著者
早川 尚男
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.644-647, 2020-10-05 (Released:2020-12-10)
参考文献数
32

歴史の小径早川幸男の生涯と物理――素粒子現象論から宇宙物理へ
著者
大関 真之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.123, 2022-02-05 (Released:2022-02-05)

学界ニュース2021年ノーベル物理学賞:Giorgio Parisi氏「原子スケールから天体スケールまでの物理系における無秩序と揺らぎの関連の発見」
著者
高木 仁三郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.818-821, 1995-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
2
被引用文献数
1

14 0 0 0 OA 格子ゲージ理論

著者
川合 光
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.10-15, 1983-01-05 (Released:2020-05-21)

原子核の構成要素は陽子と中性子であり, それをπ-中間子が媒介して結びつけている事は周知である. これら以外にも強い相互作用をする粒子は多く知られており, ハドロンと呼ばれる. ハドロンの構造は長い間謎であったが, ここ数年の格子ゲージ理論の発達によってほぼ解決されたようである. 格子ゲージ理論はゲージ場の理論を構成的に定義する今のところ唯一の方法であり, このおかげで場の理論が数値的に計算できるようになった. ここでは, 格子ゲージ理論の基礎を中心に解説しようと思う.
著者
神原 陽一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.798-799, 2019-11-05 (Released:2020-05-15)

新著紹介磁性と超伝導の物理;重い電子系の理解のために
著者
益川 敏英
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.730-732, 1975-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
6
著者
板垣 直之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.350-351, 2016-06-05 (Released:2016-08-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3
著者
中村 泰信
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.762-769, 2011-10-05 (Released:2019-06-14)
参考文献数
70
被引用文献数
2

巨視的量子効果としての超伝導に関わる実験の歴史と最近の進展を概観する.特に超伝導秩序パラメータの位相がどのようにして理解され,制御されてきたかということに注目する.巨視的量子コヒーレンスや量子計算といった新しい概念が大きな動機付けとなって研究が進み,電気回路上で人工的な量子力学系を設計しその量子状態を自在に操ることができるようになってきている.
著者
大野 克嗣
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.501-507, 1997-07-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
11
被引用文献数
1

我々の世界に満ち満ちている非線形性は, 我々が知りたい(時空)スケールをそれから懸け離れた我々には知り得ないスケールと結合してしまう(1節). だが, それにしては我々の世界はそんなに無法則的には見えない. ある現象が「よく変わる部分」と「そうでない部分」からなるなら, 後者に目をつけることで現象がわかった気になれるようだ(2節). 「くりこみ」は「そうでない部分」を浮き彫りにしてくれる. そこでまず, 簡単な例でくりこみの処方を説明しよう(3節). 「くりこみ」で世界の細部によらない構造を抽出できるなら, それは系の長時間挙動の理解にも使えるだろう. より一般に, くりこみは(非線形系の)「漸近解析」の指針たりうるであろう(4節). くりこみはこのような技術的問題に有効なだけでなく, もっと大きな文脈の中でも意味を持っているのではないだろうか(5節).
著者
牧野 淳一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.330-336, 2002-05-05

最近になってM82銀河の中心近くに太陽質量の1,000倍程度の「中間質量」ブラックホールが見つかった.これまでは太陽質量の100から100万倍の間のブラックホールは全く見つかっていなかった.M82での発見はブラックホール,特に多くの銀河の中心にあると思われる太陽質量の100万倍を超える大質量ブラックホールの形成過程に対する我々の理解を大きく変えるものである.この解説では,大質量ブラックホールの形成過程に対する,上の発見をふまえた新しいシナリオを紹介する.我々はこれがブラックホール形成シナリオの「決定版」になる可能性は十分にあると考えている.
著者
大栗 博司
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.850-859, 2005-11-05
参考文献数
19
被引用文献数
1

トポロジカルな弦理論はそもそも「おもちゃの弦模型」として考え出されたが, その後筆者らのグループはこの理論が素粒子の統一理論としての超弦理論の計算に直接利用できることを明らかにした.この記事ではブラックホールの量子状態や4次元のゲージ理論の強結合問題といった素粒子物理学理論の重要な課題にトポロジカルな弦理論がどのように応用されているかを解説する.
著者
宇田川 将文
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.788-795, 2022-12-05 (Released:2022-12-05)
参考文献数
35

物質を構成するマクロな個数の電子状態が膨大な重ね合わせを起こしたらどのような物性が生じるだろうか? この問に答を与えるのが量子スピン液体の研究である.20世紀の終わりに発見された磁性体であるスピンアイスは,それ自体魅力的な性質を備えた物質であるとともに,量子スピン液体の魅力をも垣間見せる.スピンアイスは,その磁気構造が氷(H2O)における水素原子配置と同等のルールで記述されるために,「アイス」の名で呼ばれる.氷は見かけ上,熱力学第三法則を破って絶対零度近傍でも有限のエントロピーを保持することは有名であるが,スピンアイスはほぼ同量の残留エントロピーを示し,その基底状態は系を構成するスピンの数に対して指数関数的に増大する莫大な個数の縮退をもつ.量子スピン液体の典型例――量子スピンアイス――はこのマクロに縮退したスピンアイスの量子力学的な重ね合わせ,すなわちシュレディンガーの猫ならぬ,「シュレディンガーの氷」である.逆にスピンアイスは,量子スピン液体が完成する前の前触れ,重ね合わせが生じる前の,高温のスピン液体と位置づけることができる(奇妙に聞こえるが「アイス」が「液体」よりも温度が高いのだ).量子スピン液体の示す著しい特徴として,分数化という現象が挙げられる.分数化とは電荷やスピンなど,系を構成する基本的な量子数がより小さい単位に分裂して独立した粒子として振る舞う現象を指す.分数化は量子力学の本質である重ね合わせの原理の裏返しとも言えるだろう.スピンはそれ自体ひとつの実体に見えるけれども,別の環境下では,もっと基本的な何者かの重ね合わせとしてより自然に振る舞う.分数化して生じる粒子の振る舞いは強結合のゲージ理論によって記述される.量子スピンアイスを記述するゲージ理論は驚くべきことに,我々の世界の基本法則に現れる量子電磁気学(QED)である.しかしながら我々の知るQEDとはやや異なる.光は遅い.スピンが分裂して生じる磁気モノポールは,我々のQEDには(今のところ)存在しない.大きい微細構造定数,同符号の電荷に引力が働く電磁気学など,量子スピンアイスは「あり得たかもしれないこの世界」の様々な可能性を物質中に実現して我々に提示する.量子スピンアイスを含む,量子スピン液体相が現実の物質で実際に実現しているかどうかは,長年の研究にもかかわらず,まだ定かとは言えない.量子スピン液体の探索には高温のスピンアイスがよい道標となるだろう.まだ存在が不確かな量子スピン液体とは異なり,スピンアイスは残留エントロピーをはじめとする確固とした実験結果により,Dy2Ti2O7やHo2Ti2O7などの物質で実現していることが知られている.量子スピン液体の兆候を捉えるために鍵となるのが,高温のスピンアイスから出発して,降温とともにいち早く量子性を獲得する磁気モノポールの探索である.強結合のゲージ理論に従う磁気モノポールの振る舞いを捉えることは容易ではないが,物理特性を鋭く見抜く理論手法の開発によりそのダイナミクスが精度よく記述され,量子スピン液体の探索という長年の問題が解決に向けて大きく前進することが期待される.