著者
辻田 眸 塚田 浩二 椎尾 一郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.18-28, 2010-01-26
被引用文献数
1

距離を隔てて暮らす人たちに,相手の存在感や振る舞いなどのアウェアネスを伝えることで,従来の電話やメールを補完もしくは置き換えようとする新しいコミュニケーションシステムが多数提案されている.本研究では,日常生活における行動の偶然の一致が,話題のきっかけ,親近感,連帯感などをもたらすことに着目し,遠隔地にいる人々の行動が偶然一致したことを伝達する,新しいコミュニケーションシステムを提案する.また,ドアの開閉,ソファーへの着席,テレビの視聴などを検出して一致を伝達するシステムを試作し,研究室間での評価実験を行った.さらに2家族間での遠隔実験の結果を示し,今後の展望を述べる.
著者
山本 聡彦 小松 孝紀 生天目 章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_26-1_33, 2011-01-25 (Released:2011-03-25)

近年,様々な分野において,複雑ネットワークに関する研究が進められてきた.そのような中,与えられた目的に適合する特性を持った最適なネットワークとは何か,またそれをどのように設計するかという問題は,未だ解明されていないことが多い.従来の研究は,あるルールの下でネットワークを作成し,そのネットワークの特性を調べていくものが多い.本研究では遺伝的アルゴリズムを用いて最適なネットワーク(厳密には準最適なネットワーク)を生成させる方法を提案する.最適なネットワークを生成するための評価指標としてネットワークを表現する隣接行列の最大固有値とリンク密度の2つの線形結合関数を定義し,遺伝的アルゴリズムによりネットワークを進化させる.また,進化的に生成した準最適なネットワークの構造について解析をする.
著者
井上 克巳 坂間 千秋
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.20-32, 2008-07-25
被引用文献数
7

Prologがベースとしているホーン節論理に基づく論理プログラミングでは,構文的制約があって確定的知識しか表現できないことが,現実的な知識表現のためには限界であるとされていた.この問題点を克服するために,論理プログラミングにおいて不完全・不確定な情報を扱うための拡張理論が1980年代後半から数多く提案された. 1999年にはこれらに加えて制約プログラミングの概念を融合した解集合プログラミングの概念が確立され,現在では論理プログラミングの中心的な研究テーマの1つになっている.本稿では過去からのこうした研究の流れと新しい論理プログラミングの可能性について探る.
著者
石川 拓也 安積 卓也 一場 利幸 柴田 誠也 本田 晋也 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_158-4_174, 2011-10-25 (Released:2011-11-30)

本論文では,組込み向けコンポーネントシステムであるTECSの仕様に基づいて開発した,LEGO社製MindstormsNXT用ソフトウェアプラットフォームATON(ASP+TECS On NXT)について述べる.ATONは,TECSを用いることにより,未使用デバイスのデバイスドライバの取り外しによるメモリ使用量の削減を可能とし,また,モデルを用いたソフトウェア開発との親和性を高めている.これらを実現するために,タスクやセマフォなどのリアルタイムOSの扱うオブジェクトやNXTに搭載されているデバイスのデバイスドライバをTECS仕様に従ってコンポーネント化している.倒立二輪ライントレースロボットの制御ソフトウェアをATON上に実装する事例によりATONの有用性を示した.
著者
山崎 俊太郎 持丸 正明 金出 武雄
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_126-4_136, 2011-10-25 (Released:2011-11-30)

画像ベースレンダリング法を用いて,Webブラウザ上で自由視点画像を合成するシステムを提案する.本システムは,クラウド環境で動作する光線空間モデリングと,Webブラウザ上で動作する自由視点画像レンダリングのソフトウェアで構成される.モデリングには,画像特徴を利用したStructure from Motion法を用い,未校正の画像集合から,自動で光線空間を復元する.レンダリングには,透視変換の近似アルゴリズムを用い,Webブラウザ上で対話的な速度で画像を合成する.我々の手法は,3次元の形状モデルを必要とする既存のWeb3D技術に対して,(1)表示対象の形状モデル復元が不要,(2)合成画像が写実的,(3)標準的な計算機環境で利用可能,という利点がある.作成したモデルは,標準的なHTMLの形式で配布可能であり,単独のコンテンツとして閲覧するほか,既存のWebサイトへ埋め込んで利用できる.これにより,今まで静止画を利用していた様々なWebアプリケーションに,対話的な3Dグラフィクスの機能を追加できる.
著者
神原 啓介 塚田 浩二
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.2_172-2_182, 2011-04-26 (Released:2011-05-26)

ブログやSNS,ソーシャルブックマークなどのソーシャルウェブサイトの利用が進み,Web上で人とつながりを持ちコミュニケーションをすることが増えた.Web上での人とのつながりやコミュニケーションが増えると,優先的に見たい人の発言が他の人の発言に埋もれてしまう問題や,複数のウェブサイトに発言が分散してしまう問題,タイムラインのようなリストでは特定の人物を見つけにくいといった問題が起こる.そこで本研究では複数のソーシャルウェブサイトを横断しながら,優先的に見たい人がタイムラインに埋もれてしまうことなく,特定の人物を一目で見つけることのできるインタフェース「ソーシャル顔アイコン」を提案・試作した.ソーシャルウェブサイトの中にいる人をアイコンとしてデスクトップに置くことで人に対してより直接的にアクセスできるインタフェースを備えており,使い慣れたアイコンと同じように操作できる点や,発言の新鮮度や発言頻度といった時間軸情報を視覚的に分かりやすく表示する点が特徴である.
著者
上間 裕二 古川 正紘 常盤 拓司 杉本 麻樹 稲見 昌彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.2_153-2_161, 2011-04-26 (Released:2011-05-26)

猫やチンパンジーなどはコミュニケーション方法の1つとして,毛を逆立てて威嚇行動をとることが知られている.この毛を逆立てるという行動は,動物ならではのコミュニケーションの中でも,人に対してわかり易い表現手法といえる.つまり同手法を工学的に再現することで,毛皮がもつ視覚的な審美性を損なうことなく,毛を逆立てるという機能をもちながらも,身につけたり撫でたりすることが可能な出力インタフェースの実現が期待できる.そこで本稿では,本表現手法をユーザインタフェースへ適用するための技術要素として,簡便な機構で実装可能な毛並み制御手法の提案を目的とする.実験の結果,毛皮に対して振動を印加することで瞬時に毛を逆立てることが可能であることが確認された.また,ユーザスタディにより毛を逆立てることが人に対して驚きを与えたことから,十分な視覚的変化を実現できたことが確認された.以上のことから,本提案手法は動物的な表現手法の工学的な実装として有効であり,動物的な表現を用いた出力インタフェースへと応用可能であることが示された.
著者
中野 浩
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.324-328, 1987-10-15

コンビーネーターを用いた作用的(applicative)プログラミングの実現系における実験から,2つのプログラミング技法を抽出する.また,これらの技法を,Lispにおける場合と比較し,コンビネーター法という新しいアーキテクチャにおいては,既存のものとは異なるプログラミング技法が有効であることを示す.
著者
横尾 真 北村 泰彦
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.379-387, 1997-07-15
被引用文献数
8

複数のエージェントが1つの問題を並行して解く協調探索において,進化的計算における淘汰と同様なアイデアを用いてエージェント間の競争を導入したアルゴリズムを開発した.本アルゴリズムでは,状態空間探索問題を解くマルチエージェントReal-Time A^*アルゴリズムにおいて,複数のエージェントが定期的に適合度に応じて確率的に次世代の子を作る.適合度はエージェントの現在位置の評価値によって決定され,より良い評価値を持つエージェントが次の世代により多くの子を残せる.この方法により,有望な経路に労力を集中しアルゴリズムを効率化することと,多様性を保ち知識の誤りに対して頑健であることが両立可能である. 例題を用いた評価により,nパズルのように問題の目標が直列化可能な複数の副目標(serializable subgoals)に分解可能な場合には,エージェントは副目標に関する知識を持っていないにもかかわらず,本方式により劇的な高速化が得られることを示す.特に,本アルゴリズムは48パズルを安定して解くことが可能である.この問題は副目標に関する知識を陽に与えない限り,従来のヒューリスティック探索アルゴリズムでは現実的な時間内で解を得ることは不可能であった.
著者
池田 光生 Teruo Ikeda (財)新世代コンピュータ技術開発機構
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.536-545, 1991-11-15

多くの生成システムでは,プランニング部と表層文生成部との間で中間構造を介して情報の伝達を行う.生成処理が多様化するにつれて複雑になる中間構造を,簡潔に記述するために,五つの階層からなる意味表現を導入した.各階層は文の統語的な階層構造を反映したものであり,統語的な制約を自然な形で意味の階層の中に埋め込むことにより,統語的な制約と意味的,文脈的な制約を統合している.意味表現の階層を用いることにより,多様な従属節の接続表現の違いや提題の「は」の役割を,記述する階層の違いとして自然に明示することができる.
著者
小関 悠 角 康之 西田 豊明 間瀬 健二
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.41-50, 2007-07-26
被引用文献数
2

本稿では研究発表会や博物館見学といったイベント空間において取得可能な体験データを,ユーザーが閲覧・編集するためのシステムを提案・実装する.種々のカメラやセンサー機器の発達により大量の取得が可能となった体験データを,ユーザーの扱いやすい形にすることで,その編集や共有を促すことが狙いである.システムは大きく二つの部分に分けられる.一つは体験データを自動的に要約してユーザーに提示するシステムであり,特にセンサー情報を用いることで映像データを「ぱらぱらアニメ」,すなわち,シーンを表現する複数枚の特徴的なスナップショットのセットへと変換する手法について述べる.もう一つは要約された体験データの鑑賞・編集システムであり,こちらでは「ぱらぱらアニメ」の特性を生かし漫画的なレイアウトを組むことで体験データを好みの観点で観賞・編集が出来ることを中心に述べる.本システムは体験データの閲覧や編集へのアクセシビリティを高めるため,Webアプリケーションとして実装した.
著者
Nicolas MARTI Reynald AFFELDT
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3_135-3_147, 2008-07-25 (Released:2008-09-07)

Separation logic is an extension of Hoare logic to verify imperative programs with pointers and mutable data-structures. Although there exist several implementations of verifiers for separation logic, none of them has actually been itself verified. In this paper, we present a verifier for a fragment of separation logic that is verified inside the Coq proof assistant. This verifier is implemented as a Coq tactic by reflection to verify separation logic triples. Thanks to the extraction facility to OCaml, we can also derive a certified, stand-alone and efficient verifier for separation logic.
著者
上田 和紀 細部 博史 石井 大輔
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_306-1_311, 2011-01-25 (Released:2011-02-18)

時間の経過に伴って状態が連続変化したり,状態や方程式系自体が離散変化したりする系をハイブリッドシステムと呼ぶ.我々は,不確実値の扱い,シミュレーションと検証の統合などの観点から,制約概念に基づくハイブリッドシステムモデリング言語HydLaの設計と実装を進めてきた.HydLaは,制約階層概念の採用によって制約条件を過不足なく与えることを容易にした点を特徴とするが,種々の言語機能の相互作用のためにその意味論の定式化は自明ではない.本論文では,HydLaの宣言的意味論を定式化して考察を加えるとともに,宣言的意味論から導かれる性質や帰結を具体例を用いつつ論じる.
著者
松尾 真一郎 秋山 浩一郎 尾花 賢 岡本 健 面 和成 鈴木 幸太郎
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.74-77, 2002-09-25

2002年3月11日から3月14日まで,バミューダにてFinancial Cryptography 2002(FC2002)が開催された。本稿では,FC2002の概要について報告する.
著者
二村 良彦 大谷 啓記 青木 健一 二村 夏彦
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.588-605, 1997-11-17
被引用文献数
1

長さnの順列を等確率,即ち1/n!で生成するO(n)アルゴリズムは知られている.しかし,整列アルゴリズム等の精密な評価のためには,このような一様乱順列による評価では不十分である.例えば,一様乱順列に含まれる葉数(自分よりも小さい隣人を持たない要素の個数),ランズ,および上昇部分の個数(即ちn-ランズ)は,平均各々約(n+1)/3,(n+1)/2,および(n-1)/2である.これは一様乱順列が極めて偏った特性を有することを意味する.アルゴリズムの性能に影響を及ぼす性質(例えば葉数)を制御しながらランダムに順列を生成し,それを用いてアルゴリズムの性能を評価する必要がある.本稿では,順列から非負の整数上への関数および関数値を順列の特性指標と呼ぶ.特性指標の中でも,順列の葉数,ランズ,上昇部分数等に対応するクラスを単純指標と呼び,それを形式的に定義する.そして長さn,単純指標mを持つ乱順列をO(nm)で生成する計算機オーバーフロー(またはアンダーフロー)無しの方法を提案する.また,単純指標が葉数である場合には順列をO(n)で生成する実用的近似方式について報告する.