- 著者
-
津田 恭治
野口 昭三
石川 栄一
中居 康展
阿久津 博義
松村 明
- 出版者
- 一般社団法人 日本脳卒中学会
- 雑誌
- 脳卒中 (ISSN:09120726)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.3, pp.268-274, 2010-05-25 (Released:2010-07-09)
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
-
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高齢人口割合の高い地域にある脳神経外科救急対応病院における,高齢者脳卒中診療の現状をまとめ,高齢者脳卒中患者の予後とその予測因子を検討する.脳神経外科に脳卒中の診断で入院した超高齢(80歳以上)脳卒中患者97名を対象とした.対象患者データのうち,年齢,性別,退院時modified Rankin Scale(mRS),退院時経鼻管または経胃ろう栄養,入院中肺炎などの評価項目と生命予後との関連をCox hazard modelあるいはlogrank testを用いて解析した.超高齢脳卒中患者97名の1年生存率は約75%であり,85歳未満および,mRS0–3群において有意に生存率が高いことが示された.また,生存退院例についての解析では,退院時のmRS3–5,入院中肺炎,胃ろう造設/退院時経管栄養が退院後の死亡に関する予測因子であり,入院中肺炎罹患が,統計学的に有意差をもった退院後の死亡に関する独立した予後予測因子であった.超高齢者脳卒中患者において,年齢や退院時mRSの他に,入院中の肺炎発症の有無が予測因子になる可能性が示唆された.我々は,超高齢者脳卒中患者の治療やケアを計画する際にこれらの因子を熟慮する必要がある.