著者
権藤 克彦 冨永 和人
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.2_93-2_99, 2010-04-27 (Released:2010-05-17)

Cプログラム中の#includeの正しさをチェックするツール「簡単#include検査君」を開発した.教科書用の158個の小さなサンプルコードに実験的に適用し,58個のファイルから#includeミスを発見できた.経験として,ツールは#includeミスの発見に非常に有効だったこと,この成功は「使い捨てツール」のアイデアを裏付けること,#includeミスは予想よりもはるかに多かったこと,などを述べる.
著者
吉田 隆一 所 真理雄
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.23-33, 1987-01-14
被引用文献数
2

待ち行列モデルに代表される離散事象モデルのシミュレーションを,マルチ・プロセッサまたは分散システムを用いて並列処理する際のシミュレーション時刻の分散管理法を提案する. モデル化の手法としては,待ち行列網をフロー・グラフに表現する方法を採る.そして,グラフのノードを並列処理の単位となるプロセスとし,客のノ一ドへの到着をメッセージの受信により表現する.各ノードはそれぞれのシミュレーション時計を持ち,これらの時計の同期はノード間のメッセージ交換により局所的にとられる. 提案したアルゴリズムはオブジェクト指向言語を用いて実装された.オブジェクト指向モデルによるオブジェクトを単位とした並行記述により,離散事象モデルに存在する並列性を陽に表現することが容易に行なえた.また,これまでに提案されたシミュレーション時刻の分散管理法に比べて同期のためのメッセージ量が大幅に減少することが確かめられた.
著者
番原 睦則 田村 直之 井上 克巳
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.75-86, 2007-07-26
被引用文献数
1

本論文では,PrologからJavaへのトランスレータ処理系Prolog Cafeについて述べる.本システムでは,Prologプログラムは,WAMを介して,Javaプログラムに変換され,既存のJava処理系を用いてコンパイル・実行される.つまりProlog Cafeでは,項,述語などPrologの構成要素のすべてがJavaに変換される.このため,PrologCafeはJavaとの連携,拡張性に優れたProlog処理系となっている.Prolog Cafeはマルチスレッドによる並列実行をサポートしており,スレッド間の通信は共有Javaオブジェクトにより実現される.また任意のJavaオブジェクトをPrologの項として取り扱う機能を有しており,Prologからメソッド呼び出し,フィールドへのアクセスも行える.最後にProlog Cafeの応用として,複数SATソルバの並列実行システムMultisatについて述べる.
著者
西岡 真吾
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_87-4_106, 2009-10-27 (Released:2009-11-16)

大規模な文書集合について各種の連想計算を高精度かつ高速に処理することができ,高度な情報検索を必要とする応用プログラムで使用可能な汎用連想計算エンジンGETAを紹介する.GETAの設計にあたって重視した点は(1)大規模な自然言語コーパスを扱えること,(2)様々な応用プログラムで利用できること,(3)ユーザが自由に類似度を定義できること,(4)推定などによらない完全な計算結果を返すこと,(5)高速であることである.また,十分な可用性を確保するためにプラットフォームに対する要求は大容量の主記憶装置と近代的なオペレーティングシステムのみとした.上記5点を満たすために大部分のコードをC言語で記述した.さらに,主記憶装置を節約するためのデータ圧縮機能,高速な計算のための類似度定義からC言語への変換機能などを備えている.GETAは学術用から商用に至るまで様々な応用プログラムで利用されており,数百万件規模の文書集合に対しても実用に耐え得るスケーラビリティを持つ.
著者
佐伯 胖
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.100-109, 1991-03-15

本チュートリアルでは,具体的な対象システムの如何にかかわらず成り立つと考えられる,ヒューマンインタフェース研究の一般的な枠組みを明らかにする.このような一般的な研究の枠組みを提唱している研究として,まず,Normanの「認知工学」の概念における「行為の7段階」に基づくインタフェース分析を解説した.ここで,Normanの分析が,ユーザの観点からのものに限られているという点を明らかにし,むしろ,インタフェース問題は,ユーザ,デザイナー,さらに外界世界の三つの世界の相互作用を最適化することをめざすべきであるとの観点にたち,そのための道具のあり方を探るため,それら相互の「接面構造」の分析を示し,道具(システム)と人間との,多様な相互作用の全体システムを吟味する研究の枠組みを提唱した.
著者
小野 諭 小川 瑞史
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.115-130, 1996-03-15
被引用文献数
2

抽象実行とは,プログラムの様々な性質を解析するために提案された理論的なフレームワークである.これは,プログラムのデータ領域や計算動作などの意味を抽象化した有限抽象領域を設計し,その上でプログラムを不動点計算と呼ばれる手法で「実行」することにより,プログラムの性質を求める. そこで,本チュートリアルでは,プログラム解析のごく初歩的な知識を持つ読者を対象にして,抽象実行の基本概念,分類,具体的設計法、仕様記述への展望などを説明する.対象言語としては,遅延評価型の関数型言語を取り上げる.ただし仕様記述への展望は,手続き型言語における様相論理や時相論理による仕様記述をベースに説明する.
著者
長 慎也 筧 捷彦 Shinya Cho Katsuhiko Kakehi 早稲田大学理工学部 早稲田大学理工学部 School of Science and Engineering Waseda University. School of Science and Engineering Waseda University.
出版者
Japan Society for Software Science and Technology
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.369-374, 2003-07-25
参考文献数
9

ユーザの入力した検索語をもとに同義語の組を抽出する手法を提案する.本手法は,ユーザが入力した検索語の共起関係から,つながりと呼ばれる検索語間の関係を定義し,この関係を強く持つ検索語同士から同義語の組を抽出する.また,実際に稼働している全文検索システムを用いた実験を行い,本手法の有効性を検証した.実験に用いた検索システムはlinux-usersメーリングリストのアーカイブを検索するシステムであり,2002年2月から6月までの約7万リクエストについて解析を行った.
著者
村田 真 川口 耕介
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.472-481, 2004-11-25

形式言語理論を用いて,XMLとスキーマ言語を解説する.また,スキーマに基づくXML技術(とくに検証と静的型検査)について概観する.
著者
風間 一洋 佐藤 進也 斉藤 和巳 山田 武士
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1_81-1_90, 2007 (Released:2007-06-11)
被引用文献数
1

本論文では,人間関係のネットワークから活発な人間で構成されるコミュニティ構造を互いの重なりを許容しながら抽出するSR-2法を提案する.本手法は,スペクトラルグラフ分析の一手法であり,ネットワーク構造中で他と重なりを持つような結合が密なコア部を抽出できる特徴を持つSR法を,特に共起ネットワークに対して,より詳細な分類ができるように変更したものである.この特性を調べるために,SR-2法に加えてSR法とk-クリークコミュニティ法を,実際のWebデータから抽出した小規模な人間関係に適用して抽出されたノード集合を可視化すると共に,抽出性能を評価する.さらに,より大規模なネットワークとして論文の共著関係を取り上げ,各手法で抽出されるノード集合のサイズの分布を分析する.この結果,SR-2法は,現実の人間の集まりに対応した妥当なコミュニティ構造を抽出できることを示す.
著者
森本 祥一 重松 真二郎 後藤 祐一 程 京徳
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.3_117-3_133, 2006 (Released:2006-09-01)

情報システムの設計・開発において,セキュリティ仕様とその検証は重要な課題となっている.検証を行うには基準が必要であるが,情報システムが備えるべきセキュリティの基準を定めることは難しい.このため本論文では,IT製品や情報システムのセキュリティ評価の国際標準であるISO/IEC15408を基準として採用し,これに基づいた情報セキュリティ仕様の形式手法による検証技法を提案する.本検証技法では,形式的に記述したISO/IEC15408のセキュリティ評価基準を用いて,対象となる情報システムの仕様がISO/IEC15408の基準を満たしているかどうかを定理証明とモデル検査により厳密に検証することができる.

1 0 0 0 OA 型理論I

著者
龍田 真
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1_25-1_33, 1991-01-14 (Released:2018-11-05)
著者
平賀 正樹
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.2_170-2_178, 1989-04-14 (Released:2018-11-05)

近年,情報処理分野で日本語プログラミング言語が話題になっているが,その中の代表的なものにMindがある.Mindは,もともとForthから派生したパソコン用コンパイラ言語である.そして,その日本語記述能力による初心者用言語というイメージに反して,最近では開発用言語として使用されている場合が増えてきている. 本稿では,このMindの概要を述べるとともにそのプログラム記述能力などについても言及する.またMindによるアプリケーションの開発事例を紹介し,今後の課題も含めて考察する.
著者
萩野 達也
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1_16-1_32, 1990-01-16 (Released:2018-11-05)

カテゴリー理論的関数型言語は,カテゴリー理論に基づいた関数型プログラミング言語で,カテゴリー理論的に随伴関手を使ってデータ型を定義し,その上でプログラムを書くことができる.この言語では元々定義されたデータ型が存在せず,すべて随伴関手の機能を使って定義される.定義可能なデータ型には,終対象,始対象,積,和,関数型,自然数,有限リスト,無限リスト等がある.また,この言語は,制御構造も元々は定義されておらず,データ型の定義と共にそのデータ型に関する基本演算および制御構造が定義される.そして,プログラムの実行のための計算規則は,カテゴリー理論によって,単純な統一されたものとなっている.
著者
佐々 政孝 石塚 治志 中田 育男
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.3_212-3_228, 1993-05-19 (Released:2018-11-05)

1パス型属性文法に基づくコンパイラ生成系Rie(りえ)について述べる.LR構文解析と同時に解析木を作らずに属性評価ができる属性文法のクラスにLR属性文法というものがあるが,Rieはそれに同値類を導入したECLR属性文法というものに基づいている.Rieは属性文法によるコンパイラの記述から1パスのコンパイラを生成する.Rieにより種々の言語処理系が開発されている.生成されたコンパイラは,手書きのものに比べて1.8倍程度の時間で動き,形式的な記述から生成されたコンパイラとしてはかなり効率がよいことが確認された.
著者
丸山 宏
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.3_262-3_271, 1990-07-16 (Released:2018-11-05)

自然言語における組合せ的な数の構文的曖昧さを一つの制約充足問題として表現するため,我々は制約依存文法を開発した.本論文では,制約依存文法の定義と,その弱生成力について論じる.我々は,arity=2,degree=2の制約依存文法が,その弱生成力において文脈自由文法を真に含むことを示す.
著者
北川 貴之 橋本 憲幸 吉田 和樹 位野木 万里
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_93-3_98, 2010-07-27 (Released:2010-08-07)
被引用文献数
1

高品質な要求定義のためには,要求の抽出,仕様化,検証のノウハウが必要になる.しかし,そのようなノウハウは,ベテラン技術者の暗黙知となっている.そこで,本稿では,要求定義ノウハウを形式知化し,組織の資産(アセット)として共有する手法を提案する.本手法では,成功事例の要求仕様書の分析とベテラン技術者へのインタビューを通して,要求定義ノウハウを抽出した.これらのノウハウを,要求仕様メタモデル,要求仕様テンプレート,要求仕様プロダクトおよびプロセス検証ルールに分類して,形式知化した.
著者
首藤 一幸 阿部 洋丈 亀井 聡 塩澤 一洋 高木 浩光
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.3_1-3_7, 2005 (Released:2005-09-30)

2004年9月14日(火),ソフトウェア科学会第21回大会の併設企画として,チュートリアル「P2Pコンピューティング―基盤技術と社会的側面―」が開催された.チュートリアル最後のパネルディスカッションでは,技術者として,今後P2Pソフトウェアを構築するにあたって,何を踏まえ,どのように取り組んだらよいのかを議論した.本稿ではその議論を報告する.