- 著者
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加藤 勝行
樋口 拓哉
本堂 雄大
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.0879, 2017 (Released:2017-04-24)
【はじめに,目的】スポーツクライミングには,15m程の岩壁に見立てた課題を登るリードクライミングと,大岩に見立てたボルダリング,上部からのロープ確保で登るスピードクライミングの3つに分けられている。2020年オリンピック競技種目となり,我が国でも世界的に出遅れた感があるが,リード競技とボルダリング競技が国体競技種目にまで認知されるまでに高まってきている。これに乗じ近年屋内ジムが急激に増え,統計上クライミング人口も国内約60万人(世界3500万人)という報告もあり,すそ野を広げている現状にある。今回,全国のクライミング愛好家(=クライマー)からアンケート調査を行い,我々理学療法士に関わる傷害の実態と医療機関受診率ならびに発生環境をふまえて明らかにすることを目的とした。【方法】全国72か所のクライミングジム利用者とクラブチームを対象に,63か所より回答を得た(回収率87.5%)。回答総数1638人で,男性1237人,女性398人であった。統計処理として,経験と年齢(スチューデントt検定),傷害環境,傷害の種類(カイ二乗独立性の検定),リハビリテーション医療受診に関わる傷害度(マン・ホイットニ検定)を用いて有意水準5%未満とし検討した。【結果】経験では4年未満が71%,年齢では平均年齢34.9±12.7歳と若人中心のスポーツ特性を見られた。総数の半数以上の66%の者がなんらかの傷害を経験しており,部位的に手指が29%ともっとも多く,上肢全体では59%であった。環境発生では屋外の岩稜ではなく,70%が屋内(クライミングジム)で発生,屋外では足部受傷(18%)が有意に認められた。多くは外傷性によるものであった。屋内外においてのオーバーユースは11%であった。傷害を受傷者の47%は,理学療法士の在籍する医療機関を受診していなかった。実施前のウォーミングアップ実施率は高いが,関節運動筋群への炎症作用など侵襲性が診られる実施後のクールダウンの実施率20%と低値であった。【結論】特性的に高度に負荷がかかる上肢の傷害が半数以上であり,特に手指にもっとも多く見られた。急増しているクライミングジムでの複雑なホールド(突起物)の取り付け操作で難易度のバラつきが起こり,身体の関節運動において,過剰に負荷のかかる状況による屋内ジムでの傷害発生が多かった。凹凸地面の屋外での足部傷害の多さでは,屋内ジムでは厚いクッションが敷かれており,比較的少ないものと推察された。受傷後の医療関連で,リハビリテーションを受けていないクライマーが多くいる現状が検証されたことを鑑み,今後の課題としてクライマーならびに指導員,クライミングジムへ傷害予防に向けての講演など,リハビリテーション医療の重要性を説くことが急務であると思われた。またコンディショニング・ケアを整える理学療法士が介入にすることで東京オリンピック以降にも継続的に表彰台に立つ選手の育成にも貢献できるものと考える。