著者
齋藤 孝
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.71-79, 1995-03-31 (Released:2017-04-22)

The purpose of this paper is to elaborate the concept of "style" as the pedagogical term through a case study of an American female teacher's radical teaching at the elementary school. The teacher's name is Jane Eliot, and the documentary film's title of this practice is "A Class Divided". To teach the racial problem she divided her class by the color of the children, and discriminated against their color. This experiment had an extraordinary effect on reducing their racial prejudice. At first, her skills are detailed and their pedagogical meanings are clarified. This description makes it clear that the effect of this experiment is based on her detail skills which are usually overlooked. Secondaly, her lived body's imporant role in her practice is described. This description is based on Melreau-Ponty's phenomenological study of our lived body. Lastly, her teaching style is interpreted. The concept of style means the coherent deformation of the standard mode in several demensions from one's principle or identity to the concrete teaching skills. In conclusion, the meanings of an excellent teaching method can be learned by the description and interpretation of the teacher's detail skills, lived body, and style.
著者
齋藤 孝
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.287-294,368, 1999-09-30 (Released:2007-12-27)

この論文の目的は,「身体知としての教養(ドイツ語で言えば,ビルドゥング)」という概念の意義を明らかにすること,および,日本の伝統的な教養と教育を検討することによって,私たちによって生きられている身体の重要な役割を教育学の文脈に位置づけることである。 この概念には,二つの主な効果がある。一つの効果は,身体的な経験を通して獲得された知恵を一つの教養としてみなすようになることである。もう一つの効果は,たとえば音読や古典的な詩歌の暗誦のように,古典的な教養を学ぶ上での,私たちによって生きられている身体の重要性を評価するようになることである。生きられている身体というのは,メルロー=ポンティの『知覚の現象学』の中心概念である。「身体知としての教養」という概念は,私たちによって生きられている身体によって基礎づけられているものである。 教養というのは,通常は,多くのスタンダードな書物を読むによって得られた幅広い知識の問題とみなされている。しかし,19世紀までは,日本人にとって,五感を通して,言い換えれば,生きられた身体を通して学ぶことが非常に重要であった。日本の伝統的な学習法では,知の問題は,身体の問題と切り離すことのできないものであった。かつての日本人にとっては,教養をつけるということは,日々の生活の中で自分が生きている身体を耕すことを意味していた。それゆえに,教養ある人間には,何らかの身体的なアート(技芸)を経験していることが期待されていた。身体的な技を反復練習によって向上させる,まさにそのプロセスが,教養の概念の中心だったのである。 「身体知としての教養」という概念を代表する典型的な日本人は,卓越した小学校教師であった芦田恵之助(1873-1951)である。かれは,伝統的な呼吸法を応用したある特定の身体的実践を訓練した。そして,その身体的実践が自分自身の心身の健康にとってのみならず,教育にとって重要であると考えた。身体の基本的な技法が,自己のテクノロジーの中核であった。彼にとって,またかつての日本人の大部分にとって,教養は,心身を耕すことを意味していたのである。
著者
齋藤 孝
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.287-294, 1999-09

この論文の目的は,「身体知としての教養(ドイツ語で言えば,ビルドゥング)」という概念の意義を明らかにすること,および,日本の伝統的な教養と教育を検討することによって,私たちによって生きられている身体の重要な役割を教育学の文脈に位置づけることである。 この概念には,二つの主な効果がある。一つの効果は,身体的な経験を通して獲得された知恵を一つの教養としてみなすようになることである。もう一つの効果は,たとえば音読や古典的な詩歌の暗誦のように,古典的な教養を学ぶ上での,私たちによって生きられている身体の重要性を評価するようになることである。生きられている身体というのは,メルロー=ポンティの『知覚の現象学』の中心概念である。「身体知としての教養」という概念は,私たちによって生きられている身体によって基礎づけられているものである。 教養というのは,通常は,多くのスタンダードな書物を読むによって得られた幅広い知識の問題とみなされている。しかし,19世紀までは,日本人にとって,五感を通して,言い換えれば,生きられた身体を通して学ぶことが非常に重要であった。日本の伝統的な学習法では,知の問題は,身体の問題と切り離すことのできないものであった。かつての日本人にとっては,教養をつけるということは,日々の生活の中で自分が生きている身体を耕すことを意味していた。それゆえに,教養ある人間には,何らかの身体的なアート(技芸)を経験していることが期待されていた。身体的な技を反復練習によって向上させる,まさにそのプロセスが,教養の概念の中心だったのである。 「身体知としての教養」という概念を代表する典型的な日本人は,卓越した小学校教師であった芦田恵之助(1873-1951)である。かれは,伝統的な呼吸法を応用したある特定の身体的実践を訓練した。そして,その身体的実践が自分自身の心身の健康にとってのみならず,教育にとって重要であると考えた。身体の基本的な技法が,自己のテクノロジーの中核であった。彼にとって,またかつての日本人の大部分にとって,教養は,心身を耕すことを意味していたのである。
著者
酒井 英行 齋藤 孝明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.33-37, 2009-01-05

量子論の際立った特徴の一つに量子相関(もつれ合い,絡み合い)がある.アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン(EPR)は,古典的描像に基づく局所実在論の観点からこの量子相関に基づいた量子論の不完全性を議論した.この古典描像と量子描像の対立は,いわゆるEPRパラドックスとして知られるものであるが,当初実験的な検証は不可能だと考えられていた.しかし約30年後にベルは,局所実在論による相関に関して不等式が成立することを発見し,このパラドックスが実験的に検証できることを指摘した.我々は,強い相互作用をするフェルミ粒子系である陽子対についてスピン偏極相関の高精度測定に初めて成功し,量子論に特有な非局所性を確認した.本稿ではその内容について述べるとともに,1980年代に行われたアスペらによる光子対による実験との違いについても簡単に紹介する.
著者
中村 友道 廣田 和生 友松 健一 高井 睦夫 岩瀬 敏彦 宇和川 誠一 班目 春樹 岩壺 卓三 齋藤 孝基
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.68, no.668, pp.1064-1072, 2002-04-25 (Released:2008-02-26)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

A partial but full-size mock-up test of practical steam-generator U-bend tubes in nuclear power plants has been carried out, where the test model has been set in a HFCF-123 fluid two-phase flow loop. U-bend tubes are supported with so-called "Anti-vibration Bars (AVB) ", which have two types of AVBs in Japan, 7-span type and 5-span one. Both types of AVBs have been examined and it is found that tubes with AVB supports shows no large amplitude vibration up to 150% flow rate to the practical condition. Basic data for the fluidelastic instability are obtained when some tubes have been set to be flexible at some contact points with AVBs.
著者
古志 智也 齋藤 孝道
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.64, pp.33-38, 2003-06-19

P2Pネットワークモデルにおいて,通信を暗号化するためのグループ鍵(共通鍵)をどのようにして安全に共有するかが問題の一つとしてある.多くのP2Pネットワークモデルの実現方式では,公開鍵の取得をPKI(Public Key Infrastructure)などの利用を前提にしており,さらに,IPアドレスの取得にはDNS(Domain Name System)を利用している.しかし,これらCA(Certificate Authority)やDNSなどの利用,もしくは,処理を一部委託するといった形態は,外部サーバの非依存を特徴とするP2Pの本来の趣旨になじまない.したがって,本論文では,「知り合い」という信頼モデルを導入することにより,外部サーバに依存しないノードだけで構成する安全で閉じたネットワークの構成方式の提案を行い,その安全性に関する議論を行なう.The P2P network model has a problem how to distribute a group key to proper members. Many P2P network models use server systems, such as PKI's CA and DNS. However, these methods are not applied to P2P feature : independent of external servers. Therefore, in this paper, we propose a secure grouping method, which is independent of external servers, and we discuss its security.
著者
齋藤 孝義 天野 百香 慶林坊 茜 角田 美穂 右田 正澄
出版者
特定非営利活動法人 国際エクササイズサイエンス学会
雑誌
国際エクササイズサイエンス学会誌 (ISSN:24337722)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.6-10, 2020 (Released:2023-01-14)

[目的] 考案した等尺膝伸展筋力測定方法における検者間信頼性を検討すること. [対象と方法] 対象者は理学療法士養成校に在籍している健常成人女性の4年生15名とした.[方法]男女間の検者間信頼性の測定は1名の対象者に対してそれぞれ2回測定を行った.その後,考案した測定方法の測定値(男性検者,女性検者)と固定ベルト不使用で徒手固定のみの測定方法との測定値の3群比較を行った.[結果] 検者間信頼性ICC(2.1)は0.856であり,考案した測定方法(男性検者,女性検者)の測定値における有意差は認められず,固定ベルト不使用で徒手固定のみの測定方法と有意差が認められた.[結語] 考案した等尺膝伸展筋力測定方法の検者間信頼性は良好であり.力の弱い女性に対して有用な測定方法である可能性がある.
著者
伊藤 颯汰 福田 江梨子 木檜 圭祐 川越 響 渡名喜 瑞稀 高山 眞樹 利光 能直 齋藤 孝道
雑誌
第84回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.577-578, 2022-02-17

インターネットの通信において,接続元を匿名化するTorと呼ばれるシステムがある.Torを用いたアクセスを可能にするTorブラウザでは匿名性確保のために様々な対策を行っている.その一つに端末を識別する技術であるブラウザフィンガープリンティングの対策がある.本研究では,同一端末において,Torブラウザと他の一般ブラウザからのアクセスの紐付けを試みた.すなわち,両ブラウザからの実験用のWebサーバへのアクセスにおいて,ブラウザフィンガープリンティングを用いてアクセスの紐付けを行い,端末の識別を試みた.結果として,高い精度で識別することができた.
著者
柳沢 進也 高橋 和司 安田 昂樹 田邉 一寿 種岡 優幸 細谷 竜平 小芝 力太 齋藤 祐太 野田 隆文 齋藤 孝道
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.473-474, 2018-03-13

WebサーバがWebブラウザから,端末の特定に繋がる情報(以降,特徴点と呼ぶ)を採取するBrowser Fingerprintingという手法がある. Browser Fingerprintingはユーザの許可を得ずに行うことが可能であるので,対策ツールを用いて特徴点の偽装を行うユーザもいる.しかし,多くの対策ツールで有効性は示されていない.そこで本論文では,Firefox,Chromeそれぞれで特徴点の偽装を行うアドオンを対象に,特徴点がどの程度偽装できるのかを調査した.その結果,特徴点の一部を偽装できるアドオンと,全く偽装ができていないアドオンが明らかになった.
著者
齋藤 孝道
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.296-307, 2002-07-15 (Released:2012-01-10)

本稿では,ネットワークシステムにおけるセキュリティの要とも言える認証プロトコルについて,その前提となる議論からメカニズムや設計例などを交えながら,特に,その「安全性」についての説明を試みたいと思う.通信の盗聴,改竄,成り済ましなどの脅威があるインターネットのような通信路において,たとえば,認証を行っているネットワークシステムを用いるとなぜ「安全」な通信を実現できるのか?という疑問を解く鍵となるように,なるべく分かり易くまとめてみた.また,単に利用の観点だけでなく,仕組みの理解を中心にまとめた.たとえば,認証プロトコルを設計や変更する際に,もしくは,それをネットワークアプリケーションなどに実装して組み入れる際に,なにかしらの助けになるように,実例を用いて説明を試みている.
著者
齋藤 孝道
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.392-405, 2002-09-25 (Released:2012-01-10)

前回の「認証プロトコルの基礎」に引き続き,本稿では,公開鍵対を用いて実現される認証プロトコルの機能と構成について説明をする.主に,認証プロトコルを還元的に扱い,それを構成する各機能の働きを説明し,これらの機能をいかに組み合わせるかによって,安全な認証プロトコルは実現されるのかを説明していく.
著者
小川梨恵 天野桂輔 齋藤孝道
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.547-548, 2013-03-06

SSL/TLSなどのセキュリティプロトコルでは,通信に暗号化/復号といった高負荷な演算処理を伴うため,システム全体のパフォーマンスの低下や暗号処理のスループットの低下を招く.本論文では,その解析をするため,SSL/TLSを用いた通信のパフォーマンスを測定し,SSLハンドシェイクにおける暗号処理の割合を計測した.それによって暗号処理がSSL/TLS処理にどの程度影響を与えるのかを調査し報告する.
著者
鈴木 舞音 上原 崇史 金子 洋平 堀 洋輔 馬場 隆彰 齋藤 孝道
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.2, pp.767-774, 2014-10-15

ソフトウエアのメモリ破損脆弱性を悪用する攻撃,いわゆる,メモリ破損攻撃が次々と登場し問題となっている.メモリ破損攻撃とは,メモリ破損脆弱性のあるプログラムの制御フローを攻撃者の意図する動作に変えることである.一般的には,Buffer Overflow攻撃とも呼ばれている.OSやコンパイラでの防御・攻撃緩和機能が開発されてはいるが,それらを回避する更なる攻撃も登場している.そこで,本論文では,メモリ破損脆弱性の分類を行い,制御フローを不正に書き換えるまでの攻撃に関して調査し,分類する.
著者
荒川 誠 矢ヶ﨑 健治 三島 誠 岡田 雄二 齋藤 孝一郎
出版者
埼玉県農林総合研究センター
雑誌
埼玉県農林総合研究センター研究報告 (ISSN:13467778)
巻号頁・発行日
no.11, pp.33-38, 2012-03

2010年の埼玉県における稲作期間は記録的な高温となった。特に8月は平均気温29。3℃と熊谷地方気象台の観測史上1位を記録し,平年を2。9℃上回る記録的な猛暑であった。この高温は,水稲種子生産にも影響を与え,発芽能力を検査する発芽調査において,休眠が深いためと思われる発芽遅延が「彩のかがやき」,「彩のみのり」で報告された。通常の休眠打破は通風乾燥機で50℃,5日間程度乾燥することにより行っているが,それに加え過酸化水素等による浸漬処理を行い,発芽試験を実施する場面もあった。そこで,2010年に埼玉県農林総合研究センター水田農業研究所で生産された原種4点および埼玉県指定採種圃で生産された種子340点を収集し,休眠が深い可能性のある種子について発芽試験を行うとともに休眠性について調査を行ったところ,いくつかの知見を得たので報告する。