著者
板橋 秀一
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.951-953, 1991-12-01
被引用文献数
42

日本国内の企業、大学、国立研究所の研究者で構成される委員会で作成した騒音データベースと日本語共通音声データを紹介している。騒音データベースは、音声入力装置の使用が予想される環境を考慮して、典型的な騒音を十数種類収録し、装置の性能評価などに利用できるものである。これはDATテープ18巻に収録されている。日本語共通音声データは、装置の性能評価及び音声処理システムの研究開発への利用を目的として作成された。単音節、地名、4桁数字、制御語、計323語を20代から60代まで男女各75名計150名の話者が各項目を4回ずつ発声している。DATテープ76巻に収録されている。
著者
平原 達也
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.798-806, 1997-10-01
被引用文献数
23

聴覚実験に用いられるヘッドホンの幾かの物理特性を明らかにすることを目的として, 5種類のヘッドホンTDH 39, DT 48, HD 250 Linear II, HDA 200, SR-A Pro.のカップラレスポンス, 実耳レスポンス, 高調波歪特性, インパルス応答特性, 位相・群遅延特性, 外部幅射特性, 音響遮蔽特性, 音響クロストーク特性を測定し, 比較した結果について述べる。
著者
嶋田 容子 志村 洋子 小西 行郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.112-117, 2019-03-01 (Released:2019-09-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

幼児の聴覚は成人とは異なり,雑音下における選択的聴取の能力が十分に発達していない。本研究では,幼児にとって生態学的に必要性の高い音をシグナルとし,雑音下での聴取力の発達変化を4~6歳児70名を対象に検討した。実験は,交通音や多人数音声を背景雑音とし,車・バイクの通過音や呼びかけ音声等のターゲットを検知するクイズ形式で実施した。実験に先立ちOAEにより基本的な聴力を確認した。実験の結果,4歳児と5及び6歳児との間に有意差があり,雑音下での聴取能力が4歳以降で顕著に発達することが示唆された。発達途上の幼児の音環境はこのような聴覚特性を踏まえて検討する必要がある。
著者
今井 仁
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.101-112, 2011-03-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
32

本研究の目的は,普化宗尺八曲の音律を物理的尺度で表現することにある。そのために,まず,著名な奏者の演奏録音から基本周波数を抽出し,旋律をセント表示のグラフにした。これにより五線譜では表せなかった,微細な音程変化と音価を知ることができた。次いで,旋律の中に核音と中間音の存在を確認し,一曲に占める音価の値の占有率から主音を決めた。主音を決めたことにより,普化宗尺八曲の音階表示が可能になった。普化宗尺八曲「調子」を中心に解析したところ,律音階と都節音階は一元論的な関係にあることが分かった。また,各奏者には特有の音律があること,曲中においても核音も中間音も,奏者固有の音程変化を示すことが分かった。
著者
加藤 雅代 古村 光夫 橋本 新一郎
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.888-896, 1994-11-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

日本語の発音リズムとされる、モーラ単位の等時性という言語習慣に基づく新しい日本語リズム規則を提案する。まず、母音部エネルギー重心点CEGVをリズムのタイミング点と仮定し、日本語リズムを母音部エネルギー重心点間の時間長D_Gで定義した。発声器官の物理的構造による制約が、等時性を乱す第一の要因であるという仮説を立て、実音声の分析を通じて検証した。分析実験の結果をモデル化することにより定めた本リズム規則は、一つのVCV形音韻連鎖内の音韻情報のみを用いた非常にシンプルな規則ではあるが、発話速度の変化にも対応でき、音声合成のための規則として十分実用に耐えるものである。
著者
ボエ ルイ-ジャン ヴァレ ナタリー シュワルツ ジャン-リュック アブリィ クリスチャン
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.450-458, 2002-07-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
22

世界の言語における母音体系の普遍性を研究する枠組として,分散集束理論(Dispersion-Focalization Theory:DFT)による母音体系予測の仕組みを紹介する。更に,その予測結果をUPSID(UCLA音素目録データベース)所収の実データとの比較により検証し,モデルによる母音体系予測研究の可能性を論じる。DFTは言語で用いられる母音体系がどのように選択され得るかを予測する理論である。母音ホルマント間の知覚的距離を想定した二つのコストが最小となる系が選ばれるとされる。二つのコストとは,(i)母音間距離の拡散度(分散コスト)と(ii)各母音内のホルマント周波数の近接度(集束コスト)であり,前者は母音体系全体の安定性に,後者は個々の母音の安定性に寄与する。DFTによる予測は二つの自由パラメータλとαで制御される。前者は分散コストにおける第1ホルマントに対する高次ホルマントへの相対加重,後者は分散コストに対する集束コストへの相対加重である。最後に,3〜7母音の体系に対して得られた予測結果とUPSID所収の母音体系との比較により,実在の音素目録にうまく適合するλ-α空間の領域を示す。その領域では,現存する母音体系中最頻の系が予測されるだけでなく,ある母音体系の中で生じ得る変異系がその変異が許される程度と共に示される。
著者
牧 勝弘 赤木 正人 廣田 薫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.304-313, 2004-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

中脳に位置する下丘中心核(Icc)において観察される複雑かつ多様な時間応答パターンの模擬が可能な計算モデルを提案する。Iccに関する生理学的,解剖学的実験報告に基づき,下位の神経核細胞(蝸牛神経核腹側核,又は外側毛帯核腹側核)からIcc細胞への興奮性入力とそれよりも時間的に遅れた抑制性入力という単純な神経回路により,計算モデルを構成する。モデルを用いたシミュレーションの結果,本計算モデルは,生理学的応答特性に基づいて詳細に分類されたIcc細胞の時間応答パターン,すなわち,chopper,pauser, sustained,onset,on-sustained型,及びそのサブタイプ全10種類を再現できることが分かった。この結果は,Iccにおいて観察される時間応答パターンは複雑かつ多様であっても,それを生じさせる神経回路は単純であるという可能性を示している。