残存した。 【考察・結語】切迫性便失禁は陰部神経障害による外肛門括約筋の障害で生じる。今回の治療では後仙骨孔部で鍼通電を行うことで仙骨神経叢後枝を刺激し、陰部神経の活動に影響を与えた可能性がある。近年便失禁に対しては外科手術によるSacral Neuromodulation Therapy(SNM療法)が行われるが、侵襲度が小さい仙骨部の低周波鍼通電療法は、便失禁に対する安全で簡便な治療法の1つとなりうる可能性が示唆された。
著者
飯田 藍 鮎澤 聡 櫻庭 陽
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.210-216, 2019 (Released:2020-07-13)
参考文献数
12

【はじめに】慢性的な冷えを伴ったレストレスレッグス症候群 (RLS) 患者に対して鍼灸治療を行い、 良好な経過が得られたので報告する。 【症例】42歳、 女性。 主訴は入眠時に出現する下腿後面のむずむず感。 過去、 妊娠時にむずむず感が出現するも出産後は消失していた。 X年7月誘因なく入眠時に下腿後面にむずむず感が出現。 症状は徐々に増悪し、 入眠障害も伴う。 神経内科にてRLSと診断されるも、 薬物治療を希望しなかったため鍼灸治療を開始した。 【治療及び評価】治療は両側内・外側腓腹筋上に置鍼、 両側承山 (BL57)、 三陰交 (SP6) に電子温灸器を週一回実施した。 評価は国際レストレスレッグス症候群重症度評価尺度 (IRLS)、 Numerical Rating Scale (NRS) を用いた。 【結果】IRLSは初診時26点であったが治療毎に軽減がみられ、 7診目には2点にまで減少した。 NRSも初診時8点であったが、 7診目には0点と改善を認めた。 また、 RLS症状軽減に伴い慢性的に感じていた足部の冷え症状の改善が得られた。 【考察】近年RLSの病態として背後側視床下部のドパミンA11神経の機能的異常が推定されているが、 この系の障害が交感神経系の過緊張を誘発し、 微小循環を障害して冷えの原因となる可能性がある。 【結語】下腿後面のむずむず感を呈するRLSに対し、 下腿部への鍼灸治療で異常感覚の改善と共に冷えの改善が得られた一例を経験した。 RLSと冷えにはドパミン系や自律神経系と関連した共通の病態があり、 鍼灸治療がそれらに作用して症状の改善を促した可能性が示唆された。
著者
鮎澤 聡
巻号頁・発行日
1998

筑波大学博士 (医学) 学位論文・平成10年3月23日授与 (甲第1916号)
著者
鮎澤 聡
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:挑戦的萌芽研究(2009-2011)