著者
池田 耕二 田坂 厚志 粕渕 賢志 城野 靖朋 松田 淳子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11782, (Released:2020-09-19)
参考文献数
37

【目的】熟達理学療法士(以下,PT)の経験学習プロセスから成長を促す経験と学習内容を明らかにし,そこからPT に対する経験学習支援方法を示唆すること。【方法】対象は熟達PT3 名であった。方法は質的研究の手法と松尾の経験学習プロセス解明の枠組みを用いた。【結果】熟達PT はキャリアの初期に「障がいを有した患者の社会参加に向けた実践経験」から〈人とのかかわりや社会・生活に対する実感〉を,初期~中期に「予期できぬ否定的な経験」から〈医療の厳しさ〉等や「重度患者を基本的理学療法で改善した経験」から〈基本的理学療法技術の有効性〉等を,中期~後期に「実習生や新人に対するサポート経験」から〈自己内省による知識・技術の整理〉等や「多職種連携による介入経験」から〈コミュニケーション〉等を学習していた。【結論】熟達PT の成功を促す経験に焦点化し経験を積ませることは,PT の経験学習支援につながると考えられる。
著者
佐藤 佑太郎 太田 経介 松田 涼 濵田 恭子 髙松 泰行
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12356, (Released:2023-06-09)
参考文献数
46

【目的】進行性核上性麻痺患者の病棟内歩行の自立度と歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能との関連性を検討し,抽出された項目のカットオフ値を算出することを目的とした。【方法】進行性核上性麻痺患者86名を対象とした。歩行機能,バランス機能,全般的な認知機能および前頭葉機能が病棟内歩行自立と関連するかを多重ロジスティック回帰分析で検討し,抽出された項目をreceiver operating characteristic curve(ROC)にてカットオフ値を算出した。【結果】歩行自立に対してバランス機能評価である,姿勢安定性テストとBerg Balance Scale(以下,BBS)が関連し(p<0.01),カットオフ値は姿勢安定性テストで2点,BBSで45点であった。【結論】進行性核上性麻痺患者における病棟内歩行自立可否には姿勢安定性テストやBBSの包括的なバランス機能が関連することが示唆された。
著者
辻本 直秀 阿部 浩明 大鹿糠 徹 神 将文
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11443, (Released:2018-10-04)
参考文献数
14
被引用文献数
3

【目的】拡散テンソル画像所見で皮質脊髄路(以下,CST)が描出されず,一方で皮質網様体路(以下,CRT)の残存が確認された脳卒中重度片麻痺者の歩行再建に向けた理学療法経過について報告する。【対象】動静脈奇形破裂による脳出血発症から約1 ヵ月後に当院へ入院された10 歳代後半の男性であった。麻痺側立脚相における下肢支持性はきわめて乏しく歩行に全介助を要した。【方法】CST の損傷程度から運動機能の予後は不良であると予測されたが,CRT が残存しており,麻痺側下肢近位筋の回復を予測し,歩行再建できる可能性が高いと判断し,長下肢装具を使用した2 動作前型歩行練習を積極的に試みた。【結果】発症から約4 ヵ月後,遠位筋の回復は不良であったが近位筋優位の運動機能の回復が得られ歩行能力が改善した。【結論】重度片麻痺者の歩行練習に際し,CST の損傷の評価のみならずCRT の損傷も評価することでより効果的な治療が提供できる可能性がある。
著者
下井 俊典
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11347, (Released:2018-03-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

【目的】本研究は我々が絶対信頼性を検討した継ぎ足歩行テストについて,新しい妥当性観にもとづいて,構成概念妥当性を検討することを目的とした。【方法】対象は介護予防事業に参加した493 名の地域在住健常成人である。5 m の継ぎ足歩行テストの所用時間を継ぎ足歩行時間(以下,TGT)とし,所要時間とミス・ステップ数から算出する継ぎ足歩行指数(以下,TGI)の2 種類のテスト値について妥当性を検討した。年齢・性によるテスト結果を比較するとともに,測定後2 年間の転倒経験を追跡調査できた66 名についてロジスティック回帰分析を用いて転倒予測に対する各因子の影響度を検討した。【結果】TGT,TGI のいずれも年齢・性による差が認められた。転倒の予測因子としてTGI が選択され,オッズ比1.06 およびカットオフ値として24.0 が得られた。【結論】TGI はより運動能力の高い高齢者のバランス能力,特にその比較的長期的な将来の転倒を予測できる評価方法であることが明らかとなった。
著者
河上 敬介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.85-89, 1999-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
森山 英樹 増子 潤 金村 尚彦 木藤 伸宏 小澤 淳也 今北 英高 高栁 清美 伊藤 俊一 磯崎 弘司 出家 正隆
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-9, 2011-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
63
被引用文献数
5

【目的】本研究の目的は,理学療法分野での運動器疾患ならびに症状を対象としたストレッチング単独の有用性や効果を検証することである。【方法】関連する論文を文献データベースにて検索した。収集した論文の質的評価を行い,メタアナリシスあるいは効果量か95%信頼区間により検討した。【結果】研究選択の適格基準に合致した臨床試験25編が抽出された。足関節背屈制限,肩関節周囲炎,腰痛,変形性膝関節症,ハムストリングス損傷,足底筋膜炎,頸部痛,線維筋痛症に対するストレッチングの有効性が示され,膝関節屈曲拘縮と脳卒中後の上肢障害の改善効果は見出せなかった。【結論】現時点での運動器障害に対するストレッチングの適応のエビデンスを提供した。一方,本結果では理学療法分野でストレッチングの対象となる機能障害が十分に網羅されていない。ストレッチングは普遍的治療であるからこそ,その有用性や効果を今後実証する必要がある。
著者
樋口 隆志 井上 茂樹 川上 照彦 河村 顕治 横山 茂樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.383-389, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
29

【目的】2 種類の異なる小胸筋ストレッチ方法の効果の違いを明らかにすることである。【方法】対象は高校野球部員34 名とした。測定項目は小胸筋長,安静時の肩甲骨位置,上肢挙上時の肩甲骨回旋角度とした。ストレッチ方法はdoorway stretch(以下,DW-stretch 法)とretraction30° stretch(以下,R30-stretch 法)とした。【結果】二元配置分散分析の結果,小胸筋長の指標であるRib4-CP および肩甲骨位置の指標であるAD-R において交互作用が認められた。また,2 つのストレッチ法でRib4-CP およびAD-R の変化量に有意差が認められた。【結論】小胸筋を伸張させるとされるDW-stretch 法とR30-stretch 法のうち,DWstretch 法は安静時の小胸筋長や肩甲骨の位置をより変化させる可能性が示唆された。
著者
永井 聡 石羽 圭 広瀬 勲
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C1384, 2008

【はじめに】 線維筋痛症(Fibromyalgia Syndrome 以下FMS)は全身に激しい痛みが生じる原因不明の疾患である。日本では約200万人は潜在するといわれるが、的確な診断や治療法がまだ確立しておらず疾患に対する理解も得られていない疾患である。今回股関節痛・腰痛を主訴とし、数年経過しFMSと診断され、疼痛に対し理学療法が効果を示した症例を経験したので報告する。<BR>【症例紹介】 51歳 女性、 病歴 2004年より、腰痛出現・体動困難にて他院で 椎間板ヘルニアと診断される。その後約2年間、腰痛に対し他院数箇所にて加療。2005年末、股関節痛出現、2006年他院にて股関節唇損傷の診断で関節鏡施行、この頃から全身に疼痛感じるようになる。2007年6月 当院受診、疼痛は股関節痛・頭痛・左肩・左肋骨・仙腸関節痛を強く訴え、疼痛の表現としては切られるような痛み、火傷のような痛み(アロディニア)と表現する。8月にFMSと診断される。11月現在も当院にて治療継続中。<BR>【理学療法評価】 初診時疼痛の訴えは強く、アロディニアによる機能障害を有していた。疼痛評価としてVASにて定量化を試みるが、日変化、多部位の訴えのため当初は9/10程度の強い疼痛部位ばかりであった。理学療法開始から5ヶ月で部位によっては半分の5/10程度まで疼痛感の改善がみられた。関節可動域の著明な制限は無く、筋力も選択的な筋力低下はなし。レントゲン上疼痛関節の構築的な異常所見なし。血液検査上も炎症所見、膠原病所見はなかった。 <BR>【治療経過】 当初は内服と温熱療法が主体の治療をおこなった。温熱終了時は効果みられたが、徐々に疼痛減少が認められなくなった。FMSと診断されてからFMS研究会の治療指針を参考に内服から下行性疼痛抑制系賦活型疼痛治療薬のノイロトロピン静注を開始した。その後温熱療法のみでなく静注後にボールExやバランスクッションなど外乱に対する自動運動、筋収縮、反応促通の運動療法を開始し疼痛感の軽減効果を認めた。<BR>【考察】 理学療法の介入は、当初疼痛対策に温熱療法を施行したが、即効性を示すものの、FMSのような症例には疼痛の訴えの減少は持続せず、疼痛確認すると逆に疼痛に執着する傾向になってしまった。ノイロトロピン開始により若干疼痛感が軽減してから、理学療法の戦略を運動療法の併用に転換すると、動作・反応の中で患者本人に疼痛を確認させると安静時に比較しアロディニア症状が改善し運動療法効果を確認できた。FMSはまだ治療のガイドラインが確立しておらず、従来は多岐に渡る疼痛訴えの患者に対しメンタルな問題などとして理学療法が関わることから逃避してきた感があるが、的確に診断し理学療法士が関わることで、疼痛に対する効果が検証されてくれば、治療のガイドラインとして理学療法も介入できると考えられる。<BR>
著者
山本 実穂 野添 匡史 大西 晶 桝矢 璃央 大澤 摩純 久保 宏紀 山崎 允 間瀬 教史 島田 眞一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11639, (Released:2019-11-27)
参考文献数
34

【目的】慢性腎臓病(以下,CKD)を合併した心不全カヘキシア症例に対して,分岐鎖アミノ酸(以下,BCAA)を含むたんぱく質摂取を中心とした栄養療法と運動療法によって身体機能の大幅な改善が得られたので報告する。【症例紹介】心不全(CKD stage3b 合併)を発症後1 ヵ月間の中心静脈栄養管理となり20 kg の体重減少を招いた。身体機能の改善を目的に理学療法が処方されたが,第76 病日時点で疲労感が強く,運動耐容能(6 分間歩行距離150 m)も低下していることからカヘキシアの状態と考えられた。【経過】BCAA を含むたんぱく質の摂取量を1.2 g/kg/ 日まで漸増し,運動療法はレジスタンストレーニングを中心に行った。約3ヵ月間で体重は8.4 kg 増加し6 分間歩行距離は557 m まで改善した。【結論】CKD を合併した心不全カヘキシア例であっても,たんぱく質摂取量を増やした栄養療法と運動療法の併用は有効と考えられた。
著者
芳野 純 二渡 玉江 大谷 健 臼田 滋
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.410-416, 2010-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
22
被引用文献数
10

【目的】資格取得後の理学療法士が,自立して理学療法業務を行うために必要な能力を明確にする。【方法】職員指導経験がある理学療法士15名に対して,指導している理学療法士がどのような能力を獲得したときに,理学療法士として自立したと感じるか等の質問をインタビューにより聴取した。インタビュー結果を,質的研究である内容分析を用い分析した。【結果】分析の結果,50のサブカテゴリーと,「理学療法実施上の必要な知識」,「臨床思考能力」,「医療職としての理学療法士の技術」,「コミュニケーション技術」,「専門職社会人としての態度」,「自己教育力」,「自己管理能力」の7つのカテゴリーが形成された。【結論】職員指導経験がある理学療法士は幅広い能力の獲得を望んでいることが分かった。7つのカテゴリーは教育目標分類学による3つの領域を満たしており,理学療法士が自立して業務を行うための到達目標について,一つの目安を示すことができた。
著者
北地 雄 原 辰成 佐藤 優史 重國 宏次 清藤 恭貴 古川 広明 原島 宏明
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.481-488, 2011-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
54
被引用文献数
15

【目的】歩行は日常生活でもっとも使用される移動手段であり,高齢者では歩行能力と日常生活範囲に関係がある。歩行が自立することにより様々な利点があるため歩行自立の判断は根拠をもっておこなうことが必要である。本研究の目的は,初発の脳血管疾患後片麻痺を対象とし,歩行自立判断のためのカットオフ値を得ることである。【方法】回復期病棟に入院していた初発脳血管疾患後片麻痺者に対し,Timed Up and Go test(以下,TUG),麻痺側下肢荷重率(以下,荷重率),Functional Balance Scale(以下,FBS)を測定した。そして,これらの評価指標における歩行の自立を判断するカットオフ値を検討した。【結果】歩行自立のためのカットオフ値はTUG快適速度条件,TUG最大速度条件,荷重率,FBSでそれぞれ,21.6秒,15.6秒,0.70,45.5点であった。【結論】初発の脳血管疾患後片麻痺者の歩行自立を判断する際には,今回のカットオフ値により良好な判断が可能となる。
著者
藤本 修平 小林 資英 小向 佳奈子 杉田 翔
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11548, (Released:2019-02-12)
参考文献数
28

【目的】リハビリがかかわる医療機関Web サイトにおける医療広告ガイドラインの遵守実態を検証することとした。【方法】リハビリがかかわる医療機関のWeb サイトを抽出するため,国土数値情報(国土交通省)から東京都23 区内の医療機関を抽出し,医療機関名と住所を組み合わせWeb サイトの検索を行った(database: Google)。Web サイトの質を評価するために,医療広告ガイドラインを参考に6 項目評価した。【結果】診療科目で本来使用すべき「リハビリテーション科」という標榜以外の記載をしているWeb サイトは993 件中461 件(46.4%)であった。医療機関の名称の語尾に“センター”と標榜するもののうち,名称として認められていないものは47 件中38 件(80.9%)であった。【結論】本来医療機関の名称として認められていない標榜を採用している医療機関が多く,情報提供者は,医療機関に関する情報をより正確に説明する必要がある。