著者
上野 香奈 美濃口 健治 河野 泰郎 小田 成人 和田 記代子 宮本 正秀 横江 琢也 橋本 直方 美濃口 秀子 田中 明彦 國分 二三男 足立 満
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.565-570, 2002-07-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

アレルギー性鼻炎は,気管支喘息の増悪要因であることが示唆されている.そこで今回,スギ花粉症が成人気管支喘息におよぼす影響について検討した.当科外来通院中の成人気管支喘息患者333名中116名(34.8%)にスギ花粉症が合併していた.スギ花粉飛散期に喘鳴,呼吸困難,咳嗽,喀痰などの喘息症状が悪化するかを問診したところ,スギ花粉症を合併している116名の成人気管支喘息患者のうち41名(35.3%)の患者が,何らかの喘息症状が増悪すると回答した.喘息症状が悪化すると回答した41名中13名(スギ花粉症合併気管支喘息患者の11.2%)の患者は実際にスギ花粉症状出現後,朝のピークフロー値がスギ花粉飛散前と比較して平均10%以上(平均56.2L/min)低下した.スギ抗原特異的IgE値やヒスタミンに対する気道過敏性は,スギ花粉飛散期に喘息症状が増悪する群としない群との間に有意差は認められなかった.以上より,一部の成人気管支喘息患者では,スギ花粉飛散期に気流制限が認められることから,スギ花粉症は気管支喘息の増悪要因の一つであることが示唆された.
著者
小林 照子 山田 正子 相原 道子 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.126-133, 2006-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】AD患者のカンジダ,マラセチアに対する即時型,遅延型反応の結果と抗真菌療法の効果について検討した.【方法】AD患者にカンジダ,マラセチアのプリックテスト(SPT)を施行し即時型および遅延型反応陽性者にアンフォテリシンB (AMPH),イトラコナゾール(ITCZ)による抗真菌療法を行い,前後の重症度スコアを検討した.【結果】40例中カンジダで28例,マラセチアで30例が即時型陽性,遅延型は測定し得た27例中それぞれ10例と4例が陽性であった.カンジダでは遅延型陽性例でRAST値が低く陰性例で高い傾向がみられた.SPT即時型陽性例に対するAMPH,ITCZの投与群全体では両剤ともにADの重症度スコアは有意差をもって改善された.ITCZ有効群は無効群に比べマラセチアに対するSPTの反応が強く認められ,マラセチアのみ陽性の群ではITCZは1例を除き全例で有効であった.【考察】真菌アレルギーはADの悪化因子の一つと考えられ,SPTは真菌アレルギーの評価と薬剤選択に際し有用な手段と考えられた.
著者
石川 智久 Wanping Aw Alexander Lezhava 林崎 良英
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.98-108, 2010-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
30

ヒトゲノム解析が完了し,それに伴い個々の遺伝子多型に基づくテーラーメイド医療(個別化医療)の実現が期待されている.特に,薬物の標的,薬物代謝酵素,薬物トランスポーター等の遺伝子多型を調べて薬の副作用や体内動態,薬物の効果および副作用の可能性を予測することは,個別化医療の実現において必須である.理化学研究所で開発されたSmart amplification process(SmartAmp)法は,ミスマッチ結合蛋白質の存在下,遺伝子型特異的なプライマーを用いてDNA等温増幅を行う高速かつ簡便なSNP検出技術である.本綜説では,薬物輸送に関与するABCトランスポーターABCB1,ABCC4,ABCC11の遺伝子多型をSmartAmp法によって検出する方法と,それを用いて薬の副作用を予測する臨床応用の可能性を示す.
著者
谷 鉄兵 瀬野 悟史 花満 雅一 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1053-1060, 2008-08-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【背景】レーザーによる下鼻甲介粘膜焼灼術は,保存的治療のみでは症状を充分改善し得ないアレルギー性鼻炎に対する外科的治療として広く行われている.レーザーによる手術は鼻粘膜表面を焼灼するが,近年鼻粘膜上皮には影響を与えずに粘膜下を焼灼する高周波手術装置(ENTECコブレーター2サージェリーシステム^[○!R],以下コブレーション)を利用した下鼻甲介手術が報告されている.【方法】対象は,当科にて平成16年11月から平成19年5月までにコブレーションを用いて下鼻甲介粘膜焼灼術を行った29例(男性17例,女性12例,平均年齢37歳)で,手術前後のくしゃみ・鼻汁・鼻閉・日常生活支障度の症状スコアの検討を行い,レーザー手術50例(男性27例,女性23例,平均年齢25例)の術後成績と比較検討した.【結果】手術1ヵ月後の治療成績には差が認められないが,1年後にはレーザー手術では症状が再燃することが多いのに対してコブレーション手術では高い症状改善率(くしゃみ65%,鼻汁71%,鼻閉76%)が維持され,2年後にも同様の良好な成績が得られた.【結果】アレルギー性鼻炎に対してコブレーションによる下鼻甲介粘膜焼灼術により良好な長期成績を得ることができた.
著者
高橋 清 宗田 良 岸本 卓巳 松岡 孝 前田 昌則 荒木 雅史 谷本 安 河田 典子 木村 郁郎 駒越 春樹 谷崎 勝朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.686-692, 1992-06-30 (Released:2017-02-10)

自律神経系の機能異常に基づく各種アレルギー性肺疾患病態における肺肥満細胞の役割を解明する目的で, 酵素処理法, percoll遠心法, 付着細胞除去法によって得られた高純度ヒト肺肥満細胞のアセチルコリンに対する反応性を, ヒスタミン遊離率を指標として検討した. その結果, 肥満細胞からのヒスタミン遊離はアセチルコリンの濃度に依存し, 10^<-5>で有意に亢進していた (p<0.05). また, アセチルコリンは抗ヒトIgE家兎血清によるヒスタミン遊離を相対的に増加させた. なお, かかるヒスタミン遊離はアトロピンでは部分的にしか抑制されなかった. 一方, ヒト末梢血好塩基球はかかるアセチルコリンに対する反応性が認められなかった. 以上の結果より, ヒト肺肥満細胞はIgE受容体のみならず, アセチルコリン受容体を介する反応により自律神経系の標的細胞として各種アレルギー性肺疾患の発症機構の一端を担っていることが示唆された.
著者
広田 朝光 玉利 真由美
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.25-31, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
38
被引用文献数
1
著者
足立 厚子 堀川 達弥 市橋 正光 高島 務 小村 明彦
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.719-725, 1999-07-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

アトピー性皮膚炎(AD)と真菌との関連性を検討し, 抗真菌剤内服療法の有効性について研究した。ADを重症度, 総IgEレベル, 皮疹分布別にわけカンジダ, ピチロスポルム, ダニ特異的IgEクラス2以上陽性率を比較すると, ダニに比較し前2者は重症群, IgE高値群及び上半身優位群で有意に高くAD(特に成人型)重症化に重要な要因と考えられた。カンジダ特異的IgEが2以上の中等症以上のAD 140例に抗真菌剤内服療法を試みた。有効率はフルコナゾール60%, イトラコナゾール35%, アンフォテリシンB 31%, ナイスタチン28%であった。後2者は腸管から吸収されず, 腸管内カンジダはAD増悪因子として重要と考えられた。腸管吸収性のフルコナゾールの有効率がより高かったことから一部のADではピチロスポルムなどの腸管以外の真菌が関与している可能性が示唆された。腸管吸収性のフルコナゾールとイトラコナゾール間に有効率に差がある点については更なる検討を要すると考えた。
著者
足立 厚子 堀川 達弥 市橋 正光 高島 務 小村 明彦
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.719-725, 1999
参考文献数
16
被引用文献数
3

アトピー性皮膚炎(AD)と真菌との関連性を検討し, 抗真菌剤内服療法の有効性について研究した。ADを重症度, 総IgEレベル, 皮疹分布別にわけカンジダ, ピチロスポルム, ダニ特異的IgEクラス2以上陽性率を比較すると, ダニに比較し前2者は重症群, IgE高値群及び上半身優位群で有意に高くAD(特に成人型)重症化に重要な要因と考えられた。カンジダ特異的IgEが2以上の中等症以上のAD 140例に抗真菌剤内服療法を試みた。有効率はフルコナゾール60%, イトラコナゾール35%, アンフォテリシンB 31%, ナイスタチン28%であった。後2者は腸管から吸収されず, 腸管内カンジダはAD増悪因子として重要と考えられた。腸管吸収性のフルコナゾールの有効率がより高かったことから一部のADではピチロスポルムなどの腸管以外の真菌が関与している可能性が示唆された。腸管吸収性のフルコナゾールとイトラコナゾール間に有効率に差がある点については更なる検討を要すると考えた。
著者
山田 哲夫 田口 裕功 清水 章治 信太 隆夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.47-51, 1985-01-30 (Released:2017-02-10)

約10年間にわたり難治性の膀胱刺激症状を有し, 膀胱壁の好酸球増加を伴った間質性膀胱炎の1治癒例を経験した.この症例は13歳頃より扁桃炎を反復し生来アレルギー素因も有していた.扁桃局所々見や扁桃誘発試験などから発症に扁桃の関与が示唆された.扁桃摘出後約2週間で膀胱の潰瘍性病変が消失し, 術後約6年の経過を観察しているが全く異常は認められず, 扁桃性病巣感染の関与が証明された.
著者
山田 哲夫 田口 裕功 西村 浩 三田 晴久 信太 隆夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.264-268, 1984-05-30 (Released:2017-02-10)

エビとイカによる食餌アレルギーが原因であった間質性膀胱炎の1例を経験した.症例は33歳男性で, 1965年頃より難治性の膀胱刺激症状を呈し, 1975年に当科を受診した.既往歴や試食によりエビとイカが原因と推定された.そしてエビとイカエキスの皮下注や膀胱内注入誘発試験で主訴と同様な症状を認めると同時に, 誘発後血中と尿中のヒスタミンとセロトニンの上昇がみられた.治療の主体を食餌よりエビとイカを除くことにより, 現在まで症状の再発を認めていない.
著者
植木 有理子 押方 智也子 浅井 芳人 金子 猛 服部 直樹 釣木澤 尚実
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.857-868, 2019 (Released:2019-08-09)
参考文献数
18

【背景・目的】好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)における末梢神経障害の神経症状の変化を的確に評価するのは難しい.そこで運動・感覚障害に関する質問票を作成し,末梢神経障害の管理に対する有効性を検証した.【方法】平塚市民病院通院中のEGPA40症例を,ガンマグロブリン大量療法(IVIG;intravenous immunoglobulin)を行った30症例(IVIG投与群)と従来療法で臨床的寛解を得た10症例(IVIG非投与群)に分類し,感覚・運動障害の評価票(ANCA関連血管炎.com)を用いて評価した.IVIG投与群は4時期,非投与群は2時期で評価し,患者背景因子と比較した.【結果】IVIG投与群は非投与群と比較して発症時の運動障害点数が有意に低く(p<0.01),感覚障害点数は有意差を認めなかった.罹病期間とIVIG後の運動障害点数改善度には相関はないが,感覚障害点数改善度とは負の相関を認めた(p<0.05,r=-0.47).運動障害点数改善度とMMTの改善度は正の相関を認めた(p<0.01,r=0.70).IVIG投与群ではIVIG後の1カ月後に運動障害点数は有意に増加(p<0.01),感覚障害点数は有意に低下した(p<0.01).【結語】この質問票の使用によりIVIG後の運動・感覚障害の効果が評価でき,質問票はEGPAの末梢神経障害の管理に有用であることが示唆された.
著者
長谷川 眞紀 大友 守 水城 まさみ 秋山 一男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.112-118, 2009-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

【背景・目的】化学物質過敏症は診断の決め手となるような客観的な検査所見が無く,病歴,QEESI点数,臨床検査(他疾患の除外)等から総合判断として診断している.診断のゴールド・スタンダードは負荷試験であるが,これも自覚症状の変化を判定の目安として使わざるを得ない.そういう制約はあるが,我々の施設ではこれまで化学物質負荷試験を,確定診断の目的で施行してきた.【方法】当院内の負荷ブースを用い,ホルムアルデヒド,あるいはトルエンを負荷した.負荷濃度は最高でも居住環境指針値とした.また負荷方法は従前はオープン試験によったが,最近はシングル・ブラインド試験を施行している.【結果】これまで51名の患者に延べ59回の負荷試験を行った.オープン試験を行った40名のうち,陽性例は18名,陰性例は22名であった.陰性判定理由は症状が誘発されなかった例が11名,実際の負荷が始まる前に(モニター上負荷物質濃度上昇が検出される前に)症状が出た例が11名であった.ブラインド試験は11名に施行し,陽性が4名,陰性が7名であった.【結語】化学物質負荷試験は現時点でもっとも有力な化学物質過敏症の診断法であり,共通のプロトコールを作成し行われるべきである.