著者
鈴木 貢 藤波 順久
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1_65-1_81, 2008 (Released:2008-03-31)

最近公表されるマイクロプロセッサの殆どが具備するようになったメディア処理向けSIMD拡張命令セットは,ベクタ命令セットの特別な場合と考えられるが,従来のベクタ命令にはない特徴や制約があり,そのための最適化技術をそのまま流用するだけでは潜在能力を引き出すことができない.COINSプロジェクトではSIMD拡張命令セット向け最適化を,ベクタ化を軸としたソースコードレベルで可能な最適化と,そのような変換を施されたプログラムに対して適切なSIMD命令を生成する最適化の2段階に分割し,我々が「SIMD並列化」と呼ぶ後者を中心に研究を行った.本稿では,COINSにおけるSIMD並列化について報告する.

1 0 0 0 OA COLING '94報告

著者
田中 久美子 宮田 高志
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.184-188, 1995-03-15

第15回計算言語国際会議(International Conference on Computational Linguistics,略称COLING)が,8月5日から9日にかけて5日間,京都で開催された.プログラム委員長にSheffield大学のYorick Wilks,会議委員長に京都大学の長尾真という顔ぶれで,参加者は約600人,採択論文は197件であった.また一般発表の他に招待講演が4件,招待パネルが2件,チュートリアルが6件,日本企業のデモンストレーションが7件,行なわれた.さらに本会議の前後に2つの併設ワークショップ(Second Annual Workshop on Very Large Corpora (8月4日)およびInternational Workshop on Sharable Natural Language Resources (8月10日,11日))が開かれた.
著者
山中 淳彦 佐藤 雅彦
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.388-401, 1997-07-15

本論文では、代入を持つ関数型言語Λを提案する.この言語の定義を示し、操作的意味論がChurch-Rosser性や参照透明性のような良い性質を持つことを示す.次に、Λと[5]で提案された同様の関数型言語Λ94とを比較し、両者の間に成り立つ関係を調べる.Λの操作的意味論はΛ94のそれよりも簡潔に与えられており、そのためΛに対しては決定的な操作的意味論を自然に定義することができる.
著者
水口 充 ジョージ ボーデン 柏木 宏一 増井 俊之
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.267-276, 1997-05-15
被引用文献数
2

情報検索に対して多数の可視化手法が提案されているが,それらのほとんどは単一の手法によるものであり,名前の一部分といった曖昧な知識からの検索には効率的とは言えない. 一方,人間は日常的には曖昧な手がかりから物を探していることが多い.例えば図書館で本を探すには,目的の本が含まれる分類の書架にある本を見て本の題名や色や大きさなどの様々な手がかりから探している.また,本棚で著者や題名を見て索引力一ドを調べることにより関連する情報を得ることもできる. このような現実世界での検索の方法を可能にするために,情報の可視化,キーワード検索,分類検索を,なめらかにズーミングするインタフェースで統一し,曖昧な知識から情報の検索範囲を絞り込んでいくことのできる複数のビューによる情報検索システムを構築した.ユーザは,それぞれのビューで検索範囲を変えていくことで,思い通りに情報空間を探索することができる.
著者
松井 俊浩
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_62-2_71, 2006 (Released:2006-06-30)

3次元の幾何モデルを記述し,その上でロボットの環境認識機能や知的行動計画プログラムを記述するための言語,EusLispの概念と実装について論ずる.ロボットの知的機能の実現にはオブジェクト指向が最適であるとの考えに立ち,言語の基本機能としてオブジェクト指向を実装し,その上にCommon Lispと同様な関数プログラミング機能を実現する.オブジェクト指向とLispの関数を融合するために,階層的なクラス継承木の中で定数時間で型判別を行える仕組みを導入している.不定長のオブジェクト管理のメモリ効率を向上させるため,フィボナッチバディによるメモリ管理を行う.非同期,並列プログラミングのために導入したマルチスレッド機能とスレッドごとに分割したメモリ管理機構の評価を行う.これらによって効率よく実現された幾何モデラーと,ロボット向きのEusLispの応用を2例示す.
著者
泉 直子 片山 卓也
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.452-467, 1997-09-16
被引用文献数
1

ソフトウェアオブジェクトには製品の部品構成をはじめ,仕様の詳細化関係,バージョン変化など様々な関係がある.オブジェクトを修正する過程でそれらの関係は複雑に変化するので,全体として矛盾なくそれらの関係を保存するのは難しい. 一方,オブジェクト論理はオブジェクトベースを形式的に扱った論理である.オブジェクト論理の一つF-logic[9]は,オブジェクトをis-a関係の階層構造で捉え,オブジェクト間の関係を論理式で与える.更に,オブジェクト識別性,複合オブジェクト,クラス階層,継承などのオブジェクト指向の考え方を保存した解釈を束構造の中に与えている. 本論文では,製品の部品構成,仕様とそこから詳細化してできるオブジェクトとの関係を形式化し,F-logicの拡張として,無矛盾に部品構成の履歴管理ができるオブジェクト論理FT-logicを提案する.更に,形式的な解釈を与え,質問処理に関するアルゴリズムが存在することを示した.
著者
一杉 裕志 田中 哲 渡部 卓雄
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.292-299, 2003-05-23

複数のクラスにまたがるコードを分離して記述できる言語として,アスペクト指向言語がある.独立して開発されたアスペクトであっても,個々のアスペクトが何らかのルールに従って設計されていれば,複数同時に組合わせて動作させることが可能であるとわれわれは考えている.本論文ではそのようなルールを見いだし検証するための第一歩として,安全に結合可能なmixinを提供するためのルールを検証する方法について述べる.ルールの記述および検証には, Design by Contractやbehavioral subtypingの考え方を用いる.
著者
杉木 章義 河野 健二 岩崎 英哉 Akiyoshi Sugiki Kenji Kono Hideya Iwasaki 電気通信大学大学院電気通信学研究科情報工学専攻 慶應義塾大学理工学部情報工学科 電気通信大学電気通信学部情報工学科 Department of Computer Science Graduate School of Electro-Communications The University of Electro-Communications Department of Information and Computer Science Keio University Department of Computer Science The University of Electro-Communications
出版者
Japan Society for Software Science and Technology
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.68-78, 2007-04-24
参考文献数
27
被引用文献数
7

インターネットサーバの手動による性能パラメータ調整は,多くの経験や時間を必要とし,管理コストの増大を招くことが知られている.ウェブサーバの主要な性能パラメータであるkeep-alive時間は,適切に設定しない場合,サーバのスループットや応答性を低下させることがある.本論文では,ウェブサーバのkeep-alive時間の自動設定機構を提案する.本機構は管理者の介入を必要とせず,手動設定で求めた値に近いkeep-alive時間に自動設定する.本機構はリクエスト待機間隔を監視しながら,データを送受信していない接続を切断し,データを頻繁に送受信している多くのクライアントからの接続を保つようにkeep-alive時間を設定する.本機構をApacheウェブサーバを対象としたライブラリとして実装し,実験を行った.その結果,異なる2つの負荷に対して,それぞれkeep-alive時間を自動的に設定し,サーバの性能を適切に維持することを確認した.Manual parameter-tuning of Internet servers causes high administrative costs because it requires administrator's expertise and huge amounts of time. The keep-alive parameter, which is one of major parameters in web servers, may cause severe degradation if it is not set properly. In this paper, we present an automatic tuning technique of the keep-alive parameter. Our mechanism adjusts the parameter without administrator's intervention so as to maintain active connections between clients and a server while closing inactive connections by observing request-waiting intervals. We implemented a prototype for Apache web server. Experimental results show that our prototype automatically adjusted the parameter and successfully yielded the nearly optimal server performance on two different workloads.
著者
勝野 恭治 相原 達 水谷 晶彦 玉川 憲 Yasuharu Katsuno Toru Aihara Akihiko Mizutani Ken Tamagawa 日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 IBM Research Tokyo Research Laboratory IBM Research Tokyo Research Laboratory IBM Research Tokyo Research Laboratory IBM Research Tokyo Research Laboratory
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.492-496, 2003-09-25
参考文献数
7

本論文では,様々な携帯デバイスに搭載されている短距離無線通信技術, Bluetoothを用いた距離検出方法を提案する.無線通信として搭載されているBluetoothでデバイス間の距離を検出できれば,デバイスの位置が相対距離で検出できる.そのため,位置情報を利用したサービスをBluetooth搭載デバイスに提供することが可能となる.さらに本方法を用いたアプリケーション例として, Bluetooth搭載腕時計型コンピュータ, WatchpPad 1.5を身につけたユーザーとの相対距離に応じて提供するコンテンツを変えるインフォメーションキオスクシステムを試作し,本方法の有効性を確かめる.
著者
小川 瑞史 小野 諭
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.283-302, 1996-07-15
被引用文献数
2

関数型言語の抽象実行のフレームワークとして,領域抽象化による順方向実行と逆方向実行についてストリクトネス解析を例として説明する.さらにそれらを統一的に扱う4つのパラメータについて説明し,計算経路解析をそのパラメータ表現に基づき表す(1章).次に逆方向実行であるプロジェクション解析を説明し,計算経路解析と比較する(2章).最後にper (Partial Equivalence Relation)による順方向実行の抽象実行を説明し,プロジェクション解析や計算経路解析と比較する(3章).
著者
井田 哲雄 松野 年宏
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュ-タソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.p149-163, 1991-03

本論文はMC/LISPと呼ぶCOMMON LISPに基づいて実現されたLISP処理系の翻訳系の構成を述べたものである.翻訳系はプログラム変換系とコード生成系より成っている.LISPのプログラムはFP/Cと呼ぶカテゴリ風プログラムに変換される.次にFP/Cのプログラムが翻訳関数によって翻訳されコード生成が行われる.プログラム変換は実行時の環境を単純なものとするために,および翻訳の過程を形式的に把握するために不可欠である.この考えに基づきLISPの基本的計算機構のプログラム変換の規則とコード生成の規則を形式的に与えている.

1 0 0 0 OA 型理論

著者
林 晋
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.98-102, 1988-01-14
著者
佐藤 泰介 玉木 久夫
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.177-188, 1988-04-15

第一階コンパイラは一階論理式による論理プログラミングを可能にすべく開発された一種の自動合成プログラムである.確定節からなる論理プログラムに, 〓Y(p (X, Y)→q (Y, Z)) という形のゴール(実際はもっと複雑でも良い)を許したプログラム(一階プログラム)を入力とし,確定節論理プログラムを出力する.コンパイル自体は全自動で必ず停止するが,人力プログラムによってはコンパイルができないことがある.プログラミングという観点からみると,第一階コンパイラはPrologにある種のループ文を導入したことになっている.しかし論理変数が使用できるので通常のループ文よりはるかに柔軟性がある.また論理的な観点から言うと,第一階コンパイラのしていることは一階プログラムから導かれる普遍継続形式(universal continuationform)と呼ばれる,ある種の論理式のunfold/fold変換である.出力プログラムの計算結果は,常に入力プログラムの完備化の論理的帰結であること(部分的正当性)が証明される.
著者
坂本 大介 小野 哲雄
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_101-2_107, 2006 (Released:2006-06-30)

本稿では環境に埋め込まれた対話可能な絵画を生成するソフトウェアについて述べる.本ソフトウェアが生成する絵は環境センサの情報をもとに常に変化する.また,絵に直接触ることで絵に対して変化を与えることができる.これらの絵はモチーフというプラグインで管理され,ユーザの意思で変更することが可能である.本ソフトウェアが出力する絵はコンピュータ上のディスプレイではなく,コンピュータという存在を消したディスプレイから出力することを想定している.これにより我々が生活している空間に含まれる情報を,生活の一部として絵画を飾ることと同じように「情報を飾る」という概念を提案する.また,本稿では空間を一枚の絵画が支配し表現する,環境に埋め込まれたソフトウェアの可能性について考察する.