著者
竹内 幹雄 小松 秀昭 中谷 登志男
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.355-362, 2003-07-25 (Released:2012-02-15)

Javaの高速化の研究が盛んになされているが,数値計算の分野では依然Fortranに水をあけられたままである.その理由の1つに,浮動小数点演算の厳密な正確さ(accuracy)が原因で最適化が困難なことがある.とりわけ,融合型積和演算(fused multiply-add (FMA))命令や,再結合(reassociation)を利用できないことが,Javaの性能に大きく影響している.この論文では,浮動小数点演算の正確さに関する投機(floating-point (FP) speculation)を提案する.FP speculationは,既存アーキテクチャの余ったハードウェア資源(浮動小数点レジスタと演算ユニット)を利用して,各最適化対象に対し正確さの異なる2通りの計算(投機計算と検算)を同時に実行することで,Javaの言語仕様を満たしつつ平均実行時間を短縮する.
著者
横山 和弘 竹島 卓
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1_42-1_61, 1988-01-14 (Released:2018-11-05)

A. K. Lenstra, H. W. LenstraとL. Lovaszが格子算法を整数環上の1変数多項式の因数分解アルゴリズムに応用し,計算時間がその多項式の次数に対してその次数の多項式オーダーになることを可能にして以来,格子算法が種々の因数分解アルゴリズムに応用されている.本論文では,A. K. Lenstraによる格子算法の基本的性質を抽出し,Euclid付値環上の因数分解およびGCD計算に格子算法が適用できることを示す.また,ある種の条件の下ではEuclid環上の因数分解へも応用が可能であることを示す.
著者
須永 高浩 笹田 耕一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.4_95-4_113, 2012-10-25 (Released:2012-11-25)

本研究では,スクリプト言語用プロファイラの実装を容易に行うためのフレームワークの開発を行った.本フレームワークを用いることで,プログラムの性能情報をリアルタイムに取得するプロファイラを構築できる.本フレームワークは複数のスクリプト言語に対応することができ,計測内容も容易に追加できる.また,プロファイリングの利便性を高めるため,ネットワークで接続された別のホストから接続し遠隔で情報取得するための機能や,コンテキスト情報を含んだ情報を取得するための機能を提供する.本論文では本フレームワークの設計と実装を示す.また,本フレームワークによるプロファイラの参考実装を行い,本フレームワークによるプロファイラを使用した実運用しているアプリケーションに対する分析事例を示し,本フレームワークが実用的であることを示す.
著者
相場 亮
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.461-473, 1992-11-16
被引用文献数
1

本稿の目的は,制約論理プログラミングシステムに関して,概観を与えることにある.制約論理プログラミングは,新しいプログラミング・パラダイムとして,近年,注目を集めているものであり,問題のとらえかた,記述方法において,従来のパラダイムとは一線を画すると共に,論理プログラミングという土台の上に展開されていることで,問題解決における新しい展開を期待させるものである. 本稿においては,論理プログラミングの初歩的知識を前提として,制約論理プログラミングについて,実際の処理系を簡単に紹介しながら解説を行う.
著者
藤田 悦誌 岩崎 敦 東藤 大樹 横尾 真
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_156-3_167, 2014-07-25 (Released:2014-09-10)

本論文では,新しい公開型オークションメカニズムのクラスとして,VCG-equivalent in expectationメカニズムを提案する.正直な戦略の組が事後ナッシュ均衡となる公開型オークションメカニズムはクエリの回答が回答者の財の割当と支払額に影響を与えない無関係なクエリを送信する必要がある.露呈される情報に関して参加者が弱い誘因を持つ場合,無関係なクエリを送信するメカニズムは望ましくない.本論文で新しく提案するVCG-equivalent in expectationメカニズムは,割当はVickrey-Clarke-Groves (VCG)メカニズムと等しく,支払額はVCGの支払額の期待値とするメカニズムである.本論文では,VCG-equivalent in expectationメカニズムにおいて,正直な戦略の組が逐次的均衡となること,及び,無関係なクエリを送信しないVCG-equivalent in expectationメカニズムを構築する手法を示した.さらに,提案メカニズムの現実的な応用事例への適用可能性を示すため,日本の第四世代の周波数オークションに適用可能なメカニズムを示した.
著者
大谷浩司 角野 宏司 児島 彰 萩谷 昌己 服部 隆志 劉 樹苓 Koji Otani Hiroshi Kakuno Akira Kojima Masami Hagiya Takashi Hatori Shuling Liu ASTEC 立石電機 京都大学 京都大学 慶応大学 京都大学
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.45-60, 1990
被引用文献数
2

並列オブジェクト指向パラダイムに従って実現されたウィンドウ・システムであるGMWと,GMW上でのアプリケーション構築法について述べる.UIMSの一般論に基づいて,ウィンドウ・システム上のアプリケーション構築における並列オブジェクト指向パラダイムの重要性,仮想機械サーバ方式の利点等について議論した後,GMWウィンドウ・システムとそのツールキットについて概観する.GMWは,次のような特徴を持った仮想機械サーバ型のウィンドウ・システムである.アプリケーションのユーザ・インターフェース部を実現するために,新たに設計された並列オブジェクト指向言語Gのコンパイラと仮想機械をサーバ内に持っていること.アプリケーション本体とユーザ・インターフェース部の通信を支援するために,並列オブジェクト指向パラダイムに従ったスタブ生成系を提供していること.G言語によって実現されたユーザ・インターフェース開発環境によって,アプリケーション実行時にもユーザ・インターフェースの編集が可能であること.
著者
池松 香 福本 雅朗 椎尾 一郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.3_2-3_19, 2019-07-25 (Released:2019-09-25)

静電容量方式のタッチサーフェス上へ貼り付けるだけの簡単な作業で取り付けられるForce-to-Motion方式の薄型入力機器,Ohmic-Stickerを提案する.プリント基板上へ加圧により抵抗値が変化する感圧センサを設置し,タッチサーフェスの流出電流値を用いて抵抗値変化を計測することで,指先の微細運動による入力を実現する.本論文では,予備調査に基づくOhmic-Stickerの設計要件の検討と,実際に作成した0.5 DoFから6 DoF(以上)の入力を可能とする複数のOhmic-Sticker及びその応用例,性能調査の結果を報告する.
著者
萩野 達也
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1_16-1_32, 1990

<p>カテゴリー理論的関数型言語は,カテゴリー理論に基づいた関数型プログラミング言語で,カテゴリー理論的に随伴関手を使ってデータ型を定義し,その上でプログラムを書くことができる.この言語では元々定義されたデータ型が存在せず,すべて随伴関手の機能を使って定義される.定義可能なデータ型には,終対象,始対象,積,和,関数型,自然数,有限リスト,無限リスト等がある.また,この言語は,制御構造も元々は定義されておらず,データ型の定義と共にそのデータ型に関する基本演算および制御構造が定義される.そして,プログラムの実行のための計算規則は,カテゴリー理論によって,単純な統一されたものとなっている.</p>