著者
杉野 安輝 三田 亮 高木 康之 加藤 誠章 大田 亜希子 奥村 隼也 長井 秀明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1572-1579, 2010-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
21

症例は49歳女性.高用量吸入ステロイド(フルチカゾン1000μg/日+シクレソニド800μg/日),サルメテロール吸入(100μg/日),ベタメサゾン内服(1mg/日)を中心とする多剤併用療法にても喘息コントロールが得られない重症難治性喘息であった.血清総IgE値は9(IU/mL)と低値で,明らかな通年性アレルゲンも認められなかったが,患者同意のもと2009年8月からオマリズマブ150mgを投与し,喘息症状やピークフロー(PEF)の改善を認めた.体重増加と全身倦怠感にて2回投与後に休薬したところ喘息症状が悪化した.2010年1月からオマリズマブの再投与を行い,喘息症状とPEFの著明な改善が認められた.効果は投与後約3週間持続し,6回目の投与後にはベタメサゾン内服を0.5mg/日に減量できた.オマリズマブ投与前後6ヵ月間の比較では,オマリズマブ治療により定期外受診などの喘息関連イベントは減少し,経口ベタメサゾン内服量も投与前の64%に減量できた.血清IgE低値でアレルゲンが明瞭でない重症難治性喘息に対して,オマリズマブが奏効した示唆に富む1例と考えられた.
著者
渋谷 紀子 斉藤 恵美子 柄澤 千登世
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1598-1610, 2013-12-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

【背景・目的】近年,経皮感作の重要性が注目されているが,乳児期の感作について詳細に検討した報告は少ない.【方法】317名の乳児に対し,1歳まで3カ月ごとにプリックテスト(SPT)とアンケート調査を実施し,感作およびアレルギー疾患発症のリスク因子について検討した.【結果】42%の乳児が一度はSPT陽性を示し,早期の感作は1歳までのアレルギー疾患発症と強く相関していた.生後早期の湿疹は感作(aOR, 3.0;95%CI,1.8-5.0),アトピー性皮膚炎(AD) (aOR, 13.0;95%CI, 4.5-37.3),食物アレルギー(FA) (aOR, 28.4;95%CI, 3.3-240.6)発症と有意な相関を認めた.乳児期の感作頻度の推移は湿疹経過と平行しており,FA児のほぼ全例が生後早期に湿疹を認めていた.母乳は湿疹のある児にとって感作とFAのリスクであり,早期に湿疹のない児はほとんどAD, FAを発症しなかった.【結語】生後早期の湿疹は乳児期の感作およびアレルギー疾患発症のリスク因子である.
著者
冨高 晶子 松永 佳世子 秋田 浩孝 鈴木 加余子 上田 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.327-334, 2000
参考文献数
21
被引用文献数
3

ラテックスアレルギー(LA)と果物の交差反応はlatex fruit syndromeと呼ばれている.今回, 栗によるアナフィラキシー症状(AP)を発症したLAの4例を報告する.全例アトピー疾患を合併した看護婦で, LAが先行していた.症例により摂取した栗の加工法, 皮膚との接触の有無, 臨床経過が異なっていた.栗のプリックテストは全例陽性であったが, 血清中の特異IgE抗体(sIgE)は2例のみ陽性であった.sIgEが陰性の場合にもAPが出現する症例を経験したことから, sIgEが陰性であっても注意が必要であることが示唆された.経過を観察し得た2症例のうち, 頻回に抗原に暴露される症例は, sIgEは高くなり, 抗原刺激を減らし得た症例ではsIgEは低下した.また, ラテックスと栗の交差反応において主要抗原とされるheveinと患者血清とのELISAにおいて, 自験例4例は正常コントロール12例に比べ有意に高い値を示した.今後, LA患者はAPや接触蕁麻疹の報告がある果物の摂取は避ける必要があると考える.
著者
平嶋 純子 放生 雅章 飯倉 元保 平石 尚久 中道 真二 杉山 温人 小林 信之 工藤 宏一郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1683-1687, 2012-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9

症例は38歳女性.20歳時に気管支喘息を発症し,22歳から経口ステロイド依存性となるもコントロール不良であった.妊娠を契機に喘息が増悪し流産するエピソードが複数回あり,これまで出産に至ったのは妊娠7回中1児のみであった.今後妊娠する意向のないことを確認し2009年8月からオマリズマブ投与を開始したがその6週後に妊娠が判明した.PEF・自覚症状ともに改善し経口ステロイドも減量出来ていたためオマリズマブ投与を継続した,その後感冒を契機に喘息コントロールが増悪しオマリズマブ投与は計7回で中止とした.2010年2月に切迫流産となり26週544gの女児を出産した.超低体重出生児でしばらくNICUに入る必要があったが,体重は順調に増加し出産後2年を経過したが現在のところ問題なく生育している.オマリズマブ投与により妊娠早期の喘息増悪を抑制しえたことが出産につながった可能性があると考えた.妊娠中にオマリズマブを使用し出産に至った症例は本邦で1例目であり,貴重な症例と考え報告する.
著者
大石 拓 森澤 豊 安枝 浩 秋山 一男 脇口 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1163-1167, 2004-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は11歳女児と10歳男児の姉弟である. それぞれ1999年5月と10月に気管支喘息を発症した. 劣悪な家族環境と発症年齢が高いことから心因性の喘息発作が疑われていた. 母親も2001年から喘息発作が出現した. 詳細な病歴聴取の結果, 室内清掃がなされておらず, ゴキブリが多数生息していることが判明した. CAP-RASTでは3例ともゴキブリが陽性反応を示したことから, ゴキブリが主要アレルゲンの気管支喘息と考えられた. 本邦では喘息も含めたゴキブリアレルギーはあまり認知されていない. 本邦においても喘息のアレルゲンとしてゴキブリの存在を念頭におくべきであると考えられた. 1964年にBerntonらが最初にゴキブリアレルギーを報告して以来, 海外では多数の基礎, 臨床研究が報告され, アメリカの都市部で救急外来を受診する喘息児の多くはゴキブリが主要アレルゲンであることが報告されている. しかしながら, 本邦ではゴキブリアレルギーの認知度は低い. 今回, 心因性喘息と考えられていたがゴキブリが主要アレルゲンと考えられた気管支喘息姉弟例を経験したので報告する.
著者
湯田 厚司 鵜飼 幸太郎 坂倉 康夫 谷 秀司 松田 ふき子 楊 天群 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.577-582, 2002
参考文献数
7
被引用文献数
6

基準木のスギ雄花着生状況から津市のスギ花粉飛散予想を行った.方法は三重県津市郊外の三重県科学技術振興センター敷地内に1964年に植樹された23種のクローンからなる69本を基準木に選定した.この69本の東西南北4面(合計276面)の雄花着生状況を目視法で0から3点に点数化した.その平均点数とスギ花粉飛散数を1988年より2000年まで検討した.その結果,1995年と2000年の大量飛散年以外は基準木雄花着生平均点数とスギ花粉飛散数の実数は一次関数で高い正の相関(r=0.914)を認めた.大量飛散年は前年の飛散状況に影響をうけていたため,前年より飛散の多い年を検討すると,基準木雄花着生平均点数から前年の平均点数を減算した値と,スギ花粉飛散数は極めて高く正に相関した(r=0.994).以上の結果より,基準木雄花着生状況から花粉予想が可能と考えた.