著者
伊藤 智夫 堀江 保宏 Gottfried FRAENKEL
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.107-113, 1959-06-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

1. 5令起蚕の小顋切除後桑葉を与えると, 手術の直接的影響を受けたと思われる個体を除いては, 正常蚕と変りなく食桑し生長する。2. 5令起蚕の小顋切除後キャベツを与えると, 最初は比較的良く食べるが永続せず, 体重増加は僅かで数日後には死亡する。正常蚕も絶食が続くと極めて少量食べる。3. 5令起蚕の小顋切除後桜葉を与えると, 最初若干食べるが永続せず, 体重は反つて著減し遂に死亡する。正常蚕も絶食が続くと少量食べるが, 体重減少はさほど顕著ではない。4. 蚕児の食性に関与する感覚として味覚のようなものが考えられ, 小顋以外の感覚器官の機能によるものと思われる。5. 桜葉はキャベツに較べ蚕児に対し毒性のより強い物質を含有する。6. 5令中期に小顋を切除し桑葉を与えると正常蚕と生長の点で変らない。7. 5令中期に小顋を切除しキャベツを与えると, 最初若干食べるのみであり, 正常蚕も絶食が長びけば極く少量食べる。
著者
釜田 壹 島田 秀弥 浅野 昌司
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-136, 1979-04-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
19

5齢期のカイコに幼若ホルモン活性化合物の一種である methoprene を投与し, その生理作用を明らかにし, 育蚕への利用の観点から投与時期および投与濃度について検討した。1. Methoprene を蚕体に塗布した場合, 投与時期が遅く, かつ投与濃度が高くなるにしたがって, 幼虫期間の延長→幼虫と蛹の中間体→永続幼虫→過剰脱皮蚕へと変化の移行がみられた。2. 5齢の前期および中期における投与では, methoprene に対する感受性に雌雄差はみられないが, 後期では雄が雌よりも高かった。3. 5齢前期の0.1~1μgの methoprene の投与は, 食桑期間が0.2~1日延長し, 営繭率および健蛹率に低下はなく, 繭重および繭層重が増加する。5齢中期の methoprene 投与は, 繭重および繭層重の増加が最も高いが. 0.1μg以上の投与量は営繭率および健蛹率が低下した。5齢後期では, 営繭に影響しない濃度範囲が狭く. 繭重の増加は少なく繭層重も低下した。4. 5齢36~72時間に2.5ppmの methoprene を散布すると, 食桑期間は0.5~1.3日延長し, 健蛹率の低下もなくて繭重および繭層重が増加し, 繭層歩合も低下しなかった。5. 2.5~10ppmの methoprene の散布は, 健蛹率がやや低下するが, 繭重および繭層重はそれぞれ10~14%および13~20%増加し, 繭層歩合もやや増加した。繭糸長, 繭糸量, 解舒率および生糸量歩合も向上した。
著者
桑名 壽一
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.202-207, 1951

1) この虫は1年1世代, 4, 5, 6月に蛹, 成虫, 卵の時期があり, 1年の残りの10ケ月近くは幼虫ですごす。幼虫には普通の意味の休眠はなく, 常に運動し食物をとる。<BR>2) 自然状態の幼虫を25℃に移すと, 12月までのものは化蛹せず, 翌年2月になると全部が直ちに化蛹する。<BR>3) 幼虫を連続同一温度で飼うと, 30℃ではほとんど蛹にならす少くとも1.5年は幼虫として生きる。25-15℃だと8ヶ月くらいから後化蛹がおこる。20℃で最も早く化蛹がおこり最も短期間に化蛹しおわる。<BR>4) 5月孵化の幼虫を9月 (7令) から5-20℃に1-5ヶ月おき25℃に移した。5℃では化蛹なく, 10-20℃では3ヶ月処理以後化蛹があつた。15-20℃では4ケ月で化蛹率100%に近い。<BR>5) 各温度の効果は15°, 20℃が最高でこの両側に低くなり, 5及び30℃でほぼ0となる。<BR>6) この幼虫には休眠に似た化蛹のブロックがあつて, これからの離脱には特殊範囲の温度が効果をもち, その強さは5) のようなものである。
著者
阿部 広明 大林 富美 原田 多恵 嶋田 透 横山 岳 小林 正彦 黄色 俊一
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.196-200, 1996

CSD-1系統はカイコ支137号 (<i>nsd-1</i>/<i>nsd-1</i>) に日137号 (+<sup><i>nsd-1</i></sup>/+<sup><i>nsd-1</i></sup>) の濃核病ウイルス1型 (DNV-1) 感受性遺伝子 (+<sup><i>nsd-1</i></sup>) が所属する第21連関群を導入し, 継代, 維持している。このためCSD-1系統は, 第21連関群について, 日137号の染色体と支137号の染色体を一本ずつもつ<i>nsd-1</i>/+の雌に, 支137号の雄を交配し, 蛾区内でDNV-1感受性個体 (<i>nsd-1</i>/+) とDNV-1非感受性 (完全抵抗性) 個体 (<i>nsd-1</i>/<i>nsd-1</i>) が1:1で分離するようにしてある。本研究は, +<sup><i>nsd-1</i></sup>遺伝子に連関しているランダム増幅多型DNA (RAPD) を利用し, CSD-1系統内よりDNV-1を接種することなく, 幼虫ならびに成虫のDNV-1感受性を診断する方法について検討した。PCRの鋳型となるゲノムDNAを, 幼虫の場合は切断した腹脚2本から, 成虫の場合は切断した脚2本から, それぞれ抽出し, 特定のプライマーを使用してPCRを行い, RAPDの有無を調べた。その結果, RAPDによる診断結果とDNV-1感染の有無が一致した。この方法により, ウイルスを使用することなくDNV-1感受性個体を検出し, その個体から次代を得ることが可能となった。
著者
橋本 春雄
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.205-210, 1953-10-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
13

Kiel bone konate la hibridigo inter normaltipaj diploidaj inoj kaj d-tralumaj viroj donas ce la morusa silkraupo en F1 generacio d-tralumajn inojn kaj normaltipajn virojn, la d-traluma geno estante seksligita kaj recesiva, dum la hibridigo inter tetraploidaj inoj kaj d-tralumaj viroj normaltipajn inojn kaj normaltipajn virojn. Ni do povus diveni per la hibridigo, ke la inoj parigitaj estus miksoploido kunmetita de diploido kaj tetraploido. E1 43, 200 ovoj elprenitaj el papilioj de sekslimigita Zebro, X-radio-mutacio, heteroziga por dominanta Flavsanga geno, l'autoro sukcesis akini 288 raupojn Zebro-Flavsangajn per artefarita partenogenezo (pro trempado en varman akvon). 9 el 12 ekzamenitaj ce F1 montrigis miksoploidaj. La nombro de ne-d-tralumaj inoj variis ce F1 inter 1.0 kaj 30.2%. La miksoploidaj inoj demetis krom ordinaraj ovoj ankau pligrandajn, kies nombro proporcie bone koincidis kun tiu de la ne-d-tralumaj inoj de F1.Estis ankau konstatite, ke la proporcio inter Flavsangaj kaj normaltipaj individuoj estas en la ne-d-tralumaj inoj iom neordinara, car la nombra proparcio de la dominanta tipo al la recesiva sajnis aperi iom pligranda ol en la ordinara proporcio de 5:1.La partenogenezo sajnas deveni de la ovoj, kies kerno ne faris reduktan dividigon. La miksoploido el diploido kaj tetraploido okazas eble de duobligo de kromosomnombroj pro la kunigo de filinaj kernoj ce la dua au pliposta fendiga dividigo (cleavage).
著者
高岸 秀次郎 東野 正三 飯塚 隆治
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.135-143, 1973-04-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
18

兵庫県下の蛇紋岩質土壌地域における桑の生育異常を栽培桑に関してはじめてニッケル過剰症と判定し, さらに現地桑園土壌および桑の化学組成の特徴を論じた。1. 桑のニッケル過剰症は通常夏切り後伸長した枝条の葉に発現しやすく, 特に7月中~下旬頃最も著しく, その後発育した桑葉は次第に健全な様相を呈する。7月中旬の症状は上位1/3葉位の葉が黄化, 中位1/3の葉の葉脈間に褐色ないし黒褐色のネクローシスを生ずる。下位1/3葉位は淡緑から緑色に漸移する。2. 同一桑園で亜鉛欠乏症, 鉄欠乏症および両者の複合症状を呈する桑株が見出された。3. 本桑園の表層土は強酸性で塩基飽和度も低いが, 下層土ほど酸性が弱くなる。塩基組成は下層土ほどマグネシウムの占める割合が高くなる。置換態ニッケル含量は3.0~34.2ppmで概して第2層で最も高含量を示した。4. 桑の葉身, 葉柄, 枝条について, カルシウム, マグネシウム含量は異常株の方がやや高い傾向を示したが明瞭でない。ニッケル含量は概して葉身で最も高く, 葉位, 障害程度によって異なるがおおよそ20~50ppmの範囲にあった。なお葉身中ニッケル含量は障害の激しい株ほど高く, これに対し亜鉛含量は逆に低かった。
著者
田辺 仁志 中山 忠三 浅山 哲 内海 進 栗栖 弍彦 市川 吉夫 河合 孝 鮎沢 千尋 河原畑 勇 福原 敏彦 橋本 陽子 久保 正太郎 楠野 正夫 中村 二郎 宮沢 左門 有賀 久雄 宮島 成寿 今井 退 小田 常治 川森 郁郎 川瀬 茂実 石川 義文 沖野 英男 山口 孝根 三好 健勝 倉田 啓而 鮎沢 啓夫 山口 定次郎 小林 勝 岩下 嘉光 細田 茂和 松沢 則子 山崎 寿 小林 あつ子 山田 たけを 市岡 正道 丸山 長治 高須 敏夫 佐藤 清 山崎 昭治 酒井 英卿 片岡 平 梅村 義雄 村上 昭雄 田島 弥太郎 鬼丸 喜美治 佐渡 敏彦 広部 達道 沓掛 久雄 渡部 仁 長野 ヒロ 小林 悦雄 佐伯 佳之 阿相 敏雄 佐藤 正市 平田 保夫 武井 隆三 長島 栄一 高沼 重義 蒲生 卓磨 一場 静夫 宮川 千三郎 清水 滋 堀内 彬明 波島 千恵子 安江 昇 辻田 光雄 真野 保久 板垣 正男 田中 義麿 中山 光育 筑紫 春生 土井 良宏 山下 興亜 長谷川 金作 小林 勝利 石戸谷 幸雄 楠木園 正雄 橋口 勉 吉武 成美 赤井 弘 森 精 有本 肇 小西 孝 小野 四郎 荒井 三雄 加藤 康雄 土橋 俊人 後藤田 さっき 吉田 勝 進士 安治 青木 一三 小松 計一 鳥居 礼子 橋本 嘉男 清水 正徳 坂口 育三 小笠原 真次 中川 房吉 北村 愛夫 佐藤 歌子 大野 巌 原田 泰介 関 文夫 石垣 隆謌 嶋崎 昭典 大沢 定敏 小島 哲雄 布目 順郎 小川 敬之 松田 和夫 大工原 建
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.207-221, 1965

126) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第1報) 発生実態調査と多角体の性状について<BR>127) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第2報) ウイルスのキンケムシに対する感染力とウイルス伝播の-知見<BR>128) キンケムシの核多角体病に関する研究 (第3報) ウイルスの交差感染について<BR>129) 野外昆虫多角体病と家蚕多角体病に関する研究 (VIII) 家蚕, サクサンなどに感染性を示す核多角体病ウイルス
著者
藤本 直正 林屋 慶三
出版者
The Japanese Society of Sericultural Science
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.83-88, 1961

1) 家蚕着色繭品種61種を供試して, 繭に含有されるフラボノイドとカロチノイドとの割合によって品種の分類を行なった。<BR>2) 大部分がカロチノイドでわずかのフラボノイドを含む品種の群と家蚕の祖先型のクワコと同様に両色素がほぼ等量宛含有される群と全色素がフラボノイドである群の3群およびそれら3群の各中間の割合を示す品種の群を認めた。<BR>3) 大部分がカロチノイドである群には欧洲種の大部分の品種が属し, 熱帯系のすべてはほとんどあるいは全部の色素がフラボノイドである群に属していた。<BR>4) クワコと同様に雨色素がほぼ等量ずつ含まれる群には欧州, 中国, 日本の各品種の1.2が属していた。<BR>5) 外観から黄繭系とみられるもののうちにもカロチノイドよりフラボノイドの方がかえって多く含まれる品種が存在する。また, フラボノイドの全然含有されない着色繭品種は1種も認められなかった。
著者
須藤 允 宗 従男 岡島 輝雄
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.306-310, 1981-08-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
3

窒素の施用量 (N: 45kgとN: 15kg) を変えた夏切桑の桑葉を用い, 晩秋蚕期に最大光葉を基準に葉位ごとに1頭育を行い, 葉位と蚕体重, 繭重, 繭層重との関係を検討した。1. 葉位と蚕体重, 繭重, 繭層重ともそれぞれ負の相関があり, 直線回帰式で表示できた。2. 桑葉中の窒素含有量は葉位との間で負の相関があり, 直緑回帰式で表示できた。3. 桑葉中の窒素含有量は蚕体重, 繭重, 繭層重と高い正の相関があり, いずれも直線回帰式で表示できた。
著者
石島 嶄
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.136-140, 1971-04-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
16

山形県新庄市および長野県松本市採取クワ枝条から越冬卵が検出され, ヒシモンモドキ (Hishimonoides sellatiformis ISHIHARA) と命名された新種の昆虫が, クワ萎縮病を媒介することを明らかにした。1) 本種は短期間の罹病株吸汁で病原を高率に獲得し, 個体接種によって健全クワ苗に媒介した。2) 保毒虫は, 25℃において, 接種吸汁1時間で16%, 12~15時間で75%の媒介率を示した。3) 病原の虫体内潜伏期間は, 28℃において21~39日であった。本種は, 病株吸汁後病原を永続して保持し, 一定の潜伏期間を終えた後へい死直前までほぼ連続した媒介を行なった。4) 以上の点から, 本種の本病媒介能力はヒシモンヨコバイにまさると考えられた。
著者
東 政明
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-18, 1995-02-27 (Released:2010-07-01)
参考文献数
81
被引用文献数
1
著者
太田 慎一郎 渡辺 昭典 徳永 博
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.77-81, 1957-02-28 (Released:2010-11-29)
参考文献数
8

1) m2は3齢起蚕において黒色鮮明な特有の斑紋を発現し, 分離系統においては同一蛾区の正常蚕の第3就眠に前後して熟眠となる。しかし超過脱皮をきたし三眠蚕となると斑紋は黒色減退し, 淡褐色味が加つてくる。2) m2は異常三眠蚕を生じ易い傾向があるが, この三眠蚕となつたものを用いると系統維持が容易である。3) m2で超過脱皮を行つたものの中にプロセテリー或いはメタセテリーを生ずることがしばしばある。また族中不脱皮斃蚕の多出すること等から考えると, m2は遺伝的ホルモン異常蚕とも考えられる。4) m2純系においては毛蚕の軽重によつて, その後の発育に影響があり, 毛蚕体重の軽いもの程異常三眠蚕を生じ易い傾向がある。5) m2の経過日数は11日前後のものが多く, 1-3齢間の生長率を支122号に対比するとm2は明らかに生長率が大きい。これは絹糸腺の肥大生長に伴う結果と考えられる。熟蚕の絹糸腺の形態は正常蚕の最終齢のそれと酷似している。6) 繭は体躯に応じて貧弱である。蛹は23℃ 保護下では14-16日で発蛾するが, 中には20日以上を要した個体もある。7) 蛾も非常に小さいが生殖力は完全でよく受精する。雌は造卵の絶対量が少なぐ, m2-IIでは30粒の受精卵を産下したものが最高で, m2-IIIでは50-200粒ぐらい産卵する。8) 二眠蚕 (m2) は四眠蚕に対し劣性として遺伝する。
著者
白 倫 王 建民 周 韶
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.321-325, 1999-08-31
被引用文献数
2
著者
馬場 秀子 桑原 伸夫 岩下 嘉光
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.99-106, 1997-04-28 (Released:2010-07-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

天蚕胚の初期から中期における胚発育過程での外部形態の変化を走査型電子顕微鏡で観察した。各発育段階の微細構造から頭部形態形成の特性を明らかにした。胚は産卵後, 12時間で頭摺と尾褶の分極化が認められた。36時間には, 大腮, 小腮及び下唇原基の分化が進行し,下 咽頭の形成が始まった。頭葉の両側前端に視葉域が認められた。48時間では, 上唇や触角原基の発達が顕著となり, 60時間後には胚の短縮が始まった。72時間後には反転期となり, 単眼原基が認められ, 反転完了後に下咽頭は消失し, 触角, 小腮肢原基が上を向き, 頭・胸・腹部の境界が明瞭となった。さらに毛瘤形成, 剛毛形成を経て, 産卵後, 約10日 (240時間) で幼虫の外部形態形成は完了した。