著者
吉見 陽 野田 幸裕
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.855-859, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
6

統合失調症,うつ病や双極性障害を代表とする精神疾患の診断や薬効・副作用評価は,客観的な指標が確立していないため,医療面接により精神症状の種類や程度,臨床経過を把握することで症候学的に判断される.適切な精神科薬物療法を実施する上で,向精神薬の薬理学的特性に精通することに加え,近年ではバイタルサインや医療データ,フィジカルアセスメントによる全身状態の把握も重要視されるようになってきた.本稿では,精神疾患の薬物療法におけるバイタルサインや医療データ,フィジカルアセスメントの有用性について概説する.
著者
鹿角 契
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1150_4, 2018

顧みられない熱帯病(Neglected tropical diseases: NTDs)はWHO(世界保健機関)が「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義している疾患群のことを指す.デング熱,狂犬病,トラコーマ,ブルーリ潰瘍,トレポネーマ感染症,ハンセン病,シャーガス病,アフリカ睡眠病,リーシュマニア症,嚢虫症,メジナ虫症,包虫症,食物媒介吸虫類感染症,リンパ系フィラリア症,河川盲目症,住血吸虫症,土壌伝播寄生虫症,マイセトーマ,有毒ヘビ咬傷が含まれる.
著者
荒田 洋治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.556_1, 2016

薬学と関りをもった50年の間,筆者が経験した事柄を,様々な観点から捉え,日本薬学会会員に向けて綴った短いエッセイ集です。
著者
平田 純生
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.863-867, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
8

実際の例を示して,それに基づき本稿の重要性についての解説を進めたい.腎機能の評価ミスにより投与設計を誤ったメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant staphylococcus aureus:MRSA)感染症症例有料老人ホームに長期入居の男性(年齢90歳,体重37.7kg,身長150cm)が体調不良を訴え入院.入院時検査値は血清クレアチニン(Cr)0.34mg/dL,血中尿素窒素(BUN)5.1mg/dL,血清アルブミン1.7g/dLで,MRSA敗血症と診断され,尿中排泄率90%のバンコマイシンの投与設計を行った.日本人向け糸球体ろ過量(GFR)推算式では正常値は100mL/min/1.73m2であるが本症例では推算GFR(eGFR):mL/min/1.73m2)=194×Cr-1.094×Age-0.287=173.6mL/min/1.73m2のような高値が算出された.しかし上記eGFRの値の単位はmL/min/1.73m2であり,体表面積補正をしていないことから,薬物投与設計に用いるべきではない.そのためDu Boisの式を用いて体表面積を算出すると体表面積(BSA:m2)=体重(kg)0.425×身長(cm)0.725×0.007184=1.27m2となり,173.6mL/min/1.73m2を1.27m2で補正を外すと127.4mL/minと算出された.この腎機能を用いて解析ソフトで計算すると定常状態の血清バンコマイシン濃度の最低血中濃度(トラフ値:次回投与前濃度)は15μg/mになるはずであったが,実測値は28μg/mLと高値になり,バンコマイシンによる腎障害により,血清Cr値が7.6mg/dLに上昇し透析導入が必要になった.実はこの症例は腎機能の見積もりを誤ったために薬剤性腎障害を来したと考えられる.腎排泄性薬物の投与設計には薬物の尿中排泄率と患者の腎機能が必要であるため腎機能の正確な把握は,中毒性副作用を減らすためにも,薬物投与設計上の基本と言える.上記症例のような誤りを起こさないためにも,腎機能を正しく把握するコツと理論について以下に記載する.
著者
見坂 武彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.64, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
4

種々の動物を宿主として自然界に広く分布するA型インフルエンザウイルスは,赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の亜型によって分類される.通常,宿主動物に固有の亜型があるが,水きん類ではその全てが存在する.トリインフルエンザウイルス(AIVs)は,変異により他の動物にも感染することがあり,その際,ゲノムとして保有する8つの分節RNAの一部が異種動物ウイルスのものと交雑し,抗原性が変化する.このため,AIVsは新型インフルエンザの出現に深く関与してきた.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Olsen B. et al., Science, 312, 384-388 (2006).2) Miller G. D. et al., Antarct. Sci., 20, 455-461 (2008).3) Hurt A. C. et al., mBio, 5, e01098-14 (2014).4) Webster R. G. et al., Microbiol. Rev., 56, 152-179 (1992).
著者
今井 由美子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.295-299, 2014 (Released:2016-06-01)
参考文献数
16

インフルエンザウイルスは,弱毒型の季節性インフルエンザウイルスであっても,高齢者,乳幼児,妊婦,あるいは糖尿病,喘息,免疫不全などの合併症のあるヒトが感染すると,重症化して死に至ることがある.一方,強毒型のH5N1鳥インフルエンザウイルスはヒトに感染すると高率に呼吸不全や多臓器不全などの致死的病態を引き起こす.さらに昨年,中国でH7N9鳥インフルエンザウイルスのヒトでの感染が見つかった.WHOによると,2013年8月12日時点で135例の感染者が報告され,うち44例が死亡したと報告している.いったんインフルエンザがヒトにおいて重症化すると,オセルタミビルなどの抗インフルエンザ薬はもはや無効となり,集中治療室(ICU)において人工呼吸をはじめとした救命治療が必要となるが,今までのところ重症化したインフルエンザに対して有効な治療法はない.現在,抗インフルエンザ薬として使用されているのは,ノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビル,ザナミビル等)であるが,これはウイルスタンパク質を標的としているので,最近は耐性を持つウイルスが出現している.またノイラミニダーゼ阻害薬は,感染から48時間以内に投与すると効果があるものの,それを過ぎて投与した場合には,効果がないことが報告されている.一方,現状のワクチンは流行する可能性のある亜型ウイルスを予測して個々に生産する方式である.すべての亜型ウイルスを幅広く防御することを目的としたユニバーサルワクチンの開発が進められているが,これはいまだ実用化には至っていない.ところで,ウイルスは宿主の細胞内小器官を利用して増殖する.ウイルスが侵入した宿主細胞ではウイルスとの相互作用から様々なシグナル伝達系が動き出し,ウイルス・宿主の相互作用が感染症の病態形成の鍵を握る.そこで,従来のウイルスタンパク質を標的とした抗インフルエンザ薬に加えて,ウイルス・宿主の相互作用の観点から宿主を標的にした新しい抗インフルエンザ薬の開発が必要であると考えられる.近年,インフルエンザウイルスと宿主の相互作用に関して,プロテオーム,トランスクリプトーム,あるいはRNA干渉(RNAi)法を用いたデイスラプトーム等のゲノムワイドな解析が行われている.しかしながら,DNA,RNA,タンパク質,その先で機能する生体内化合物,特に脂溶性化合物に関しては,ウイルス感染症における動態,ウイルスの増殖における役割は不明である.今回筆者は,脂肪酸代謝物のライブラリーを用いたスクリーニングと質量分析法による脂肪酸代謝物のリピドミクス解析を通して,多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids:PUFA)由来の代謝物プロテクチンD1(Protectin D1:PD1)がインフルエンザウイルスの増殖を抑えることを見いだした.PD1は,これまで抗炎症作用を有する脂肪酸代謝物として知られていた.今回筆者は,PD1が従来の抗インフルエンザ薬とメカニズムを異にし,ウイルスRNAの核外輸送を抑制することによって作用することを見つけた.
著者
F. W. FOONG
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.1009-1011, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
1
被引用文献数
1

前回は科学的思考および概念を表現するために,Qualitative,Quantitative,Specific,Objectiveが重要であることを概説した.そこで今回より2回にわたり,科学英語を「書く」際に必要とされる文法の基本を習得することの重要性に焦点を当てて解説する.
著者
濡木 理
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.123-127, 2018 (Released:2018-02-01)
参考文献数
6

2012年,細菌の獲得免疫機構に働くCRISPR-Casタンパク質が,ガイドRNA(crRNA, tracrRNA)を用いて真核細胞や個体のゲノムを配列特異的に切断し,細胞本来の修復機構を利用して,遺伝子のノックアウトやノックインを行うゲノム編集技術が開発された.しかしながら, CRISPR-Casには,1.分子量が大きくウイルスベクターに載せることが困難,2.CRISPR-Casは標的配列の下流にある2~7塩基からなるPAM配列を厳密に認識しており,Casをゲノム編集に用いる適用制限となっている,3.非特異的切断によるOff targetの問題など,現時点では医療応用に用いることは事実上不可能である.我々は,5生物種由来の大小様々なCas9について,ガイドRNA,標的DNAの4者複合体の結晶構造を1.7-2.5Åの高分解能で発表し,ガイドRNA依存的なDNA切断機構やPAM配列の認識機構を明らかにした.また,立体構造に基づいて,PAM配列認識特異性を変えることに成功し,ゲノム編集ツールとしての適用範囲を拡張することに成功した.
著者
渡部 一宏
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.934-936, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
9

ある週末の金曜日18時半,聖路加国際病院薬剤部製剤室の薬剤師である私は仕事も終わり,築地の立ち飲み屋で一杯引っ掛けてから帰ろうと思いながら,製剤業務の後片付けをしていた.そのとき,1本の電話が鳴った.渡部:はい,薬剤部製剤室担当渡部です.中村医師:あっ,渡部くん.中村です.業務時間外で悪いのだけど,先ほど入院してきた新患の乳がんの方,すごい大きな皮膚潰瘍で臭いがかなりすごいよ.いつものメトロニダゾールゲル500gをこれから創って欲しいんだけど,大丈夫?渡部:はい,もちろんです.これから製剤を調製して,病棟に持っていきますね.このようなことが,幾度あっただろうか.中村医師とは,その当時聖路加国際病院ブレストセンター長で現在,昭和大学医学部乳腺外科教授(日本乳癌学会理事長)である我が国を代表とする乳腺外科スーパードクターの中村清吾先生である.聖路加国際病院は,キリスト教精神の下に全人的ケアの実現をポリシーに掲げ,かつ日野原重明名誉院長の明確なビジョンと燃えるようなパッション,そして常に青年を思わせる行動力のもと「チーム医療の実現」を目指してきた病院で,中でも中村先生がリーダーシップをとられたブレストセンターは,多職種によるチーム医療活動が院内でも特に盛んであった.著者は,聖路加国際病院に入職してまもなく,乳がん診療とそのチーム医療活動に感銘と興味を持ち,また患者さんから慕われる中村先生の臨床医の姿に敬服し,当初からこのチームに薬剤師として関わらせていただいた.チームに関わり始めて私は初めて,がん性皮膚潰瘍に苦しむ乳がん患者さんを目の当たりにした.患部は,目を伏せたくなるような耐え難い症状で,また患部からの酷い臭いが外来診察室や病棟全体に広がり,その辛さは言葉では言い表せないものである(図1).「がん性皮膚潰瘍臭に苦しむ乳がん患者さんの悩みを何とかしたい」これこそが,がん性皮膚潰瘍臭のケアに立ち向かう,一人の薬剤師のリサーチクエスチョンの原点であった.
著者
山崎 高應
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, 1982-01-01