著者
柳川 弘明 鈴木 清 渡辺 喜二郎
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.158-164, 1992-04-27 (Released:2010-07-01)
参考文献数
13

寒天を加えない人工飼料について, 線形計画法における飼料素材の制限条件を明らかにするたあ, 桑葉粉末, 無機塩混合物, 及び脱脂大豆粉末の添加量を変化させ, 広食性蚕の摂食性や成長に及ぼす影響を調査した。調査の対象とした3種の素材については, 今回検討した添加量の範囲内で, いずれも広食性蚕の摂食性や成長は良好であった。しかし, 4.5%以上の無機塩混合物の添加は幼虫の成長を著しく阻害した。これらの結果に基づいて, 線形計画法により設計されたLPY-501飼料は, 脱脂大豆粉末とトウモロコシ粉末が約85%を占あ, 寒天を除くことにより飼料の素材価格は大幅に低減された。本飼料を用いて, 広食性蚕の1~4齢人工飼料育・5齢桑葉育を実施したところ, 幼虫の摂食性及び成長, 繭の計量形質及び繰糸成績は良好であった。
著者
永江 敏規 鈴木 直雄
出版者
日本蠶絲學會
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.40-45, 1982 (Released:2011-12-19)
著者
仲野 良男
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.232-248, 1951-08-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
松原 藤好 加藤 勝 林屋 慶三 児玉 礼次郎 浜村 保次
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.39-45, 1967-02-28 (Released:2010-11-29)
参考文献数
16

Aseptic rearing of the silkworm (Bombyx mori) larvae with prepared food has been carried out to know their condition of development, mortality and quality of the cocoon in comparison with those in the usual rearing with mulberry leaves. The results are summarized as follows.Silkworm eggs within 48hrs. of hatching were disinfected, immersing them in 70% ethanol for 20 minutes and subsequently 0.1% HgCl2 or 2-4% formaline for 20 minutes. The eggs were washed throughly with sterilized water or absolute ethanol and then put in sterilized container.The newly hatched larvae were put and plugged in the previously sterilized test tubes containing prepared food and incubated at 25°C. The sterilization method of the test tubes and diet was as follows: 100gr of diet (regarding its composition, see the text) was mixed in 160ml of water and introduced into the tube, plugged with cotton and autoclaved (1.2kgW/cm2) for 30-40 minutes.Rearing circumstance through all the stages of aseptical rearing were always under the condition of closed circumstance with high humidity (about 95%) but the silkworm larvae ate and grew well.The mortality and body weight of the larvae aseptically reared were almost similar to those in the control worms. Cocoon quality, however, was somewhat inferior in the aseptical rearing.Cocoon weight and its ratio against the weight (cocoon plus pupa) were 0.22-0.33g and 17.5-19.5% respectively in the aseptical rearing. Those in control 20.3-24.0%.To make the results sure it was required that (1) thus prepared food should be acceptance of their food by the newly hatched worms, (2) only eggs 48 hrs should be used for axenic work. After hatching, were to be on the sterilized food, (3) the larvae should be transfered on fresh food at least once every week. In case of aseptic rearing with prepared food, it is guessed that there is not so bad influence for the growth of silkworm larvae even if they are reared under the above mentioned circumstances during their larvae's period. It is considered that the aseptic rearing is suitable for prepared food rearing and is available for practice in sericulture to obtain aseptic-silkworm (Germfree silkworm).
著者
香川 敏昭
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.192-195, 1996

マイクロ波の照射出力を高めると蛹体が破裂する蛹が出現するが, 家蚕繭の乾燥においては, 生繭重量に対するマイクロ波の照射ワット数は1.3watt/g程度が適当であることが示唆された。繭乾燥におけるマイクロ波照射による蛹の致死時期は, 照射開始後2分ないし2.5分と比較的早い時期で, 水分の蒸発は低かった。マイクロ波照射の蛹の外部形態および血液量に対する影響は, 雌雄により差異がみられ, 照射開始7分後の蛹体は収縮程度において雌が大きく, また, 頭部切除による血液の滴下が認められない個体数も雌が多く, その影響は雌に大きく現れていた。
著者
間 和夫
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.346-352, 1967-08-31 (Released:2010-11-29)

栄養繁殖植物の品種の多くは偶発突然変異のなかから選抜されたものであるが, 自然における偶発突然変異の発生率は極めて低いので, 育種の方法として利用するためには, 人為的な誘発方法を研究する必要がある.一般に突然変異の誘発には, 放射線や化学薬品が広く用いられているが, 栄養繁殖植物の芽条変異の誘発には放射線照射が有効であり, 化学薬品の使用は将来の問題であるといえる。芽条変異の誘発は, 通常のX線発生装置や同位元素を線源としたガンマー・ルームにおける苗木や枝の照射によっても可能であるが, 果樹や林木および桑などの生長中の植物に照射するためには, 大線源を備えたガンマー・フィールドが必要となる。わが国のガンマー・フィールドは農林省放射線育種場に建設されているが, その線源は60Coの3, 000キューリーであり, また照射圃場の面積は約3haである。そして1962年4月から一般の照射業務を開始したが, 栄養繁殖植物のみで30種以上に照射が行なわれている。一般に芽条変異の誘発に当っては, 冬芽や頂芽に照射が行なわれるが, これらの芽は種子にくらべて含水率が高いので, 放射線に対する感受性もまた高く, 急照射における桑の冬芽の発芽に対するLD100は10KR程度であった。また, ガンマー・フィールドに栽培されている林木や茶および桑について, 生長の抑制, 崎型葉および帯化枝の発生などの障害を種間および品種間で比較した結果によると, 針葉樹は広葉樹にくらべて感受性が高く, 10R/日程度の線量率でも生長が著しく抑制された。茶の畸型葉の発生にも品種間差異は明らかに認められ, 抵抗性品種の線量率は感受性品種の約5倍であった。桑は放射線に対して一般に抵抗性であり, 線源に最も近い距離でも枯死するものはみられなかったが, 3倍体品種は2倍体品種にくらべ帯化枝の発生が極めて少なかった。芽条変異の選抜に当って最も問題となることは, 照射植物に発生したキメラの枝から変異した部分のみを有効に選抜する方法を確立することである。このためには, 切戻しを繰返すことが, 完全な変異枝を発生させる上で最も効果的であるといわれているので, 桑の苗木にガンマー線を照射し, 圃場において, 毎年, 切戻しと接木を繰返して芽条変異の選抜を行なった結果, キメラの枝の発生は少なく, 完全な変異枝の発生が多くなることが明らかとなった。したがって切戻しと接木は変異の選抜に有効であることが桑でも証明された。栄養繁殖植物でも多くの突然変異が発見されているが, その多くは形態的な畸型に属するものであって実用的な価値には乏しいが, 桑の改良鼠返の全縁葉変異を始め, 幾つかの実用性の突然変異も発見されており, 育種における利用が期待される。
著者
大場 治男
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.264-266, 1949

多化性蠶蛆蠅は蛹態で越冬するという説 (明石1908) と幼蟲態で越冬するという説 (西川1926) がある。筆者が秋末クワゴから得た多数の蛹を保護したものは全部年内に羽化して蛹態越冬を認めなかつた。<br>ミノムシ類の幼蟲には實驗的によく産卵, 寄生せしめ得るが, 自然状態においても越冬中のミノムシ幼蟲は多化性蠶蛆蠅による高率の被害を受けることが認められる。越冬中のミノガ幼蟲を寄主として寄生した幼蛆から翌春3頭の成蟲を得た。このことは西川氏の朝鮮における觀察と一致するところであつて, 日本にありても寄主體内に寄生のまゝ幼蟲態にて越冬するものゝようである。
著者
鮎沢 啓夫
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.398-399, 1955

The present paper deals with the diminution of the virus activity with increasing time of the ultraviolet irradiation.<BR>Supernatant (3, 500 rpm for 15 min.) of the infected pupal blood was diluted 10<SUP>-3</SUP> or 10<SUP>-3</SUP> with distilled water and centrifuged at 3, 500 rpm for 10 minutes. The fluid was prepared in a Petri dish at the depth of 2-3 mm, being exposed to ultraviolet radiation from Matsuda GL-15 type ultraviolet lamp with about 95 per cent of its ultraviolet output at a wave length of &Aring; and tape distance from the lamp to Petri dish was 40 cm. The sample was gently agitated every 5 minutes. After the ultraviolet irradiation, decimal dilution was performed immediately and 0. 005 ml of the virus solution was injected into pupae. LD<SUB>50</SUB> was calculated after REED and MUENCH.<BR>Results obtained are shown in Fig. 1. There is a linear relationship^between LD50 and the irradiation period accords with the mode of the inactivation of other viruses, and when the higher diluted virus solution is used, the inclination of the line becomes steeper. Silkworm jaundice virus seems to be inactivated by the absorption of one ultraviolet quantum as in the inactivation of bacterial virus.<BR>The temperature in these experiments was 15-20&deg;C and its increase owing to the irradiation was less than 2&deg;C after 60 minutes.
著者
諸星 静次郎 大隈 琢巳
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.375-384, 1968-10-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
32

RALPH (1962) は食道下神経節とアラタ体一側心体の抽出物が著しく拮抗的にゴキブリの心臓搏動に作用することを報告した。蚕のアラタ体と食道下神経節のホルモンはそれぞれ若がえりホルモン, 休眠ホルモンなどとして知られているが両者の拮抗的な働きに関しては確実な実証はなされていない。そこで蚕の両ホルモンの拮抗的機能をくわしく知るため特に心臓搏動に観点をおいてこれらのホルモンの作用を調査した。これに関連させ脊椎動物ホルモンであるアドレナリンとインシュリンの影響についても調査した。無脊椎動物に対してアドレナリンとインシュリンの働きはほとんど知られていない. 蚕の逆脈の研究で横山 (1932) は幼虫及び蛾で脊脈管の頻度と方向にアドレナリンが影響することを報告している程度である. アラタ体及び食道下神経節は Ralph の抽出方法を用い蚕の幼虫からそれらの器官を取出したものから抽出したものを注射して実験を行なった。アドレナリン及びインシュリンは市販のものを使用し, 濃度を調製して実験を行なった。蚕の幼虫の食道下神経節の抽出物は蚕の幼虫の心臓搏動数を減じ, アラタ体抽出物は反対に増加させる傾向があって両者は拮抗的な働きをもっている。心臓搏動数の変化は抽出物中の筋肉収縮を刺激する神経ホルモンの働きによるものらしい。一方高等生物で拮抗的作用をもつといわれるアドレナリンとインシュリンについてみるとアドレナリンはその量を多くする場合には明らかに蚕幼虫の心臓搏動数を増加させるがインシュリンは殆んど影響がない。このような実験結果からアドレナリンとアラタ体の抽出物および食道下神経節の抽出物は蚕の筋収縮に影響することが明らかにされた。
著者
山田 晶子
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.266-271, 1997

絹と他の繊維素材布の熱伝導率を熱線法により20℃, 65%R. H. の環境で計測した。布の重ね枚数を50枚以上の厚さにすると, 再現性のある計測が可能である。<br>布の構造的な特徴は, 低荷重で計測した布厚さから求められる繊維体積率に表れ, 布の熱伝導率は, 繊維体積率と一定の関係を示した。一般的に, 繊維体積率が増えると, 熱伝導率も高くなるが, 絹では羊毛と同様にその変化が小さく, 綿, 麻, ポリエステルでは変化が大きい。絹と他の繊維素材を比較すると, 絹は羊毛に次いで大きく, ポリエステル, 綿, 麻の順に熱伝導率が高くなることが分かった。<br>布の熱伝導率λ<sub>k</sub>から, 空気分率に相当する熱伝導率λ<sub>a</sub>を引いて求めた繊維固有の熱伝導率λ<sub>kf</sub>は, 絹では0.25と最も低くまた素材毎に固有な値を示した。布の熱伝導率λ<sub>k</sub>と繊維固有熱伝導率λ<sub>kf</sub>は相関を示し (0.68), フィラメント織物の絹・ポリエステルでは, 繊維固有熱伝導率に較べて布の熱伝導率が高く, 綿・羊毛などの紡績糸織物では布の熱伝導率が低い傾向が認められた。絹では, 繊維固有熱伝導率が繊維中最も低いが, 布になると羊毛より高く, ポリエステルより低いという特徴を示した。
著者
宮島 たか子 山本 俊雄 間瀬 啓介 飯塚 哲也 野崎 稔 木内 信
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.37-42, 2001-04-27
被引用文献数
2

絹の新素材開発を目的に,イミダゾール系化合物のトリフルムゾールを投与して細繊度蚕品種の「はくぎん」及び「ほのぼの」の3眠化試験を行った。乾物重で140ppmのトリフルミゾールを添加した人工飼料を起蚕から3日間与えた場合の3眠化率は3齢ならびに4齢投与とも「はくぎん」は80%を越えたが,「ほのぼの」では30%以下と低かった。280ppm濃度になると両品種とも100%近い3眠化率を示すようになった。この「ほのぼの」の感受性が低いのは交雑親である日513号に由来することが分かった。3眠化率は4齢投与より3齢投与の方が高く,全齢経過日数は3齢投与より4齢投与の方が短くなった。3眠化蚕の繭糸質についてみると無投与区に比して繭層重の低下割合が最も高く,以下,繭重,繊度,繭糸長,繭層歩合,繭長,繭幅の順になり,繭幅より繭長の低下割合が高いので,繭形が丸みを帯びるようになった。繊度は3齢投与で「はくぎん」1.36d,「ほのぼの」1.72d,4齢投与で「はくぎん」0.99d,「ほのぼの」1.03d,と著しく細くなった。これらの3眠化蚕の産生する繭は繊度偏差も小さいので,極細の高級生糸による差別化製品の開発や医療・工業用への用途が期待される。
著者
山崎 寿 西村 国男 田口 亮平
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.413-419, 1955

6年生櫟樹の主幹及び側枝における貯蔵澱粉含有量の季節的変化を顕微化学的に追求し, 次の結果を得た。<BR>(1) 貯蔵澱粉の含有量は主幹においても側枝にても, 又各々の1年生部位, 2年生部位, 3年生部位及び4年生部位にても殆んど同様の季節的変化を示した。然し各部位共その先端部はその基部に比較して貯蔵澱粉の増減の変化がより判つきりしている。<BR>(2) 各部位共貯蔵澱粉の最大期は, 春の雨芽直前 (5月上旬) と秋の黄葉期 (10月中旬) との2回あり, 後者は前者に比して特に顕著である。貯蔵澱粉の最少期は初夏の雨芽伸長期 (6月上旬) と厳冬期 (1月上旬) との2回で, 前者では木質部の貯蔵澱粉は殆んど消失し, 後者では皮部木質部共に殆んど皆無になる。<BR>(3) 冬期貯蔵澱粉の減少に伴う脂肪の増加は認められず, 糖類の増大が起る。<BR>(4) 貯蔵澱粉の蓄積は皮部においては求心的に起り, 減少の場合は遠心的に消失する。木質部では斯る組織的な差異は認め難い。<BR>(5) 春期形成層が活動を始める時期は5月中旬- 下旬で, 主幹側枝共に1, 2年生部位は, 3, 4年生部位より早い。この時期より新しく形成された春材部に澱粉が出現するまでの期間は1, 2年生部位では3, 4年生部位よりも長い。秋材は6月下旬-7月上旬に生成が始まり, 各部位共殆んど同時にその部分に澱粉が現われる。<BR>(6) 幹及び側枝のところどころにおいて, 周皮と初生皮層との間に特殊な貯蔵組織が形成せられここに澱粉の蓄積が起る。これは9月中旬-10月上旬に生成され, 黄葉期には澱粉が充満するが冬期には澱粉は消失する。
著者
辻田 光雄 桜井 進
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.447-459, 1964

1. 色素顆粒を構成する蛋白は可溶性蛋白と不溶性蛋白とに分けられる。前者は顆粒の内方にあり, 後者は顆粒の外周を包む膜状物あるいは外殻を形成するものである。<BR>2.可溶性蛋白はDEAEセルローズに吸着させた後pH8.0のリン酸緩衝液で溶出し, 次の3分画に分けられた。<BR>i) 第1分画には褐色色素と結合した蛋白が集まる。ii) 正常型の第2分画にはsky-blueの蛍光を示す物質と結合する蛋白が含まれる。黄体色, 淡黄体色蚕試料ではsepiapterinと結合する蛋白がこの分画に集められる。iii) 第3分画には尿酸と結合する蛋白, isoxanthopterinと結合する蛋白が集められる。<BR>3.クエン酸ナトリウム-塩酸緩衝液中に色素顆粒の可溶性蛋白を入れると, ある範囲のpHの緩衝液中では, 結晶状沈澱物を生ずるが, pHの値により異なる分画の蛋白が沈澱してくるように考えられる。<BR>4. 顆粒内の可溶性蛋白ばかりではなく, 顆粒の周囲の外殻にも相当多量の尿酸およびisoxanthopterinが検出された。<BR>5. 色素顆粒は幼虫皮膚の油蚕性を支配する主要な要素と見做される。<BR>6. 多くのいわゆる油蚕遣伝子は色素顆粒の形成に直接的あるいは間接的に関与しているものと考えられる。
著者
木下 晴夫 菅沼 よし 渡瀬 久也
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.352-358, 1980

煮繭工程内の処理効果は互に関連しあっているので特定要因を独立に変動させても的確に工程を制御するとは必ずしも期待できない。そこで, 回帰主成分分析法により煮繭要因を集約して少数の煮繭温度パターンを決定することについて検討した。その結果の大要は次のとおりである。<br>1) 煮繭要因は3個の互に独立な回帰主成分に集約された。<br>2) 第1回帰主成分は浸漬部温度および触蒸部温度の影響が大きく, 繭層セリシンの膨潤程度の均一化をはかる温度パターンで, 特に大中節の個数および小節点に対して効果が大きい。<br>3) 第2回帰主成分は滲透部温度の影響が大きい。<br>4) 第3回帰主成分は触蒸部温度あるいは調整部温度の影響が大きい。<br>5) 第2回帰主成分, 第3回帰主成分は中層・内層セリシンあるいは繭層セリシン全体の膨化や凝集をはかる温度パターンで, 特に糸故障や索抄緒効率に対して効果が大きい。<br>6) 繰糸成績より, 適正な温度パターンを選択し, 煮繭工程を制御することによって, 煮繭の最適パターンが形式化され, また単純化された。
著者
河上 清
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.46-51, 1982

蚕室における消毒効果の判定, または清浄環境の保持のため, 空中浮遊糸状菌を対象に, その汚染度の調査に, RCS・エアーサンプラーを用いたところ, 落下法に比べ, 菌捕集効果が著しく高く, 定量的検査が可能であった。さらに, 本器は軽量で操作が簡便なため, 迅速な菌捕集作業ができた。消毒翌日の蚕室の空気中の糸状菌数は, 0.5個/100<i>l</i>であり, 病蚕発生のない飼育中の蚕室での同菌数は1.0~7.5×10個/100<i>l</i>程度であった。なお, 蚕飼育中における糸状菌汚染度の改善に, グルタルアルデハイド剤の散布が有効であった。検出された主要な糸状菌は, <i>Penicil-lium, Aspergillus</i> で, 他には <i>Cladosporium, Geotrichum, Alternaria, Paecilomyces, Cephalosporium, Rhizopus, Mucor</i> があった。
著者
桑原 昂 西崎 郁子
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.49-54, 1969

野蚕絹フィブロインの希薄な酸・アルカリ処理の際の溶出過程におけるフィブリルの生成・形態について, 野蚕種別および前報に報告した家蚕絹フィブロインとの差異を電子顕微鏡によって比較観察した。<br>(1) 野蚕種別により多少の差はあるが通常の精練方法によりセリシンを除去した野蚕絹フィブロインは, ほゞ斉一な経縞状のフィブリルから成り立っている。<br>(2) 希薄なアルカリの溶出作用によりフィブリルは, 錯そう, 離合, 崩壊して不規則に分岐もしくは渦巻, 断層状へと変化する。<br>(3) 希薄な酸では繊維軸方向あるいはある傾斜した方向に波浪または波紋状および分岐または枯木様フィブリル集束が観察される。<br>(4) 野蚕絹フィブロインにおけるフィブリル生成は家蚕絹フィブロインに比し可成り明確にしかも微細フィブリルが連続して見られ, 希薄な酸処理の場合にこの傾向はとくに顕著である。
著者
小林 勝 柳川 栄夫 田中 一行
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.344-348, 1989

テンサンを同一圃場で放養形式により継続飼育すると, 核多角体病ウイルス (NPV) で圃場が汚染され, それが原因となって違作を生ずることは既に報告した。そこで, 今回圃場に棲息する昆虫による病原伝播の可能性, 土壌および飼育樹に残存する病原を不活化する方途など, 作柄安定に資する方法を総合的に検討した。その結果, 次の事実が明らかとなった。(1) 圃場に棲息密度の高いアリ, アブラムシは本病病原の伝播を助長させる。(2) 飼育が終了したクヌギの枝葉に病原の残存が認められる。(3) 土壌に残存する病原は, 表層から約2cmまでにその大半が蓄積している。(4) 土壌に残存する病原は火炎放射消毒 (先端温度1,800℃) することにより, 不活化することができる。(5) 稚蚕期の減蚕の大半はアリによる食害が原因である。
著者
八尋 正樹 林 満
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.5-7, 1971-02-27 (Released:2010-07-01)
参考文献数
3

休眠期中および休眠解除後の冬眠期の桑冬芽につき水抽出をおこない, acidic, neutral, n-hexane の fraction にわけ, おのおのにつきペーパークロマトグラフィを適用し, アベナ伸長テストをおこない, 生長抑制物質と生長促進作用の変化を研究した。その結果休眠の深い時期には冬芽内の生長促進物質の活性化すなわちアベナの伸長を促進することはみとめられず, 生長抑制物質が冬芽内に多量に含まれていることがわかった。休眠解除にともない生長抑制物質 (Rf0.9~1.0) の量が減少し, 生長促進物質が活性化してアベナの伸長を促進することがみとめられた。またエーテル抽出液では認められなかったが, 水抽出の場合展開溶媒 ammoniacal isopropanol で acidic fraction に新にRf0.6~0.8の生長抑制物質が認められた。この物質は冬芽の休眠 (rest) 中にも多量に存在するが, 休眠が解除された冬眠期においても減少せず, 生長抑制作用がかなり強く残っている。この物質は萌芽前に減少することから, 休眠 (rest) と直接の関連があるよりも, 萌芽と関連がある物質ではないかと思われる。